著者
坂井 建雄 澤井 直 瀧澤 利行 福島 統 島田 和幸
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.337-346, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
19

要旨:1) 明治5年の学制から始まる医学教育制度と明治7年の医制から始まる医師資格付与制度の変遷をたどり,現在にまでいたる医学校の量的・質的な発展の過程を7つの時期に分けた.2) 明治初頭には従来開業の者にも申請により医師免許が認められた.医師免許を得るために医科大学ないし専門学校を卒業する途と開業試験に合格する途が大正期まで併存し,基準が不統一であった.3) 戦前の医学校は無試験で医師免許を得られる特典や,専門学校や大学への昇格を目指してきたが,帝国大学,医科大学,専門学校という異質なものを含んでおり,医学教育の水準は多様であった.4) 戦後に行われた医師国家試験の導入と新制大学の発足により,医学教育の質は均質化し,一定の質が保証されるようになった.5) 医学校の量的な拡大は,明治20年以前の変動期を除くと,大正8年からの12年間,昭和14年から終戦までの7年間,昭和45年からの10年間に集中しており,それ以外の時期では安定していた.
著者
大庭 三枝
出版者
一般財団法人 アジア政経学会
雑誌
アジア研究 (ISSN:00449237)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.68-87, 2020-10-31 (Released:2020-11-19)
参考文献数
49

This paper aims to identify the various phases of historical issues between Southeast Asia and Japan. Japanese military rule during World War II (WWII) in Southeast Asia lasted about three years. Although they ruled differently in each area, life under Japanese rule was harsh in general for the people and communities in Southeast Asia. Japanese rulers exerted control and cracked down on anti-Japanese factions, even slaughtering them in some cases. They also economically exploited the local communities, which led to serious economic damage including starvation. In addition, they mobilized a great number of local people as forced labor (romusha), comfort women (ianfu), and auxiliary soldiers/auxiliary service personnel (heiho).In comparison with other Northeast Asian countries like South Korea and China, the negative legacy of Japanese rule is currently not politicized in Southeast Asian countries. However, not long ago, wartime experiences caused by Japanese imperialism were serious political issues between these countries and Japan. This paper shows how historical issues between Southeast Asia and Japan have been politically dealt with from the 1950s and the 1990s; it also examines Japan’s treatment toward these issues and its problems then and now.The 1950s and 1960s saw Japan and Southeast Asian countries conclude Japan’s provision of reparations and sub-reparations, which had lasted almost 20 years. However, Japanese reparation did not completely resolve the friction arising from the legacy of Japanese imperialism during the WWII; in the post-WWII era, human rights had begun gaining traction as a global code of norms, and demands for “war responsibility” and “war compensation” had been rising since the 1970s. Against this backdrop, many Asian peoples who suffered under Japanese imperialism began to raise their voice, including Korean women who were taken in as comfort women. Similar demands for compensation also came from the Philippines and Indonesia in the 1990s with varying degrees of success. The Asian Women’s Fund to compensate and restore dignity to former comfort women was relatively successful in the Philippines, but did little for those in Indonesia. On the other hand, the Tokyo Local Court, Tokyo High Court, and The Supreme Court had rejected a law suit by the group of former comfort women in the Philippines who had demanded the Japanese government to compensate them. The Japanese government also did not respond to calls for compensation by ex-auxiliary soldiers/auxiliary service personnel in Indonesia.These days, Southeast Asian countries avoid friction with Japan, maintaining a good relationship with Japan in order to balance the rising China. However, as the 21st century progresses, the mainstreaming of human rights continues to advance. “War compensation” is being taken more seriously than before. Japanese people should recognize that they carry the negative legacy and “war responsibility” of having imposed suffering on local peoples and communities in Southeast Asia.
著者
中根 俊成 安東 由喜雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1571-1578, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
22

アセチルコリン(acetylcholine:ACh)は中枢・末梢両方の神経系で作用する神経伝達物質である.アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor:AChR)もまた中枢・末梢両方の神経系に存在する.これまでAChRに対する自己抗体は重症筋無力症における筋型AChR(神経筋接合部)に対する自己抗体が最も知られており,抗体介在性の自己免疫疾患の代表として疾患の病態解明が進められてきた.今回,我々はそれ以外の2種類のムスカリン性AChR(muscarinic AChR:mAChR)とニコチン性AChR(nicotinic AChR:nAChR)に対する抗体の臨床研究の現況について,脳炎・脳症の視点から触れた.特に後者では,自律神経節に存在する神経型nAChR(本稿ではこれをganglionic AChR(gAChR)と称する)における広範な自律神経障害と自律神経系外の症状としての中枢神経症状と内分泌障害について述べた.
著者
木村 裕貴
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.93-106, 2022-10-31 (Released:2022-11-15)
参考文献数
21

本稿では,1990年代以降に結婚に関する意思決定を行った1960年代から1980年代出生コーホートの女性を対象に,稼得力が結婚形成および配偶者選択に及ぼす影響の変化を検証する.これを通じて,男性の経済的地位低下と女性の両立見込み増大のいずれが女性の稼得力と結婚行動の関連を変化させる主要因なのかを明らかにすることが本稿の目的である.稼得力として複数の指標を用いた分析の結果,1960年代から1970年代コーホートにかけて,女性の稼得力が結婚形成に及ぼす影響が負から正へと転じた一方,1970年代から1980年代コーホートではほとんど変化がなかった.配偶者選択に対する影響はいずれのコーホートでもおおむね正であるが,1960年代から1970年代コーホートにかけて効果が増大した.以上の結果は,男性の経済的地位の低下が女性の稼得力と結婚の関連を転換させる主要因であることを示している.
著者
布施 養善
出版者
一般社団法人 日本微量元素学会
雑誌
Biomedical Research on Trace Elements (ISSN:0916717X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.117-152, 2013 (Released:2013-10-29)
参考文献数
222

Iodine is a chemical element with atomic number 53 and one of the most valuable natural resources among the halogen elements. One third of all iodine in the world is produced in Japan. Japan has been regarded as an iodine-sufficient or even excessive country because Japanese has been consuming traditionally large amounts of iodine largely through the intake of seaweed. However, there is no national data on iodine nutrition and its relation to diseases. In this review, a variety of aspects of iodine and also iodine status in Japan is discussed.
著者
三橋 亮太 水野 壮 佐伯 真二郎 内山 昭一 吉田 誠 高松 裕希 食用昆虫科学研究会 普後 一
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.410-414, 2013-12-25 (Released:2013-12-28)
参考文献数
10
被引用文献数
3

福島県では福島第一原子力発電所事故が発生してから,イナゴの放射線汚染を懸念してイナゴ食(イナゴを採集し,調理して食べること)を楽しむ人が減少した.そこで2011年,2012年に福島県各地で採取したイナゴに含まれる放射性セシウムを測定したところ,134Csと137Csの合計放射能濃度は,最高で60.6 Bq/kgであり,2012年に設定された食品中の放射性物質の新たな基準値である100 Bq/kgを下回ることが示された.さらに,イナゴは一般的な調理過程を経ることによって,放射能濃度が15.8 Bq/kg以下,未処理時の1/4程度まで低下することが示された.
著者
藤本 悠吾 中川 慧 今城 健太郎 南 賢太郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.FIN-029, pp.73-80, 2022-10-08 (Released:2022-10-01)

機械学習を用いた株価予測は実務的にも学術的にも重要であり、多くの研究がおこなわれている。それらのうち有望な方法の一つとして、株式市場のダイナミズムを考慮し、高い予測力と解釈可能性を兼ね備えた Trader-Company (TC) 法がある。一方、TC 法をはじめとする機械学習による株価予測手法は、点推定であり、その予測の不確実性が考慮できていないため、実務的な応用に際して懸念が生じる。そこで本研究では、Uncertainty Aware Trader-Company Method (UTC) 法という高い予測力を持ち、予測の不確実性を定量化できる株価予測手法を提案する。UTC 法は、TC 法を不確実性の推定を可能にする確率的モデリングと組み合わせることにより、不確実性を捉えながら、TC 法の予測力と解釈可能性を維持できる。理論的にも、UTC 法による推定分散が事後分散を反映し、かつ TC 法に対して予測の悪化につながるバイアス等を与えないことを証明できる。さらに、人工および実際の市場データに基づいた実証分析を行い UTC 法の有効性を確認した。人工データでは、予測が困難な状況や予測対象の分布の変化を UTC 法が検出できることを確認した。実際の市場データを用いた分析では、UTC 法による投資戦略がベースライン手法よりも高いリスク・リターン比を達成できることを示した。
著者
中山 優
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.149-157, 2013-03-05 (Released:2019-10-18)
参考文献数
17

スケール不変性は高エネルギー物理から物性理論まで幅広い応用がある対称性である.特に相対論的な系では,スケール変換は共形変換と言う時空の各点でのスケール変換を許すような拡張ができる.数学的には理論のスケール不変性は共形不変性を意味しないのであるが,両者の違いを巡って長年議論が交わされてきたようである.この解説では二つの対決を通して,いかにスケール不変性が共形不変性に拡張されるかを最近の活発な研究成果を踏まえて議論したい.
著者
松原 優
出版者
日本生涯スポーツ学会
雑誌
生涯スポーツ学研究 (ISSN:13488619)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.21-28, 2023 (Released:2023-06-22)

In Japan, it is said that Okinawans are very enthusiastic in their support for the Okinawan national high school baseball teams in the National High School Baseball Championship, commonly known as Summer Koshien (hereinafter referred to as "Koshien championship"). In fact, when the Okinawa national teams are competing, it is reported that "the number of automobiles on the road reduces," "some individuals take a day off from work," and "crowds of people gather in front of televisions set up in public locations." On the other hand, there have been no attempts to survey the people of Okinawa prefecture and clarify the factors of this phenomenon, and academic understanding and clarification of this phenomenon have not progressed. Therefore, this research aims to understand the emotions and behaviors of the Okinawan people in terms of their support for the Okinawa national teams in Koshien championship from the viewpoint of sport consumer behavior, taking into account historical and cultural backgrounds. The results suggest that while some factors of Okinawans' support for the Okinawa national teams can be adequately explained by previous research on sport consumer behavior, there are also areas of significant divergence, and a major factor explaining the uniqueness of the divergence is the historical and cultural background, including attitudes toward the rest of the regions.

27 0 0 0 OA 日本近世造船史

著者
造船協会 編
出版者
弘道館
巻号頁・発行日
vol.附図, 1911
著者
宇野 彰 春原 則子 金子 真人 粟屋 徳子 狐塚 順子 後藤 多可志
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.267-271, 2018-09-30 (Released:2019-10-02)
参考文献数
21
被引用文献数
3 1

発達性ディスレクシアでは, 読みだけの障害例は 40 年近く報告されていない。音読だけでなく書字にも障害が認められることから発達性読み書き障害と翻訳されることが多い。その背景となる認知障害について, 英語圏での音韻障害仮説を中心とする報告および他言語における共通点と相違点について解説し, 日本語話者の発達性ディスレクシア 84 名のデータに関して解説した。その結果, 日本語話者の発達性ディスレクシア児童・生徒の 65% 以上は複数の認知障害の組み合わせで生じており, 音韻障害のみが背景と思われる群は 20% 以下であり, 音韻障害のない群は 20% 以上とむしろ音韻障害を認めない発達性ディスレクシア例が多いことが分かった。
著者
加藤 泰史 高木 駿 馬場 智一 小島 毅 納富 信留 建石 真公子 芝崎 厚士 後藤 玲子 杉本 俊介 田坂 さつき 柳橋 晃
出版者
椙山女学園大学
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本総括班は、「領域運営調整会議」「ジェンダー学会議」「評価会議」を主導的に開催することで、本領域研究を適切に遂行できる環境と条件を整えると同時に、Web上にHPを作成して研究成果を各計画研究班で共有できるように工夫したりその都度社会に向けて発信したりできるようにする。その際に、各計画研究代表者の役割を明確にし、特に特任助教や特任研究員等の採用といった若手支援を適切に遂行できるように促す。また、年度毎の論文集の企画や『講座 尊厳』、さらに社会へのアウトリーチ等の企画にも責任を持つ。
著者
小川 莉奈 山西 良典 辻野 雄大 吉田 光男
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.11-18, 2022-08-25

ソーシャルメディア上には多くのイラストが能動的エンタテイメントとして投稿されており,様々な画風を分析する上での貴重なデータとして扱うことができる可能性がある.しかしながら,ソーシャルメディア上で投稿された画像は構造化されておらず,画像データベースとしてそのまま用いることはできない.本稿では,整理されていない画像集合を整理する作業を 2 つのゲームに分けることで,楽しく整理する手法を提案する.データセットを構築するための「検定ゲーム」と作成したデータセットにアノテーションを加えるための「パーティゲーム」の 2 つに分けた.整理されていない画像集合とし#ghibliredrawのタグを用いた描き変えイラスト画像を対象とした.