著者
関根 広
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

放射線治療の分割照射では分割線量と照射間隔と分割回数で治療効果が決まる。従来のLQモデルでは分割線量と分割回数が変数であるが、照射間隔を規定する変数がない。そのため、休止期間が入ると治療効果が低下するということが説明できない。そこで、分割間隔を考慮したGLQモデルを考案した。このモデルにより以下のことを説明した。腫瘍に対する分割様式を変えたときに比較できることを証明した。分割照射後の局所再発に腫瘍の不均一な放射線感受性が関与している可能性を証明した。経時的に定量測定した放射線皮膚紅斑の結果をGLQモデルに当てはめることができることを証明した。http://www.radbiolog.jp
著者
坂口 雅彦
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

動物飼育・動物解剖体験が,中学生の生命に対する意識変化を生ずるか調査した。ウシガエル解剖体験調査において,「命」をキーワードとしたFUMIEテストでは,解剖体験群でIAS値が授業後減少,嫌悪方向へ変化したが,統制群では変化はなかった。キイロショウジョウバエ飼育体験調査において,授業前調査でほとんどの生徒が「ハエは迷惑な生物」と回答した。授業後,飼育体験群では「ハエは人類の役に立つ」と回答が変化したが,統制群では,回答変化はなかった。「ハエ」をキーワードとしたFUMIEテストでも,飼育体験群でIAS値が授業後増加し,好む方向への変化を示したが,統制群では,変化はなかった。
著者
佐々木 成朗 三浦 浩治 板村 賢明
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

フラーレン-黒鉛ハイブリッド超潤滑界面の摩擦過程を分子力学法で計算するシミュレータを開発し、本界面が走査方向に対して格子の整合・不整合に由来する顕著な異方性を示す事を明らかにした。特に整合性の良い[1010]方向の超潤滑の起源が、(1)C_<60>分子の微小回転(傾き)、(2)C_<60>分子とグラファイトとの点的接触及びそれが誘起するC_<60>分子の弾性変形である事を示した。そして[1230]方向の近似的なゼロ摩擦の出現理由が、隣接する2極小点間のエネルギーバリアが走査過程中消失しないで、常に存在するためである事を明らかにした。
著者
西原 亜矢子 佐山 光子 渡邊 登 小浦方 格
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

研究目的は「新潟大学保健学研究科『GSH(性差保健)研究実践センター』の事業展開過程を継続的に関係者と共同省察することにより、GSH研究・実践を通じた大学の地域貢献事業の意義と課題を三つの観点から抽出することである。結果は以下の通りである。①大学教員が事業参画により、住民ニーズ、研究・教育活動をとらえ直し、専門職集団へ働きかけを行う等、大学研究にも実践的還元が見出せた、②関係機関が蓄積する実践的知識の集約が事業展開に寄与する、③「研究データに基づく説明」「男性の健康問題へのアプローチ」が男女共同参画に寄与する要件となる。
著者
新矢 麻紀子 山田 泉 窪 誠 大谷 晋也 岩槻 知也 佐藤 潤一 春原 憲一郎 三登 由利子 永井 慧子 新庄 あいみ 下山 雅也 花立 都世司
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「日本語教育保障法案」を創出し、冊子として発行した。国内(川崎市、大阪市、滋賀県)、並びに、海外諸国(フランス、オーストラリア、韓国)を訪問し、移民や外国人に関わる法律や制度、施策(特に言語教育支援施策)について現地実態調査を実施し、「人権」「社会的包摂」という分析軸から検討を行った。法制化が進むことによる利点はもちろん見られたが、それのみならず、法律と運用実態の乖離や法制化による負の側面も散見されたことも特筆したい。
著者
和田 昭盛 岡野 登志夫
出版者
神戸薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

レチノイドX受容体は、他の核内受容体とヘテロダイマーを形成し生理機能を発現することより、脂質代謝異常症や糖尿病など様々な疾患とも関連することが知られている。そこで、RXRのリガンドである9-cis-レチノイン酸のアナログ化合物を合成し、ヘテロダイマーの作用分離が可能なリガンド分子の開発を検討した。その結果、レチノイン酸の疎水性ユニットであるシクロヘキセン部と続く二重結合を(-)-メントンとベンゼン環で縮環した誘導体MentPhMe及びMentPhEtにおいて、それぞれヘテロダイマーであるPPARγ/RXαおよびRLXRα/RXRαに対する選択性を示す化合物を見出すことができた。
著者
五十嵐 由夏
出版者
神奈川大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

昨年度は,自分の手,馴染みのある物(ICカード,名刺),馴染みのない物(角丸紙)をイメージしながら,ディスプレイ面上の二本の水平線間の幅を各物体の大きさに調整させることで,物と手の大きさイメージの正確性の違いを検討した.実験参加者からディスプレイまでの距離についても,手前から奥にランダムに6段階で変化させながら実験を実施したところ,特に手のイメージは距離の影響を強く受け,ディスプレイ面が自分の腕の長さより遠くに配置されると有意に過小判断されることが明らかとなった.これらの結果は,身体の大きさ概念が,長期的な身体経験によって調整されうるものであることを示唆する.今年度は,この結果に新たにデータを加え,これまで得られた手の大きさイメージの正確性に関する知研究成果とあわせて,1つの雑誌論文にまとめた.また今年度は,共同研究として身体各部位および身体背面部における触刺激の評価に関する調査・実験研究を行った.まず,質問紙による調査を行った所,関東圏内の大学に通う女子大生の約30%が1回以上の痴漢被害を経験しており,その被害部位の多くが身体背面部や下半身であることが明らかとなった.そこで,目隠しをした上で,身体背面部(背中・臀部)および手のひらに,手(手のひら・手の甲)や物(鞄・傘)を呈示し,触覚情報のみで正しく対象を判断できるかを検討した.その結果,特に身体背面部である臀部や背中では,物が呈示されているにも関わらず,約30%が手だと誤って判断されることが明らかとなった.この結果は,触覚解像度の低い身体背面部においては,触覚情報のみで対象を正確に識別することが難しいことを示唆しており,痴漢冤罪が生じる原因の一端を示すと考えられる.
著者
冨田 宏 木下 健 山口 一 林 昌奎 川村 隆文 早稲田 卓爾
出版者
独立行政法人海上技術安全研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

海洋において突然出現する巨大波浪(Freak/Rogue Wave)は大型船舶や海洋構造物の重大損傷、中小船舶の喪失を引き起こす極めて危険な現象として近来世界的にその発生機構の解明や発生頻度の推定に関する研究が注目されている。本課題研究においては先ずフリーク波がどのような波として実海域に出現するのかについて既存のデータや海員等の実体験をもとにフリーク波の特異性について共同研究者ならびに関係者によって組織されたフリーク波研究会において引き続き定期的に議論を行い、共通認識を深めた。さらに当該期間中造船学会におけるオーガナイズドセッションをはじめ、フリーク波や関連現象に興味を有する数学、数理物理学、海洋学、船舶・海洋工学、土木工学等諸分野の研究者に呼びかけ、九州大学応用力学研究所においてシンポジウム「海洋巨大波の実態と成因の解明」を2回にわたって開催レ、異分野間の交流を深め研究の進捗に多大な刺激を与えた。得られた成果の一部は海外研究集会においても発表された。さらに、韓国におけるフリーク波研究プロジェクトグループ(MOERI)との交流の一環として、釜山で開催されたフリーク波の国際シンポジウムに参加し、研究代表者が招待講演を行った。それらの議論を踏まえて、2次元的な長い峰を持つ場合についてはうねり等に適用出来ると言われている非線形波動理論、就中、非線形シュレディンガー方程式を基礎とした理論的研究をさらに詳細に行い、そこでプラズマ物理学において現れるホモクリニックな解としてのBreatherと呼ばれる現象に着目し、これを水面波に応用することによってフリーク波の有力なモデルが得られることを明らかにした。この結果は船舶試験水槽における物理実験ならびに81E法を用いた数値シミュレーションによっても確認され、曳航模型船に対する波浪荷重の推定実験の入力データとして提供された。また当該方程式の差分法による数値計算を実行することによって、周期境界条件の下ではこの種のブリーク解が繰り返し現れFPUの回帰現象を示すことを確かめた。この結果からフリーク解が(1Dについては)KdVソリトンに類似の基本解であることが明らかとなった。より一般の方向性(2D)を有する巨大波についてはこの現象の発現が稀であることから十分多数の観測データを取得することが困難であるため、発生確率を正確に決定するには至らなかった。実用的に重要なこの課題を克服するためには実海域における人工衛星リモートセンシングから確認する必要があるためそれを可能とするデータ解析アルゴリズムの開発を引き続き行っている。さらに散乱データに大きな影響を与える要素である海上風とそれによる表面誘起流れの様子を子細に調べるためにCFD手法に基づく海面での大気一海洋相互作用シミュレーション計算を引き続き行っている。方向性を有する波列の研究は新しい科研費研究課題として取り組まれる予定である。この種のシミュレーションが本格化すれば100年来の海洋学の未解決な大課題である風波の発生機構にも解決を与えることが可能であると期待される。
著者
大西 正俊 大月 佳代子 一條 尚
出版者
山梨医科大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

本研究ではハイドロキシアパタイトの臨床応用、特に下顎骨再建について検討し以下の結論を得た。I.動物実験による検討成犬下顎骨による顎骨欠損部への補填実験の結果、下顎臼歯部15mmの欠損部の補填では約8週でアパタイト多孔体は近心、遠心両側からの気孔内に至る骨形成により埋めつくされる所見を得た。この場合の骨形成性は顎骨とアパタイト多孔体との固定に大きな関連性があることから、動物実験系での顎骨、頬舌側固定法であるダブルプレ-ト法を開発した。II.臨床応用-下顎骨再建症例の経過観察動物実験の結果をふまえて、臨床応用したアパタイト多孔体ブロックによる下顎骨再建例は現在までに29例、そのうち区域切除後の架橋補填7例での検討から、補填部の骨形成状態はX線所見、骨シンチグラムより推測しうること、またそのうちの1剖検例(73才女性)より高齢者に於ても骨形成が行なわれていることが明らかとなった。これらのことから、一定期間後のX線、骨シンチグラム所見から骨形成性を診断し、その結果によっては補填材としての再建プレ-トの除去が可能となる症例を経験した(35才男性、59才女性)。III.再建下顎骨に対する補綴的処置の検討下顎骨再建29例に対してはほぼ全例再建部への通常の補綴装置の装用を行っており、良好な結果を得ている。以上の検討より、アパタイト多孔体の補填部は骨伝導による骨形成が期待しうること、骨形成がある程度行われた時点で補強材チタンプレ-トの除去は可能で相応の物性が得られること、術式は骨移植に準じるが、人工骨との強固な固定が重要であることなどが確認された。本研究からもアパタイト多孔体は下顎骨再建用の人工骨として十分に臨床適用可能な材料であることが明らかとなった。
著者
東森 充
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

レオロジー物体の塑性変形分布を制御する手法を提案した.物体の概形とその変形特性を表現する7ノード粘弾性モデルを導入し,概形成形手法として,グリッパによる把持動作によって入力軸とこれに直交するもう1軸の対象物長さの比率を制御する手法を構築した.ここでは, 1軸応力積分値に対する塑性変形分布則に基づき,把持解放後の最終的な物体概形を能動的に管理する手法を提案した.実機実験により提案手法の有効性を示した.
著者
石塚 伸一 赤池 一将 浜井 浩一
出版者
龍谷大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

日本における犯罪者・非行少年処遇は、未だ科学化が進んでおらず、法律家の先入見に支配されている。中央政府主導の犯罪対策には限界があるを自覚した政府は、地方政府や地域社会、NPOとの連携を模索している。他方で、市民は、人間科学にもとづく犯罪問題の解決に期待をしているが、十分な情報をもたないために、扇情的な犯罪報道に聳動して、刑罰ポピュリズムに惑わされる傾向がある。犯罪者・非行少年の処遇において、法と人間科学への期待は大きい。個別分野での科学的実践を通じて、実践的科学としての犯罪学の領域に フィードバックされる諸課題を受け止めながら、法と人間科学の中に新たな犯罪学を構築していく必要がある。
著者
角野 浩史 水上 知行 ウオリス リチヤード サイモン 鍵 裕之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

中性子照射による核変換と超高感度希ガス質量分析技術を応用した、極微量ハロゲンと希ガスの多元素同時分析手法を開発し、沈み込み帯のマントルかんらん岩、過去に沈み込んだスラブ物質、そして変質した海洋地殻と堆積物を分析した。沈み込み帯のマントルかんらん岩捕獲岩には、四国・三波川帯のマントルかんらん岩や蛇紋岩と同様にヨウ素に富む、堆積物中の間隙水とよく似たハロゲンと希ガスが含まれていた。三波川帯のエクロジャイトや変泥質岩にはこれらに加え、変質した海洋地殻に特徴的な、塩素に富むハロゲン成分も含まれていた。これらは沈み込んだハロゲンと希ガスの影響が、マントルウェッジの広範に及んでいることを示している。
著者
若山 清香
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

地球上の生物が宇宙で生殖可能かどうかは重要なテーマであり、これまでイモリやメダカを用いて研究が進められてきた。しかし哺乳類については、飼育の難しさから宇宙での生殖実験はほとんど行われていない。我々はJAXAと共同で凍結したマウス2細胞期胚をISSへ打ち上げ、宇宙ステーション内で解凍し4日間培養を試みる実験を計画しているが、宇宙空間で受精胚を解凍培養できる実験器具は存在しない。さらに哺乳動物受精胚の実験には高度な技術が必要とされることから、本研究代表者は操作をできるだけ簡略化して宇宙飛行士に負担をかけずに、確実に胚を解凍し培養できる装置の開発を行うことにした。
著者
佐藤 英明 西森 克彦 竹家 達夫 眞鍋 昇 星野 由美 佐々田 比呂志 松本 浩道
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2004

1個体からの受精可能卵子の大量生産を目標として卵子の細胞分化・死滅の調節系の解明を行い、新規調節因子を同定するとともに、これを踏まえ受精能・体細胞初期化能高発現卵子生産などの技術を開発した。さらに、直径70μm未満のマウス卵胞卵子由来の産子や家畜ブタ体外成熟卵子をレシピエントとする体細胞ミニブタ作出に成功した。
著者
吉川 峰加
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

舌尖アンカー機能や舌搾送運動の低下あり,口腔・咽頭通過時間(OTT,PTT)の延長や口腔や咽頭への食物残留(ORES, PRES)や,を認めていた者が口腔容積の変化をもたらす舌接触補助装置(PAP)付義歯の装着1カ月後には,OTT,PTTの短縮,残留量の減少,口腔-咽頭嚥下効率の改善などを示し,PAPが頭頚部ガン患者ならびに外傷者のみならず慢性期の高齢脳神経疾患患者へも有用であることが明らかとなった.
著者
國見 充展
出版者
独立行政法人国立長寿医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

視覚情報の持つ有意味性が高齢者の視覚情報処理と保持能力に与える影響を吟味すべく,fMRIによって高齢者の視覚的ワーキングメモリ課題遂行中の全脳の計測を試みた。その結果,TSP ,N-backもに課題難度の上昇に伴う賦活の亢進が見られた。その差は年代群によって異なり,加えて脳領域によってもパタンが異なることが示された。これらの結果から,視空間認知と意思決定に関わる領域の加齢影響を客観的に検出する認知計測法として,難度の異なる認知課題の脳賦活応答の比較を臨床画像診断に応用できる可能性が示唆された。
著者
北野 雅子
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、予後の良くない外傷性嗅覚障害がどのタイミングまでに治療を開始すれば嗅覚の改善が期待できるのかを明らかにする目的で施行した。外傷性嗅覚モデルマウスを作製して、嗅神経切断後1、2、4、6週間後にステロイド治療を施行した。その結果、炎症抑制による外傷性嗅覚障害治療は受傷後1週間までは有効だが2週間以上経過すると無効であると考えられた。
著者
中川 聡
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、深海底熱水活動域において絶対的な共生関係にある微生物―大型生物の相互作用・相互認識機構を分子レベルで解明することを主な目的としている。特に生物間の相互認識に関わる生体分子「糖鎖」に注目し研究を進めてきた。本研究では深海底熱水活動域に見られる様々な共生系(細胞外共生系から細胞内共生系)において、共生微生物/ホスト生物が有する特異糖鎖の機能解析や糖鎖認識分子の同定・発現解析等を実施することに成功した。
著者
月浦 崇
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

顔から受ける印象には大きく分けて2つの側面がある.ひとつは顔の外面的な印象である顔の魅力であり,もうひとつは顔から受ける内面的な印象である性格面の善悪である.これらの2つの側面からなる顔の印象は,顔の記憶に対して影響を与えることが心理学的研究から知られている.すなわち魅力的な顔はそうでない顔よりも記憶に残りやすく,また性格的に「悪い」印象をもつ顔はそうでない顔よりも記憶に残りやすい.しかしながら,このような顔の印象と顔の記憶との間の相互作用を担う神経基盤については,未だに十分に理解が進んでいない.そこで本研究では,(1)顔の魅力と顔の記憶,(2)顔の第一印象の「悪さ」と顔の記憶,の2側面を担う脳内機構を機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて検証を行った.まず,(1)「顔の魅力と顔の記憶」についての研究では,行動データとして魅力的な顔は中程度の魅力や魅力的でない顔よりも良く記憶されることが示され,その神経基盤として報酬系の一つである眼窩前頭皮質と記憶に重要な海馬との間の相互作用の重要性が示された.(2)「顔の第一印象の悪さと顔の記憶」についての研究では,行動データとして第一印象が悪い顔は中程度の印象の顔や良い印象の顔と比較してより良く記憶されることが示され,その神経基盤として痛みや罰の処理に関連する島皮質と海馬との間の相互作用の重要性が示された.以上のことから,顔から受ける外面的な印象と内面的な印象の違いによって顔の記憶は異なった影響を受け,その神経基盤として顔の印象を媒介する領域と記憶情報処理に重要な海馬との間の相互作用が重要であることが示唆された.