著者
若尾 典子
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

若い女性にたいするソーシャル・ワークの必要性を、生存権保障という憲法上の要請から検討した。若い女性は、家族の貧困・暴力の連鎖のなかに放置されやすいという問題をもつからである。第一に、暴力被害者である少女と加害家族の双方が、道徳的非難によって社会的に排除されてきたことを憲法判例から明らかにした。第二に、「若い女性」への支援をオーストリアについて検討した。オーストリアでは、青少年支援が福祉と社会教育に二分されてきた枠組みは維持されつつも、ソーシャルワークという点で連携するようになっており、当事者たる少女の力を引き出す方法が試みられている。
著者
近森 正 棚橋 訓 塚本 晃久 吉田 俊爾 森脇 広 岡嶋 格 KAURAKA Kau TONY Utanga KAURAKA Kaur
出版者
慶応義塾大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

1.自治権獲得以来30年、クック諸島では民族的自覚の確立が模索されてきた。近年、政府内に文化開発省が設けられ、伝統文化の保存・継承の試みが組織的に開始された。本研究は「文化遺産の保存計画」に基づくクック諸島政府の要請によって立案された。その目的はすでに積み上げられたわれわれの調査実績の上にたって、先史遺跡、歴史的遺構を中心とする文化遺産の効果的な保存・継承に関する考古学的、民族学的、言語学的な基礎研究を行うことにある。2.平成7年から9年度にわたる3年間の調査は北部クック諸島プカプカ島と南部ラロトンガ島において集中的に行われた。調査対象となった遺跡は総計17遺跡(プカプカ島5遺跡、ラロトンガ島12遺跡)である。主要出土遺物200点以上、埋葬人骨10体を発見し、両島の地域史を明らかにする上で必要な考古学的情報を充分に蓄積することができた。これにより、祭祀建造物の形式が西ポリネシアと東ポリネシアの双方から文化的影響を受けつつ各島で地域的な発展を遂げたことが判明した。プカプカ島のそれは農耕の祭祀活動と密接な関係を示している。またラロトンガ島の内陸、尾根筋に発見された祭祀建造物とサンゴ礁島の祭祀建造物の発掘調査によって祭祀空間の地域内での多様性が判明した。3.考古学的に明らかにされた祭祀空間の特性が文化遺産の継承形態を規定していることが確証された。この成果は土地法廷史料及び民族学的調査成果との連接を経て、文化遺産の継承形態に関する時系列的な基礎情報群として集成された。これに基づき、当該地域の文化遺産継承を核とする文化政策の策定に貢献することができた。4.プカプカ語はポリネシア語の形成過程の重要な位置をしめる。言語学的に正確な記載と口頭伝承の記録によって、クック諸島の歴史的解明が可能になるとともに、消滅しつつある無形文化遺産の保存に大きな貢献をすることができた。
著者
渡邉 義浩 大上 正美 辛 賢 稀代 麻也子 池澤 優 小島 毅 竹下 悦子 高橋 康浩 安藤 信廣 池田 知久 三浦 國雄 仙石 知子 石井 仁 堀池 信夫
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

漢魏文化の国際的研究を行い、『魏晉南北朝における貴族制の形成と三教・文学』を刊行し、『中国新出資料学の展開』 を 2013 年 8 月に刊行する予定である。 後者は、新出土資料についての情報提供、読解・解釈・実証などの基礎的な工作に加えて、将来の両国、ひいては世界における中国出土資料研究のさらなる発展を図るために、出土資料研究について今後に遺された課題を明確に意識することを目指して行われたものである。
著者
大谷 毅 高寺 政行 森川 英明 乾 滋 徃住 彰文 柳田 佳子 宮武 恵子 矢野 海児 濱田 州博 池田 和子 鈴木 美和子 鈴木 明 正田 康博 上條 正義 松村 嘉之 菅原 正博 藤本 隆宏 肖 文陵 高橋 正人 韓 載香 金 キョンオク 李 宏偉 佐野 希美子 NAKANISHI-DERAT Emi 雑賀 静
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

日本のファッション衣料の国際プレゼンスが低い原因は、国境を超えた着用者への製品の提案力の欠如にあった。日本のmodelismeは良好だがstylisme(ことに一次設計)は脆弱だ。スタイルの代替案想起・期待・選択作業は、設計者に対し、グローバルな着用者の行動空間に関する知見を求める。これはまた事業者の決定の価値前提の問題に関係する。大規模なファッション事業者の官僚組織が生み出す「逆機能」とも密接に係る。単にブランドの問題だけではなく、事業規模・裁量・ルーチン・経営資源配分に関わることが判明した。製品展示を半年以上前倒しするテキスタイル設計過程は、衣服デザイナーの決定前提の一部を説明していた。
著者
三重野 哲 浅野 勉 櫻井 厚
出版者
静岡大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

1.直流アーク放電電流に垂直に磁場を印加することにより、プラズマを上方にジェット噴出させることができた。その結果、炭素粒子のカソードへの再付着を半分に減らし、C_<60>の生産率を約1.5倍に増やすことができた。その結果は、ビデオカメラでの測定とコンピューターでの画像処理により定量化できた。2.弾倉導入型炭素原料導入機構付きJxBアークジェットフラーレン連続自動合成装置を開発した。この装置では、長さ30cmの炭素棒をあらかじめ50本まで装填することができ、ノンストップで50本の炭素原料を自動的に供給してフラーレンを合成できる。この装置を用いた実験によると、約7w%のC_<60>を含んだ煤を10g/hrで合成でき、C_<60>の生産率は0.7g/hrであった。50本の原料を連続供給した実験において、支障となる問題は発生せず、40時間の放電で、約450gの煤を合成することができた。この装置では、装填炭素棒の太さを太くしたり、原料導入機構をマシンガン型に変えたりして更に大量のフラーレン生産を行うことが問題が無くでき、工場規模での生産装置としても使い得る。また、実験室規模での種々のフラーレンの合成にも非常に有効であることが分かった。3.上記の装置において、カソードに再付着した炭素をリモートハンドルで繰り返しはぎ取ることができ、1実験で大量のナノチューブ入り炭素塊を合成できることが分かった。4.JxBアークジェットフラーレン連続自動合成装置を用いた金属内包フラーレンの合成も試み、効率的なLa内包フラーレンの合成に成功した。
著者
山川 雄司
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

昨年度,柔軟物体の動的マニピュレーションの実現を目指し,柔軟紐の動的結び操作を実現した.しかしながら,柔軟紐の操作では線状柔軟物体(紐,ケーブル)への応用に限られてしまい,様々な柔軟物体に対する操りへの適用が困難である.そこで本年度は,柔軟物体の対象を拡張し,面状柔軟物体の動的マニピュレーションの実現を目指した.具体的なタスクとして,2台の高速スライダに搭載した2台の高速多指ハンドと高速ビジョンを用いて布の動的折りたたみ操作を実現した.タスク実現にあたり,次の3点を行った.1つ目に,面状柔軟物体の簡易モデルの構築を行った.昨年度,ロボットの高速性を利用した線状柔軟物体の簡易モデルを提案した.そのモデルはロボットの軌道から線状柔軟物体の動的挙動を計算できる代数方程式であり,面状柔軟物体への拡張が容易である.そこで,1次元的な線状柔軟物体モデルを2次元的な面状柔軟物体モデルに拡張した,そして,ロボットの運動に対する布の変形を実験とシミュレーションで比較し,モデルの妥当性を確認した.2つ目に,簡易モデルを用いたロボットの軌道生成手法の提案を行った.本軌道生成手法は提案モデルがロボットの軌道を基にした代数方程式で表現される特徴を利用した方法である.はじめに面状柔軟物体の変形を指定し,次にモデルを逆計算することにより,ロボットの軌道を得ることができる.3つ目に,ロバストにタスクを実現するための高速視覚フィードバック制御手法の提案を行った,本タスクを実現するためには,折りたたんだ布を把持するタイミングも重要である.この把持タイミングを抽出し,布の把持動作を実現するような制御手法を提案した.以上の要素をロボットシステムに実装し,実験を行い,それぞれの有効性を確認すると同時に,布の動的折りたたみ操作を実現した.
著者
深見 奈緒子 マールーフ・ジャメール 真道 洋子 モハメド・ソリマン 辻村 純代
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

モルディブ諸島の珊瑚石モスク26棟の調査と既往のインド洋周域調査および文献から、モルディブのイスラーム建築について以下5点が判明した。それらは、1)モルディブの珊瑚石モスクの独自性、2)1000年以上前スリランカやインドから到達した仏教・ヒンドゥー教文化からの影響、3)12世紀以後、西の乾燥地から到達したイスラーム文化の影響、4)東から到達した熱帯木造文化の影響、5)1000kmにも連なるモルディブ諸島全体の建築文化の一様性である。これらが、連関しながら環礁モルディブ特有の珊瑚石建築文化を創出したことを明らかにした。
著者
槇野 陽介
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

画像診断による死因究明制度の構築には、死後CTのみでは限界がある。本研究では車載式死後核磁気共鳴画像(MRI; magnetic resonance imaging)を用いて、法医解剖前遺体を撮影し、死後CT所見や解剖所見と比較し、死因究明に利用可能かどうかを検討した。結果、今回検討した全事例において、評価に耐える撮像が可能であり、今回我々が確立した方法が、死因究明に応用できると言えた。また、脳内微小出血病変など、明らかにMRIがCTよりも有用である所見が認められ、死後MRIの有用性も明らかにできた。一方で問題として、偽陽性所見などが認められ、今後さらなる検討が必要であると考えられた。
著者
呉 宣児 高木 光太郎 榊原 知美 余語 琢磨 伊藤 哲司 奥田 雄一郎 竹尾 和子 砂川 裕一 崔 順子 片 成男 姜 英敏 周 念麗 渡辺 忠温
出版者
共愛学園前橋国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本の大学と中国、韓国、ベトナムの大学がペアになり交流授業を行い、集団間の異文化理解が起こりやすい授業の方式や素材の検討を行った。授業の素材としては、映画、イラスト-によるストーリ、公的な場所での規範・ルールなどが有用であることを確認した。また異文化理解へのプロセスを検討する分析概念として 「歪んだ合わせ鏡」「対の構造」「対話の接続と遮断」「情動反応」などの用語が有効であることが示された。
著者
伊沢 紘生 小林 幹夫 木村 光伸 西邨 顕達 土谷 彰男 竹原 明秀 CESAR Barbos CARLOS Mejia
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

離合集散型で父系という、サル類では他にアフリカの類人猿チンパンジーとボノボでしか見られないユニークな杜会構造をもつクモザルについて、南米コロンビア国マカレナ地域の熱帯雨林に設営した調査地で、3年間継続調査を行った。その調査は、隣接する4群のサルをハビチュエーションし、完壁に個体識別した上で、複数の研究者による4群の同時観察と、各群について複数のパーティを対象とした複数の研究者による同時観察という画期的な方法を用いて行われ、離合集散の実態が把握された。同時に、その適応的意味を問う上で重要な、主要食物であるクワ科イチヂク属、ヤシ科オエノカルプス属の植物のフェノロジー調査も3年間継続した。また、クモザルの全食物リストを完成、それらの植物を中心とした森林の構造や動態、クモザルの種子散布についても継続調査を行った。その結果、1.森林の果実生産量の季節変化と離合集散するパーティのあり方、2.そのべースになる個体関係とは、3.群れの行動域内でのオスとメスの利用地域の差異とその意味、4.行動域の境界域におけるオスのパトロール行動とオス間の特異的親和性、5.離合集散に介在するロング・コールの頻度と機能、6.群間の抗争的関係、7.父系構造を支える群間でのメスの移出入とメスの性成熟や出産との関係、8.サラオ(塩場)利用の季節性とそこでの特異なグルーピングの意味など、これまで未知だった多大な成果を上げることができた。また、9.クモザルが上記ヤシ科やイチヂク属の植物の種子散布に功罪両面で決定的に関わっている実態、10.新しく形成された砂州の森林生成メカニズムとクモザルの行動域拡張、1l.優占樹種のパッチ構造とパーティのあり方の関係、12.森林構造とパーティの移動ルートや泊り場の関係なども解明され、離合集散性の適応的意味を正面から問える豊富なデータを収集することができた。
著者
山中 由里子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

イスラーム世界の拡大とともに、統治や旅行のために必要な情報が9世紀後半頃からアラビア語の地理書・旅行記にまとめられ、さらに中央アジア、インド、中国、東南アジア、あるいはアフリカといった周縁の地に対する好奇心や知識欲も増大し、「驚異譚」の類も現れた。これらの書の中でアレクサンドロスが、既知の世界と未知の世界を結び、異境の地に関する情報をもたらした偉人という重要なトポスとして繰り返し登場することを明らかにした。
著者
伊藤 英夫 佐竹 真次
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本年度は、本研究の最終年度に当たる。ハードウェアの面では、シャープから業務用モバイルコンピュータ、コペルニクスRW-A230が開発され、本研究には大きな推進力となった。この機器は、8.4型、SVGA、TFTカラー液晶画面にタッチパネルを装着し、指で画面上の図形シンボルが選択可能で、Windows98上でソフトウェアを動かせることができ、キーボードやテンキーなど不要なものが全くなく、大きさは幅約238×奥行179×高さ約26(mm)、重さは約0.925kgと非常にコンパクトにできていて携帯には便利である。そこで本機を本研究のVOCAのハードウェアとして採用することにし、開発したVOCAのソフトを実際に動かしてみて、微調整を行った。最終的に開発したVOCAのソフトウェアは、画面上に約21×21mmの図形シンボルを3×6、計18個配置し、最下段に選択した図形シンボルが確認できる窓を設定した。起動するとメニュー画面が立ち上がり、名前、乗り物、場所、お店、行事、数字、果物、おやつ、料理、台所、生活、からだ、遊び、動作、気持ち、生き物、勉強、比べるの18カテゴリーからなっている。名詞が集められているカテゴリーでは、共通して対応する動詞を左上に配置し、利便性をはかった。地域におけるVOCAの活用に関する研究として、養護学校中学部3年に在籍する自閉症児を対象に研究を行い、地域のレストラン、ラーメンショップ、カフェテリアなどで、VOCAを用いて食事を注文する設定で行った。コミュニケーションボードで注文する際、お店の店員に伝わりにくかったことが、VOCAを使用することにより、スムースに注文することが可能となった。学校教育現場におけるVOCAの導入に関する研究では、石神井養護学校の水野聡教諭に研究協力者として参加してもらい、小学部4年の自閉症男児を対象としたケーススタディを行った。対象児は、VOCAを導入する前から、コミュニケーションボードによる指導を開始しており、ビッグマック(簡易VOCA)も直前から導入していた。その結果、学習の終わりに報告する「できました」の使用は比較的スムースに学習でき、ほかに「おはよう」「さようなら」「いただきます」「ごちそうさま」「せんせい」を現在使用している。学校教育現場では、個別にVOCAの練習だけに時間を割くことができず、使用頻度や練習回数が少ないため、VOCAの語彙数の増加になかなかつながらなかった。専門機関や家庭との連携が重要であることが示唆された。
著者
伊東 孝之 前田 弘毅 久保 慶一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、セルビアからのコソボ独立問題とグルジアからの南オセチア・アブハジア独立問題という2つの紛争事例を調査し、共通性と差異を浮き彫りにしつつ、両者の間の相互作用にも注目し、今後の国際政治に与える影響を分析することを目的としていた。具体的には、(1)紛争の背景、(2)紛争の推移、(3)国際関係と国際関係主体に対する影響の3点について、現地調査も踏まえて比較分析を進めた。各計画年度に多くの現地調査を実施し、現地から研究者を招聘し、研究会を開催し、研究成果を公表してきた。比較研究の総合化へは道半ばであるが、政治学や国際関係論、歴史学など様々なディシプリンの成果を援用しつつ、紛争を複数の視点から考察することの意義と有用性については、三年間の間で本研究参加者の間で共通の認識を得ることができたと考える。本研究の成果は今後のより地域横断的かつ総合的な研究に活かされていくことが期待される。
著者
大須賀 沙織
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

1.『セラフィタ』に複合的に織り込まれた聖書の引用、暗示、イメージを収集し、テクスト比較を行った。聖書テクストとしては、バルザックがウルガタ版ラテン語聖書を特に使用していることを確認し、思想的には、懐疑の時代への抵抗、聖書の霊的意義の啓示、人間の内的完成への手引きといった意図が込められていることを明らかにした。この内容を「バルザック『セラフィタ』における聖書」(『日本フランス語フランス文学会関東支部論集』)にまとめた。2.バルザックの聖書引用を考察する過程で、カトリックのミサ、祈りの言葉の影響も大きいことに気付き、典礼の研究を行った。バルザックがラテン語で暗記し引用しているものは、多く教会の祈り、グレゴリオ聖歌から来ており、これらを収集、分析した結果、ミサやグレゴリオ聖歌に対するバルザックの愛着、審美的視点が浮かび上がり、さらにバルザックの作品が19世紀まで継承されてきた伝統的典礼の記録として資料的価値を担っていることがわかった。バルザックはカトリック典礼から詩的材料を引き出しており、またカトリック典礼の内包する神秘を描き出しているということを明らかにした。この内容を「バルザックにおけるカトリック典礼」として日本フランス語フランス文学会関東支部大会で発表した。3.スウェーデンボルグの使用聖書調査結果に基づき、海外の図書館、古書店を通して、スウェーデンボルグが所有していた17、18世紀の聖書12点を収集した。今後、日本におけるスウェーデンボルグ研究の重要な基礎資料として、広く役立ててゆきたいと考えている。4.『セラフィタ』の新訳が出版されることとなり、これまで収集してきた『セラフィタ』各版と和訳5点を参照しつつ、翻訳作業に着手した。これは、加藤尚宏氏との共訳で、『神秘の書』三部作(『追放者』、『ルイ・ランベール』、『セラフィタ』)として2012年に水声社より出版予定である。
著者
門林 岳史
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、マーシャル・マクルーハン以来展開されてきた感性論的なメディア論の系譜を批判的に検討するとともに、それらを基礎として、今日のメディア環境に応えられる新たな感性論的メディア論を構築するべく、「ポストメディア」概念を提起することである。そのために本研究では、先行研究の理論的な読解を進めるとともに、メディア研究の国際的な学会やメディアアートをめぐる国際的な芸術祭などに参加し、研究交流と資料収集を進めてきた。また、東日本大震災以降のメディアの状況をめぐる議論に参加することで、「ポストメディア」概念をより具体的な状況に対する説明能力を持つ概念へと練りあげることができた。
著者
栗原 浩英 石井 明 白石 昌也 加藤 弘之 竹内 郁雄
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

2004年にベトナム・中国両国政府間で合意された越境共同開発プロジェクトが今日に至るまで進展をみないままになっている状況について調査研究を行い,双方の観点にずれがあることを究明した。ベトナムではこのプロジェクトが中国との国境地帯に限定された開発事業と理解されているのに対し,中国ではベトナム一国の枠を越え, ASEAN諸国全体を視野に入れた事業と位置づけられ,両国は妥協点を見出せないままとなっている。
著者
成 知〓 (2009) 成 知[ヒョン] (2008)
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

採用第2年目には、採用第1年目の成果をもとに再考察、および、精密化し、『現代日本語の補助動詞の研究-「してみる」と「してみせる」の意味・用法の記述的研究』(以下、本研究と呼ぶ)を題名とする博士論文の執筆に臨んだ。提出予定の博士論文では、語彙レベル、文法レベルの考察によって、「してみる」「してみせる」の語彙的特徴、および、形態・構文的特徴を明らかにし、それを手がかりにして両形式の意味・用法を明らかにしようとしている。また、「してみる」「してみせる」の従来の研究で、「何のために行われるか」という「もくろみ」の観点に改めて注目し、語彙・文法レベルの考察を基盤とし、さらに、連文レベルの考察を行っていることに独創性および意義があると思われる。本研究では、コーパスから採集した実例に基づき「してみる」および「してみせる」の語彙的特徴、形態・構文的特徴を明らかにし、それを手がかりにして、両形式の意味・用法について明らかにする。まず、「してみる」については、「ためし」「気づき」「慣用的用法」の3つの意味があることを示す。また、「してみる」が文脈のなかで「状況把握からの試行」「状況把握からの試行の促し」「発見状況の説明づけ」「理由、評価、立場の説明づけ」「憧れ」「禁止」という文脈的機能を果たしていることを指摘する。次に、「してみせる」については、「動作の直接的提示」「動作や言葉での間接的提示」「豪語」「称賛」の4つの意味があることを示す。また、「してみせる」が文脈のなかで「応答」「合図」「催促」「強調」「証明」「象徴」「手本」「みせびらかし」「披露」という文脈的機能を果たしていることを指摘する。博士論文での研究では、「してみる」および「してみせる」の分析に焦点を当て詳しく論じることにより種々のことを明らかにすることができると思われる。提出後は、「してみる」「してみせる」と関連する他の形式との関わりについての考察に広げていきたい。
著者
片山 謙吾
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

組合せ最適化問題に対する高性能なMemeticアルゴリズムをはじめとするメタ戦略の開発を行った.対象問題として,最大クリーク問題(MCP), 2次割当問題(QAP),通信・ネットワーク関連の問題であるノード配置問題(NPP)を扱った.特にQAPに対しては,可変深度探索にもとづくk-opt局所探索法を遺伝的反復局所探索法の枠組みに導入したメタ戦略を示した.実験の結果,従来法の反復局所探索法に比べ平均的に良好な解を算出し,その有効性を示した.
著者
西川 伸一 樽井 寛 伊藤 光宏 錦織 千佳子 松井 利充 永井 謙一 宮崎 泰司 伊藤 仁也
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

MDSに脱メチル化剤が大きな期待を集めているが、作用機序については不明だ。本研究では、最終的に4人の患者さんの骨髄から得たCD34陽性ブラスト細胞について、治療前後経時的にゲノムワイドにメチロームと遺伝子発現を解析した。まず、正常、DCMD1, RAEB2と悪性度が進むに連れて、プロモーター領域のメチル化が上昇する傾向を見る事が出来た。また、メチル化の変化が見られた遺伝子でも、極めて限られた転写調節領域が特異的に、転写のメカニズムと連携してメチル化が行われている事がわかった。この遺伝子リストには白血病に深く関わる多くの遺伝子が存在していた。
著者
竹村 明久
出版者
大同大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

室内のにおい環境評価には嗅覚を用いることが多いが、感覚の個人差が大きいために、評価にあたって多人数パネル(被験者)が必要とされてきた。これを少人数パネルの複数回評価で代用するために、個人間の評価差と同一パネルが繰返し評価を行う際の評価の変動(個人内変動)との評価の取扱いの重み付けを決める基礎資料を提示した。また、パネルの精度向上のために評価訓練を実施した場合の、評価への影響についても検討し、訓練に用いた臭気への訓練効果は確認された一方で、異なる臭気評価には訓練効果が十分に発揮されない可能性を示した。