著者
小川 基彦
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ツツガ虫病の起因菌Orientia tsutsugamushiはリンパ球や血管内皮細胞など細網内皮系細胞に主に感染する.その結果,ヒトには免疫応答など様々な生体反応が誘発され,発熱,発疹,CRP,肝酵素の上昇などの症状が起きる.また,一部の患者は播種性血管内凝固(DIC)をおこし重症化する.そこで,本研究ではツツガ虫病の免疫応答と病態の関係に注目し解析をおこなった.まず,患者の発生状況や臨床所見に関して行った調査票による疫学調査の中で,特に免疫応答に関連するリンパ球を含む白血球減少,DICなどの所見に注目し疫学的な解析をおこなった.その結果,主に春に発生が多くGilliamおよびKarp株の感染が多い東北・北陸地方は白血球減少およびDICをおこす頻度が高く,重症度が高いこと,一方で秋に発生が多くKawsakiおよびKuroki株の感染が多い関東および九州地方では頻度が低く,症状が軽いことが明らかになった.これらの結果から,本菌の血管内皮細胞やリンパ球への感染による免疫応答が病態と密接に関係している可能性が示唆された.次に,ヒト臍帯内皮静脈細胞(huvec)に病原性の強いKarp株を感染させ,免疫応答のメディエーターであるサイトカインの誘導を解析した.huvecにKarp株を感染後,感染細胞からRNAを抽出しRT-PCRによりmRNAレベルでサイトカインの発現を解析した.その結果,感染後72時間でIL-6,8,GMCSF, MCP-1,RANTES, TNFαの発現がみられた.また,同様の解析をヒト単球セルラインU937で行ったところ,IL-1β,8,RANTES, TGFβの発現がみられた.また,U937にはKarp株への感受性が高かったが,別の単球セルラインのK562は感受性が低かった.また,huvecを用いた血管透過性の解析では,およびを用いて,Transwellメンブレン上のモノレイヤーの感染後の電気抵抗の変化をEndohmにより解析した.その結果,Karp株の感染およびTNFα(陽性対照)により透過性が亢進した.今後,産生されるサイトカインの役割,内皮透過性,単球への感受性,病原性の異なる株による違いに注目した解析を行い,各細胞のin vitroにおける役割・応答を解析するための基礎データが蓄積できた.
著者
三上 真人 瀬尾 健彦 菊池 政雄 森上 修
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ジェットエンジン高空再着火時の燃料噴霧燃え広がりの理解を深めるために低圧における液滴列燃え広がりの微小重力実験行った.実験の結果,低圧での燃え広がり速度および燃え広がり限界はともに,大気圧の場合より大きくなることが明らかとなった.これらの圧力依存性について,燃え広がりに関わる素過程を考慮して考察を行った.高温領域の熱伝導速度は圧力に逆比例する.一方,高温領域の広がりの非定常性を考慮すると,その最大半径は圧力の-1/3乗に比例する.この圧力依存性を有する燃え広がり限界距離を考慮して,低圧におけるランダム分散液滴群の群燃焼発現特性を求めることができた.
著者
太田 匡彦
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度も、地方公共団体が公的扶助を負う意味に関する研究を進めた。第1に、公的扶助事務の一部であるケースワーク活動を行政指導論の分析枠組みの中で位置づける試みを行った。その際、むしろ行政指導の分析枠組みを改めて考えて、行政指導を行政指導たらしめるコンテクストの分析を行う必要とその際に多極的な利益構造を考慮する必要を意識すると同時に、ケースワークは敢えて利益構造を単純化させ行政と被保護者の二極関係と考えることに意味があることを認識した。第2に、従来のいわゆる「三位一体改革」や現下の地方分権推進改革などの動きも踏まえながら、公的扶助活動の社会保障全体における位置付けとそれを担当する団体のあり方を検討した。公的扶助が自由な政治社会を成立させるために基礎的な(原始的な)社会保障として必ず用意されねばならないこと、国と地方公共団体の分担については、単純なナショナルミニマム論ではこの問題を制御しきれず、シャウプ勧告に基づく分離型と利益帰属の観点からの分担型との間の整序が必要なこと、その際には一般的な財政法・行政法原理を踏まえなければ制度の透明性を欠く危険が高まることを認識した。第3に、地方公共団体の公的扶助を規律する生活保護法が、住民に対するサービスではなく、住民か否かを問わずサービスを地方公共団体に義務付けることを意識した作りになっていることを踏まえ、地方公共団体の住民であることの要件である住所規定の意義を改めて考える必要があること、これが近時ホームレスの住所の問題を考える基礎を提供すること、この観点から見ると地方公共団体は開放的強制加入団体ともいうべき性格を示し、このことを踏まえて地方公共団体の公的扶助活動を位置付けねばならないことを認識した。以上の結果のうち、第2の成果については、ジュリスト2008年5月1・15日合併号と6月1日号に、第3の成果については月刊地方自治2008年6月号に公表される予定である。第1の成果についても平成20年度中にはある論文集の一編として公表される予定である。
著者
渡辺 勝敏 馬渕 浩司 小北 智之 武島 弘彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

温帯古代湖である琵琶湖のユニークな魚類相における固有種の起源と適応進化の遺伝基盤を明らかにするために、複数の固有種群を対象に、形態分析や次世代シーケンサーを用いたミトゲノム、発現遺伝子解析、ゲノムワイド多型分析等を行った。それらにより、4つの柱で研究を展開し、琵琶湖固有種の適応進化に関する理解を深めた。(1)湖適応に関する形態および遺伝子発現を含む表現型を明確化にした。(2)ミトゲノムや核ゲノムの遺伝変異を用いて強固な系統関係と人口学的歴史を推定した。(3)適応関連候補遺伝子のスクリーニングに基づき、種群間の共通性と多様性を明らかにした。(4)QTL分析に基づき、適応関連領域を検出した。
著者
三村 太郎
出版者
広島大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

アッバース朝宮廷占星術師マーシャーアッラーフに帰せられた『天球について』アラビア語テクストの校訂とその英訳を完成させた。さらに、本作品の内容を分析することで、真の著者ドゥーナシュ・イブン・タミームの宮廷科学者としての役割が見えてきた。ドゥーナシュは『天球について』において天体運動を含めた自然現象の発生過程をギリシャ哲学や天文学の知識を使って合理的に説明し、このような合理的で素晴らしい世界を創造できるのは、全知全能の唯一神しか不可能である、という議論を展開することで、神の一性を証明しようとしたことが分かった。
著者
北村 嘉恵 山本 和行 樋浦 郷子
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、「研究実施計画」に即して、以下のとおり進めた。1.台湾南部(台南、嘉義)において、国民小学や個人・団体の所蔵する文書・写真・奉安庫等の調査を進めるとともに、関係者に聞き取り調査を行った(8月、3月)。所蔵者の逝去により一時中断していた元教員旧蔵資料群については、遺族の了解を得て作業を再開することができ、出版物(書籍)を除く全資料のデジタル撮影を終えることができた。現在その悉皆的な目録の作成を進行中である。これまでの調査の成果と課題を共有するため、国立台湾歴史博物館研究組組長と協議を行い、同館における調査・整理の方針について情報を得るとともに、今後の協力方法についても検討した。2.韓国・国家記録院のデータベース等により学校資料の残存状況および内容を把握したうえで、韓国南部の数カ所(昌原、釜山)に調査地を絞りこみ、初等学校や韓国長老教会の所蔵する文書・写真等の閲覧および関係者への聞き取り調査を行った(8月)。実地調査において学校沿革誌の原本を確認することはできなかったが、とくに、学校創立以来の通時的な集合写真や学籍簿、普通学校生徒の帳面のほか、教会の牧師・長老会議の記録である「堂会録」(1900年代初頭~1960年代末)などの所蔵を確認し閲覧できた点で大きな進展が見られた。このうち許可の得られた資料についてはデジタルカメラにて撮影を行うとともに、仮目録を作成した。3.主要資料のうち公刊許可の得られた学校沿革誌については、全文の翻刻を行い、解題を付して紙媒体および電子媒体で順次公刊し、幅広い共有化をはかるとともに調査地への成果還元につとめている。また、調査・分析より得られた知見は教育史学会等にて個別研究として発表し、論文として公刊を進めている。
著者
布田 博敏 平松 尚志 神 繁樹 神 繁樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

マガキ由来の新規の抗酸化物質(DHMBA)において、肝培養細胞を用いた抗酸化能の観察、及び非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスを用いた肝病変の改善効果を検証した。肝培養細胞を用いた実験では、DHMBAは酸化剤に対する細胞保護作用や酸化誘導性のアポトーシスに対する抑制効果が観察された。NASHモデルマウスを用いた実験では、DHMBA を高濃度含むマガキ抽出物によりNASHの肝臓特有に見られる病理組織学的症状の改善、及び抗肥満、インスリン抵抗性の改善が見られた。これらのことから、DHMBAは酸化ストレスが発生原因と考えられているNASHの予防や治療に有効と考えられた。
著者
三浦 勉 寺田 宙 太田 智子
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

海産物中のPb-210/Po-210測定の信頼性向上を目指した。金属鉛から調製したPo-210標準液、海産魚乾燥粉末を用いて既開発(Miura et al)のPb-210/Po-210分析法を評価した結果、全分離操作で90%以上のPo回収率が得られ、高い信頼性をもつことが実証できた。よって本分析法を基に標準分析作業手順書を作成した。予備実験で選定したかつお粉末といりこ粉末から調製した共同実験用試料を用いて、3機関が参加する共同実験を実施した。その結果、国内分析機関によるPb-210/Po-210測定値に有意な差は見られず、標準分析手順書の妥当性と国内分析機関の技術レベルが高いことが実証できた。
著者
木村 政昭 上田 誠也 山里 清 加藤 祐三 大森 保
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1988

1986年に世界の背弧海盆に先駆けて中央地溝の一つである伊平屋海凹内で研究者らにより、低温で非晶質の熱水性マウンドが発見された。そこで、本研究においては、大洋中央海嶺で発見されたような硫化鉱床や大型生物コロニ-が認められるような高温の熱水性ベント・システムが背弧海盆にも認められるのかということを世界に先駆けて検証することを目標の一つとした。そして、それによって背弧海盆が大洋中央海嶺と同じ様な拡大メカニズムにより形成されたのかどうかということを明らかにしようと努めた。その結果、研究者らが参加・協力した調査・研究において以下に述べるような成果があげられた。昭和63(1988)年度:4ー6月、伊平屋海凹と伊是名海穴で熱水性生ベント・システム発見。ドレッジにより大型生物や硫化鉱床採取(ゾンネ号:「かいよう」)。9月には、前記熱水域に潜航し、熱水性鉱床・生物コロニ-等のサンプル採取に成功(「しんかい2000」)。平成元(1989)年度:4ー5月、伊是名海穴で高温熱水を噴出するブラックスモ-カ-が発見され、さらに新熱水域を発見する(「しんかい2000」)、1990ー91年の調査により、さらに北方の奄西海丘でも熱水性鉱床が発見された。1991年6月、沖縄トラフ南部北縁の潜水調査。トラフ縁の沈水時期を明らかにする(「スコ-ピオン」)。平成4年1月、南西諸島南方海域の海底地形精密調査。海溝運動と島弧・背弧海盆形成メカニズムを探る(「よこすか」)。以上、本研究により、発見された鉱床は、わが国経済水域内にあり、いわゆる黒鉱型鉱床に酷似し、金・銀を多量に含む珍しいものである。そして、シロウリ貝やバクテリア等も発見採取され、生命の起源解明にも寄与した。更に今後熱水域が新たに発見される可能性も指摘することができた。一方、構造探査の方では、沖縄トラフは典型的な大陸性地殻構造を持っていることが明らかになったが、鉱床の性質はそれと予盾しない。
著者
城所 収二
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、熟練した野球選手が打球を左右へ打ち分けた際に、どのようなスイングによって『引っ張り』や『流し打ち』を打ち分けているのかを、3次元的なバットの振る舞いとして調査するとともに、打ち分け技術に長けた選手のスイングの特徴を明らかにすることであった。初年度の研究によって、流し打ちにおける打球の飛翔する方向(左右)は、インパクト時の頭上から見たバットの向き(水平バット角)のみでは決まらず、バットの下向き傾斜(鉛直バット角)とボールの下側を打撃すること(衝撃線角度)の相互作用の影響を受けることが明らかとなった。そこで2年目は、水平バット角に起因する左右への打ち分けを第1メカニズム、鉛直バット角と衝撃線角度の相互作用に起因する打ち分けを第2メカニズムと定義し、実際の打撃において第1メカニズムと第2メカニズムのどちらがより大きく打球の左右方向に貢献しているのかを調査した。大学野球選手16名に、マシン打撃による左右への打ち分けを行わせた。その結果、流し打ちのフライと引っ張りのゴロでは、第1と第2の両メカニズムが打球の左右角に約50%ずつ貢献していた。一方で、流し打ちのゴロや引っ張りのフライを打った時には第1メカニズムの貢献が100%を上回っていたことから、流・ゴや引・フを打つには従来通りバットを狙った方向へ向けてインパクトすることが必要となる。最後に、これまで大学・社会人・プロ野球選手を対象に収集してきた1500試技以上の打撃データをもとに、水平バット角と鉛直バット角の組み合わせからどのポイントでインパクトすることが打球速度の最大化につながるのかを調査した。その結果、打球速度が最大となったのは、引っ張りではヘッドを下げた鉛直バット角の大きなインパクトであり、センター返しや流し打ちではバットヘッドを捕手寄りに、すなわち第1メカニズム優位なインパクトであったことが示された。
著者
須田 康之
出版者
比治山女子短期大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、グリム童話の「狼と七匹の子やぎ」を題材とし、異文化間での受け取りの特徴を把握し、そこに現れた教育的価値意識を分析することにあった。調査対象国として、日本、中国、韓国、アメリカ、ドイツの5カ国を設定した。まず、日本語版調査用紙を作成し、その後、中国版、韓国版、英語版、ドイツ語版の各調査用紙を作成した。調査対象者は、各国ともに小学5、6年生の子どもと彼らの母親である。現在までに回収した日本と韓国のデータを用いて分析した結果、次のことが指摘できる。1.韓国のこどもや母親は、日本の子どもや母親より題材を面白く思い、しかもこの題材が好きである。また、母親は日本や韓国の別なく子どもよりもこの題材を残酷であると思い、恐いと回答している。2.日本の子どもも韓国の子どもも共通に、面白い個所として「狼が大きな鼾をかいて寝ているところ」と「狼が石の重みで井戸に落ちて死んでしまうところ」をあげている。また母親に比べ、恐い個所がないと回答した子どもが極めて多いのが特徴である。3.韓国の子どもと母親は、感想として「悪いことをしたら最後は必ず罰を受ける」と回答した者が最も多い。これに対し、日本の子どもは、「たとえ悪者でも殺してしまうのは問題だ」と答えた者が多く、母親は「お母さんはいつも子どもを大事に思っている」をあげた者が多い。調査の結果、韓国では、誠実・努力・勇気という価値が尊重され、日本では対人関係に配慮した思いやりが尊重されていた。こうした価値志向の違いが読み取りにも影響を与えているものと考えられる。本調査により、読み取りに与える影響として年齢と社会文化的要因を想定することができる。特に結果の4は、S.フイッシュの解釈共同体の存在を実証するものである。
著者
内藤 幹彦 服部 隆行
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

我々は標的タンパク質を人為的にユビキチン化してプロテアソーム分解を誘導する各種のSNIPER化合物を開発してきたが、新規標的タンパク質を分解するSNIPER化合物を開発するためにはその標的タンパク質に結合するリガンドが必要である。しかし適当な結合リガンドが無いためにSNIPERを開発できない標的タンパク質も多い。そこでHisタグを付加した標的タンパク質を細胞に発現させ、Hisタグを認識するSNIPERで標的タンパク質をユビキチン化する実験系の開発を行った。まずHisタグと結合するNi-NTAをIAP antagonist(MV1)と繋いだSNIPER(His)を合成したが、分子全体の親水性が高くほとんど細胞内に取り込まれない事が明らかになった。そこでSNIPER(His)の細胞への透過性を高くするために、細胞膜透過性ペプチド(CPP)をSNIPER(His)に付加した化合物を各種合成し、そのHisタグ標的タンパク質分解誘導活性を調べた。その結果、R9及びTatペプチドを付加したSNIPER(His)はいずれも細胞内透過性が高まり、Hisタグ標的タンパク質を分解する活性を示した。また別の方法として、His-CPPペプチドを利用してSNIPER(His)を細胞内に取り込ませる方法を検討した。細胞の外でSNIPER(His)とHis-CPPの複合体を形成させて細胞内に取り込ませた後、細胞内でHis-CPPと乖離したSNIPER(His)に改変型HisタグであるCH6タグ標識タンパク質が結合してユビキチン化と分解を誘導するメカニズムである。CH6タグ標的タンパク質への結合を強固にするために、SNIPER(His)にマレイミド基を導入して共有結合する様に改変した。その結果、His-CPPペプチドを利用した実験系でもSNIPER(His)によってCH6タグ標的タンパク質の分解を誘導できることが明らかになった。これらの結果から、SNIPER(His)で細胞内のHisタグ(又はCH6タグ)標的タンパク質を分解する実験系を樹立する事ができた。
著者
木苗 直秀 下位 香代子
出版者
静岡県立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1.茶葉(日本産緑茶、中国産黒茶、南アフリカ産ルイボス茶)抽出物、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジルを用いる比色法、および、5,5-ジメチルピロリン-N-オキシド付加体として検定するESR法を適用したところ、いずれも活性酸素(O2-)を含むラジカル補足能を示しており、活性は、緑茶>ポ-レイ茶>ルイボス茶の順であった。2.ストレプトゾトシンを投与して糖尿病を誘発させたWistarラットに各種茶葉抽出物を飲料水として摂取させ、AGEsの経時的変化を調べたところ、ポ-レイ茶と緑茶が有意に血漿中のAGEs量を低下させた。ポ-レイ茶抽出物中のケルセチン、ミリセチン、ケンフェロール、ルチン、ミルシトリンが、また緑茶抽出物中の(-)-エピガロカテキンガレートを含む4種のカテキン類がAGEs生成に対する阻害物質であると推定した。3.アフィニティHPLC法およびELISA法により、ヒト糖尿病患者の血漿中のAGE量が健常者と比べて有意に高いこと、AGEs量とHbA_<1C>値が高い相関性を示すことを明らかにした。
著者
小田 寛貴 山田 哲也 塚本 敏夫 加藤 丈典
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

緑青は,青銅器に発生するさびである.これは青銅中の銅と大気中の二酸化炭素から生成されたものである.また,緑青は一旦形成されるとそれ以上新たな緑青の形成を阻止する性質をもっている.そこで,本研究では,緑青の放射性炭素年代測定の実現を目的とした基礎研究を行った.まず,緑青に含まれる炭素の抽出法を開発した.その上で,考古学的な年代の判明している青銅器に適用し,その炭素がさびの形成された当時の大気中二酸化炭素に由来するものであることを実証した.以上の成果によって,緑青の放射性炭素年代から,そのさびが形成された年代が得られ,さらに青銅器が使用された年代を求めることが可能であることを示した.
著者
松波 勲
出版者
北九州市立大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

1、Hybrid M2TDAC技術の開発に向けたデータ計測と解析(ア)実験車両:車両バンバー部に77GHz帯ミリ波レーダと光学カメラ、高精度カメラ、ルーフにリファレンスとして使用するレーザライダーを積載した。さらに、GNSSのタイムスタンプ機能を用いて、各センサーの同期を取り、リアルタイムデータ計測を実現した。(イ)データ計測:実験車両前方に速度の異なる3台の目標車両を走行させデータ計測を実施した。本実験では、77GHz帯MIMOレーダを使用した。(ウ)解析結果:取得したデータをHybrid M2TDACにより解析した。ビームフォーマ法を用いてしきい値以上となる全ての信号を分離・識別する。次に固有値分解を基とするMUSIC法によりを用いて各目標車両から反射される信号を検出する。その結果、車両形状の推定に必要な複数点を検出することに成功した。2、2次元立体構造再構成法の開発に向けた原理実証実験(ア)座標情報の取得:座標情報の取得方法について説明する。 MIMOレーダで取得したデータに対して到来方向推定としてMUSIC法を用いた処理を行い、 直交座標系から極座標系へ変換し、 極座標系内で車線幅の大きさの範囲で、 車両からの反射を取得し、 所得座標を座標上にプロットした。(イ)水平角方向の推定:Khatri-Rao積拡張アレー処理により水平角方向の分解能を更に向上させた。(ウ)仰角方向の推定:2次元立体構造をレーダ画像として描画するためには、仰角方向の情報も必要である。ここで我々は受信信号の経路長差に着目した。今回の実験で得られたデータから側面と背面に補正した点と補正前のレーダから経路長差を求めた。 そこから補正前の経路長から補正後の経路長で差分をとり、その差分を高さと仮定して高さを推定した。以上、学術論文3編、国際会議1件、国内会議1件、書籍1編の成果をあげている。
著者
石井 一夫 大森 哲郎
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

次世代シーケンサーやマイクロアレイなど、多次元データを用いた大規模データ産生システムの医療への応用が進んでいる。これらの多次元データから数理モデルを作成し、臨床診断への応用が期待されている。本研究では、これらの多次元データから、複数のマーカーを選択し、これらを組み合わせた数理モデルを作成する方法を確立することを目的とした。本研究では、精神神経系疾患を対象とし、それらの患者からの血液検体からのDNA、RNA試料を用いて分析を行い、そのデータをもとに、変数選択、モデル作成および最適化などを行い、高精度な数理モデル作成法を確立した。
著者
安元 剛 坂田 剛 安元 純 廣瀬 美奈 飯島 真理子 篠塚 翔太 窪田 梓
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

全ての生物の細胞内に高濃度で含まれているポリアミンという生体物質が,空気中の二酸化炭素と高い親和性を有し,二酸化炭素を水溶液中に取り込むという新たな化学的知見から光合成および石灰化への寄与を検証した。その結果,二酸化炭素を吸収させたポリアミン溶液は,光合成で炭素固定を担う酵素であるルビスコの炭素源となりうることを明らかにした。また,シアノバクテリアの増殖をポリアミン輸送体阻害剤が有意に阻害し,ポリアミンの光合成への寄与の可能性が示された。ミドリイシサンゴの稚ポリプの骨格形成の場である石灰化母液内のpHが周りの海水と比較して高いことが分かり,生体塩基であるポリアミンの関与の可能性を示した。