著者
竹島 久志 金森 克浩
出版者
仙台高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、障害児・者を含めた多様な運動・知的特性を有する学習者が利用できる学習ソフトを増やすことを目的に、スキャン入力等のアクセシビリティ機能を容易に学習ソフトに組み込むための「アクセシビリティ機能ライブラリの開発」と、学習ソフトが備えるべき「アクセシビリティ適用指針の検討」を実施した。開発したアクセシビリティ機能ライブラリには、多様な入力方式および多様な視覚・聴覚フォーカスを備えることができた。本ライブラリをWebで公開すると共に、サンプル学習ソフトの制作、利用講習会を実施しその有用性が確認した。加えて、アクセシビリティ適用指針の案を提案した。
著者
田村 俊作 高山 智子 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 越塚 美加 八巻 知香子 須賀 千絵
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

公共図書館の医療・健康情報サービスを適切にデザインするための知見を得ることを目的に,医療・健康情報サービスの現状調査を行ない,アクションリサーチによりサービス普及を試行した。がん相談支援センターとの連携によるサービスには可能性があり,大規模図書館を中心にサービスは普及しはじめているが,実施自治体は公共図書館設置自治体の2割に達しておらず,普及に向けて多くの課題があること,特に公共図書館員に関連知識・技能の修得機会を提供する必要のあることが明確になった。
著者
山本 寄人
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

腹水細胞中で、腹腔macrophage(pMφ)やnatural killer(NK)細胞は、内膜症細胞処理に重要な細胞と考えられ、その機能解析は子宮内膜症の発症・進展機序の解明に極めて重要である。特にpMφは貪食・抗原提示・cytokine産生といった腹腔内の異物処理に重要な役割を担い、内膜症細胞の処理に深く関わっていると推測される。pMφからT細胞への抗原提示の際には細胞膜の脂質二重層の盛り上がり(lipid raft:ラフト)上にHLA分子とICAM-1、CD40、CD58などの接着因子群(補助シグナル分子)が集積し「免疫シナプス」が形成されることが明らかとなった。ラフト形成により細胞間接着が強固となり、T細胞との間に免疫シナプスが形成され、その中心に位置するHLAの抗原情報が効率よく伝達される。内膜症婦人におけるpMφのICAM-1とHLA-DRの発現低下は免疫シナプス形成の低下を示唆している。今後pMφのラフト形成能を解析することは、内膜症のpMφの機能、特に異物処理に関わる抗原提示能が評価可能となり、その病態解明に重要と考えられる。本研究では、1)flow cytometryで内膜症婦人のpMφ上の抗原提示に関わるHLA分子の発現を非内膜症婦人と比較検討した。2)共焦点レーザー法でpMφの細胞膜上のラフトと、HLA-ABC/DRの局在を検討した。3)ELISA法で、HLA発現を調節しているサイトカインであるIFN-γを測定した。4)摘出標本を免疫染色し内膜症抗原の同定を試みた。その結果は、1)内膜症婦人では HLA-ABC と HLA-DR に有意な発現低下を認めた。2)ラフト形成は、両群間に差を認めなかった。両群とも HLA-ABC は細胞膜に均一に、DR はラフト領域に局在していた。3)腹腔内の IFN-γ濃度は内膜症婦人で有意に低下していた。これは、内膜症婦人では、HLA 発現が低下しており、特にラフト領域に局在する HLA-DR の発現低下は,内膜症pMφの抗原提示能が低下し、HLA 発現低下にIFN-γが関与していると考えられた。4)月経期の正常子宮内膜に HLA-G の発現を認め内膜症抗原の可能性が示唆された。今後は、免疫療法の開発へ展開する予定である。
著者
藤川 重雄
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本報告は上記研究課題について, 主として, キャビテーションクラウドを構成する気泡群の2個の気泡の力学に関する基礎的研究成果を述べたものである. まず, 非圧縮性液体中で膨張, 収縮, 並進運動する大きさの異なる2個の気泡に対し, 気泡同志の相互作用, 気泡壁の変形を考慮して運動方程式を導びいた. さらに, これを圧縮性液体の場合に拡張した. 得たる成果は以下の通りである. 1 本理論を固体境界壁近傍での単一蒸気泡崩壊問題に通用し, 結果を液体衝撃波管による実験により検証した. さらに, 境界要素法に基づく直接数値計算結果と比較て本理論の適用限界を明らかにした.2. 本理論を最初大きさの異なる2個の気泡の崩壊問題に適用した. その結果, 初期半径の小さな気泡は, 大きな気泡との相互作用により変形しつつ並進運動を行ない, 収縮, 膨張をくり返すごとにますます変形していく. このような気泡の変形は, 気泡の収縮, 膨張運動に加えて, 相互作用による並進加速度運動によって引き起こされる. また, 2個の気泡の適当な初期半径比及び気泡内気体初期圧力の下では, 同一条件下の単一気泡の場合よりも高い衝撃圧力を発生すること等を明らかにした.3. 本研究の成果を音場中における2個の球形気泡の非線形振動に応用した. 一つの気泡がm周期運動をすると. 他の気泡もm周期運動し, 2個の気泡が同時に音場の振動数の1/(m〜)倍の振動数を有するキャビテーションノイズの原因となることを明らかにした.以上の成果は, キャビテーションクラウドの力学が従来の単一気泡の力学とは全く異なったものであることを示しており, 本研究を通して初めて明らかにされてきたものである. 今後, 更に引き続き多数個の気泡の力学を研究する計画である.
著者
久山 雄甫
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

今年度は、研究対象であるゲーテ思想に含まれる重要概念のうち、特に「ガイストGeist」概念に注目して研究をすすめた。その成果は、以下の三点にまとめられる。まず一点目に、ゲーテのモナドロジーとガイスト概念の関連性について調査した。晩年のゲーテは様々な文脈でしばしば「モナド」あるいは「モナス」という言葉を使っていた。本年度の研究では「モナド」という語がガイスト概念と密接に結びつけられつつ、「有限」と「無限」の中間を指し示すものとして使われていたことを明らかにした。二点目に、ゲーテの『ファウスト』第一部における地霊(Erdgeist)をガイスト概念の歴史中に位置づけつつ考察を行った。この「大地のガイスト」(Geist der Erde)を描写する際に使われている光、炎、霧、靄、風、音などの比喩的表現は、ガイストが人間界から断絶した超越的な彼岸に存在するのではなく、感知可能な世界に現象しながらも不定形で非物体的な存在様態をとっていることを示している。第三に、ゲーテ形態学において「非ガイスト」(Ungeist)と呼ばれるナマケモノに注目して、ゲーテのガイスト観を探った。「非ガイスト」という表現の背景にあるのは、地上における生命現象は「創造的ガイスト」と「創造された世界」との交点に生じるという哲学者トロクスラーの生命論である。「創造的ガイスト」とは、具体的で物質的な形象をもって現れ出てきた生物個体の内部において不断にはらたく「形成衝動」のようなものと考えられる。以上に加え、本年度は、ゲルノート・べーメ氏が2011年11月に京都で行った講演「ゲーテと近代文明」の企画運営と翻訳を行った。一昨年度に執筆した論文"Goethes Gewalt-Begriff"は、『ゲーテ年鑑』(Goethe-Jahrbuch)に受理された。また、特別研究員としての研究期間に先立って行っていた「気のドイツ語訳」研究に関して、2012年8月に北京市で開かれたアジアゲルマニスト会議において研究成果を概観的に紹介する口頭発表を行うとともに、2013年1月には博士論文をドイツ・ダルムシュタット工科大学に提出し、2013年2月14日に受理された。
著者
武井 秀夫 北森 絵理 ANDRES Felipe Ramirez MARIA Teresa Ramirez SAMUEL Melinao GREGORIO Perez EDUARDO Sarue 工藤 由美 内藤 順子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

途上国の対社会的弱者政策は標準化されたものになりつつあるが、各国の固有の歴史を背景に、そうした政策が社会的弱者に与える影響は異なってくる。本研究では、チリ、パナマ、ブラジルの大都市に居住する先住民、障害者、貧困層について調査を行った。過去の強制を伴う政策は人々に今も負の影響を及ぼし続けているが、現在の政策を利用して集団的としての力を強めている集団もあり、そうした集団では自己組織化を可能とする基盤の存在が重要な役割を果たしていた。
著者
片岡 正和 池田 治生
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

プロトプラスト融合法を応用した放線菌と枯草菌の細胞質混合法を開発・最適化した。また、放線菌ゲノムをホストゲノム、枯草菌ゲノムをゲストゲノムとして組み換える系を構築した。選択した放線菌の組み込み部位の周辺を調べたところ、プラスミドを組み込んだ場合はプラスミドが狙ったとおりに組み込まれていることがわかった。しかし、ゲノムが組み込まれているはずの選択株のゲノム上には、選択に用いた薬剤耐性遺伝子存在は認められたが、500kbから2Mbの組み込み点から離れた領域は含まれていなかった。視点を変えて、接合を利用した大腸菌-枯草菌間のゲノム工学を目指し、両者の接合による遺伝子交換技術を開発した。
著者
藤原 すみれ 光田 展隆 木越 景子
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、一年生植物であるシロイヌナズナにおいて、ある転写因子を強く発現させた際に見られる多年生的形質やその関連因子に着目し解析することで、一年生植物と多年生植物の違いを生み出す未同定の因子を発見・解析するとともに、分子育種等に役立つ知見を得ることを目的として実施した。その結果、当該転写因子は日長や温度といった外的環境による制御およびスプライシングパターンの制御などの内的制御を受けながら多様な役割を発揮し、植物が適切に一年生植物として生長できるように機能することが示唆された。さらに、これらの制御に関与すると考えられる新規の因子を同定した。
著者
青木 一勝
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

古生代日本の形成・発達プロセスを明らかにするため、西南日本外帯に分布する黒瀬川帯中にレンズ状に産するシルル紀花崗岩類(三滝花崗岩類)からジルコンを分離し、LA-ICPMSを用いてU-Pb年代測定を行った。研究試料には、愛媛県西部の三滝花崗岩類模式地の三滝山地域の花崗閃緑岩、九州中央部祇園山地域の花崗閃緑岩、および紀伊半島西部名南風鼻地域の石英閃緑岩とトーナル岩を用いた。1. 三滝花崗岩類は成因の異なる少なくとも2種類の花崗岩類から成る。2. 三滝花崗岩類のうち、閃緑岩類はどの地域においても約445-435Maの明瞭なピークを持ち、古い粒子は含まないことから、オルドビス紀最末期-シルル紀に形成した新規弧地殻であったと考えられる。本研究で得られた結果とこれまで報告されている研究結果を踏まえると以下のことが考察される。3. トーナル岩に含まれる500Ma以前のジルコンは、約445-435Ma花崗閃緑岩類の元となった弧マグマが貫入・定置することにより融解した既存の大陸/弧地殻岩もしくはその砕屑物に由来すると考えられる。4. トーナル岩中に含まれる900-700Maを示すジルコンは、東アジアで唯一同時期の基盤を持つ南中国地塊の基盤岩から由来したと判断されるので、古生代日本は南中国地塊東縁の弧-海溝系であったと考えられる。5. 本研究により、オルドビス紀-シルル紀の南中国地塊東縁の弧-海溝系では当時の弧地殻や堆積体が広く分布していたことが示された。現在の日本列島においてそれら地質体の分布は非常に限られている。恐らくそれらの大部分はシルル紀後の構造浸食によって日本列島の基盤から消滅したと考えられる。
著者
田村 幸子 新谷 恵子 佐々木 栄子 元雄 良治
出版者
金沢医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

平成23年は全国がん診療連携拠点病院で外来化学療法を受けるがん患者を対象に、実態調査を行った。回収できた826名のデータから、身体側面では痛みやその他症状の実態、精神・心理側面では不安・うつの実態、社会側面では就業・同居家族の実態が、それぞれ明らかになった。またQOLの実態も明らかにした。平成24年は回収データの統計分析を行い、QOLと各問題との関連に基づいてケアの方向性を考察した。平成25年は具体的なケア方法を探求し、身体症状への看護介入として「症状マネジメントの統合的アプローチ」、不安・うつへの予防的看護介入として「がん体験の語り」が有用であると考察した。今後の課題は有用性の検証である。
著者
桑島 秀樹
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

平成13年度以来、上記の研究課題のもと、特別研究員奨励費の補助によって遂行した研究は、次の2点に集約される。1.初期バークにみられる美学思想形成の経緯、2.日本におけるバーク思想(とりわけ美学思想)の受容。以下、これらの課題に関して、今年度(最終年度)分の研究実績を中心に、本研究課題の最終報告をおこないたい。《1.バークにみられる美学思想形成の経緯》補助金支給の最終年度たる今年度は、2001年のアイルランド(バークの小学校・中学校・高校・大学時代)調査結果、および2002年5月の政界登場前後までのバーク青年期に関するイングランド調査結果(バークのマニュスクリプトの原典資料調査も含む)の精査に基づいて、その研究成果を公表することに尽力した。この成果は、以下2回の国内外での学会および研究会での口頭研究発表、(1)「若きバーク像の再検証-誕生から幼少年期までのアイルランド時代をめぐる伝記的考察から-」、日本イギリス哲学会関西部会第28回例会、平成15年7月5日(於 京大会館)。(2)「画家W・ホガース『美の分析』にみる感覚主義あるいは<悪>の美学-ヴィーナス・蛇・イギリス風景式庭園-」、大阪工業大学第35回研究談話会(大阪工業大学工学部一般教育科主催)、平成15年10月6日(於 大阪工業大学)に顕著に反映されていると思われる。わけても、2003年12月に大阪大学大学院文学研究科に提出した博士学位請求論文「初期バークにおける美学思想の全貌-18世紀ロンドンに渡ったアイリッシュの詩魂-」(単著:400字詰原稿用紙換算で約750枚)は、本補助金による研究成果の総決算たるものであった。なお、この論文はすでに2004年1月下旬に公開審査を通過しており、研究代表者への3月下旬における博士号授与が決まっている。さらにこの博士論文を補完する業績として、学位申請論文提出後すぐにも、論文「W・ホガース優美論にみる感覚主義あるいは<悪>の美学-ヴィーナス・蛇・風景式庭園-」(単著)、甲南大学人間科学研究所編『心の危機と臨床の知』第5号,pp.67-93、平成16年2月20日。ならびに、学会報告「若きバーク像の再検証-誕生から幼少年期までのアイルランド時代をめぐる伝記的考察から-」、日本イギリス哲学会関西部会第28回例会、平成15年7月5日(於 京大会館)、日本イギリス哲学会編『イギリス哲学研究
著者
吉田 浩
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1861年の農奴解放以後の近代化政策の過程で、慣習法の世界に生きていた農民を西欧的な私的所有権の絶対を基礎とする新民法にいかに包摂しようと政府は試みたのか、農民の法実践はどのようなものであったのかを明らかにすることが本研究の目的である。その際の議論の焦点の一つは農民の所有観念である。農民は私的所有権と矛盾する「家族所有」といわれる観念を農民は有していたと考えられており、その実態分析と法的扱いが問題を解く鍵であった。この点につき、農民の裁判例、各種政府委員会と論壇での議論について資料を検討した結果、以下のような結論を得た。農民財産の特殊性について政府は19世紀半ばにはすでに注目しており、農奴解放令で個人所有権を意味する条項を挿入しようという考えにたいし、家族の共同所有を主張する考えが対立し、法令上の混乱が生じた。しかし司法政策では、農業経営の安定性にたいする配慮から一貫して農民財産を家族所有と認定しつづけた。実際の農民法慣習では、郷裁判所が怠惰な家長にたいする権利の制限を命ずるなど、たしかに家族所有とみられる裁判例が豊富に存在する。他方で家長の事実上の財産管理権は健全経営をおこなっている限り無制限であり、この点をみれば家長の個人財産と考えることもできる。さらに時代が進むと、家族メンバーの労働による個別財産がふえ、農民世界に個別所有権の概念も広がってきた。世紀転換期には家長の個人所有権と家族メンバーの世帯財産にたいする権利の間で闘争が生じるようになったと考えられる。そして遂にストルィピン改革では家長の個人所有権が法的に認められるようになった。それが農民の法慣習の変化を法律が追認したものであるか、あるいは政府による積極的な政策の転換であるかについては、これからの課題として検討したい。
著者
坂本 保夫 佐々木 洋 佐々木 一之 山本 奈未 佐々木 洋
出版者
東北文化学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、紫外線によって発色・退色する調光型フィルターと、可視光線(主に黄色)の狭帯域吸収という2種類の特性な異なるフィルターを1枚のレンズとして合成作成し、中高年者・白内障患者の視機能に対して改善効果の高い発色濃度と吸収率の組合せ、および安全性を考えた調光濃度設定を探索した。最終的には特殊眼鏡の日常生活上での有効性を装用モニターで実施した。本検討では、屋外と屋内の移動における調光の悪影響はなく、本特殊眼鏡の有効性と有用性を確認することができた。
著者
山口 徹 棚橋 訓 吉田 俊爾 朽木 量 深山 直子 佐藤 孝雄 王 在〓 下田 健太郎 小林 竜太
出版者
慶應義塾大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

今みる景観を自然の営力と人間の営為の絡み合いの歴史的産物と位置づけ、オセアニア環礁(低い島)と八重山諸島石垣島(高い島)のホーリスティックな景観史を、ジオ考古学、形質人類学、歴史人類学、文化人類学の諸学の協働によって明らかにし、その中で人とサンゴ(礁)のかかわり合いを遠い過去から現在まで見とおした。立場や系譜が必ずしも同じではない人々のあいだに、サンゴ(礁)とのこれからの「共存」のあり方への共通関心を喚起する目的で、研究成果を活用したアウトリーチに積極的に取り組んだ。
著者
中嶋 有加里
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度のシミュレータ実験により眼精疲労や車酔いなどシミュレータの影響と推察される問題点が判明し妊婦を対象に実験を行うことができなかった。そこで本年度は「妊婦の自動車運転の安全性に関する研究」の一環として実施した前方視的質問紙調査のデータを統計学的に分析し、自動車運転により切迫早産・早産および臍帯巻絡のリスクが増大することはないとの結論を得た。【研究方法】2001年1〜12月に大阪府泉佐野市T病院で妊婦健診に来院した妊娠28週の初産婦493名に質問紙を配布し、外来・入院カルテ、出産記録から出産情報を照合し、単胎妊婦442名の有効回答を得た。切迫早産・早産の検討では、早産の関連因子(有職者、喫煙者、運動習慣のある者、妊娠中毒症などの合併症)のある者を除いた238名、臍帯巻絡の検討では、巻絡の発生頻度に関連する因子(有職者、運動習慣のある者)のある者を除いた312名を分析対象とした。【結果】(1)運転の有無と切迫早産・早産率および臍帯巻絡率との関連は認められなかった。切迫早産率 早産率 臍帯巻絡率ドライバー 11.7% 3.1% 39.4%ノンドライバー 16.0% 4.0% 35.6%(2)運転・乗車時間の長短を1週間総利用時間のほぼ中央値である60分で分け比較したところ、運転・乗車時間の長短と切迫早産・早産率および臍帯巻絡率との関連は認められなかった。(3)車種と切迫早産・早産率および臍帯巻絡率との関連は認められず、振動による影響は少ないものと推察された。(4)子宮収縮の自覚では、運転中・同乗中の方が歩行時に比べて収縮を自覚する者が有意に少なく、「歩くよりも楽」という妊婦の感想を裏付ける結果となった。また、運転中と同乗中の収縮自覚の比較では有意差が認められなかった。(5)運転の有無と平均臍帯長・過長臍帯率は有意差が認められず、運転が臍帯長に影響を及ぼす可能性は低いと考えられた。
著者
馬場 優 藤井 正人 加藤 靖正
出版者
奥羽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

頭頸部扁平上皮癌患者に対する治療の進歩にもかかわらず、その生存率は有意に改善されていない。それゆえ、今回、私はアフリカの食物Mundulea sericea由来の天然物デグエリンの抗腫瘍効果を調査した。デグエリンは舌癌由来細胞株においてEGFで活性化されたAKTを阻害することに伴いアポトーシスを誘導することを示した。また、デグエリンは舌癌由来細胞株においてIGF1R-AKT pathwayを抑制することによりアポトーシスを誘導することを示した。IGF1R-AKT pathwayがEGFR阻害剤耐性機構の一つであると推察されているため、デグエリンがEGFR阻害剤耐性を克服する可能性が示唆された。
著者
細見 和之
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

イツハク・カツェネルソンがワルシャワ・ゲットーで書いたイディッシュ語作品を読み込むとともに、ワルシャワのユダヤ史研究所、エルサレムのヤド・ヴァシェム、ニューヨークのユダヤ文化研究センター(YIVO)を訪れて関係資料を調査することによって、ゲットー蜂起に象徴される武装による抵抗ではなく、カツェネルソンらの周辺で行われた文化活動を背景としたユダヤ人の精神的な抵抗の意義を確認することができた。
著者
龍村 あや子
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

3年間に渡って次の研究活動を行った。1)当該期間中に出版された著書・論文:アドルノの『マーラー』の単独訳出版(法政大学出版局)、アドルノの『音楽社会学』(平凡社)の解説執筆、「音楽と時間-世界化の時代の音楽時間論」(『民族芸術』)、ドイツで独語単行本に執筆"Wie die Zeit vergeht. Musikalische Zeit in West und Ost angesichts der Globalisierung."Musik in der Zeit. Zeit in der Musik(Velbruck Verl.)、「ワーグナー論における一つの流れ」(京都市立芸術大学音楽学部研究紀要)、「アドルノ理論と民族音楽学」『民族音楽学の課題と方法』(世界思想社)、「音楽社会学の課題と展望-近代化とグロバリゼーションをめぐって」『音楽(音文化)研究の課題と方法』(中部高等学術研究所)2)平成14年度に出版される予定の著書・論文:「グローバル化時代のアドルノ理論-音楽と自然の問題を中心に」『アドルノ論集』(仮題、平凡社)「パン・アフリカン・ミュージックと現代の音楽文化」民族音楽学を学ぶ人のために』(世界思想社)「ベートーヴェンの後期様式をめぐるアドルノの思索とその源湶」『角倉一朗先生退官記念論文集』(仮題、音楽之友社)3)研究発表 平成11年度:音楽学会大会シンポジウムでダールハウスのベートーヴェン論について発表。民俗音楽学会大会のシンポジウムでヨサコイ・ソーラン祭りについて発表。平成12年度:音楽学会大会でのシンポジウム「ドイツと日本1930 45」の企画・司会。東京ゲーティンステイテュート主催のシンポジウムでドィツと日本の音楽批評について発表。中部高等学術研究所で<近代化>と<グロバリゼーション>について音楽社会学的観点から発表。4)アジアの音楽文化の現状に関する予備調査を中国の西安市・寧夏回族自治区(11年)、インドのムンバイ・アグラ・ジャイプール・デリー(11年)において行った。5)研究資料収集をドイツ・イタリア・フランス・トリニダードトバゴで行った。
著者
安武 敦子 才津 祐美子 渡辺 貴史 佐々木 謙二 迫 宏幸
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-07-18

日本で加速度的に高齢化が進むなか,離島はその先陣を切って進んでいるといえる。離島集落は管理能力不全が起こり始め,集落の再編期に直面するなか,コンパクト化に向けて進んでいく傾向が見られる。しかし予備調査から,離島では相当の対価を支払っても,現住地に居住継続したいという結果を得た。地域の特色と居住傾向がどう関係しているのかを見ると,結果として居住者の満足度や生きがいの差は立地や利便性と強い関連性は見いだせない。隔絶性の高い地域で,高齢者が自発的に活動に参加し,また廃校の活用においても,多くの主体によって複数の空間が複数の用途に柔軟に活用されるなど,地域や個人の自立性が高いことが推察できる。
著者
割澤 伸一 石原 直 米谷 玲皇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのジブロック共重合体が持つ自己組織化現象によって構成される30~100nm程度のピラー,ポア,膜の各自己組織化ナノ構造を三次元ナノ構造として作製する技術を開発した。具体的には,(1)三次元ナノ構造表面に自己組織化構造を配置する方法,(2)ナノテンプレートを利用して三次元的に自己組織化構造の配列を制御する方法,(3)自己組織化構造をテンプレートにした多層膜を作製する技術,(4)三次元ナノフレームに自己組織化自由膜を作製する方法,(5)エネルギービーム照射による自己組織化構造のナノパターンニング技術,(6)集束イオンビーム照射による薄膜接合技術を提案し,実験により可能性を示した。