著者
宗宮 弘明 宮崎 多恵子 後藤 麻木
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

魚類、両生類(サンショウウオ)、爬虫類(ヤモリ、カメレオン)、鳥類(カナリヤ)さらには哺乳類の一部(ラット、マウス)も紫外線視覚(UV Vision)を持ち、摂餌、配偶者選択、コミュニケーション等に利用する(Yokoyama 2000)。初年度(H14)にショウワギスとボウズハゲギスの網膜を調べ、それらが紫外線視覚に関与するUV CONEを多数網膜底部に持つことを明らかにした(Miyazaki et al. 2002)。また、タペータムを持つカイワリ(アジ類)は紫外線視覚に関与するUV CONEを持たないことがわかった(Takei & Somiya 2002)。次年度(H15)にはテッポウウオが空中を見るにもかかわらず紫外線視覚に関与するUV CONEを持たないことがわかった。最終年度(H16)にはヨツメウオの視覚特性を探求し、それらが紫外線視覚を持つことがわかった。また、ヨツメウオの網膜特性の研究の結果、従来いわれていたように、ヨツメウオは腹側網膜で空中視を行い、背側網膜で水中視せずに水平Visual streakで空中視も水中視も受容していることを証明できた。しかし、ヨツメウオ紫外線視覚の機能については解明することが出来なかった。当初、研究の方針は、網膜の博物学的組織学と分子生物学の二本建てで進める予定であったが、分子生物学学的研究が思うようにはかどらず現在も継続中である。しかし、現時点で、今回の研究結果をまとめると次のようになる。魚類の祖先がすでに紫外線視覚を持っていたことは良く知られている。一般に紫外線の無い環境に生息する魚類、たとえば、シーラカンスは紫外線視覚を持たない(Yokoyama et al. 1999)。紫外線の多い環境にすむ魚種でもテッポウウオのように紫外線視覚を利用しない魚種もいる。おそらくそれは、紫外線が網膜に悪影響を与えることに関係しているかも知れない。
著者
児玉 年央
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

多くのグラム陰性病原細菌は3型分泌装置を使って、エフェクターと総称される病原因子を直接宿主細胞に注入することで、病原性を発揮する。申請者はこれまでに食中毒原因菌である腸炎ビブリオの3型分泌装置の一つであるTTSS2が本菌の下痢原性に必須であることを明らかにしてきた。しかしながら、このTTSS2依存的な下痢原性に寄与するエフェクターは不明であった。本研究では、TTSS2依存的な下痢原性に寄与する新規エフェクターとしてVopE を同定した。VopEは構造的にN-terminal domain、long repeat (LR)domain、C-terminal domainに分けられる。申請者はLR domain、C-terminal domainがそれぞれ独立してactin 結合活性を持つこと、これらの結合がVopE の下痢誘導活性に必要であることを見いだした。さらに、TTSS2やVopEはnon-O1/non-O139 V. choleraeの下痢原性にも寄与していることを明らかにした。これらの結果により、VopEはF-actinを標的とする新規エフェクターであり、TTSS2を保有する病原細菌の下痢原性に寄与していることが示唆された。
著者
村山 美穂 ARNAUD Coline ARNAUD Coline
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、長期にわたる観察により母系の血縁が判明している野生ニホンザル集団を対象として、性格の進化過程の解明を目指した。本年度は、前年度までに蓄積した幸島ニホンザル集団における 1.新奇性探求の行動テスト、2.質問紙による性格評定、3.血縁関係のデータの相互の関連性を解析した。新奇物体テストでは58%、新奇食物テストでは19%の個体が全く接近しなかった。新奇物体テスト項目は1主成分、新奇食物テスト項目は2主成分に分かれた。新奇物体や新奇食物への接近が遅い個体は、接近後に食物を調べたり味をみる時間が短かった。性別、年齢、給餌、指向数、時間、季節、他個体の有無などの影響は見られなかった。メスの順位の高い個体は中・低順位と比較して、新奇物体への興味が弱い傾向にあった。母子を除く近縁個体は、遠縁個体に比べ、新奇食物への興味(調べたり味を見る行動)のスコアが似ていた。このことから新奇食物への興味は、母親から社会的に伝わる影響に加え、遺伝的な影響も大きいことがわかった。性格評定の質問20項目中、評定者間の一致度が高かった12項目を用いて因子分析を行った結果、“Loneliness”,“Subordination”, “Emotionality”の3因子が抽出された。これらの結果をまとめて国際学会で発表し、学術雑誌に投稿した。
著者
藤原 一宏 斉藤 秀司 落合 啓之 宇沢 達 向井 茂 斉藤 毅
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

A.Wilesによって得られた楕円曲線についての谷山-志村予想の部分解を分析して得られたTaylor-Wiles系という公理系はEuler系と共に岩沢理論における基本的な道具に成長しつつある.このTaylor-Wiles系についての研究が本研究期間中に以下の方向に発展している.a)肥田氏により構成されたnearly ordinary Hecke代数に対するR=T型定理b)総実代数体上の円分塔(cyclotomic tower)の研究c)高次元ユニタリ志村多様体に対するTaylor-Wiles系の構成a)の研究では肥田晴三氏(UCLA)によるnearly ordinary Hecke代数は既約剰余表現に対応するほとんどの場合に普遍変形環と同一視されることを示した。b)ではまず非可換岩沢-Greenberg予想とでも言うべき問題を定式化した.この問題の研究のため円分塔上での変形理論を構成し,特別な2次元表現の場合にはTaylor-Wiles系を使うことで古典的な岩沢-Greenberg予想と同値であることを見いだした.この結果は2000年度保型形式論国際シンポジウム(パリ)で発表した.c)ではユニタリ志村多様体のコホモロジー群が持つ自然なintegral structureに対してTaylor-Wiles系を構成した.この結果については国際シンポジウム「代数幾何学2000」(長野,日本,2000年7月),第三回アジア国際数学会議(マニラ,フィリッピン,2000年10月),ジョンズホプキンス大での国際ワークショップ「保型表現と志村多様体」(ボルチモア,アメリカ,2001年3月)で発表した.以上の研究については講演の他,詳細をプレプリントとして公表,投稿している.
著者
藤野 陽三 長山 智則 本田 利器
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、社会基盤施設に関わる災害事故の未然防止、保全の効率化のためには振動モニタリング法が有効であることを,いくつかの実構造物におけるモニタリングデータの分析例から具体的に明らかにした.また,「想定外」事態の未然検出に対しても、その有効性を示すとともに,社会基盤施設の終局性能の推定の立場からモニタリングデータからのモデル化を具体的な例を通じて示した.なお,ワイヤレスセンサーによるマルチホップデータ通信などのミドルウェア技術や損傷検出技術についても高い成果を挙げた.
著者
谷口 和弘
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

我々は,使用者が機器操作を目的として意図的に行うこめかみの動きを機器制御信号として利用することで使用者が常時利用でき,日常の生活に支障をきたすことなく,ハンズフリーで使用でき,小型軽量安価で製造可能な,機器制御を意図した動き以外の会話や食事などの日常的な動作には反応しない,ウェアラブルコンピューティングのためのヒューマンマシンインタフェースを開発した.本インタフェースは,左右のこめかみ付近に専用の取り付け具で配置した左右1つずつの光学式距離センサと1つのシングルチップマイコンで構成されている.
著者
東原 真奈
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

【目的】小児神経筋疾患の診断にClustering Index(CI)法の有用であるかを検討する【方法】対象は神経筋疾患の患児39名(神経原性疾患15名,筋疾患24名,年齢8.8±4.1歳).前脛骨筋における1秒間の随意収縮活動記録(epoch)を1名につき20~50個記録し,CIおよびareaを算出した.【結果】神経原性疾患836 epochと筋疾患992epochを解析.本法により神経原性疾患7名,筋疾患14名を正しく診断可能で,特に脊髄性筋萎縮症で7名中4名,Duchenne型筋ジストロフィーでは12名中9名が判別できた.【結論】CI法は小児神経筋疾患の鑑別診断において有望な方法である.
著者
鈴木 絢女
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、開発志向国家における財政と民主主義の関係をテーマとしている。1990年代に高度経済成長や健全な財政政策に成功したとして称揚されたマレーシアにおいて、アジア通貨危機以降、財政赤字が持続し、政府債務が拡大している。この背景として、①通貨危機時に景気浮揚策として拡大した財政が、長期政権を担う与党国民戦線の指導者の政治的資源となることで、財政の出口の改革が困難になったこと、他方で、②与党が有権者の支持を失うことを恐れ、増税による歳入基盤の強化が遅れたことが指摘できる。出口改革の遅れは有権者の増税に対するさらなる抵抗感の拡大をもたらしており、財政赤字や累積債務の解消はさらに困難になりつつある。
著者
石川 澄 奥原 義保 合地 明 木村 映善 津久間 秀彦 田中 武志 岩田 則和 石田 博 横井 英人 森川 富昭 花田 英輔 原 量宏 井上 裕二 太田 吉夫 岡田 宏基 森口 博基 石原 謙 近藤 博史 北添 康弘 畠山 豊 渡部 輝明 中島 典昭 栗原 幸男 片岡 浩巳 岩崎 泰昌 野々村 辰彦 園田 武治 中野 直樹 稲岡 則子 堀 信浩
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

現在の医療記録の電子化は記録を利用することを軽視していないか?電子医療記録の利用ができない、あるいは利用がしにくい要因を分析した結果、患者の診断・治療と評価のために蓄えられる情報の信憑性に問題があるのではないかと仮定した。年2回のワークショップに於ける議論や日本医療機能評価機構の情報機器・IT化部会の協力で行ったアンケート評価に基づき、情報の信憑性を阻害する因子をソフト的、ハード的、および人為的要因に分けて分析した。更に分析結果から「患者がどのようになったら良いのか」という医療のゴールに向かって診療と治療が行われる過程で「記録」にどのような要件と問題点が存在するかを検討した。結果、電子医療記録の信憑性を阻害する要因は、次の4段階の構造モデルに分類された。すなわち、データレベルにおける「正確性」と「連続性」の確保を基盤とすること、データを系統別に分け長期にわたり視認できる「通覧性」を確保すること、そして目標達成にむけてその道筋を誰もが理解できる形で表現して「物語性」を確保すること、である。そしてモデルの各段階におけるソフト、ハード面、および人為的に複合する解決策の提案を行った。
著者
高野 量
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

PB1-F2タンパク質発現ミュータントであるウイルスをリバースジェネティクス法により作出した.作出したウイルスのウイルス学的特徴を調べるべく,これらのウイルスをヒト腎臓由来細胞株であるHEK293細胞に感染させ,遺伝子発現量の違いをqRT-PCR法により解析した.その結果,野生型PB1-F2タンパク質を有するウイルス株は,それが短い・あるいは完全に欠損している変異株と比べて,有意にインターフェロンベータ(IFN-β)の発現を強く誘導することが判明した.一方で,感染細胞内において,PB1-F2と相互作用する宿主因子を探索すべく,PB1-F2タンパク質を強制発現した細胞において免疫沈降を行った後,LC-MS質量分析器を用いて解析を行ったところ,90個の新規宿主タンパク質が同定された.感染細胞内においてPB1-F2タンパク質と相互作用し,かつIFN-βの発現に関与するタンパク質を同定するために,PB1-F2タンパク質発現ミュータントと,野生株のインフルエンザウイルスを用いて,LC-MSで同定された宿主因子をsiRNAを用いてノックダウンさせた細胞において,それぞれのウイルスを感染させ,IFN-βの遺伝子発現量をqRT-PCR法により測定した.いずれの宿主因子をノックダウンした細胞においても,IFN-βの遺伝子発現量に大きく影響する因子は同定されなかった.これらの知見から,PB1-F2タンパク質は感染細胞内において,IFN-β誘導能を示すものの,同定されたPB1-F2と相互作用する宿主因子によって介されるIFN-βの発現誘導形態を取らないことが示唆された.先行研究から,新型インフルエンザウイルスにおいて,PB1-F2を保持する変異体が,野生株と大きな哺乳類への病原性の変化を示さないことが判明しており,PB1-F2タンパク質の宿主への病原性への寄与は大きくないことが示唆された.これらの結果から,新型豚由来HINIウイルスにおいて,PB1-F2タンパク質が,宿主応答へ大きな影響を持たないことが示され,新型ウイルスの強毒化にPB1-F2タンパク質が寄与するかという本研究の目的は達成された.
著者
近藤 公夫 王 敏 日色 真帆 三上 晴久 廣川 美子 川村 政美
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

日本の文化史に1000年前の金色堂に見られる黄金よりも、500年前の銀閣に銀をもって蔽った漆のたたずまいを好ましいかに思う今日の心象、その心象が形成された風景の源流を三内丸山以来の伝統に考えるのは是か非か。あえて日本の赤をめぐる景観の源流として三内丸山の風景をとりあげ、そこに出土した赤漆の色に「日本の赤と中国の赤」に関する調査研究の拡大と深化に係わる発展的な端緒を求めたいと考える。おそらく今日の科学をもってすれば什器に見られる彩文の赤漆について、あるいは同様に出土している黒漆などに関しても、その原色を解明して三内丸山の文化に迫る可能性は考えられよう。そこから四季の自然に恵まれ秋季の紅葉があざやかな東北日本にあって、今も日本民族の心象に伝わる縄文文化に投影された赤の風景を、その植生に見られる景観の変化から考え得るとも思われる。さらには重ねて司馬遼太郎氏がこの地を北のまほろばと記した秋色を思えば、日本の赤についての源流を縄文時代の赤漆と山野の紅葉から妄想した次第について、ひとつの心象的な風景へと思いを致さざる得ない。4000年前以上もの太古に三内丸山社会が見せた情景、遠近の人々を集めた祭祀のにわに赤が演じた風景とは何であったのか。それは後世の神前に舞う乙女達の白衣紅裳とは果たして連なるものか、あるいは東アジア文化に如何なる位置を占め、それは如何なる変遷を経て今日の伝統文化と結ばれ得るのか。それは自然科学から考古学そして歴史学から文化人類学、それぞれの検討を総合した上に新しい展開を今後に期待させる課題に連なるであろう。
著者
伊藤 昭博 平井 剛
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

細胞のがん化におけるタンパク質SUMO化の役割を、ケミカルバイオロジー的手法を用いて明らかにすることを目的とした。これまでに複数のSUMO化阻害剤の同定に成功した。その中でもspectomycin B1のようなSUMO E2を阻害する低分子化合物は抗乳がん剤として有望であることを示した。さらに、SENP1阻害剤は低酸素微小環境下のがん細胞の生存に重要な転写因子HIF-1αの活性を減少させることを見出した。加えて、スプリットルシフェラーゼの原理を応用したHTS可能なSUMOとSIMの結合を測定可能なアッセイ系の構築に成功し、SUMO-SIMの結合を阻害する世界初の小分子化合物の同定に成功した。
著者
廣瀬 純夫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

1990年代以降の資金調達環境の変化が及ぼした影響について,実証分析での検証を行った.具体的な研究成果は,以下の3点である.①リレーションシップ・バンキングの特徴として,借入先変更のスイッチング・コストが存在するため,貸出先を割当先とする非効率な銀行の自己資本調達が行われていたことを明らかにした.②敵対的買収防衛策導入後の長期の株価パフォーマンスやトービンのQの変化を検証し,導入が始まった過渡期に導入した企業と,制度運用が安定した時期に導入した企業との差異を検証した.③私的整理による企業再建について,メインバンクへの影響が大きい大口貸出先であるほど,再破綻する可能性が高くなることを確認した.
著者
田中 克典 鈴木 雅一 田中 延亮 松尾 奈緒子 小杉 緑子
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

自然環境下のチークでは、乾季の2014年2月から4月にかけての樹液流が停止、完全に落葉した。散水による湿潤土壌下では、葉が付いた状態での新葉による更新がなく、3月に完全落葉し、樹液流が停止した。2週間後、展葉して蒸散活動を再開した。根系の土壌水分は展葉・落葉現象に最も影響したが、他の要因によって落葉期間が発生することを確認した。幹は自然状況下と散水下とも2014年4月から9月まで成長し、成長期間に違いがなかった。光合成能を示す葉内窒素濃度は土壌水分量の低下に影響を受け、湿潤下のチークのほうが光合成能の低下は遅かった。一定の水消費に対する炭素獲得は、湿潤下のほうが自然状況下よりも低かった。
著者
前田 恵一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、現代宇宙論における最も重要な課題「ダークエネルギー問題」に対して、[(1)物質としてのダークエネルギーの可能性、(2)重力理論の違いが見かけ上のダークエネルギーを示唆する可能性、(3)その他のより自然なモデルの可能性]の3つのアプローチから総合的な解析を行い、特にブラックホールや中性子星など強重力天体とダークエネルギーの共存系の解析が重要であることを指摘した。
著者
松岡 光治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、ヴィクトリア朝の文学テクスト-主にディケンズ、ギャスケル、ギッシングの小説-を一次資料とし、そこで明示的/暗示的に描写されたイジメの場面に焦点を定め、19世紀イギリスの時代精神と社会風潮の影響を受けた人間のイジメという言動の法則性を突き止め、そうしたイジメの言説を表出させている社会的および心理的文脈を解明した。
著者
山本 眞史 植村 哲也 松田 健一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-05-31

本研究の目的は本質的に大きなスピン偏極率を有するハーフメタル材料のCo基ホイスラー合金と,高移動度半導体チャネル(Ge等)を融合する高品質エピタキシャルヘテロ構造の実現を通して,次世代半導体スピントロニクスの基盤を構築することである.平成24年度は,強磁性CoFe電極からMgOバリアを通したn-Geチャネルへのスピン注入の特性を実験的に詳細に検討し,以下の知見を明らかにした.CoFe/MgO/n-Ge接合に対して,2.25 nmから2.75 nm の範囲のMgOバリア厚み(t_MgO)に対して,室温で,3端子配置により明瞭なHanle信号(磁化は面内,磁場を面に垂直に印加)および逆Hanle信号(磁場を面内に印加)を観測した(スピン注入の方向: 強磁性体から半導体チャネルへのスピン注入).また,スピン信号ΔVの大きさ(Hanle信号と逆Hanle信号の和)から見積もったspin-RA積(ΔRsA=(ΔV/I_bias)A)は,例えばt_MgO=2.4 nmの接合に対して,半導体へのスピン注入の標準理論(Fert and Jaffres, 2001)の値の4桁大きな値であった.さらに,spin-RA積はt_MgOに対して指数関数的な依存性を示すことを見出した.一方,標準理論では,spin-RA積はt_MgOに対して依存性を示さない.このように,これらの実験結果は,観測されたHanle信号が半導体Geチャネルでのスピン蓄積によるというモデルでは説明できない.この結果を説明するため,トンネル接合界面に存在する局在状態での,磁場によるスピンの歳差運動によりスピン偏極率が低下し,このためフェルミレベルでのアップスピンとダウンスピンの波数が変化し,結果として,トンネル確率が磁場によって変調されるというモデルを提案した.
著者
大塚 耕太郎 鈴木 友理子 藤澤 大介 米本 直裕 加藤 隆弘 橋本 直樹 岩戸 清香 青山 久美 佐藤 玲子 鈴木 志麻子 黒澤 美枝 神先 真
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

医療、精神保健、および家族、社会的支援制度に該当する領域(法律、生活相談)、教育など幅広い領域におけるゲートキーパー養成プログラムを内閣府と協力して作成した。また、内閣府との共同で全国へ研修会やITを通じた普及を図り、ファシリテーター養成のためのプログラムを提供した。うつ病、統合失調症、不安障害、物質依存という4つの精神疾患の危機対応法プログラムとファシリテーター養成プログラムの開発を地域の精神保健に関する関係機関と共同で行い、有効性や妥当性を検証した。
著者
高木 真人 阪田 弘一 永田 恵子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

こどもの外遊びを回復させるために、日本の伝統的空間である縁側に着目した。そして、縁側のある保育施設で観察調査し分析することにより、「外遊びに展開しやすい縁側」について提案した。縁側が活発に使われている保育園では、幅が広く(約2m以上)、通行しやすく、室内と広くつなげられていた。また、保育室面積の大小に関わらず、こどもたちは自ら縁側に出て遊んでいた。滞留が多い縁側ほど保育室や園庭との出入りも多くなる。また、縁側の回遊性や園庭と積極的につなげるような形状も、縁側における滞留や通行を促すので外遊びへの展開に寄与するといえる。
著者
山下 裕企
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、税負担削減行動の指標の日本における特徴および有用性について、理論的・実証的に検討するものである。本研究では、カレント実効税率、残余BTD、およびtotal BTDという3つの指標を取り上げ、これらの年次傾向、業種傾向、決定要因、および連結と単体の違い等を明らかにした。さらに全体として、単体に比べて連結の税負担が重い傾向にあるが決定要因は共通のものが多いこと、日本では残余BTDとtotal BTDが同様の傾向を示していることなども明らかになった。