著者
沼田 里衣
出版者
神戸大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

障害者を含む様々な参加者のための音楽コミュニティにおいて、音楽の創造性や即興性がどのような役割を果たすのかについて、実践と理論を往復することにより考察した。実践における調査からは、メンバーの異なる参加動機や価値観を捉えることができた。この知見を領域横断的に考察した結果、即興演奏や創造的活動が個人や社会の課題と有機的に結びつき、コミュニティの維持・発展が導かれていることが見いだされた。
著者
吉益 光一 宮下 和久 福元 仁 竹村 重輝 清原 千香子 山下 洋 宮井 信行 吉川 徳茂 清原 千香子 吉川 徳茂 篠崎 和弘 宮井 信行 山下 洋
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

児童の注意欠陥多動性障害(ADHD)の原因として、妊娠期間中の母親の飲酒や喫煙などのライフスタイル要因が注目されている。今回、ADHD の子どもを持つ母親とそうでない子どもの母親に聞き取り式の面接調査を行い、これらの要因がADHD に関連しているかどうかを検討した。結果、妊娠中の喫煙のみADHD の子どもの母親に多かったが、妊娠中の精神的なストレスや母親自身のADHD 傾向の影響を除くと、統計学的に意味のある違いは認めなかった。
著者
松岡 聡 實本 英之 遠藤 敏夫 佐藤 仁 丸山 直也 滝澤 真一朗 佐藤 賢斗 Leonardo Bautista Gomez Jens Domke
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

エクサ(10の18乗)フロップス・10億並列のエクサスケール・スーパーコンピュータ実現には、規模の増大による故障率の増加に対応する必要がある。このための耐故障性基盤を確立することを目的として耐故障にかかわる複数の要素を対象とした複合的数理モデルの提案とそれを用いた軽量かつ高度な耐故障化手法を提案・評価した。また、開発したシステムの一部についてはオープンソースでの公開を行っている。
著者
森永 正彦 湯川 宏 吉野 正人 小笠原 一禎
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

光通信に用いられている石英系光ファイバーは、1.5μmの波長においてその損失が最も少ない。このため、波長が1.5μm近傍の発光材料の開発が急務である。本研究の目的は、エルビウム(Er)とアルミニウム(Al)を共添加したルチル(TiO_2)からの異常発光のメカニズムを解明し、ルチル系の新しい発光材料の量子材料設計を行うことにある。平成19年度の研究成果は、以下の通りである。1.2B属元素(Zn)添加による1.5μm帯の発光強度の増大昨年度の研究では、フォトルミネッセンス(PL)強度は、3mol%Er-TiO_2に比べて8mo1%A1-3mol%Er-TiO_2では約18倍、14mo1%Ga-3mol%Er-TiO_2では約23倍に増大した。このような異常発光現象は、8mo1%Zn-3mol%Er-TiO_2でも見られ、Ga添加材に匹敵するPL強度が観測された。一方、8mol%Cu-3mol%Er-TiO_2では、そのような現象は見られず、発光スペクトルは3mol%Er-TiO_2とほほ同じでPL強度も弱かったこのような添加元素による違いは、Al、Ga、Znはルチル(TiO_2)相中のTiと置換するのに対して、Cuは置換しないことが考えられる。共添加材の発光は、Erを固溶したルチル(TiO_2)相からのものであることが分かった。2.Erを固溶したルチル(TiO_2)相の中の発光の局所構造モデルの作成電荷補償の観点から、Erイオン周りの局所構造モデルを作成した。すなわち、+3価のErはTiO_2中の侵入型位置に入り、6個の酸化物イオンで囲まれている。添加元素(+3価のGa、A1や+2価のZn)は、Er近傍にある+4価のTiと置換して、電荷のバランスをとっている。例えば、Ga、Alの場合、Er近傍に3個が配置している。3.蛍光EXAFSによるエルビウム近傍の局所構造の決定8mol%Ga-0.5mol%Er-TiO_2を用いて、蛍光EXAFS測定を行った結果、上記のErの侵入型モデルを支持する結果が得られた。4.エルビウム(Er)の4f電子の多重項エネルギーの計算侵入型モデルを用いて、相対論DV-ME法によって、多重項エネルギーの計算を行った。
著者
高橋 応明 伊藤 公一 齊藤 一幸
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,インプランタブルアンテナを体内に植え込んだ時に,埋め込み部位の組織構造がアンテナの特性へ与える影響について検討を行った。周波数400MHzおよび950MHz,2.45GHzにおいて,胸部,腕部の組織構造を表現した高精細人体ファントムを用いて解析し,従来の均一組織での検討では適切でないこと,層構造の解析が必要であることを確認した。また,それぞれの周波数に適したインプランタブルアンテナの提案を行った。
著者
松永 京子
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

最終年度となる本年度は、昨年度行ったチカーナ文学における環境正義と環境アクティヴィズムの研究を踏まえて、シェリー・モラガやエレナ・マリア・ヴィラモンテスといったチカーナ作家たちの描く環境アクティヴィズム、宗教的シンボリズムの言説、そしてEl Theatro Campesino(農業労働者劇場)の研究をさらに発展させた。また、環境正義の視点からみる核/原爆文学研究をさらに進め、ジェラルド・ヴィゼナーやサイモン・J・オーティーズといった先住民作家の作品に関する核問題の研究を行なった。具体的には以下を実施した。1.シェリー・モラガ、エレナ・マリア・ヴィラモンテスといったチカーナ作家とEl Theatro Campesino関連の資料・文献を調査、収集(インターネット、大学図書館使用)。2.中・四国アメリカ文学会で、シェリー・モラガ作品における宗教的シンボリズムと環境アクティヴィズムについて発表。3.American Literature Association学会で、ジェラルド・ヴィゼナー作品にみる核問題について発表。4.Western Literature Association学会で、チカーナ作家と環境正義に関する論文を発表。5.ASLE-J大会のラウンドテーブルで環境正義の視点からみた原爆文学問題について発表。6.中・四国アメリカ学会のシンポジウムで、El Theatro Campesinoとチカーナ文学の関係について発表。7.原爆文学研究会でジェラルド・ヴィゼナー作品における核問題について発表。8.以上の学会発表に基づいて論文を執筆し、『文学と環境』、『原爆文学研究』といった学会誌や、Southwestern American Literatureといった海外のジャーナル等に投稿。
著者
川田 善正 金子 透 岩田 太 渡辺 修
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究実績の概要は以下のとおり.本研究では、フォトニック結晶構造を有する記録媒体を設計、試作し、その記録媒体にデータを記録・再生することによって、光波を制御し、高密度かつ高コントラストの3次元光メモリを開発することを目的として、研究を進めてきた。記録媒体中に3次元的なフォトニック結晶構造を創り込むことよって、記録するデータの空間周波数分布を制御することが可能になる。このため、データを再生する光学系のOTF(光学的伝達関数)に合わせたデータの記録を行なうことにより、データをコントラスト良く再生することが可能になる。また、フォトニック結晶における光の閉じ込め効果などを利用することによって、光の電場を増強し、より効率よくデータの記録、再生を行なうことも可能となる。さらに、記録媒体中に微細周期構造が作製されているため、それらの構造をガイドとして利用することによって、3次元的なデータのトラッキングも可能になる。今年度は、多層構造を有する記録媒体に、レーザー光を照射し、記録材料の特性を変化させることで、記録媒体中にメッシュ構造を有する3次元的な微細周期構造を作製した。このような記録媒体を用いることによって、面内データ間隔500nm,光軸方向のデータ間隔2μmで、3次元的なデータの記録再生に成功した。本研究で達成した記録密度は、これまで報告されているもの中で最も高いものである。さらに、本研究では、新しい記録媒体の作製方法として、粘着剤を利用した媒体作製方法を検討した。これまではスピンコート法を用いて媒体を作製してきたが、この方法では、媒体の厚みが均一ではなく、また記録層とバァッファ層に使用可能な記録材料の選択に制限があった。粘着剤を用いた方法では、フィルムを多層に張り合わせていく手法であるので、膜厚の均一性が良く、容易に多層構造を作製することが可能である。基礎実験により、粘着剤を利用した手法の有効性を確認した。
著者
平勢 隆郎 武田 時昌 岩井 茂樹 宇佐見 文理 高見澤 磨 大木 康 橋本 秀美
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

本学東洋文化研究所(上記の他橋本秀美・金児茂・山本和也)・同総合研究博物館(上記の他鵜坂智則)と京都大学人文科学研究所(上記の他守岡知彦)・同大学院文学研究科の教官が、複数の作業領域を作り、継続して検討を進めてきた。すでに二種のサーバーを作り上げた。いずれもトロン超漢字とリナックスを組み合わせたもので、一方は室内ランを構成し他方は所内ランを構成する。立ち上げたホームページなどを活用しつつ、今後も研究を発展させたい。東アジアの日本・朝鮮・中国は、それぞれ江戸時代・李朝・清朝の強い影響をうけている。その影響を歴史的にどのように把握し、効果的に発信するかをわれわれは検討した。そのためシンポジウム等を開催し、討論を進め、論文を発表した。主題は「江戸・明・古代を考える」である。「江戸」は江戸時代・李朝・清朝の時代を代表させ、かつ我が国を主軸に検討することを示す。「明」は、江戸時代・李朝・清朝に大きな影響を与えた時代であり、これなくしては、よきもあしきも議論することがかなわない。これで東アジア全体を視野にいれることを示す。「古代」は、東アジアにおいて共通して理想化された時代を考える。その理想と究明される実相とのへだたりが検討の要になった。研究の成果は雑誌『東洋文化』85号(特集「江戸・明・古代を考える」)および冊子『山中人饒舌注・上巻』などとして刊行。ホームページは、江戸時代の『左伝』・『史記』研究を紹介するページ、18紀前半に隆盛した明律研究と幕末の『海国図志』による西洋理解を紹介するページ、『警世通言』などの小説を読解するための基礎的工具書としての『三才図会』を紹介するページ、科学思想として『五行大義』『医心方』等の引用書データベースを公開するページなど。
著者
宮原 勇 宮浦 国江
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

研究代表者宮原は分担者宮浦と共同で「認知言語学」(Cognitive Linguistics)と現象学的言語論の統合の試みを行い、言語カテゴリー生成の一般理論の構築が目指された。そこでは、<カテゴリー生成の過程にとって具体的な身体的経験が根底において機能し、特に抽象的概念の形成やその理解にはメタファが深く関与している>ことが明らかとなった。また、その成果を承けて具体的に基本的な「哲学概念」を事例として、概念形成を最新の認知言語学のアナロジーやメタファに関する理論によって解明し、それぞれの基本的な哲学概念の根底に秘められている「根本的経験」の解明をするとともに、最終的にはアナロジーやメタファに関わる人間の根源的認知能力を現象学的観点から解明した
著者
大住 克博 横川 昌史 小椋 純一 佐久間 大輔 増井 大樹 小山 泰弘
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

里山景観は二十世紀初頭という比較的新しい時代に草山から里山林へと転換したことを、現象と仕組みの両面から明らかにした。広島県北西部では、大正初期から第二次世界大戦後の間に草地は1/5に減少した。一方、行政資料により復元された大阪府下の里山の資源利用は時間空間的に多様であり、草山から里山林への移行経過も単純では無いことが示唆された。火入れ停止後の草山は、前生樹の萌芽と風散布樹種の進入により森林化し、その後鳥散布樹種が進入して多様度の高い里山林へと移行することを明らかにした。一方草原性植物は、草地管理放棄後、短期間で消失しやすいものと消失しにくいものに分かれていた。
著者
廣瀬 通孝 谷川 智洋 鳴海 拓志 青木 邦雄 葛西 寅彦 誉田 匠
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,拡張現実感(AR)を用いて史料映像を展示物に重畳表示する際に,カメラマンの動きを再現するように体験者を誘導することによって,より強烈な体験を与えることのできる新しいAR展示技術「行動誘発型AR」を開発し,受動的に展示物を眺めるだけの既存展示手法では伝えられなかった空間的状況を容易に把握可能とすることを目的とした.(1)史料映像から動的な3次元空間とカメラパスを抽出・再構成する画像処理技術,(2)ARで提示する視覚刺激を用いて視覚誘導性の身体運動を生じさせ,体験者の鑑賞行動を誘導するヒューマンインタフェース技術を開発し,(3)ミュージアムでの大規模実証実験によってその有効性を示した.
著者
木村 有寿
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

ネットワークを通して業者と利用者,あるいは利用者間で座席の取引をリアルタイムに行うことを想定した座席予約に関する新たなビジネスモデルを提案し,その提案モデルに対する最適な取引を行うための座席予約システムの構築と運用を行った.具体的には,提案ビジネスモデルに基づく座席取引を想定した座席予約システムの運用シミュレーションにより,座席割当システムで使用する個体分裂アルゴリズムのチューニングを行った.チューニングは,個体分裂アルゴリズムにおける座席割当に関する部分を中心に行い,座席割当の最適解を求めつつ,座席割当の速度を上げることを可能にした.この過程において,個体分裂アルゴリズムは従来の手法に較べて規模の大きな組み合わせ最適化問題に使用することができるものの,適用する個々の問題に応じて行われるヒューリスティックな設定が計算の精度や速度を決定する大きな要因となり,その使用に関しては適用する問題への十分な理解が要求されることが再確認された.システムのチューニング終了後,学内ネットワーク上の40台のコンピュータを用いた運用試験を行った.ただし,今回のシステムでは,システムの安全性確保や利ざやによる利益の確保のみを目的とした不健全な座席の取引を排除する目的から,サーバ間の座席予約情報の受け渡しを一部人的な対応により行った.運用試験の結果,システムの安定的な運用に問題は生じず,小規模システムにおいては,十分に実用化が可能であることを示した.
著者
鈴木 芳代
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

研究計画に従い,線虫のコンピュータモデルの構築,実生物実験および生物モデルに基づく移動ロボットの制御実験を行った.これらの成果は,学術雑誌および国際学会にて発表した.それぞれの内容にっいて,以下にまとめる(次頁[雑誌論文]記載の順).1.線虫の機械刺激応答(走触性)を担う神経回路のモデルと運動を担う筋の簡略なモデルを作成し,両者を連結することで,前進・後退といった応答をコンピュータ上で再現した.2.地面の摩擦や筋の硬さ,体重など,1.では考慮できていなかったダイナミクスを考慮し,筋モデルをより詳細なものとした.また,筋を支配する神経回路を実生物に忠実にモデル化することで,複雑な運動を再現可能とした.神経回路モデルに含まれる一部の神経細胞を除去したシミュレーションでは,正常体をもとに作成した本モデルにより,変異体の挙動もある程度再現できることが確認された.3.方向制御を担う神経回路をモデル化することで,刺激に応じて運動方向を変化させる線虫の応答を再現した.また,実生物の立体的な筋構造を詳細に表現する体の3次元モデルを新たに考案し,方向制御回路と連結することで,刺激に応じた種々の空間的な運動の表現を実現した.4.1.の走触性神経回路モデルと2.のダイナミクスを考慮した筋の詳細なモデルを連結することにより,刺激に対する応答(前進・後退)をより実生物に近いものとした.5.日本原子力研究開発機構において,線虫の走化性やFood応答に対する放射線照射効果を調べる実験を行った.この結果をもとに,走化性や学習といった応答・機能をシミュレートする初期モデルを新たに構築した.6.構築した線虫モデルを用いて機械システムを制御することを目指し,まず,単細胞生物であるゾウリムシのモデルを用いて小型移動ロボットのバイオミメティック制御を行った.この結果から,線虫モデルに基づく機械システムの制御法について検討した.
著者
青木 周司 森本 真司 町田 敏暢 中澤 高清
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究においては、ドームふし氷床コアから空気を抽出し分析することによって、主要な温室効果気体である二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素の過去34万年に及ぶ変動の実態を明らかにし、さらに各気体成分の変動と気候変動との関係を明らかにした。それによれば、二酸化炭素濃度やメタン濃度は、暖候期には高く、寒候期には低くなっており、気温変化に極めて良く対応して変化したことが明らかになった。特に、メタン濃度は氷期・間氷期といった大規模な気候変動や、氷期中の比較的大きな気温変動に対応して変化しているばかりではなく、間氷期においてもヤンガ-ドライアス期やわずかな気候の寒冷化にも敏感に対応して変化していた。このことから、二酸化炭素とメタンが気候変動に正のフィードバック作用を及ぼしていたことが確認された。一方、一酸化二窒素についても氷期に低く間氷期に高いといった基本的な濃度変化が明らかになったが、濃度と気温との相関は比較的低かった。一酸化二窒素濃度が氷期の最寒期には310ppbvを越すような異常に高い値が必ず現れていたことを新たに見出した。このような高濃度は人間活動の影響が顕在化している現在の値よりも高く、氷期に露出した大陸棚での生物活動が関係している可能性が考えられる。また、コアから抽出した試料空気の酸素と窒素の同位体比を測定し、コアの年代決定の有効性およびコアへの大気成分の取り込み過程を検討した。これに関連して、フィルン空気の分析も行っており、その結果をモデルでシュミレートすることにより、空気が氷床に取り込まれる際の大気成分の濃度や同位体比の変化や、コア中の気泡とそれを取り巻く氷の年代差についても評価することができた。その結果、気泡の年代はそれを取り巻く氷の年代より常に若く、間氷期では年代差が約2000年であり、氷期には最大5000年まで拡大することが明らかになった。
著者
中澤 高清 中村 俊夫 吉田 尚弘 巻出 義紘 森本 真司 青木 周司
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

地球表層における温室効果気体の変動と循環の実態を明らかにするために、系統的観測や循環モデルの開発を基にした広範にわたる研究を実施した。得られた結果を要約すると以下のようになる。(1)CO_2、CH_4、N_2O,CO,HCFC,HFC、PFC,SF_6などの温室効果気体の濃度と同位体比を、日本上空、太平洋上、シベリア、南極昭和基地、北極スビッツベルゲン島などにおいて組織的に測定し、近年におけるこれらの時間的・空間的変動およびそれらの原因や支配プロセスを明らかにした。N_2Oについては同位体分子種の測定を世界に先駆けて行い、その結果を基にして発生・消滅過程の定量的解析を試みた。また、得られたCO_2濃度とδ^<13>Cの測定結果を同時解析することによって近年の人為起源CO_2の収支を推定するとともに、HCFC,HFC,SF_6の観測結果を南北2ボックスモデルで解析することによりそれらの放出量の時間変化を詳細に検討した。(2)全球三次元大気輸送モデルを開発し、濃度と同位体比を基に近年におけるCO_2およびCH_4の循環を定量化するとともに、高空間分解能の全球生態系モデルを用いて炭素循環における陸上生物圏の役割を解明した。また、全球海洋物質循環モデルを開発し、CO_2交換を基本的に支配する大気-海洋間のCO_2分圧差およびOCMIPプロトコルに基づいた海洋の吸収量を推定した。N_2Oについてはマルチボックスモデルを構築し、過去500年間の大気中濃度の再現を行った。(3)大気-岩石圏における炭素循環の理解を向上させるために、観測に基づいて化学風化に伴う炭素フラックスおよび地下深部から大気へのフラックスの評価を行うとともに、炭素循環におけるサンゴ礁の寄与を検討し、その役割がザンゴ礁によって異なることを明らかにした。
著者
燕 軍 相澤 幸夫 磯貝 純夫 人見 次郎
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

僧帽筋の二重神経支配について数多くの研究がなされたが、主に支配神経のニューロンの局在分布に注目し、これらの運動ニューロンの軸索が副神経と頚神経前枝の2つルートを通って筋に入ることが明らかになった。しかし、二つルートを経由するニューロン局在の違いの有無、頚神経経由する線維に運動成分について、もっと具体的に論じていない。我々は、実験動物(ラット)を利用し蛍光色素DiIと組織化学染色法で頚神経前枝と副神経との交通枝を経由して僧帽筋に分布する神経線維の筋内分布領域も同定し、さらに、ニューロンの逆行性標識に信頼性の高い蛍光色素DiIとDiOを用いて、副神経の運動ニューロンの分布を調べ、3D再構築法を加えて立体的にこのニューロングループの脊髄前角内の局在を観察した。結果、僧帽筋を支配する線維の運動ニューロンは、副神経根を経由するものと頚神経前根を経由する二種類のニューロンが脊髄前角の同じ領域に存在しているけれども、主には背側に向かって走行し脊髄の背外側から出る軸索と、腹側に向かい脊髄を出るものがあることを初めて明らかにした。さらに、同じ領域に局在している、副神経根を経由する線維は主にαニューロンで、頚神経前根を経由する線維は主にγニューロンであることも明らかにした。一方、頚神経由来する線維の末梢の筋内分布を調べた結果、筋紡錘に分布する線維が多数認められ、また運動終板に分布する少数の線維も認められ、γ運動線維とα運動線維と判断できた。これらの実験により、僧帽筋を支配する運動ニューロンの脊髄前角における局在領域とニューロンの種類は、筋内の分布様式と一致し、僧帽筋の二重神経支配の仕組みが明らかとなった。しかも、本研究の結果によって、臨床に副神経切断されたにもかかわらず、僧帽筋の「弱い」随意運動が依然観察される結果に対しても説明できる。一方、副神経核のニューロンは同じ領域に局在しているにもかかわらず、軸索の伸長が背腹両方向であることについて、ラット胚を用いて解析も進めている。
著者
吉田 治人
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

スクールバンドの現場において、指導法に問題及び悩みを抱える指導者は少なくない。本研究では、申請者が現場に赴き、実際に生徒達に指導するプロセスを指導者に観察してもらい、懇談を繰り返すことで、指導力を向上させることを試みた。1年目は申請者が提唱する「fWO(フォー)」という息の出し方の説明に主眼を置き、音質の統一に向けた指導、2年目には音程を合わせることに主眼を置いた指導、3年目には総合的な合奏力を養うことを主眼に置いた指導を行った。成果としては、懇談及び指導中の指導者の発言から意識向上が見られ、吹奏楽コンクールの審査評価及び成績においても、ほとんどの団体が前年度と比較し、向上が見られた。
著者
戸ヶ里 泰典 山崎 喜比古 小手森 麗華 佐藤 みほ 米倉 佑貴 横山 由香里 木村 美也子
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

2008年度、2009年度の、5月、11月、2月に、本調査対象校中央大学附属高等学校の2007年度、2006年度入学生を対象とし、6回の調査を実施した。そこで、2007年に実施したデータと合わせて、1年生の5月から3年生の2月まで計9回にわたり測定されたsense of coherence(SOC)スコア変動および、その変動に及ぼす要因の探索を行った。その結果、中学時代の課題に対する成果、成功経験や、高校生初期の教師との関係、あるいは、教師によって作り出される受容的な環境が、その後のSOCの上昇を大きく左右していること、学校に対する誇りや居場所感とも言えるような学校における所属感覚もまた、大きくSOCの変動を左右していることが明らかとなった。
著者
山崎 喜比古 井上 洋士 伊藤 美樹子 石川 ひろの 戸ヶ里 泰典 坂野 純子 津野 陽子 中山 和弘 若林 チヒロ 清水 由香 渡辺 敏恵 清水 準一 的場 智子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

健康生成論と人生究極の健康要因=Sense of Coherence(SOC、首尾一貫感覚)並びにエンパワメントアプローチを取り入れた、支援科学でもある新しい健康社会学の理論と方法を、「健康職場」づくりの研究、病と生きる人々の成長と人生再構築に関する研究、SOCの向上や高いことと密接な正の関連性を有する生活・人生経験の探索的研究、当事者参加型リサーチを用いた調査研究の展開・蓄積を通して、創出し描出した。