著者
児玉 真樹子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.150-159, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
33
被引用文献数
10 7

The constructs of career resilience were clarified and a scale was developed to assess them. Company employees (N = 241) participated in an online survey. The results of an exploratory factor analysis indicated a five-factor structure of career resilience with a high Cronbach’s alpha: (a) ability to cope with challenges, problem-solving, and adaptation; (b) social skills; (c) novelty and diversity of interests; (d) future orientation; and (e) helping. The results of a correlation analysis showed that all five factors of career resilience directly promoted career development. The results of a two-way analysis of variance and t-tests revealed that all factors except for novelty and diversity of interests reduced the negative effects of risk on career development. The results confirmed that career resilience consisted of four factors: (a) ability to cope with challenges, problem-solving, and adaptation; (b) socialskills; (d) futureorientation; and (e) helping.
著者
武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.144-157, 2021-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
72
被引用文献数
3

本稿の目的は、機能的文脈主義が創出されるまでの経緯を記述することによって、その概念の成立に寄与したいくつかの文脈を明確化することであった。本論文の構成は、1)Pepper(1942)のルート・メタファーの概観、2)機能的文脈主義が創出されるまでの経緯(1980年頃から1993年頃まで)の記述、3)1993年以降の機能的文脈主義に関する論文動向の記述、4)機能的文脈主義とその関連諸概念との関係性に関する俯瞰図の提示であった。1)~4)の検討によって、機能的文脈主義の創出に寄与した文脈として、a) 1980年代の行動分析学がもっていた「普遍主義」と「要素主義」という問題、b)行際心理学との比較、c)実験的行動分析と応用行動分析との連携不足、d)コミュニティに関する応用を可能にする枠組みの弱さが示唆された。

4 0 0 0 OA 「君が代」考

著者
溝口 貞彦
出版者
二松學舎大学
雑誌
二松学舎大学人文論叢 (ISSN:02875705)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.18-45, 2002-10-10
著者
Keaten James A. Pribyl Charles B. 坂本 正裕
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.33-47, 2000-03-31 (Released:2019-04-06)

近年、日本の文部科学省はディベート、パブリック・スピーチ、口頭発表といったコミュニケーションを新たな学級活動として導入しようとしている。しかし、主に書くことによるコミュニケーションや評価に依存してきたシステムに、話すことを主としたコミュニケーションを導入する場合には、コミュニケーションへの恐れに関わる諸問題が生じてくる。これらの問題は、クラス内でのコミュニケーション活動が必ずしも話すことを主体とものではないことから隠蔽されてきた。それゆえ、いかに学生にコミュニケーションに対する恐れをうまく処理させるかについて、日本の教員や研究者が参考にすべき情報源は限定されてきたともいえる。本展望は、コミュニケーション不安・抑制・回避(CAIA)に言及しながら、コミュニケーションに対する恐れを緩和することに適用可能ないくつかの認知的および情動的技法を説明することで、その情報不足を補うことを目的としている。CAIAは対人抑制、行動混乱、コミュニケーション回避といったコミュニケーション障害を包括的に統一する用語であり、非生産的思考、条件反応、コンピテンス不足と関連づけられる。本稿では、口頭でのコミュニケーション障害に対する介入技法として(1)認知的再体制化、(2)視覚化、(3)メッセージ中心イメージ法、(4)系統的脱感作を解説している。紹介したテクニックはCAIAに悩む学生を援助するために用いるには未完成の介入技法かもしれない。各仲介技法の有効性と文化的な適切さの両者を試すにはさらなる研究が必要である。
著者
渡邊 明寿香 仲座 舞姫 石原 綾子 山本 和儀 伊藤 大輔
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.137-147, 2019-09-30 (Released:2020-06-25)
参考文献数
36

本研究の目的は、職場復帰後に生じると想定される問題に焦点を当てた介入コンポーネントを付加した集団認知行動療法の効果を検証することであった。うつ症状を主訴とした休職者21名(男性11名、女性10名、平均年齢40.52±8.45歳)に対して、週1回150分、計8回のプログラムが実施された。プロセス変数として、自動思考、認知的統制、行動活性化、環境中の報酬知覚、被受容感・被拒絶感に関する各尺度と、効果変数として、抑うつ・不安、社会機能、職場復帰の困難感に関する各尺度を介入前後で実施した。分析の結果、プロセス変数の改善がみられ、本プログラムの妥当性が示唆された。また、本研究のプログラムによって、抑うつや不安症状、社会機能の改善とともに、部分的には職場復帰の困難感が改善されたことが示された。さらに本プログラムの参加者の復職率は高く、脱落率は低かったことからも、職場の問題に焦点化した集団認知行動療法の有効性が示唆された。
著者
清水 達也
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.55-68, 2023 (Released:2023-07-31)
参考文献数
17

2000年代後半から、ペルーのカカオ・チョコレート産業が大きく成長している。カカオ豆の生産量は2020年までの10年間に3倍に増加したほか、カカオ豆と加工品を合わせた輸出量も約4倍に増えている。加えてチョコレートの国内市場も変化している。国産品は安いチョコレートがほとんどだったが、最近はスーパーマーケットの売り場でも、欧州産の高級チョコレートと並んで、国内企業が製造した価格の高いチョコレートが目立つようになっている。ペルーでカカオ・チョコレート産業が成長している要因として重要なのが、国際市場におけるカカオ豆価格の高騰に加えて、ペルー国内におけるコカ代替開発プログラムによるカカオ豆の生産振興、カカオの価値を高めるバリューチェーンの構築、カカオ豆の品種改善の取組み、そして国内外のクラフトチョコレート・ブームである。
著者
岩松 暉
出版者
Japan Society of Geoinformatics
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.74-75, 1999-06-10 (Released:2010-02-26)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1
著者
神崎 裕 藤井 幸泰
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.213-218, 2018-10-10 (Released:2019-01-10)
参考文献数
5

地質踏査の三種の神器の一つである野帳について,紙からデジタルガジェットであるタブレットPCを利用し,デジタル記録を行った事例を,使用したハードウェア,ソフトウェアを含めて利点,欠点,特徴を含めて具体的に紹介する.
著者
大髙 瑞郁 唐沢 かおり
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.89-100, 2015-11-30 (Released:2015-12-17)
参考文献数
40
被引用文献数
2

Factors other than frequency of involvement probably determine emerging adults’ attitudes toward their fathers. However, factors that affect these attitudes have not yet been revealed. Therefore, this study focuses on children’s perceptions of perspective taking from their fathers and blame for negative behaviors by their fathers, and verifies whether these factors determine children’s attitudes toward their fathers. We conducted a panel survey of 501 Japanese undergraduate students. Data were collected in two waves over approximately two months to establish the causal relationships between the above-mentioned variables. Results indicated that in case of sons, the more positively they perceive their fathers’ behaviors, the more positive their attitudes become toward their fathers. Implications for father-son relationships, compared with father-daughter and mother-child relationships, are discussed.
著者
霜田 光一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.591-598, 2015-08-05 (Released:2019-08-21)

19世紀までに幾何光学と波動光学はほとんど完成し,光はマクスウェル方程式で記述される電磁波であることが確認されていた.そこで,光学の研究はカメラや顕微鏡などの光学機械の新しい考案や,レンズの設計と収差の理論など,応用物理学的研究が主流になっていた.アインシュタインはプランクのエネルギー量子の概念を発展させて,1905年,光電効果を説明する光量子仮説を提出した.光の周波数(振動数)をνとすると,光はエネルギーhνをもつ粒子として振る舞う.この粒子を光量子または光子と呼ぶ.光は波動性をもつけれども,場合によっては粒子性を示すと考えなければならなくなった.これを契機に量子論が展開され,原子による光の放出と吸収は上下2つの定常状態の間の遷移によると考えられた.1916年,アインシュタインは遷移確率を計算して光の放出には自然放出と誘導放出の2つの過程があることを示した.しかし,通常の物質では誘導放出よりも吸収が大きく,正味の誘導放出を観測することはできなかった.原子または分子の反転分布状態では,正味の誘導放出が得られるという議論はあったが,量子論の世界は人為的に操作することはできないと信じられていた.一方において,1906年に発明された真空管を中心に,無線技術とエレクトロニクスが進歩し,ラジオ放送が1920年に始まった.そして,第2次世界大戦中に軍用レーダーの研究に従事した物理学者が,戦後電波分光学の研究を始めた.エレクトロニクスを用いて,核磁気共鳴や分子のマイクロ波スペクトルが実験された.タウンズ(C. H. Townes)はアンモニアの分子線で多数の反転分布分子を空洞共振器に入れれば分子発振器ができるだろうと考えた.1951年のこの着想に基づく実験は1954年に成功し,メーザーと呼ばれるようになった.メーザーは電子管では発生できない短波長のミリ波,サブミリ波,赤外線,可視光線,紫外線の発振器として期待された.これらの高周波メーザーは光メーザー(optical maser)と呼ばれていたが,1960年に実現し,その後は簡潔にレーザー(laser)と呼ばれている.レーザーは時間的にも空間的にも高度にコヒーレントな光を発生する.そこで光の発振スペクトル幅1ヘルツ,パルス幅1フェムト秒,尖頭出力1ペタワットも得られる.レーザー光の指向性は極度に鋭いので,集光すれば,超高光強度が得られる.レーザーはこのように画期的に優れた特性をもっているので,これまでに多種類のレーザーが開発され,その高性能化が進んでいる.その応用はレーザー通信,レーザー加工,レーザー計測などから始まり,今では科学技術のあらゆる方面に広がり,見えないところでレーザーが使われている.たとえばコンピューターもテレビも新幹線もジェット機も,レーザーが不可欠な要素になっている.レーザーは光学を一新し,非線形光学,量子光学,量子情報科学などだけでなく,ボーズ・アインシュタイン凝縮,超高光子密度科学,高温高圧物性,生体細胞のin vivo超解像イメージングなど,新しい研究を創発している.
著者
勝 博史
雑誌
第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会
巻号頁・発行日
2018-05-21

クーリングに関して、多くの研究や専門誌において解熱効果は懐疑的な意見が主流を占めている一方で、臨床では指示や慣習により継続して実践されている現状がある。筆者は、解熱処置としてのクーリングは効果が低いと考えているが、臨床現場にてクーリングが継続して実施されている現状を鑑み、本Pro-conセッションにおいてはクーリングにpros(賛成)の立場として効果的クーリングについて再考する。 臨床で実施されているクーリングとは、頸部・腋窩・鼠径部など体の表層を走行している太い血管を、氷嚢などで冷却することにより体温の低下を期待するものである。しかし、多くの場合は寒冷反応から血管の収縮(熱放散の阻害)やシバリング(熱産生)が起こり、解熱には至らないことからクーリングが否定されている。クーリングが効果的に実施できるのは、寒冷反応を起こさないうつ熱などセットポイントの異常がない外的環境因子による高熱の場合か、全身麻酔などにより体温調整中枢(視床下部)が抑制されている状態のみである。このセッションのテーマである「重症患者の発熱に対するクーリング」として考えると、クリティカルケアを必要とする重症患者の多くは人工呼吸管理等により鎮静されている場合が多い。つまり、体温調節反応が起きにくい状態であるため、クーリングを効果的に実施することが可能であると考える。AHAやJRCのガイドライン2015では、クリティカルケア領域における低体温療法(広義のクーリング)の効果が認められている。そこで、改めてクーリングの意義について考えると、解熱により(1)心拍数を低下できる(特に小児領域)、(2)酸素消費量を低下できる、(3)爽快感や疼痛緩和が得られるなどのメリットがある。これらのメリットは、前述した通り限られた状況下においてのみ得られる効果ではあるが、筋弛緩薬による全身麻酔時や鎮静下の状態など患者を正しくアセスメントできれば効果的なクーリングが可能になると考える。また、臨床にてクーリングが継続されている理由として、解熱効果よりも(3)に示した患者の安楽や鎮痛の効果を目的に実施されていると考える。クリティカルケア領域における重症患者においては、不安や疼痛などのストレッサーはセカンドアタックを惹起する要因となる。解熱処置としてのクーリングの効果は限定的であるが、安楽や疼痛緩和によりセカンドアタック予防の効果も期待できるため、患者の状態を正しくアセスメントすることにより効果のあるクーリングが実施できると考える。 看護師として、「発熱したらクーリング」などの慣習的なケアや、事象が起きてから対応する対症看護ではなく、重篤化させないようにケアする予防看護の実践が重要である。提供するケアの意味と患者への効果をアセスメントした上で、予防看護として実施するクーリングにおいてはpros(賛成)の立場とする。
著者
清永 欣吾
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
まてりあ (ISSN:13402625)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.1453-1458, 1994-12-20 (Released:2011-08-11)
参考文献数
26
被引用文献数
6 6
著者
原田 大輔 草島 佳紀 菅野 憲 遠田 浩司
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.207-213, 2021-03-05 (Released:2021-04-19)
参考文献数
14

We developed lanthanoid-doped upconversion nanoparticles (UCNPs) and attempted to apply them as wavelength conversion devices to near-infrared luminescent sugar sensors. By doping yttrium fluoride with ytterbium and thulium, UCNPs (NaYF4: Yb/Tm) showing upconversion (UC) emission in the near-infrared region (800 nm) were synthesized. A receptor-sensitive near-infrared absorbing dye that increases the absorbance in the near-infrared region (700-800 nm) by complex formation with phenylboronic acid (PBA) as a sugar receptor was immobilized on core-shell type lanthanoid UCNPs covered with a silica layer. When fructose was added to a dye-immobilized core-shell type UCNPs dispersion solution containing a certain amount of PBA (1.0 × 10−3 mol L−1), the UC emission intensity at 800 nm increased with increasing the concentration of fructose (0 mol L−1 to 3.0 × 10−1 mol L−1). This result indicates that the internal filter effect between the dye and UCNPs is eliminated by a change in the absorption spectrum of the immobilized receptor-sensitive dye due to a competitive complex formation reaction accompanying the increase in the fructose concentration. And as a result, the UC emission intensity increased. It was found that when the fructose concentration was 3.0 × 10−1 mol L−1, the UC emission intensity increased by 14.6% compared to the case without fructose.
著者
水上 悦雄 山下 耕二
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.588-603, 2007 (Released:2009-04-24)
参考文献数
22
被引用文献数
1

This study examines a function of fillers as maintaining the speaker′s right to speak in conversation. We analyze the fillers appeared in the conversational data during the cooperative task in which 28 pairs of participants are engaged. In particular, it is investigated that how the hearer deals with the speaker′s fillers. The study reveals that while over 80‰ of fillers at the beginning of sentence and over 90‰ of fillers during the sentence are not interrupted by the hearer, there are some cases where the hearer does take the turn after the speaker′s fillers. Those cases seem to depend on the expression types of the fillers. The further analysis of the conversational sequences of the cases suggests that some of those hearer′s interruptions are inevitable or not improper. Even some “failure” cases, the hearer sees the filler as the indication of more talk to come from the speaker.
著者
中上 亜樹
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.48-62, 2012 (Released:2017-02-17)
参考文献数
20

本稿は,日本語の文法項目の習得を促すためにどのような指導が効果的かという疑問に対し,第二言語習得研究の理論や成果に基づいた指導法で授業を行うことで,従来の指導よりも高い効果が得られるかどうかを検証することが目的である。そのため,本稿では形容詞の比較を対象とし,第二言語習得研究の成果を基に提唱された指導法で,インプットに重点を置く「処理指導(Processing Instruction)」と,従来の口頭練習などのアウトプットに重点を置く産出中心の指導とを実践し,理解面,産出面でそれぞれの指導を受けた学習者の伸びに違いがみられるかどうか分析を行った。 その結果,処理指導では,対象項目について産出練習を行わなかったにも関わらず,従来の産出中心の指導と比べ,産出面を含め全体的に指導の効果が高かったことが明らかになった。このことから,学習者の認知プロセスに沿った指導を行うことは,より効率的な習得を導く助けになる可能性があることが分かった。