著者
林 薫 Shichijo Akehisa Mifune Kumato Matsuo Sachiko Wada Yoshito Mogi Motoyoshi Itch Tatsuya
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.214-224, 1973-12

Serial surveys on the ecology of Japanese encephalitis virus in Nagasaki area were made during from 1969 to 1971. In total, 11,229 hibernated female mosquitoes of Culex tritaeniorhynchus were caught in early spring every year for virus isolation, however it was unsuccessful. The significant increase of hemagglutination inhibition antibody possessing rate in the sera of slaughtered pigs in early spring was not found in these three years. Virus isolations from the vector mosquitoes in epidemic season were made from 1st to 26th of August in 1969, from 19th of July to 16th of August in 1970 and from 13th to 27th of July in 1971, respectively. Although the isolation efficiencies were not remarkably different at the highest level in a certain limited period in epidemic season during the years 1964 to 1971, the periods for JE virus isolation from the vector mosquitoes became shorter in the years from 1968 to 1971 than from 1964 to 1967. It was considered as one of the reasons that the number of the vector mosquitoes was smaller during the epizootic from 1968 to 1971 than from 1964 to 1967. Subsequently, it was noted that the encephalitis case sbecame to decrease in number in recent years.1969年,1970年及び1971年の3年間に越年コガタアカイエカ11,229個体,65プールについて哺乳マウス脳内接種法でウイルスの分離を試みたが,成績は陰性であった.流行期における蚊からのウイルスの分離は1969年は,8月1日から8月26日まで,1970年は,7月19日から8月6日まで,1971年は7月13日から7月27日までの期間であった.各年の捕集蚊からの日脳ウイルスの分離効率は最も高いときは1969年3.6,1970年4.8,1971年4.4であって,1968年以前の流行盛期のそれと大差がない.以上の事実は,最近3年間の野外でのコガタアカイエカのウイルス汚染が流行期の或る一時期には1968年以前と同じくらいに行われていることを示している.これに反して,蚊からのウイルスの分離期間が異常に短かくなっていることは,コガタアカイエカの発生,消長が最近3年間では著しく減少していることに,その一つの要因を求めることが出来る.これと平行して.患者数も減少し,1969年19名,1970年17名,1971年3名の届出患者があったにすぎない.
著者
陳 光斉 善 功企 周 国雲 笠間 清伸
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、大地震による崩壊土石の高速・遠距離運動のメカニズムを解明し、崩壊土石の運動速度や到達距離などの運動特性を予測する実用的な数値シミュレーションプログラムを開発することを目的とした。高速・遠距離運動の要因として地震による地上物体のトランポリン運動に着目し、その発生メカニズムを「卓球効果」モデルで解明できた。また、「多重加速モデル」を提案し、トランポリン効果を考慮した崩壊土石の運動特性や到達距離を推定する3次元DDA数値シミュレーションプログラムを開発することができた。さらに、地震による土砂災害連鎖モデルを確立し、新しい土砂災害リスクの評価手法を提案したので、大地震による予想外の甚大被害を低減することに貢献した。
著者
清野 純史 宮島 昌克 鈴木 崇伸 酒井 久和 五十嵐 晃 野津 厚 小野 祐輔 鍬田 泰子 古川 愛子 デュラン フレディ 奥村 与志弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011

線的・面的な拡がりを持つ線状地下構造物の地震被害は、都市型災害の嚆矢とも言える1923年関東大震災以降枚挙に暇がないが、その構造を3次元的な拡がりの中の点(横断方向)としてではなく,縦断方向の線や面あるいはボリュームとして捉え、その入力地震動から地震時挙動までを統一的に捉え、設計や地震対策へ結びつけることを目標に、地震被害の分析や各種解析に基づく詳細な検討を行った.
著者
高橋 良博 森山 敏文
出版者
駒澤大学
雑誌
駒沢社会学研究 (ISSN:03899918)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.101-116, 1994-03

本研究は、前報『仏教におけるイメージの研究I』(駒沢大学社会学研究第25号1993.3.)にひき続き、「遍」と呼ばれる単色の円図形の観察課題のもたらす効果を検討した。ここでは、刺激図自体が持つ効果を分析するため、「図形から思い浮かぶことや連想されるものを、思い浮かぶ順に記述する」という課題で、被験者に5分間の反応を求めた。その結果、120名の被験者から652の反応を得ることができた。これらの連想されたイメージの内容を、ロールシャハ・テストのスコアリングに基づき整理したところ、全体の数の上ではObj系の反応が第1位を占め、第2位がPlanet(天体)系、第3位がFood系、第4位がAbst系の反応であった。また、本研究に参加した学生は、経済学部経済学科、経済学部商学科、仏教学部禅学科、仏教学部仏教学科の各専攻の学生が含まれていたが、上記の連想されたイメージの内容の割合や反応の質は、統計的検討は行われていないものの、被験者の専攻学部・学科等により若干の特色が観察された。これは、実験の行われた時間等の要因の影響を考慮しなければならないが、一方では被験者の関心・興味等を含む、環境への認知のありかたが、図形から連想されるイメージの内容にも反映しているものと考えられた。
著者
長島 裕二 石崎 松一郎 松本 拓也 寺尾 依咲 堤 一磨
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

フグの毒化機構解明のため、薬物動態解析法によりトラフグにおけるテトロドトキシン(TTX)の体内動態を調べた。TTXはトラフグ消化管から速やかに吸収され、血漿中では一部血漿タンパク質と非特異的に結合し、ほとんどが遊離型として存在すること、TTXは毒化の初期段階として肝臓に取込まれるが、肝臓におけるTTXの初回通過効果は極めて小さいことが明らかになった。cDNAサブトラクション法で、TTX投与したトラフグの肝臓で発現増大したcDNA1136クローンからトランスポーター関連遺伝子11クローンを得た。
著者
逢坂 正彦 矢野 豊彦 三輪 周平
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

先進核燃料における簡素かつ低焼結温度を可能とする粉末冶金プロセスとして、アスベスト廃材由来の化合物を焼結助剤に適用する概念を構築した。MgO、MoまたはSi_3N_4を母材とした先進核燃料の基本的な作製条件を見出した。
著者
楠 威志 村田 清高
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.123-127, 1999-06-25
被引用文献数
1

喉頭全摘出術を受けた退院患者のQOLを検討するため, 近声会26人を対象にアンケート調査を行った.その結果を基にQOLに影響を及ぼす精神的, 身体的要因すなわち呼吸, 食事, 生活行動, 手術の満足度などについて検討した.無喉頭・気管呼吸者の愁訴の1位は嗅覚障害, 2位は「鼻がかみにくい」であった.両者共に鼻機能低下によるものであった.喉頭全摘出術を受けたことに対しての想いは, 回答者22人中21人が満足していた.その約半数以上が術後1年以内に満足を得ていた.現在の健康状態については回答者24人中3人が重複癌であった.喉摘後に胃癌(2人), 肺癌(1人)の手術を行っている.代用発声として食道発声が最も多く利用されていた.しかし, 咽頭全摘時年齢70歳以上の者は食道発声の習得できなかった.食道発声者の大多数は訓練し始めて1〜6ケ月の間に発声が可能となっていた.食道発声の利点については, 大多数が食道発声ができて, 自分自身に自身がもて外向的, 積極的になったと答えている.
著者
西尾 博之 橋本 俊司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.38, pp.70-71, 1997-07-29
被引用文献数
1

本県におけるコシヒカリの栽培は昭和59年頃より始まり、その作付面積は平成8年度には5, 846ha、品種別作付比率第1位となっている。しかしながら、生産される玄米の品質は、倒伏しやすいこと、あるいは近年の気象変動が大きい事などから、決して安定しているとは言い難い。特に、本県平坦地域で生産されるコシヒカリの品質に変動が大きく、栽培面積が拡大していく中で栽培適地の特定が必要となっている。一般に水稲の登熟適温は20〜25℃(松島ら1957、伊藤1979)といわれており、これ以上の高温では収量及び玄米品質に悪影響を及ぼすことが知られている。また一方では、コシヒカリは高温登熟性が高く、高温障害を受けにくいことが新潟農試(佐々木ら1984)において報告されているが、コシヒカリの最適登熟気温については明確となっていない。そこで、標高の異なる現地にポットを置き登熟気温を変化させ、玄米品質について検討した。
著者
壹岐 伸彦 星野 仁 高橋 透
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は社会安全性確保を志向し, 土壌中交換態Cd, Pbなど重金属の簡易迅速定量法を開発することを目標とした.まずチアカリックス[4] アレーンを土壌検液作成時に用い, 溶出時間を6時間から10分に短縮し, 迅速化した.次いでチオセミカルバゾン配位子を本検液に添加し, 生成した錯体をHPLCに供することで, 土壌マトリクス成分の影響を受けない, ppbレベルの高感度検出を可能とする高性能化学計測法を開発することに成功した.
著者
山崎 武 金子 公宥
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.213-219, 1973-01-25
被引用文献数
1

126人の大学男子運動部員(7種目)について筋力を測定した. 被検筋は肘関節屈筋群, 同伸筋群, 膝関節屈筋群, 同伸筋群である. それぞれの等尺性筋力はバネ式力量計を使い, 関節角90度の位置で測定した. その結果を要約すると次のようである. 1) 一般に, (i)屈筋力対伸筋力の比は肘の場合3対2, 膝の場合1対3であり, (ii)右側肢の筋力は左側肢のそれより多くの場合に1〜2kg高い. 2) 脚筋力(膝屈・伸両筋力を含む)の第1位は陸上(フィールド)で第2位が柔道であるが, 腕筋力ではこの順位が逆転する. 3) 陸上(短距離)選手は全ての筋力値において第3位を占め, 球技(ハンドボール, バレーボール, サッカー)と体操部は下位に属する. 4) 体操は陸上(短距離)と同様に, 体重当り筋力比が高いが, 一方柔道は(特に)体重当り脚筋力比が低い. 5) 下肢の場合, 筋力/肢部囲の比は, ほぼ脚筋力の運動部序列と一致するが, 腕筋力/肢部囲比では異なり陸上(短距離)とハンドボールが高い値を示す, という結果を得た.
著者
佐藤 理江
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

GRBは宇宙最初期における大質量星が放つ最期の輝きと考えられている。爆発で放射される相対論ジェットは膨大なエネルギーをもち、高エネルギー宇宙線の加速原としても有力視されている。しかし、どのような星がいかなる機構で相対論ジェットを形成するのかは未だ謎である。本研究ではすざく衛星、Fermi衛星と連携することで、これまで不可能であった広帯域・高感度の観測を実現し、GRB放射機構の解明に迫る。2008年6月にFermi衛星は無事打ち上げられ、これまでに順調に科学データを取得している。Fermi衛星で狙うGRBサイエンス(GeVガンマ線起源の解明など)の成果もあがっており、科学論文も発表されている。この中で私は、Fermi衛星の運用が始まってから。日本チームの一員としてGRB発生の監視当番や、データ解析を行ってきた。昨年9月に発生したGRBにおいては、Swift衛星によるX線、Fermi衛星によるGeV領域のデータを合わせた解析を行っている。X線からGeVガンマ線領域にわたる同時解析は初めての試みである。一方で私は、すざく衛星のデータを用いたブレーザーの解析も進めており、TeVブレーザー「1ES1218+304」や「SwiftJ0746」では、時間発展、多波長スペクトルから磁場の強さなどブレーザー領域における物理量を導いた。さらには、すざく衛星を用いて観測された5つのブレーザー天体と、Fermi衛星による同時期のデータをあわせた解析を行い、その結果を投稿論文としてまとめているところである
著者
李 忠烈 津野 幸人 中野 淳一 山口 武視
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.223-229, 1994-06-05
被引用文献数
4

土壌水分の減少に基因する萎れと枯死現象, 再給水による光合成速度の回復ならびに出液速度と根の呼吸速度との関係を明らかにしようとした. 韓国品種の黄金と短葉ならびに日本品種のエンレイを1991, 92年に同一のポットに播種し, 1本仕立てとして土壌水分がpF1.9になるよう灌水し, ガラス室内で生育させた. 出芽後56日から断水処埋を行い, 主茎葉の萎れと再給水による萎れの回復を観察した. 土壌水分の欠乏にともなって葉の萎れは下位葉より始まり上位葉に及び, 回復はこれとは逆の順序であった. 水分欠乏による主茎葉の枯死順位は萎れの傾向と同様であり, 土壌水分がpF3.5に達すると, 最下位葉より枯死が始まり, pF4.2で全ての主茎葉が枯死した. 断水処理後再給水し, その後3時間にわたって光合成速度の回復を経時的に測定したところ, 光合成の回復が良好な個体は, 根の呼吸速度が高く葉面積/根重比が小であった. 茎基部からの出液速度の経時的変化を調査した結果, 茎切断後2時間はほぼ一定値であった. 出液速度は細根呼吸速度と高い正の相関関係を認めた. また, 根のN%と細根呼吸速度との間には前報と同様に高い正の相関関係が得られた.
著者
米田 雅彦
巻号頁・発行日
1989-01-28 (Released:2009-04-14)

名古屋大学博士学位論文 学位の種類:理学博士 (課程) 学位授与年月日:平成1年1月28日
著者
井川 恭子 田浦 勝彦 楠本 雅子 千葉 順子 針生 ひろみ 小関 健由
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.554-563, 2003-10-30
被引用文献数
3

フッ化物配合歯磨剤の利用状況を把握し,う蝕予防に効果的な使用を推進するため,宮城県内の1〜3歳児,4〜5歳児,学童と彼らの保護者ならびに高等専門学校生の計2,188名(1〜56歳)を対象に質問紙調査を行った.「いつも歯磨剤を使用している」者は全体の66.2%で,そのうちフッ化物配合歯磨剤使用者の割合は,1〜3歳児で13.4%,4〜5歳児で34.0%,学童で52.3%,高等専門学校生で55.3%であり,保護者では66.5%であった.すべての群におけるフッ化物配合歯磨剤の使用率は,現状の同市場占有率より低かった.また,増齢とともに歯磨剤の1回使用量が増加し,歯磨き後の洗口回数も増加した.歯磨剤選択理由については「う蝕予防」が第1位,「フッ化物配合」が第2位と多かったが,1〜3歳児の使用していない理由は「誤嚥の心配」が第1位であった.今後の歯の健康づくりのためには,年齢を問わず,フッ化物配合歯磨剤をWHOに推奨されている適量を適切に使用することが望ましい.また,う蝕予防を推進するために,フッ化物配合歯磨剤の効果的利用に関する普及啓発の必要性が示唆された.
著者
林 祐太郎 郡 健二郎 小島 祥敬 佐々木 昌一
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

今回われわれは,外因性内分泌攪乱物質の中でもダイオキシンに注目し,男子の生殖器奇形児のダイオキシン曝露量の指標として,患児を出産した母親の血液中のダイオキシン濃度を測定し,ダイオキシンが男子生殖器奇形の一因となる可能性について分析・評価した。実際には尿道下裂の患児の母親5名の血液中のダイオキシン濃度を測定した(採血した平成12年の段階での患児の年齢は1歳1例,3歳3例,5歳1例)。測定した化学物質はポリ塩化ジベンゾパラダイオキシン(PCDD)分画7種類とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)分画10種類であった。ダイオキシンの分析は,電子捕獲検出器付ガスクロマトグラフ法によって行った。得られたダイオキシン各分画の濃度を,最近環境庁が発表した一般環境住民の血液中ダイオキシン異性体別濃度平均と比較した。またそれぞれの分画の構成比率についても比較検討した。なお地域の偏りを少なくするために対象の5名は3県から選択した。それぞれの分画の濃度の比較で,1SDを越える異常値を示す症例はなかった。またPCDD,PCDF,PCDD+PCDFについても1SDを越えるものは認められなかった。分画の構成比についての検討では,ダイオキシン類の中でも最も毒性が強いとされている2,3,7,8-TetraCDDの割合が,環境庁の示した一般人のデータの平均を3例で上回っているほかに特徴的な所見はなかった。以上,尿道下裂の発生の増加に,近年問題にされている環境ホルモンのダイオキシンが関与しているかどうかを調査する一手段として,母親の血中ダイオキシン濃度を測定したが,一般人の血中ダイオキシン濃度との有意差を認めなかった。
著者
森川 洋匡 平井 隆 山中 晃 中村 保清 山口 将史 赤井 雅也
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.505-510, 2004
被引用文献数
7

背景. 気管支異物は小児や脳に障害がある成人に多いとされている. 早期診断には詳細な問診に加えて積極的な検査が必要であり, 早期除去することが重要である. 目的. 気管支異物症例について症例の特徴, 検査所見, 除去方法について検討した. 対象. 1992年6月から2004年2月までの12年間に当科で経験した13例の気管支異物症例を対象とした. 結果. 年齢は1歳から86歳で12歳以下5例, 60歳以上7例と2峰性を示した. 男性12例, 女性1例と大半が男性であった. 症状は咳嗽, 喘鳴, 呼吸困難等がみられたが, 2例では自覚症状がなかった. 異物嵌頓部位は右7例, 左6例だった. 異物の種類としてはX線透過性の異物が9例, X線非透過性の異物が5例であり, 画像所見においては異常なし3例, 異物が確認できた症例が5例, 肺炎像1例, 無気肺像2例, 対側の肺野透過性亢進2例であった. 異物の除去に用いた鉗子はバスケット鉗子4例, ワニ口鉗子3例, ラリンジアルマスク+フォガティカテーテル2例, 生検鉗子2例だった. 結論. 気管支異物の診断には詳細な問診が重要である. 咳嗽, 呼吸困難があり胸部X線上片側過膨脹, 無気肺, 閉塞性肺炎などがみられる症例では気管支異物の可能性を考えて気管支鏡等を含めた積極的な検査が必要であると考えられた.
著者
齋藤 友博
出版者
国立成育医療センター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

2316名の高校生の24,071人の生活習慣病の既往歴調査データから家族の性・年齢別虚血性心疾患既往割合を算出し、そのロジスティック解析から家族の性、年齢の違いによる既往割合への影響を定量的に検討した。性差のオッズ比は1.61、年齢差のオッズ比は1.07で性差、年齢差とも全年齢層にて有意であったが、70歳未満で双方とも大きく、そのリスク因子としての家族歴評価では性.年齢を考慮すべきであることが示された。家族の年齢のみならず、家族歴陽性者が女性家族である場合にはより大きなリスク要因として評価すべきであることを初めて明確に指摘した。次いで生活習慣病の家族歴の再現性を検討した。虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病では、家族の性および年齢を定量的に考慮した方法を考案しその有用性を検討した。1584名の高校生の17,127人の両親、祖父母、おじおばの虚血性心疾患既往歴のロジスティック解析から家族の性、年齢の違いによるオッズ比1.60および1.06を得た。性差オッズ比年齢のオッズ比の8乗に近く、性差は年齢8歳の違いに相当することになる。そこで、各家族既往歴の高校生への負荷を各家族毎に(30/リスク年齢)の4乗で計算した。リスク年齢は10歳区分発症年齢または未発症では現在または死亡年齢である。年齢別既往割合は年齢の4乗に最も近いので4乗を用いた。年齢30歳未満は30とした。ここで女性家族ではリスク年齢から8歳を減じた。各家族のリスク値を両親では2倍、おじおばは父母方別に2人相当とし、祖父母を加えて12で除した。この家族リスク値と(総コレステロール-HDLコレステロール)/HDLコレステロールで定義される高校生の動脈硬化指数とのオッズ比をみたところ、家族歴リスク値を中央値で2分すると1.50、最低4分位と最高4分位では1.84といずれも有意となった。従来の家族歴評価法よりハイリスク高校生の把握能が優れていた。