著者
堀 真寿美 小野 成志 喜多 敏博 宮下 健輔 宮原 大樹 小林 信三
出版者
特定非営利活動法人サイバー・キャンパス・コンソーシアムTIES(附置研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

発展途上国では,ITインフラの状況も知的財産権等の整備状況も多様であり,そうした状況が障壁となって,オンライン教育の技術移転を難しくしている場合がある.本研究の第一の目的は,ブロックチェーン技術を導入した学習支援システムを構築し,発展途上国の多様な事情に対して適切に対応できる可用性,プライバシー保護,セキュリティ確保に優れた学習支援システムを構築することである.具体的には,ブロックチェーン技術を応用し(1)ラーニングコイン,(2)コンテンツ流通,(3)コース開講,(4)eポートフォリオから構成される学習支援システムを開発し,発展途上国において実証実験を行う.また,この開発から検証までの過程を通じて, ブロックチェーン技術の課題を明らかにするとともに,オンライン教育における応用範囲と活用方法,そして新たなオンライン教育の手法とサービスを検討する.平成29年度は研究計画に基づき,コンソーシアム型ブロックチェーンであるHyperledger Fabricを利用して,SNSをユーザーインターフェースとする学習支援システムを開発した.開発システムでは,教師や学習者同士のSNSを利用した学習活動を学習成果としてブロックチェーンに記録する機能,記録された学習成果をまとめて電子書籍を制作する機能,そして制作された電子書籍をラーニングコインで購入する機能を実装した.本システムは,次年度より研究分担者所属機関において,実証実験を行う予定である.
著者
高根沢 均
出版者
神戸山手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、中央空間および聖性の焦点であるアプシスと周歩廊の機能的関係を明らかにした。中央空間に対して環状列柱は間接的な接触を提供しつつ、列柱の幅と意匠によって中央空間への「入口」を示しており、アプシスに対して斜めに位置する会堂入口から円環状の動線を経て中央空間の「入口」へ誘導する機能があった。この関係はアナスタシス・ロトンダ(4世紀)の影響を受けたと推測される。一方、初期中世以降、バシリカ式のアプシス後背の周歩廊は、聖遺物崇拝を機能的に解決する手段として導入が進んだ。北イタリアにみられる上下に重なった周歩廊は、バシリカ式の典礼機能と集中式の周回礼拝の機能を同時に内包する構成といえる。
著者
吉村 優治 和田 智
出版者
岐阜工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

研究代表者らが行ってきた建設廃棄物の再利用に関する研究は大きく以下の3つに分けられる。(1)軽量地盤材料としてのALC廃材のリサイクル(2)地盤安定材としての汚泥のリサイクル(3)建設残土の100%再利用したがって,これまでの研究成果も踏まえて当該研究期間4年間で以下のように研究を進展させ,新たな施工方法およびリサイクル技術を確立した。1)<ALC廃材の再利用試験施工現場の動態観測>すでに現場で施工した道路の沈下,側方変位等の動態観測を継続し,軽量地盤材料としてのALC廃材の再利用方法の有効性を検討した。2)<固化材を添加しないALC廃材の強度と吸水・排水性の検討>固化材を添加したALC廃材については軽量な地盤材料として道路路床にリサイクルできることが明らかになっている。また,粒状体としてのCBR値,内部摩擦角等の概略値は既に測定している。そこで,さらに粒状体としての吸水性,排水性を考慮した再利用方法について検討し,街路樹用の土としての使用方法を提案した。3)<建設残土の100%リサイクル法の検討>これまでの研究成果を踏まえ,建設分野でリサイクルの最も遅れている建設残土の100%再利用法の提案のために,鉛汚染土壌の再利用方法を検討した。結果的には汚染が著しい場合にはキレート材では汚染の封じ込めは難しいことが明らかになった。4)<リサイクル固化材の特性評価>地盤安定材としての汚泥のリサイクル固化材の特性を評価した。
著者
遠藤 恵子 井上 京子 菊地 圭子 豊田 茉莉
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

思春期の知的障がい児は、人前でも自分の性器に触るといった特徴的な行動がみられ、社会的自立を視野に入れた性教育の必要性が明らかになった。知的障がい児に対する性教育には、生活を支える視点を教育者がもつこと、障がいの程度やニーズに合わせた個別的な指導、自慰行為などの手順を具体的に示した教材、家庭でも使用できるDVDやインターネットのサイトの作成、繰り返しの指導、自分の感情や意見を表出し自ら意思決定できる訓練が必要である。さらに、知的障がい児自身が教育計画立案や教育実践に参加できる体制が求められる。
著者
山本 毅士
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

本研究課題ではオートファジー活性(フラックス)に焦点を絞り、フラックス異常を認める腎疾患の病態解明、またフラックス異常を是正する遺伝子改変マウス作成と治療薬の探索を行い、その疾患抵抗性を検証した。結果、(1)in vivoオートファジーフラックス評価方法を確立し、腎老化や肥満におけるフラックス調節異常を明らかにした。(2)オートファジー阻害因子Rubiconをノックアウトしオートファジー亢進モデルを作成した。このマウスは確かにオートファジーが亢進し腎疾患ストレスに抵抗性であった。(3)あるオートファジー活性化薬(EPA)に着目し肥満マウスに投薬したところフラックス異常是正と腎保護効果を認めた。
著者
鈴木 俊太郎
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

いじめ予防プログラムの基盤となる「ポジティビティ・フォーカスト・アプローチ」について、前年度の理論研究を踏まえて、実際のカウンセリング場面、心理教育場面に利用できるように手続きや方法論を明確にする作業を行った。ポジティブ心理学の中でも肯定的感情側面に焦点を当てたB.Fedricksonらの研究成果を基盤に、対人コミュニケーション場面において、自身の肯定的感情が、認知的枠組みを拡大・再構築していくというプロセスを、教育プログラムとして実行できるように調整している。最初は、カウンセラーとクライエントという特殊な2者関係、つまりカウンセリングの一場面でこのプログラムを想定し、そこでパイロットスタディを踏まえて、集団場面、教育場面での応用が可能な形にブラッシュアップを図っていった。プログラムは大きく分けて2つのフェーズから構成され、1.ポジティブ感情喚起フェーズ、2.認知再構築フェーズの2段階に分けられる。それぞれのフェーズでは、一定のタスクが参加者に課される。例えば、1.のフェーズでは、過去の失敗経験と成功経験を同時に想起してもらい、成功経験のみについてその後詳細に事実を説明してもらう。このような作業を行うと、次いで思い出してもらった失敗経験の記憶が想起しずらくなる、価値が低下するなどの効果が見込める(検索誘導性忘却という現象を利用したトレーニング)。また、これと並行して、ここまでの研究成果を学会発表という形で公表し、他の研究者からプログラム実施に関して様々な意見をいただき、ブラッシュアップを図った。遂行過程で大幅な改変の必要性や手続きの補強、倫理的配慮をご指摘いただき、考慮に入れることとなったため、年度内で予定していた実際に施行するプログラム開発まで至ることは難しかった。なお、この遅れについては、年度をまたいで、次年度の計画施行スピードを調整することでも解消可能と考える。
著者
舟木 淳子
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,高齢者など咀嚼・嚥下に困難をもつ人でもおいしく食べるために必要な調理方法を示すことを目的とした。そのために,タンパク質を多く含有する食品(豆腐など)のテクスチャーを,タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を用いることにより改変できることを示すことを試みた。プロテアーゼを作用させた豆腐は,やわらかくなめらかであり,対照との間に組織構造の差違が認められた。これはタンパク質のネットワーク構造がプロテアーゼにより切断されたためと考えられた。プロテアーゼ処理によるテクスチャー修飾は他のタンパク質を多く含む食品へ適用することができ,高齢者用食品への応用が可能であると考えられた。
著者
北本 朝展 西村 陽子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は新しい史料批判の方法論であるデータ史料批判(デジタル史料批判)を提案し、これを主に非文字史料に適用するための情報プラットフォームDCPを構築した。写真や地図を照合するための各種ツールをDCPに統合することで、照合というエビデンスを結合したエビデンスネットワークを構築することができた。さらにエビデンスネットワークをSPARQL言語を用いて意味的に検索し、各種史料に出現するシルクロード遺跡の関係を信頼度に基づき結合する新しい方法を提案した。ついで、データ史料批判の方法を実際のシルクロード遺跡の探索に適用することで、シルクロード遺跡の全体像を把握する見通しを得ることができた。
著者
横井 慶子
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

[研究の目的]論文を雑誌上でOpen Access化(以下ゴールドOA)する際に支払うArticle Processing Charge(以下APC)は年々増加傾向にある。その一方で購読誌への支払いも続いており, APC支払額の増加は大学にとって大きな負担である。本研究では, ゴールドOAを推進するイギリスの事例を調査し, 同国のAPC支払いの最新実態を明らかにすることで, わが国における最適な学術雑誌契約モデルを検討することを目的とする。[調査方法]Research Councils UK(RCUK)やCharity Open Access Fund(COAF)等のイギリスの助成団体の報告書を中心とする文献調査, 及びRCUKが助成したゴールドOA論文18,215件のデータ分析を通し, APC支払い状況を調査した。また一部の大学職員へは直接インタビューを行い, 具体的な大学の対応事例を調査した。[調査結果と考察]OA論文数の増加, 及びAPC価格の上昇により, イギリスのAPC支出額は上昇傾向にあった。RCUKの支出額は10,793,817ポンド(2014-15年)から15,935,714ポンド(2015-16年)と1年で47%上昇, COAFの場合は4,992,434ポンド(2014-15年)から6,600,690ポンド(2015-16年)と32%上昇していた。RCUKから2014-16年間に助成を受けたゴールドOA論文18,215論文のうち, Russell Groupに属する大学の平均は616論文であり, Russell Group非所属大学の平均63.3論文の約10倍の値だった。ただしRCUKからの助成額は, Russell Group所属大学では平均284,445.96ポンドで, Russell Group非所属大学の42,426.45ポンドの7倍であり, Russell Group所属大学は, 外部資金への依存度が低い中でAPC支払いを行っていると推測される。Russell Groupに属しOA論文生産数が2番目に高かったCambridge大学では, 大学がAPC補助を行うことはせず, 外部の助成団体から得た助成金の使途を管理しているだけとのことだった。ただし, オフセット契約に対する予算は大学からついており, APC支出額を抑えるための努力はしている。日本でも論文生産数の多い研究中心の大学では, このような措置をとることで全体の支出額を抑えられる可能性がある。
著者
三根 慎二
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度は,1)プラットフォーム概念の整理および2)学術情報流通におけるプラットフォームの事例調査に向けた調査計画の立案を行った。プラットフォーム概念の整理に関しては,まず国内外のプラットフォーム研究関連の先行研究と学術情報流通におけるプラットフォームを扱った研究の網羅的文献探索を行った。前者に関しては,主に中心的研究者の著作やレビュー論文を対象に,エンジニアリング・デザイン(新製品開発,オペレーションズマネジメント,技術戦略)と経済学(産業経済学・産業組織論)におけるプラットフォーム概念(①製品プラットフォーム,②サプライチェーン・プラットフォーム,③産業プラットフォーム,④多面市場プラットフォーム)について整理した。一方,学術情報流通においては,特定のサービスをプラットフォームと呼ぶことはあるものの定義なしでの利用に留まっていること,プラットフォーム概念を扱った研究は学術雑誌の価格構造に関する経済学分野のものを除いて,ほぼ皆無であることが分かった。収集した関連文献リスト(図書・雑誌論文・ウェブサイトなど)は,ホームページ上で公開・随時更新している(http://lis.human.mie-u.ac.jp/post/161536774281/how-platforms-reshape-scholarly-communication)。学術情報流通におけるプラットフォームの事例調査に関しては,特定商業出版社の電子ジャーナルプラットフォームを対象に,なぜ現在のような先導的役割を果たし,他社への強い影響力を保つことができたかを明らかにすることを目的として事例調査の研究計画を立案した。
著者
柴田 幸一
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

3歳以下の乳幼児について、登園時での母子分離による(直後)不安反応や保育園への適応状態などについて定期的に観察を続け、分離不安や保育園への適応状態の程度を測定するための尺度の検討を行なった。同時に、主たる養育者である母親に、養育態度や学歴などについての質問紙調査を行なうことによって、子どもの不安反応や適応状態との相互作用を分析し、以下の知見を得た。1.登園時に母親と別れる際の分離不安反応は、やはり1歳代の子どもで最も強く、その後、年齢の経過とともに減少していく。0歳代にはほとんど起こらない。不安反応は入園後1か月項までに急激に減少していくが、3か月を経ても減少しない子どもの場合には母子関係に問題があり、母と子との愛着関係が成立していないか希薄な場合に見られるようである。母が子どもを非常に溺愛している場合は、分離不安反応が発達的にはより早く現われる。その意味で、分離不安反応がいつ項強く現われるかは、母子関係の絆がどれ程早くしかも強く形成されているかによると言える。2.保育園への適応過程は、分離不安反応の生起程度と負の相関を示すようである。つまり、分離不安反応が薄くなるにつれて、子どもの朝の機嫌もよく、保育園への適応状態も次第によくなってくると言える。3.0歳代の入園児に分離不安反応がほとんど現われないのは、認知能力がまだそこまで発達していないと判断されるが、それと同時に、0歳児の知的能力の柔軟性も予想された。つまり、母子関係と保育園側での対応がしっかりしていれば、0歳児は複数のコミュニケーション能力を別々に発達させていく可能性がある。それ故、特に言語面での能力が促進されるのではないかとの印象を受けた。今後は、この面での可能性も理論的に検討し、また、実証していきたいと思っている。
著者
宇賀 貴紀
出版者
順天堂大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

長期の学習によって、感覚情報により鋭敏に反応できるようになる学習過程を「知覚学習」と呼ぶ。知覚学習の脳内メカニズムに関する現在の定説は、「感覚情報を担うニューロンの感度が、学習の結果、より鋭敏になることで実現されている」というものである。しかし、サル第一次視覚野ニューロンの感度は学習によってほとんど変化せず、個体の学習能力を説明できないことが知られている。本研究では、知覚学習では感覚ニューロンの感度が上がるのではなく、「学習により、情報量の多い有用な感覚ニューロンから選択的に情報を読み出すことができるようになる」という新しい説を検証する。昨年度までに、サルがランダムドットステレオグラムの奥行きを答える奥行き弁別課題を学習する過程を行動レベルで追いながら大脳皮質MT野ニューロンの活動を記録した。その結果、ニューロンの弁別閾値は学習過程で変化しなかったのに対し、ニューロン活動からサルの答えを予測できる確率が訓練により上昇することがわかった。今年度はさらに、短期の学習、すなわち日内学習ではどのようなニューロン活動の変化が見られるのかを解析した。すると驚いたことに、日内学習ではニューロンの感度が上昇するのに対し、ニューロン活動からサルの答えを予測できる確率は上昇しないことがわかった。これらの結果は、短期の学習では感覚情報を担うニューロンの感度がより鋭敏になるのに対し、長期の学習では感度の高い感覚ニューロンから上手く情報を読み出すことができるようになることを示唆する。