著者
古屋 良一 馬場 一美 木野 孔司 船登 雅彦 阿部 有吾
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

我々は、歯を接触させている習慣(TCH)が顎関節症(TMD)の寄与因子であると考えている。本研究の目的は、TCH測定システムを開発し、TCHの頻度、TCHとTMDの関係およびTCH是正システムの効果を調査することである。TMD患者と健康な人について携帯電話の電子メール機能を利用したTCH測定システムを使用してTCHを評価した。TMD患者におけるTCHの頻度は、健康な人より約5倍高かった。
著者
深井 貴明
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

近年、様々な分野でデータが爆発的に増加し、これを共用 HPC 環境で計算処理する需要が増えている。しかし、現在の共用 HPC はユーザーが管理者権限を持つこと (以後 root 化) ができないため、クラウド環境と比べユーザーによるソフトウェアの導入やシステムレベルの最適化が困難である。これまで 共用 HPC 環境での完全な root 化はセキュリティと性能のトレードオフがあり実現されていない。本研究ではこのトレードオフを解決するシステムを軽量ハイパバイザというシステムソフトウェアを基に設計し、共用 HPC 環境の性能を維持しつつ安全な root 化の実現する。
著者
高山 芳幸 横山 敦郎 齋藤 紘子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

まず骨質を表すパラメータ(皮質骨厚,海綿骨のヤング率)を種々変化させた有限要素解析を行い,骨の最大ひずみを評価値として応答局面を作成した.次に,インプラントのサイズを最適化手法を用いて検討したところ,海綿骨のヤング率が0.5GPa以下の場合,インプラントのサイズを大きくしても生理的なひずみの限界値を超え,インプラント先端部周囲の海綿骨に最大歪みがみられた.しかし,CTデータから構築したモデルによる解析では,最適化計算の結果と比較して,歪みの値はやや低く,最大相当歪みの現れる位置が異った.これは,CTから作成したモデルでは,骨の物性が部位によって大きく異なっていたことが原因と考えられた.
著者
山川 修 黒田 祐二 伊藤 雅之
出版者
福井県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

学習者の内部状態が,フレドリクソンのポジティビティとネガティビティの比率(P/N比)で測定をすることで,安定的に測定できることがわかった.そして,P/N比が高い(1を越える)学生と低い(1を越えない)学生の間で学習行動に違いが見られることがわかった.さらに,ポジティブ心理学が教えるポジティビティをあげる取組を学生に実行してもらったところ,ポジティビティがほとんど全員で向上していることがわかった.ただ,この結果は,この授業内の学習コミュニティがうまく機能していた結果とも考えられるので,取組とポジティビティ向上の因果関係は,今後のさらなる研究が必要である.
著者
原田 栄津子
出版者
宮崎大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

亜熱帯地方の広い範囲で自生し濃厚な旨味をもつ高級食材である亜熱帯性食用担子菌オオシロアリタケ属菌は人工栽培化が強く望まれている食用きのこの一つである。このきのこは、キノコシロアリと共に生活環を維持している共生菌であり、さらにきのこ中の生理活性化合物も注目されている薬食用きのこでもある。この独自に進化した生態系を持ち、且つ創薬の可能性も兼ね備えたオオシロアリタケ属菌研究の最初のステップとして、国内外に散在するオオシロアリタケを採取し、その子実体や菌薗を多角的分析する。得られた成果により世界初の人工栽培化を目指し、最終的にきのこと昆虫の絶対的相利共生の謎に迫る。
著者
清野 豊 大橋 宣子 河野 達郎
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究ではラットを用いて、βアラニンの脊髄後角における電気生理学的実験を行った。βアラニンが脊髄後角において抑制性シナプス伝達に関与していることを突き止めた。またこの作用には、濃度依存性があることをつきとめた。関与している受容体についても調査を行い、βアラニンはClイオンチャネルを介して作用する点、GABAA受容体には関与せず、グリシン受容体を介している点を明らかにした。
著者
呉座 勇一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年度は3年目に当たる。2006年5月に鎌倉遺文研究会の例会で報告した内容を基に作成、投稿した論文が『鎌倉遺文研究』第19号(2007年4月)に「論文」として掲載された。また2006年12月に千葉歴史学会中世史部会の例会で報告した内容を基に作成、投稿した論文が『千葉史学』第50号(2007年5月)に「研究ノート」として掲載された。2007年11月には、史学会第115回大会の日本中世史部会シンポジウム「『人のつながり』の中世」において、「国人・侍の一揆とその歴史的展開」という報告を行った。この史学会報告では、国人・侍の一揆と、被官・下人・百姓といった身分の人々との関係について考察した。一揆契状をはじめとする領主間協約に見える、被官・下人・百姓に関する規定(人返など)を主な検討対象とした。第1章では、南北朝期の一揆契状は軍事同盟であり、被官・下人・百姓に関する規定は基本的に存在せず、松浦地域の一揆契状は例外と捉えるべきであると論じた。第2章では、国人当主が近隣領主と提携し「衆中」(国衆連合)へ結集していく一方で、侍層は「家中」(被官の一揆)へ結集していった結果、国衆連合は各々の「家中」における政治的・軍事的中核たる被官層への対応を重視したことを明らかにした。第3章では、国人一揆は被官・中間・下人という直属家臣までしか統制できず、百姓統制を広範に展開した戦国大名とは権力としての質的差異があったことを指摘した。また一揆契状の原本の閲覧を行った。たとえば新潟県立歴史博物館では、「色部家文書」所収の起請文を閲覧した。享禄4年8月20日付の色部氏宛ての起請文は3通(鮎川氏・小河氏・本庄氏)存在するが、紙の大きさが一致せず筆跡も異なるようである。日付の書き方がまちまちであることを考慮すると、同時に作成されたわけではないと考えられる。一堂に会して一味神水を行ったという状況は想定しにくいと言えよう。
著者
呉座 勇一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度は3年目に当たる。論文「隅田一族一揆の構造と展開」を『ヒストリア』221号に発表した。本論文では隅田八幡宮に集う隅田一族による祭祀の運営方法を検討した。その結果、従来は一揆の中核とみなされてきた葛原氏は、他氏に超越する惣領家的存在ではなく、小西氏や上田氏などと結んで集団指導体制をとっていたことを示した。また阿部猛編『中世政治史の研究』(日本史史料研究会)に論文「室町期武家の一族分業一沼田小早川氏を中心に一」を寄稿した。沼田小早川氏を主な事例として、室町期の武家領主の「家」が、惣領の権限を子息・兄弟に分散させる組織構造になっていたことを解明した。そして、この体制は戦争に対応するための危機管理対策の所産であったことを説いた。加えて、『東京大学史料編纂所研究紀要』21号に論文「乙訓郡『惣国』の構造一惣国一揆論の再検討一1を発表した。長享・明応年間の乙訓郡「惣国」の具体的・実証的な分析を通じて、議論が複雑に錯綜している惣国一揆の研究史を解きほぐすことを試みたものである。すなわち、国衆の地域的連合である「惣国」と、百姓層をも包摂した「惣国一揆」の区別を提唱した。学会活動としては、2010年6月に、日本史研究会中世史部会にて「国人一揆研究の成果と課題」という研究史整理の発表を行った。一揆研究においては、勝俣鎮夫氏による一連の一揆研究などを契機として、社会史的な一揆論が隆盛した。しかし荘家の一揆や土一揆などの研究が社会史的手法によって進展する一方で、国人一揆は専ら地域権力論や在地領主研究の題材として扱われた。この問題の解決策として、「領主制論」的な問題関心から離れて、一揆論的な視角から国人一揆を研究する必要性を訴えた。なお報告内容の要旨は、『日本史研究』580号に掲載された。
著者
大村 達夫 藤井 学 三浦 尚之 渡辺 幸三 佐野 大輔
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は、沿岸域のプランクトンが環境からカキにノロウイルスを運んでいるという仮説を立てて、その検証を行った。カキを養殖している松島湾内の複数地点において動植物プランクトンとカキを採取した。動物プランクトンと植物プランクトンを顕微鏡下の形態観察に基づいてソーティングし、それぞれからノロウイルス遺伝子を検出および定量した結果、一部サンプルからノロウイルスが高い濃度で検出された。動物プランクトンの個体数の割合が高い地点のサンプルほど、ノロウイルス濃度が低下していた。また、カキ中腸線のDNAメタバーコーディング解析を行い、カキが動物および植物プランクトンの双方を捕食していることも確認された。
著者
間島 慶
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

機械学習アルゴリズムを適用することによって、脳活動から被験者の知覚・認知内容・運動意図などを読み出すことが可能になっている。この技術は脳情報デコーディングと呼ばれ、脳を介した情報通信技術の基盤にもなっている。しかし、既存の多くの機械学習アルゴリズムは、入力されるデータの次元数が数万以上になると、膨大な計算時間を要するため、実質適用することができない。そこで、本研究では、近年提案された「量子インスパイア計算」を用いて、機械学習アルゴリズムの高速化を試みる。
著者
松田 美和子 鈴木 恵美子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ヒトが生まれつき体内でビタミンCを合成できない体内状態を模倣するため、ビタミンC生合成能を失ったGNL/SMP30ノックアウトマウスを用いた。ビタミンC欠乏が不安症・うつ病の誘発リスクとなる可能性を検証した。心の病に影響する成育環境に着目し、仲間が常に同じ安定群または仲間がたえず入れ替わる不安定群を比較した。ビタミンC欠乏では、ビタミンCを十分与えた期間に比べて、不安様行動とうつ様行動が悪化した。社会的安定群は新規ストレッサーに脆弱であり雄で顕著だった。社会的不安定群は血中グルタチオン濃度が有為に低かった。本研究の結果から、ビタミンCは精神疾患の予防に重要であることが示唆された。
著者
山本 融
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

精神神経疾患は誰もが罹患しうるコモンディジーズであり、その克服は重要な課題である。我々は膜タンパク質MDGAの欠失が、各種精神神経疾患に通底する分子病態であるシナプス形成バランス異常を引き起こすことを明らかにしている。本研究ではMDGAの高次脳機能統御における役割を明らかにするするとともに、こうした異常を改善する薬剤を探索することにより、精神神経疾患の新たな創薬シーズを獲得することを目的とする。
著者
百瀬 弥寿徳
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は飲酒時の心拍数増加作用について、アセトアルデヒドは心臓洞房結節ペースメーカー細胞を直接活性化し発現するとの仮説を基に、アセトアルデヒドの心拍数増加作用を明らかにすることを目的とした。アセトアルデヒドは交感神経終末よりカテコールアミンの遊離作用を持つことが知られているが、単離細胞標本では作用部位がpost-synaptic membraneに限局されることから、アセトアルデヒドの心拍数への効果が明らかにされると考える。本研究ではウサギ心臓洞房結節ペースメーカー細胞を単離し、アセトアルデヒドが陽性変時作用を有することを確認した。次にパッチクランプ法によりIfチャネル、T-type Caチャネル、Na/Ca exchange currentsを計測してアセトアルデヒドの陽性変時作用機序を検討した。その結果アセトアルデヒドはT-type Caチャネルを活性化することが明らかとなった。またL-type Caチャネルも著明に活性化した。このことは細胞内Ca濃度の増加がアセトアルデヒドによって起こりペースメーカーの発現に促進的に働くことが示唆された。またIfチャネル、Na/Ca exchange currentsに対してアセトアルデヒドは明らかな影響を及ぼさなかった。以上の研究結果は、アセトアルデヒドがこれまで考えられた交感神経終末からのカテコールアミンの遊離作用に起因する心拍数の増加作用以外に、直接洞房結節ペースメーカー細胞に作用し陽性変時作用を起こすことを明らかにした。その機序はT-type Caチャネルの活性化と細胞内Ca濃度の増加に起因するものと結論した。
著者
有馬 恵子
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

本研究は、京都市の鴨川を挟んで上京区と左京区にまたがる出町エリアを調査地として、都市経済活動の内部において、いかに日常的な経済的・文化的実践が生起し、社会関係や都市空間に働きかけているのかを検討することを目的としている。具体的には、軒先や土間、シェア空間などの非定型空間での経済的・文化的活動、川や橋で日々実践される公式・非公式な活動に注目する。研究をとおして、地域・都市と芸術・文化に関する研究を横断的・批判的に検討し、日々の生活に埋め込まれた日常的実践の実像をあきらかにする。
著者
尾崎 和海
出版者
東邦大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究計画では、原生代の大気組成(酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4))を制約し、それらを規定する物質循環についての理解を得るための基礎的研究を行う.具体的には、研究代表者が開発を行ってきた海洋物質循環モデル(CANOPS カノープス)を大気化学や陸域風化作用を考慮した地球システムモデルへと高度化し、地質記録を制約条件とした統計的手法を適用することで、原生代と呼ばれる地質時代(約25~6億年前)の地球大気組成の進化を物質循環に基づいた理論的見地から解明することを目指すものである.
著者
神崎 宣次 石川 伸一 森山 花鈴 服部 宏充 太田 和彦 斉藤 了文 篭橋 一輝 杉本 俊介 鈴木 晃志郎
出版者
南山大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究の目的は次の二つです。第一に、人と各種サービス、技術、自然などの多様な要素の複合体としての都市を、個別の要素に着目するのではなく、それらの複合性に焦点を置いて分析し、都市の現在の問題と今後のあるべき姿を明らかにします。具体的には食、レジリエンス、情報、経済、そして倫理の観点を相互に連関したものとして分析します。第二に、このような学際的研究を遂行するために必要な研究手法を開発するため、プロジェクト組織を工夫することを含めた方法論のパッケージとして本研究をデザインしています。そして、都市を対象とした研究をそのモデルケースとして実施することで、方法論としての有効性を示します。
著者
木下 祥尚
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

局所麻酔薬の作用機序に関して、これまで複数の仮説が提唱されてきた。しかし、いずれの仮説も矛盾を含んでおり、結論は得られていない。近年、申請者らは「麻酔薬はラフトの形成を阻害することで、チャネルが活動する場を奪い、神経伝達を阻害する」というラフトを基盤とした仮説を提唱している。しかし、細胞膜に存在するラフトをありのままに標識することは困難であり、ラフトを指向した研究は立ち遅れたままである。本研究では 申請者らが開発した脂質の分布を高精度で追跡できる蛍光プローブを利用し、麻酔薬が脂質ラフト形成に及ぼす影響を調査する。本実験により、脂質ラフトを基盤とした、麻酔作用発現の機序に関するモデルを提唱する。
著者
橋本 健志 四本 かやの 児玉 豊彦 田中 千都 平良 勝 大畠 久典 北岡 祐子 藤本 浩一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、自殺未遂歴および希死念慮がある精神障害者に対してリスクをマネージメントしながら、就労支援を行う特化型就労支援プログラムを開発しその有用性を検討することを目的に実施した。このプログラムは、医療機関と連携した特化型就労支援窓口と携帯メール自動配信サービスから成り立っている。K市内の就労支援事業所と精神科診療所外来作業療法部門の2箇所で医療機関と連携した特化型就労支援窓口を開設しその有用性を検討した。さらには、希死念慮等の精神症状を有する精神障害者に対して携帯メールを配信するプログラムを開発し、それによって希死念慮が低下し、社会資源を積極的に利用する者が有意に増加したことを報告した。
著者
渡辺 志朗 藤田 恭輔
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

マウスにリトコール酸(LCA)を投与することによって誘導される実験的胆汁うっ滞性肝傷害が、漢方薬である防己黄耆湯(BOT)を投与することによって軽減されることがわかった。このとき肝臓において、LCAの毒性を弱める酵素である水酸化酵素(cyp2b10)や硫酸抱合化酵素(sult2a1)の発現量が、BOTの投与によって増加していることもわかった。これらのことから、BOTはprenane X 受容体(PXR)をはじめとして、constitutive androstane受容体 やvitamin D受容体などの核内受容体の活性化を介して、上記の胆汁酸分解系酵素の発現誘導する可能性が示された。
著者
石井 剛志 新井 映子 中山 勉
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

茶ポリフェノールの渋味の発現機構を生体成分との分子間相互作用の観点から解き明かすことを目的として研究を実施した。タンパク質(カゼイン)の凝集能やリン脂質膜への結合能を評価するための実験系を構築し、味認識装置やヒト官能試験の結果を基に解析・改良することで、新しい渋味の評価法を開発した。これらの評価法を用いてカテキン類やテアフラビン類の渋味特性を解析し、茶ポリフェノールの渋味の発現機構を提案した。