著者
中村 和恵
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

先住民族とは誰かと問うことは、文明、民族、進化といった概念、さらに欧米中心主義と近代日本人の民族観の複雑な関係の再検討でもあった。方法としては現地調査と文学テキスト分析の両方を用いて具体的な個人の声を重視し、カリブ居留地とジーン・リースのカリブおよび日本人描写、オーストラリア先住民の「秘密の聖物」出版・展示に関する論争、アイヌ文化の現在ほか、インド、タヒチ、マルティニーク、エストニア等でも調査研究を行った。
著者
猪上 華子 加藤 輝之 中井 専人 津口 裕茂 猪上 華子 加藤 輝之 廣川 康隆
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本付近の豪雨発生の大気状態を判断すべき高度として、客観解析データや雲解像数値モデルの統計結果から今まで用いられてきた850hPa気圧面(~1500m高度)でなく、500m高度が最適であり、適切な判断要素として同高度の相当温位・水蒸気フラックス量であることを明らかにした。各要素に対しては季節や地域別に客観的に指数化した。豪雪時のレーダー観測との統計的比較から、降雪系によって異なる大気状態が現れやすく、そのことと降雪分布との関係が示唆された。
著者
中井 亜佐子 中山 徹 三浦 玲一 越智 博美 鵜飼 哲 河野 真太郎
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、モダニズム研究を地域および時代横断的に展開することによって、越境性と地域性の相互関係を分析し、従来的なモダニズムの時代区分を再検討しつつ、近代の時空間にかんする理論構築を行った。より具体的には、(1)英米の正典的なテクストを、精神分析的および歴史的観点から批判的に精読することによって、モダニズム・モダニティの理論構築を行う、(2)マイノリティや(旧)植民地地域の複数化されたモダニズムを研究し、近代の時空間を理論的、実証的に再検討する、(3)イギリス、北米のモダニズム研究者と研究交流を行い、新しいモダニズム研究のネットワークを構築する、という3点の成果を挙げることができた。
著者
石濱 正男
出版者
神奈川工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

路面からの加振によるタイヤ構造振動と騒音の数理的モデル化をほぼ完成した.また,路面接触による空力的ポンピング音の発生数理モデルを構築した.これにより,タイヤの主要諸元,構造設計要素,路面凹凸の放射騒音への影響予測が従来よりも正確にできるようになった.素性の良い次世代タイヤの方向を定めることができるようになった.さらに,非ニュートン性減衰材をトレッド内に貼付して,転がり抵抗を増やさずにタイヤ振動を低減する新技術を開発した.これにより,環境と安全両性能に優れた次世代タイヤ像として,大径・細幅・高圧タイヤを提示することができた.また,その実力を評価し,その正当性を確認した.
著者
齋藤 伸子 佐々木 倫子 松下 達彦 藤田ラウンド 幸世 安藤 節子 堀口 純子 佐々木 倫子 松下 達彦 宮副ウォン 裕子 安藤 節子 藤田ラウンド 幸世 堀口 純子
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

私立中規模大学における「自律学習を基盤とした個別対応型日本語授業」の実践を分析・考察することをとおして、「意識する→計画する(学習目標を決める→学習計画を立てる→評価方法を決める)→実行する→振り返る」という実践の流れがモデル化された。また、研究期間に行われた実践者グループによる振り返りや議論の成果として、「柔軟な意識をもった教師」の存在という要素の重要性も今後の検討課題として浮かび上がってきた
著者
高橋 和久 阿部 公彦 富山 太佳夫 丹治 愛 丹治 陽子 原田 範行
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究をつうじてわれわれは、大学教育のなかで教育目標の明確化(とくに就業力との関連で)が求められてきている現状を踏まえ、(1)かつて教養主義という名のもとにほとんど自明とされていた英文学教育の理念・目的を、学生の就業力養成と関連させながら再構築し、(2)その理念・目的を実現するための英文学教育の具体的な方法論と教材を開発するとともに、(3)そのような英文学教育の理念・目的と連動する英語教育の方法論と教材を開発したうえで、研究の成果を日本英文学会の活動をとおして発信することをめざした。
著者
小田川 大典 太田 義器 安武 真隆 犬塚 元 石川 敬史 遠藤 泰弘
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究成果の概要(和文):オットー・フォン・ギールケ、ジョン・スチュアート・ミル、ジョン・アダムズ、デイヴィッド・ヒューム、フーゴー・グロティウスの著作の解読を中心に、近代政治思想史における制度論の諸相について思想史的、理論的な研究を行い、社会思想史学会(2012、2013、2014)、日本政治学会(2013、2014)で関連するセッションを開催した。また関連する研究報告を政治思想学会(2013)で行った。
著者
三木 哲郎 上島 弘嗣 梅村 敏 小原 克彦 田原 康玄
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

多因子疾患の感受性遺伝子に関する長期縦断疫学研究を行った。これまでの断面的解析から同定された肥満、2型糖尿病、高尿酸血症の感受性遺伝子が、これら疾患の新規発症とも関連することを明示した。断面解析からは、ATP2B1が高血圧感受性遺伝子であることを突き止めた。ノックアウトマウスを用いた検討から、ATP2B1は細胞内カルシウム濃度および血管収縮性の亢進を介して血圧上昇を来していることが明らかとなった。
著者
堤 仁美
出版者
昭和女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

新型インフルエンザをはじめとした感染症の流行の際には、患者を診察する医療従事者への感染が大きな問題となる。本研究では、医療福祉施設において、感染症患者の咳による医療従事者に対する感染リスクを低減する建築・設備の提案に向け、模擬咳気流発生装置開発、感染対策手法の感染リスク低減評価、CFDによる気流解析、診察・診療行為の動作範囲測定、医療福祉施設における感染リスクの評価方法の提案を行った。
著者
青木 勇二
出版者
東京都立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

遷移金属人工格子系で発見された巨大磁気抵抗効果が、近年、幾つかの希土類元素を含んだ金属間化合物でも観測されることが明らかとなってきた。両者に類似性があることから、その起源として同じメカニズムが考えられていた。本研究では、人工格子系では事実上不可能であるが金属間化合物では有力な研究手段となりうる比熱測定により、その巨大磁気抵抗効果を調べた。本研究では、巨大磁気抵抗効果が観測される金属間化合物として、UNiGaを中心に調べた。この化合物では、磁場印加によりその積層状態が、反強磁性的→強磁性的と変化するメタ磁性転移において約90%もの大きな負の巨大磁気抵抗が観測される。このメカニズムが何なのかが重要な問題であり、これまでに以下の二つの提案がなされた。つまり、(ア)同様な巨大磁気抵抗が観測されている人工格子系で提案されているスピン依存散乱、(イ)反強磁性状態でのフェルミ面上のスーパーゾーンギャップの形成である。本研究における大きな発見は、この転移で電子比熱係数が強磁性相で10%ほど増大することを初めて見出したことである。この変化は、明白にフェルミ面が変化していることを意味しており、後者の機構の直接的な証拠である。さらに、極低温で核比熱を観測し、Ga原子の核の有効磁場を求めた。この磁場から、反強磁性相での磁気構造を裏付けた。さらに本研究を、Eu、Smの希土類を含む金属間化合物に適用した。(「研究発表」参照)さらにこの様なメタ磁性転移における熱物性研究のため、定量的な磁気熱量効果測定方法の開発を進めた。CeRu2Si2における試験的実験により、磁気エントロピーの磁場依存測定が可能であることを示した。
著者
松井 有恒
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

口腔病原性細菌群に対する免疫応答評価ならびにバイオフィルム構築等の細菌の活動性を評価する際、円筒型のPDMS製チャンバー(Pore size100-200um)が最も効率良く細胞回収、評価ができることを確認した。本デバイスでは特に好中球の挙動観察に有利であった。チャンバー内部のバイオフィルムの形成状況を評価すべく、ホルマリン固定の上パラフィン包埋し評価を行ったところ、チャンバー内表面よりバイオフィルム様の構造を確認しそれらは24hの時点で4種の細菌を混合した系においては、コントロール群と比べ肥厚している傾向を呈した。定量化および安定した構造解析にはなんらかの内表面処理が必要なことが示唆された。
著者
多田 達哉
出版者
独立行政法人国立国際医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2011年に日本の医療施設から収集した多剤耐性緑膿菌300株を解析した結果、新規アミノグリコシド耐性因子AAC(6')-Iajを同定した。AAC(6')-Iajは日本で広く分離される多剤耐性緑膿菌が保有するAAC(6')-Iaeに比べてアルベカシン耐性度が高かった。また、2012年度に分離された多剤耐性緑膿菌300株を解析した結果、IMP-typeメタロ-β-ラクタマーゼの新規バリアントIMP-43およびIMP-44を同定した。これらのIMPバリアントはよりカルバペネム分解能が高いことが明らかとなった。
著者
斎藤 進 AGRAWAL Santosh AGRAWAL Santosh
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

金属錯体触媒を用いるカルボン酸の触媒的水素化法の例はこれまでほぼ皆無問いってよい. 不均一系金属触媒を用いる方法が一般的だが, 高温・高H_2圧を必要とし副反応を伴う. Re^0/Mo^0などの異核金属クラスター触媒を用いる方法では, 芳香環も水素化されてしまうため官能基選択性に乏しい. カルボン酸の水素化が難しいのは, カルボン酸自身が酸であることが一因としてあげられる。一般的にアミドやエステルなど, 不活性カルボニル化合物の水素化は「塩基性」条件下で行われた場合に効果的である場合が多い. カルボン酸自体が提供する「酸性」条件下での水素化の一般的な指導原理が実質的にはないためであると考えられる. 今回新しい考え方として塩基性条件での反応にならないよう, ルイス酸性をもつ「高原子価」遷移金属錯体の利用を考えた。そこで様々な高原子価Re(レニウム)錯体(IReO_2(PPh_3)_2, Cl_3Re(MeCN)(PPh_3)_2など)を触媒前駆体として検討した. これらRe錯体とアルカリ金属塩基以外の添加物(塩基性が非常に低い, イオン性の高いアルカリ金属塩)と様々な多座リン系, 多座アミン系配位子を組み合わせて反応を行った. 高原子価の遷移金属を, よりカチオン性にすれば, より酸性の反応条件を提供できる, と予測した. その結果, ある種の多座リン系配位子とその配位子の誘導体群が、多価Re錯体を用いるカルボン酸の水素化に有効であることを発見した. ある反応条件下(水素圧p^<H2>=1-8MPa, 反応温度T=120~180℃程度)で, Re錯体前駆体(1-2mol%程度)とアルカリ金属塩添加物(~10mol%程度)を用いることにより, より活性の高い分子触媒の形成に基づくカルボン酸の触媒的水素化に成功した。本成果も含めて最終的にはH24年度1件, H25年度2件, 計3件の特許出願にっながった.
著者
大島 幸代
出版者
龍谷大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、中国において多様に展開した護法神像の造形化について、その理由と歴史的背景を解明しようとするものである。現地調査による造像作例の所在・基本情報の獲得と、文献・石刻史料にみられる造像記録等の博捜・収集を通して、その後の分析につなげるための基礎資料データの集成を目指した。その過程で、南北朝時代から隋唐代にいたる護法神像の全体像を構築する糸口として、1.唐代以降に姿を消した正体不明の護法神の位置づけ、2.インド・西域と中国との間を往来した伝法の高僧と護法神との関係、3.高僧信仰・羅漢信仰の文脈との照合によって、仏教の外に存在する神々と護法神との関係、という3つの視座を得た。
著者
飯島 一智
出版者
独立行政法人国立成育医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

バーキットリンパ腫 (BL) において特異的に発現するZinc Finger型タンパク質ZNF385Bの発現と機能を解析した。ZNF385BはBLのnormal counter partと考えられている、胚中心のB細胞において発現していた。薬剤依存的にZNF385Bを発現誘導可能なB細胞腫瘍細胞株を作成した。最も長いアイソフォーム (IF-) 1がアポトーシスを誘導するのに対し、N末のZinc Fingerドメインを欠くIF-2/3はB細胞受容体に対する抗体刺激やCD20架橋刺激によって誘導されるアポトーシスを抑制した。ZNF385Bは成熟B細胞においてp53と結合し、FAS/CD95, PERPの転写活性を変化させることでアポトーシス制御に関与していることが示された。
著者
福井 幸太郎
出版者
立山カルデラ砂防博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

現在の日本の山岳には、多年性雪渓(万年雪)は存在するが、氷河は存在しないとされていた。本研究では、飛騨山脈剱岳の小窓雪渓、三ノ窓雪渓、立山の御前沢雪渓で氷体の厚さと流動の観測を実施した。その結果、各雪渓は厚さ30 m以上、長さ400~1200 mに達する巨大な氷体をもち、氷体は1ヶ月あたり5~30 cm流動していることが明らかになった。したがって、小窓,三ノ窓、御前沢雪渓は日本では未報告であった1年を通じて連続して流動する現存する「氷河」であると考えられる。
著者
菊谷 竜太
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

インド密教において観想法を説く成就法(sadhana)文献は、マンダラ儀軌(mandalavidhi)と密接な関わりをもつことが知られている。後期密教において最も長い法灯を維持し続けたジュニャーナパーダ流の伝統を、最初期のジュニャーナパーダ(ca.750-800)から最晩期のアバヤーカラグプタ(ca.1080-1120)の時代に至るまで『四百五十頌』を中心に個々の儀礼とがそれぞれどのように形成され伝承されていったのか、両実践を系統別に類型化し,さらに密教周辺の儀礼文献をも視野に入れ包括的に解析することによって密教儀礼の背後にある教理内容を明らかにしようと試みた。
著者
牧田 義也
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、20世紀前半のアジア太平洋地域における公衆衛生制度の形成過程に対して、アメリカ合衆国の海外医療事業が与えた影響を、アメリカ赤十字社及び同社が主導した国際赤十字連盟の保健事業に焦点を当てて考察した。1898年の米西戦争以降、アジア太平洋地域への進出を加速した合衆国は、20世紀初頭に同地域で多くの医療事業を展開した。本研究はアメリカ赤十字社の海外医療事業に注目し、同社の活動が植民地医学を基盤としつつ、現地住民との協働・対立を通じて、各地の保健制度を構築していった過程を検証した。さらに、同事業を通じて各地の衛生事業の平準化が促進されたことを指摘し、公衆衛生の制度化の国際的契機を論証した。
著者
荒井 啓行 岩崎 鋼
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

(1)アセチルコリン合成酵素(ChAT)をmRNAレベルで賦活する作用のある加味温胆湯(かみうんたんとう)をアルツハイマー病治療薬の第1選択薬である塩酸ドネペジルと併用することにより認知機能の改善効果が一層高まることが明らかとなった。併用によるコリン系の有害事象(下痢、吐き気、腹痛など)は見られなかった。脳血流シンチ上、併用により前頭葉などで有意な血流改善効果が見られた。(2)広く腎虚の治療薬として使われる八味地黄丸は二重盲験ランダム化比較試験において平均年齢85歳、平均MMSE13.5ポイントの中等度から高度の血管障害を伴うアルツハイマー病患者の認知機能とADLを有意に改善させた。有害事象は見られなかった。10名中8名で脳血流シンチにて脳血流増加が見られた。(3)抑肝散は、肝の異常な陽気を抑え、易怒性や興奮に効果が知られ、従来小児の夜泣きなどに用いられてきた漢方方剤である。肝の異常な陽気が認知症に伴う問題行動や精神症状を引き起こすとの仮説のもと、抑肝散をアルツハイマー病等の認知症に使用した結果、痴呆症における問題行動や精神症状に対してADLを低下させることなく改善する効果があることが示された。認知症に伴う問題行動や精神症状は、米国で開発された、Neuropsychiatric inventoryを使用した。抑肝散使用中、誤嚥性肺炎や転倒などしばしば抗精神病薬投与中に遭遇する有害事象は1例も見られなかった。また、西洋医学では今以って有効な治療法のないレビー小体病の精神症状に対しても15例中14例に有効であった。Neuroleptic supersensitivityは見られなかった。
著者
本庄 雅則
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

エーテルリン脂質プラスマローゲンの新たな生理機能の解明を目的とした。プラスマローゲンは、セルトリ細胞のギャップジャンクション構成タンパク質であるコネキシン43の発現や、上皮細胞様の形態を示すヒト乳腺癌由来培養細胞MCF7細胞のアドヘレンスジャンクションの構成タンパク質であるE-カドヘリンの細胞間接着構造への局在性に必要であることを明らかにした。さらに、プラスマローゲンはコレステロール生合成を調節すること、その制御機構はコレステロール合成の中間産物であるスクアレンのエポキシ化を触媒するスクアレンエポキシダーゼの分解速度を調節することを見出した。