著者
今井 久登
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

これまでの展望記憶研究では,事象ベースの展望記憶において手がかりが呈示されることを自明の前提としてきた。このため,日常場面では,あてにしていた想起手がかりがないことをしばしば経験するにも関わらず,その際の不随意的な想起については研究されてこなかった。そこで本研究では,事象ベースの展望記憶において,予想していた外的想起手がかりが呈示されなかった場合の不随意的想起の性質を解明することを目指した。そのためにまず,記憶日誌法を用いて日常場面における「し忘れ」経験を集め,その特徴を分析した。その結果,このような想起の頻度は全体の約10%であり,注意拡散やリラックス状態で生じやすいということが明らかになった。これらの特徴は自伝的記憶の不随意的想起と同様であることから,手がかりなしでの不随意的想起のメカニズムは,展望記憶と自伝的記憶とで共通であろうと推測された。次に,事象ベースの展望記憶課題において想起手がかりを呈示しないという,これまで行われてこなかった新たな条件を設定した実験研究を行ったところ,展望記憶課題の遂行特徴が,時間ベースの展望記憶における時計チェック曲線と類似したJ字型になることが分かった。この結果は,事象ベースの展望記憶と時間ベースの展望記憶は別個のシステムではなく,手がかりなしで展望記憶課題を自発的に想起するというプロセスを共有していることを示している。また,展望記憶課題の遂行成績とワーキング・メモリ容量の個人差の間に相関がなかったことから,展望記憶の想起には必ずしもワーキング・メモリを必要としないということも明らかになった。これらの成果を踏まえ,処理コンポーネントの枠組を援用して時間ベースの展望記憶と事象ベースの展望記憶との関係について整理するとともに,既存のモデルを拡張して,手がかりなしでの展望記憶の不随意的想起をも含んだ動的で一般性の高い展望記憶モデルを提示した。
著者
佐藤 慎哉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ホルモン治療に抵抗性の前立腺癌に対する治療法は限られており、新たな治療法が求められている。私達は、DNAの塩基配列を変えずに遺伝子の働きを変えるエピゲノム機構を利用したホルモン治療抵抗性前立腺癌の増殖抑制を目指した。エピゲノム機構を制御するHDAC阻害剤(OBP-801)をホルモン治療抵抗性前立腺癌細胞に投与したところ、増殖抑制が確認された。さらにOBP-801は同じくエピゲノム機構を制御するマイクロRNA(miR-320a)の発現上昇を介して、前立腺癌の増殖に重要なアンドロゲン受容体の発現を抑制した。以上より、HDAC阻害剤はホルモン治療抵抗性前立腺癌に対する有望な治療薬と考える。
著者
高木 麻衣子
出版者
東京福祉大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

筋電計を用い、初心者と熟練者のピアノ奏法の「見える化」を行った。素材として、シャンドールの5つの基本動作(自由落下・スケール・回転・スタッカート・突き)を使用し、初心者30人、熟練者30人の計測を行い、一定の結果を得ることができた。研究以前の予測とは違った結果も見られ、各々の奏法における筋肉の使い方を可視化することに成功し、次の研究に繋がる成果を得ることができた。
著者
當間 孝子 宮城 一郎
出版者
琉球大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

マラリアは八重山・宮古諸島を中心に明治時代から報告され、人々の生活に大きな影響を与えていた。1957年より、DDT残留噴霧を中心としたマラリア防圧計画が実施され1962年流行は終息した。沖縄県は国際交流の拠点として重要な位置にあり、人の交流も盛んである。また地球温暖化により、媒介蚊の分布拡大やマラリア原虫が持ち込まれる可能性が高い。マラリアの発生予防の基礎資料を得るために、八重山諸島の本種の生息状況を明らかにした。1.石垣島におけるAn.minimusの生息分布 1998年9〜10月に48、1999年9〜10月には56の河川、渓流、湧き水で調査を行い、調査水域の約70%に本種幼虫の生息を確認した。2.石垣島の4水域における本種の年間の発生消長 幼虫:1998年11月より月2回、柄杓で100すくいし、年間の発生消長を調べた。ファナンと西浜川の幼虫の発生消長パターンは類似し、年間の発生総数も多かった。12月後半から4月前半までは発生個体数は少なく、5月後半から8月前半までは400〜1,000の個体を採集した。市街地に近い新川渓流で最も多い時期は2月後半から4月後半で300〜350個体を採集した。成虫:3渓流近くの牛舎にライトトラップを月2回設置し、1998年11月から1999年10月まで捕獲した。ファナン川近くの牛舎では5月前半から8月後半に個体数が増し、西浜川の牛舎では、調査を行った3地域の中では個体数が最も多かった。冬期は少なく、3月前半から増し、42個体になり、7月前半から8月前半に最も多く、151〜228個体を採集した。新川渓流周辺地域は最も個体数が少なかった。3.西表島およびその他の離島における本種幼虫の生息状況 西表島は20、小浜島では25水域中、それぞれ4、6水域で生息を確認した。小浜島での生息の確認は初めてである。波照間、与那国島では本種の生息は確認出来なかった。
著者
青木 裕子 古田 徹也 大谷 弘 片山 文雄 石川 敬史 佐藤 空 野村 智清
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究グループは科研費受給期間中コンスタントに研究成果を発表した。主な活動を四点挙げる。第一に「常識と啓蒙研究会」を年二回開催した。第二に、2018年3月に日本イギリス哲学会第42回研究大会においてセッション「コモン・センスとコンヴェンション―18世紀英米思想における人間生活の基盤」のコーディネイトと研究報告を行った。第三に、2019年10月に武蔵野大学政治経済研究所主催のオール英語の国際シンポジウムをコーディネイトし、本研究グループと米国の研究者が研究報告を行った。第四に、2020年2月には本研究プロジェクトの最終報告として『「常識」によって新たな世界は切り拓けるか』(晃洋書房)を出版した。
著者
中畑 龍俊 依藤 亨 足立 壮一 林 英蔚
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

造血幹細胞の発生、性状、増殖・分化機構とその異常、サイトカイン受容体の異常と白血病発症との因果関係、白血病発症の分子機構が明らかにすることを目的に研究を行い以下の成果が得られた。(1)ヒト造血幹細胞を容易に受け入れるNOD/SCID/γ_c^<-/->(NOG)マウスを開発した。このマウスに移植したヒト臍帯血CD34+細胞からサイトカインの投与なしに顆粒球、赤芽球、マクロファージ、巨核球、血小板、T, B, NK, NKT, DC,肥満細胞を含む全てのヒト型血球分化が認められた。ヒトT細胞の初期分化は主に胸腺内で行われ、一部胸腺外分化も認められ、血清中にヒト型のIgM, IgG, IgAが観察された。(2)造血幹細胞増殖支持能を持つストローマ細胞株を樹立した。このストローマ細胞株上でサルES細胞を培養すると非常に多くの血球が出現することから造血幹細胞を生み出すのに必要な分子も発現している可能性が示唆された。(3)G-CSFR遺伝子異常を持ちKostmann症候群のモデルとなる2種類のTgマウスを作成した。変異G-CSFR-TgマウスへG-CSFを1年間連日皮下すると、3血球系とも著明に増加した状態が続いたが、白血病の発生は見られなかった。(4)サルES細胞から胎児型の血液細胞と成体型の血液細胞の両者および血管内皮細胞を誘導することが可能となった。サルでもマウスと同様、血液と血管内皮の共通の母細胞であるhemangioblastの存在が明らかとなった。
著者
羽間 京子 岡村 達也 勝田 聡 田中 健太郎
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、保護観察中の性犯罪者の性的認知のゆがみを分析するために、日本の保護観察所が実施している質問紙を用いた調査と事例研究を行った。保護観察中の性犯罪者と犯罪歴のない一般成人の質問紙への回答結果の分析の結果、性犯罪者群のほうが、合理化やわい小化などの性的認知のゆがみが大きいことが明らかとなった。また、財産犯との比較から、性犯罪者のほうが性的認知のゆがみが大きいことが示された。以上から、本研究は、それぞれの性犯罪者が有する性的認知のゆがみの種類や特徴を踏まえた保護観察処遇の重要性を指摘した。
著者
齋藤 智寛 佐竹 保子 冨樫 進 川合 安 堀 裕 長岡 龍作 斉藤 達也
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

唐・道宣の編纂した中国の仏教史書『続高僧伝』玄奘伝について、テキストと内容の双方について総合的に研究する。テクスト研究としては宮城県の名取新宮寺一切経本について日本古写経諸本との関係を明らかにし、新宮寺一切経全体の解明の布石ともする。内容については、中国思想・歴史・文学、インド考古学、僧伝文学など分野横断的な記述をもつ玄奘伝の資料価値を最大限に発揮して考察をおこなう。
著者
田村 朋美
出版者
独立行政法人国立文化財機構・奈良文化財研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本で出土するインド・パシフィックビーズは色調によって出現時期が異なり、弥生時代と古墳時代の両時期に出現するのは、黄緑色、赤褐色、淡紺色など一部の色調に限られる。本研究で、これまで分析事例の少なかった弥生時代のインド・パシフィックビーズの分析を進めた結果、黄緑色と赤褐色のものは、弥生時代と古墳時代で基礎ガラスの化学組成が異なることが明らかとなった。生産地の変化を示唆する重要な知見である。
著者
佐々木 隆之
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

平成13年度は、深地層における放射性核種の移行の促進・遅延に対し、それら元素に対する嫌気性微生物の影響の解明を引き続き行なった。微生物とアクチノイドの関わりについて溶液化学的な手法および分光学的手法を用いて検討した。地下環境で生息し得る嫌気性菌混合群とプルトニウム・ネプツニウム・プロトアクチニウム・ストロンチウム・セシウムとの相互作用を、吸着係数データを基に検討した。共存する自然環境水のpH及び酸化還元電位Eh、微生物の活性や放射性核種の酸化状態は、吸着の強さに影響する重要な要素である。さらに、微生物の寿命、アクチノイドイオンの化学状態が変化するのに要する時間、同イオンが膜上或いは膜内へ取り込まれる時間との相関について調査した。微生物の発育に適した35℃及び比較のため低温5℃下で各元素の収着実験を行った。その結果、複数の酸化数を取りうるプルトニウム・ネプツニウム・プロトアクチニウムと、一つの酸化状態しか取りえないストロンチウム及びセシウムでは、吸着計数の時間依存性が全く異なることが明らかになった。すなわち、前者は、時間と共に微生物自身或いはその代謝物によって化学種が変化し、吸着計数が初期値より数十倍から百倍程度増加した一方、後者は顕著な時間依存性を示さなかった。またその増加は実験開始後、数日で急激に起こり120日間持続した。実験に用いたプルトニウム濃度が低いため分光学的手法を用いた直接観察は困難であったが、データを総合的に分析することで、4価水酸化物及び吸着能の高い3価の状態を取り得、微生物による3価への還元反応も関与している可能性があると結論付けた。さらに、高温高圧で滅菌した微生物と低温で休眠状態にした微生物について、その収着能を比較した。
著者
赤澤 史郎
出版者
立命館大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究の成果は、三部に分かれる。第一部は「第二次大戦後の戦争犠牲者の補償問題」であり、戦後初期から1980年代末までの民間人戦争犠牲者の補償問題の推移を追ったものである。ここでは、日本における戦争犠牲者の補償が民間人をも含めた国民平等主義に立たなかった理由として、その補償政策の立案と実施が1950年代の逆コースの状況の中でおこなわれたためであったことを指摘している。とはいえ1960年代には民間人戦争犠牲者への補償要求運動が生じ、この運動は1970年代には一定の盛り上がりを見せて,議会にも野党の提案で戦時災害援護法案が上程されるが、1980年代に運動は退潮に向かうと述べられている。第二部は「名古屋空襲訴訟」であり、戦争末期の名古屋空襲で負傷した三人の民間人女性が、民間人に対して補償がないのは法の下の平等に反すると訴えた裁判について論じたものである。この裁判は1976年から1987年まで続いたものだが,ここでは訴訟の経過を記すとともに、その争点の性格を説明し,さらに訴訟の歴史的な位置づけに言及している。第三部は「戦時災害保護法小論」であり、第二次世界大戦中から戦後初期にかけて、民間人戦災者に対する援護法として存在した同法を扱ったものである。ここでは戦時災害保護法がその運用状況からすると、事実上補償主義に傾斜した性格であることを説明し、さらに戦災への補償の性格の強い給与金として、膨大な金額が支払われていた事実を指摘している。以上の三部によって,第二次世界大戦中から1980年代までの民間人戦争犠牲者の補償問題の推移を、全体的に明らかにしようとしたものである。
著者
熊谷 昌則
出版者
秋田県総合食品研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

秋田県ではミョウガの栽培が盛んであるが、ミョウガは食べ過ぎると物忘れしやすいなどといわれることもある。しかしながら、科学的根拠はなく、むしろ、ミョウガ中に含まれる精油成分のα-ピネンは、交感神経の活動を抑制し、リラックス状態を作り出すという報告がある。本研究では、理解、学習、推論など、一連の複雑な認知作業を遂行するために必要な情報を一時的に保持し、管理するためのシステムを指すワーキングメモリに着目して、α-ピネンがワーキングメモリに与える影響について調べるため、前頭前野の脳血流量を簡便に測定し、評価することができる近赤外分光方式にもとづく脳機能イメージング手法を用いた検討を実施した。
著者
神谷 亘
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

重症急性呼吸器症候群の原因ウイルスであるSARSコロナウイルスnsp1タンパク質が、宿主のRNA分解と翻訳阻害をすることで宿主遺伝子の発現抑制を行っていることが知られている。このnsp1タンパク質による宿主遺伝子の発現調節機構は、他のウイルスでの報告がない、新しい調節機構であると考えられている。しかしながら、その具体的な機序は、いまだ不明である。nsp1タンパク質によるRNA分解に関しては、nsp1タンパク質単独では、RNAを分解しないとの知見を得ている、このことより、nsp1タンパク質によるRNA分解には、RNA分解に関わる宿主因子が関与していると考えられる。そこで、当該年度は、nsp1タンパク質と相互作用する宿主因子の検索を行い、その相互作用を明らかにするとともに、相互作用の意義を明らかにすることを目的として研究を行った。まず、nsp1タンパク質と結合する宿主因子を同定するためにYeast-two hybrid法を試みた。しかしながら、酵母内においてnsp1タンパク質は非特異的にプロモーターを活性化させるために、酵母を用いた宿主因子の同定は困難であると分かった。今後、Tandem Affinity Purification法を用いて宿主因子の同定を行う予定である。
著者
遊間 義一 金澤 雄一郎
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,個人属性(親への愛着)の再犯に対する抑止効果が,非行少年たちが生活している地域社会の属性(完全失業率及びその前年との差)にどのような影響を受けているのかを,1991年に日本全国の少年鑑別所に初めて入所した少年6238名を対象として検討した。階層的母集団分割生存分析モデルを用いて解析すると,親への愛着,完全失業率,完全失業率の前年との差の主効果は,いずれも理論的な予測と一致する方向で有意となった。さらに,親への愛着と完全失業率に関する二つの変数の交互作用も有意であることが見いだされた。
著者
小島 大英
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

重症複合免疫不全症(Severe combined immunodeficiency; SCID)は、生後数か月内に肺炎・敗血症などの重篤な感染症を契機に発見されることが多い、最も重症な原発性免疫不全症である。根治療法は同種造血幹細胞移植であるが、重篤な感染症を起こしたあとの移植成績は不良である一方、家族歴に基づいて生後すぐに診断・移植を受けた症例の成績は極めて良好であることが知られている。すでにTREC測定による新生児マススクリーニングが複数の国と地域で導入されており、SCID患者を発症前に診断し治療を行う体制が整いつつあるが、日本ではまだ実現していなかった。SCID 患者はおよそ5 万に1人出生するとされ、日本では年間20 人程度出生すると推定される。本研究はこれを最初に導入する試みである。我々は、愛知県健康づくり振興事業団の協力を得て、2017年4月から愛知県で出生した新生児のうち、保護者の同意を得た新生児を対象に、全国初のSCIDマススクリーニングを開始した。2018年3月までの1年間で約2万人の新生児のスクリーニング検査を実施することができた。43人の新生児はTRECの値が基準値よりも低く、精査の対象となった。リンパ球サブセット解析、IgG、網羅的遺伝子解析による精密検査を実施した。典型的なSCID症例は期間内に発見することは出来なかったが、Digeorge症候群1例、ウィスコット・アルドリッチ症候群1例を含む、数例のSCID以外の原発性免疫不全症が発見され、早期に感染予防策を開始することができた。発生頻度から推測して、今後数年内には典型的なSCID症例も発見・診断できることが予想される。
著者
野々山 恵章 小原 收 大嶋 宏一 今井 耕輔
出版者
防衛医科大学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

新生児乾燥濾紙血のTREC (T cell receptor recombination circles)とKREC (Kappa-chain recombination excision circles) 測定で、SCID, AT, XLAなどの先天性免疫不全症をスクリーニングできること、病態解析に有用であることを示した。また、分類不能型免疫不全症がTRECとKRECの陽性・陰性で4群に分けられること4群間で重症度が異なること、病態に即した治療法を選択できることを見出した。
著者
佐長 健司 中山 亜紀子 村山 詩帆 栗原 淳 田中 彰一 栗山 裕至 板橋 江利也 庄田 敏宏
出版者
佐賀大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

国立大学の附属学校を中心に、その教育効果を測定するために調査を行った。それは、いわゆる学力テストではなく、児童・生徒にインタビューを行い、得られた語り(学びのヒストリー)を解釈する方法によるものであった。明らかになったことは、児童・生徒の学びは多様で個性的であるが、学校や家庭等の状況に埋め込まれていることである。そのため、学校や家庭等の状況的圧力によって学びが制限されるが、それらからリソースを得て積極的に学びを拡張していることも大ある。そこで、学校や家庭の学習状況を重視した教育が強く求められると言えよう。
著者
多田 祐一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

量子論と重力理論の統合は現代物理学の課題の1つであるが、両方に関係した重要な現象として重力による量子ゆらぎの古典化がある。特に宇宙初期の急激な膨張期 (インフレーション) ではこの古典化により、現在の宇宙における銀河や星などの構造の元となる密度ゆらぎを生み出したと考えられている。このように古典化したゆらぎを扱う方法としてストカスティック形式が知られており、我々はこの形式と純粋な量子論的計算を比較することで古典化の謎に迫る。同時に、ストカスティック形式では量子ゆらぎを古典ゆらぎとして簡略的に扱うことで逆に計算の幅が広がるので、これをインフレーション模型の包括的解析に応用していく。