2 0 0 0 IR 「超」の用法

著者
中村 純子
出版者
学校法人松商学園松本大学
雑誌
松本大学研究紀要 (ISSN:13480618)
巻号頁・発行日
no.11, pp.205-216, 2013-01

本稿は「超」の用法より、長く、広く使用されている要因を明らかにすることを目的とする。「超」は漢字熟語の前項、接頭辞的用法、副詞的用法とその用法を広めてきた。副詞的用法は新しく、主に若者に使用されている。付属語としての制約から自由になったため、生産性が高くなったと言える。さらに、「超」の文体的価値は若者ことばであっても、それほど低くない。これらが「超」の汎用性を高めた要因だと思われる。
著者
川尻 啓太 末吉 正尚 石山 信雄 太田 民久 福澤 加里部 中村 太士
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.133-148, 2020-03-28 (Released:2020-04-25)
参考文献数
34

積雪寒冷地の札幌市では路面凍結防止のために,塩化ナトリウムを主成分とする凍結防止剤が大量に散布されている.散布された塩類は除雪された雪とともに,雪堆積場へと集められ,春になると融けて近隣の河川に流れ込む可能性がある.しかしながら,雪堆積場からの融雪水中の塩類の含有量や河川水質,生物への影響はほとんど明らかになっておらず,その実態把握が求められている.本研究では,まず,札幌市内の 73 箇所の雪堆積場における人為由来の塩化ナトリウム含有量の推定をおこなった.次に,2015 年 2 月から 6 月にかけて雪堆積場 7 か所とその近隣河川を対象に,雪堆積場からの融雪水の水質ならびに雪堆積場からの融雪水が流入する上流部(コントロール区)と下流部(インパクト区)における河川水の水質調査,河川に生息する底生動物と付着藻類の定量調査を 2015 年 2 月から 6 月にかけて継続的に実施した.調査の結果,融雪初期において,雪堆積場からの融雪水中の Na+ 濃度と Cl- 濃度が河川水の 2~9 倍と極めて高くなる傾向が見られた.さらに同時期のインパクト区における Na+ および Cl- 濃度がコントロール区に比べて 1.56 ± 1.27 mg L-1,3.05 ± 2.74 mg L-1(平均値±標準偏差)上昇した.生物については底生動物の一部では雪堆積場の負の影響が認められ,トビケラ目の個体数と代表的な水生昆虫 3 目(カゲロウ目,カワゲラ目ならびにトビケラ目)の総個体数はコントロール区よりインパクト区で低い傾向が認められた.積雪寒冷地における河川生態系の保全のためには,融雪開始時期の河川水質の急激な変化を抑えることが重要であり,これにより底生動物への影響を回避することができるだろう.
著者
小林 剛一 平形 ひとみ 井上 まさよ 横山 貞子 石田 美紀 望月 栄美 高坂 寛之 関口 文子 中村 幸男
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.31-41, 2018-02-01 (Released:2018-04-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

【背景・目的】 わが国は,超高齢社会に伴う「多死社会」を迎える.増加する死亡者を全て病院で看取る事は不可能であり,最期を迎える場の選択肢として,特別養護老人ホーム(以後特養)などの高齢者施設への期待が高まっている.特養1は,常時介護を必要とし,在宅生活が困難になった高齢者が入居する老人福祉施設である.本研究の目的は,終末期医療における看取り,死亡場所としての特養の意義を明らかにすることである. 【対象と方法】 平成19年4月~平成29年1月までの施設看取り63名を対象として,診療録,看護記録,死亡診断書等より,平均寿命,死因等について分析した. 【結 果】 退所者167名中,看取り死亡者は63名(38%)であった.平均年齢は,90.07歳(男性87.4歳,女性90.7歳)で,死因は老衰が31名(49%)と最も多かった.認知症は,アルツハイマー型認知症,脳血管性認知症等,軽度~中程度を含めてほぼ全例(98%)に認められた.在所期間は,58日から18年5か月(平均4年9か月)であった. 【結 語】 我々の特養での看取り例は,日本人の平均寿命を越えた老衰死が多かった.超高齢社会を迎え,要介護高齢者の施設として,一層のニーズが見込まれる特養は,終末期の看取り場所としての役割を担う施設としても,重要な位置を占めるものになると考えられた.
著者
中村 智幸
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.18-00050, (Released:2019-06-20)
参考文献数
34
被引用文献数
13

インターネットアンケート調査により,2015年の日本の釣り人数を推定した。釣り人数は海面487.5万人,内水面336.0万人,釣り堀・管理釣り場177.7万人であった。釣り堀・管理釣り場を除く自然水面についてみると,釣り人の割合は海面59.2%,内水面40.8%であった。内水面の上位8魚種の釣り人数はヤマメ・アマゴ118.8万人,イワナ88.7万人,ニジマス82.4万人,アユ77.6万人,フナ76.7万人,ブラックバス66.6万人,コイ56.1万人,ウグイ35.5万人であった。
著者
樫野 いく子 溝上 哲也 由田 克士 上西 一弘 長谷川 祐子 斉藤 裕子 青柳 清治 倉貫 早智 中村 丁次
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.445-450, 2018 (Released:2018-07-26)
参考文献数
12

国民一人ひとりが健康的な食品を特定し、選択することは容易ではない。近年、栄養素密度に基づき食品をランク付けする栄養プロファイリングモデルが各国で開発されている。しかし、わが国ではこのような概念による食品の評価は十分に行われていない。そこで、日本食品標準成分表2015年版に掲載された食品を対象に食品のランク付けを行った。積極的な摂取が推奨される9つの栄養素と、摂取量を制限すべき3つの栄養素を用いて高栄養素食品指数9.3 Nutrient-rich food index 9.3(NRF9.3)を各食品100kcal当たりで算出した。その結果、藻類、野菜類、きのこ類、豆類の食品群順にNRF9.3が高かった。また、同食品群内でも栄養価の高い食品と栄養価の低い食品を区別することができた。食品を購入する際に、栄養価のより高い食品を選択する、あるいは同食品群内で代替食品を選択するにあたり、本指数を参照することは有用であるかもしれない。
著者
加藤 健一郎 中村 勉 横手 幸伸 松島 俊久 小池 道広 北田 寿美 佐藤 直毅 柳井原 務 横田 茂夫 小林 潔
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成26年度大会(秋田)学術講演論文集 第1巻 給排水・衛生 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.221-224, 2014 (Released:2017-11-15)

配管のねじ接合に関する施工実態の把握を目的に、①アンケートによる施工内容に関する調査の実施、②テープシール併用時のトルクに関する確認実験を実施した。本報では、これらの調査と実験の結果について報告する。
著者
国府島 泉 山本 洋 山本 マリリア明美 中村 知明 長町 栄子 寺坂 昌子 金政 泰弘
出版者
Okayama Medical Association
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3-4, pp.385-389, 1984-04-30 (Released:2009-03-30)
参考文献数
11

電子レンジによるおしぼり付着菌の殺菌効果について検討した.菌付着おしぼりを1本ずつ照射する実験ではE. coli, S. aureus, P. aeruginosaの細菌類は2分間程度のマイクロ波照射で殺菌された.真菌類のC. albicansも3分で殺菌された.しかしB. subtilisの芽胞は5分間のマイクロ波照射でも10%の生残が認められた.実際面を考慮しておしぼり10本程度を同時に行なう場合は,効率的にやや長時間を要するが,芽胞以外のものを対照にする限り5分照射で充分である.電子レンジによるおしぼりの殺菌は手軽に短時間にしかも効果的になされることが判明し,自家処理おしぼりの殺菌にはもちろんのこと業者処理おしぼりの追加殺菌にも有用であると考えられる.
著者
石井 正紀 山口 泰弘 井角 香子 中村 友美 金井 淳子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

慢性閉塞性肺疾患 COPD) は、加齢に伴い進行し高齢者で多発する老年呼吸疾患である。肺の老化とも関連するCOPDでは、ビタミンD血中濃度低下が、肺機能低下や重症度と相関することが分かってきている。しかし、ビタミンDの補充がCOPDの進行を抑制するかは明らかになっておらず、今回、われわれは、肺特異的ビタミンD受容体過剰発現トランスジェニックマウスを作製し、ビタミンD受容体は、肺組織局所において、抗炎症効果の観点から、COPD増悪の抑制に寄与する可能性が示唆された。また喫煙は、肺胞上皮細胞におけるビタミンD受容体発現に対する負の制御因子としてその発現量の低下を誘導する可能性が示唆された。
著者
中村 環
出版者
千葉医学会
雑誌
千葉醫學會雜誌 (ISSN:00093459)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.24-61, 1924-01-28

予ハ曩キニ本研究ノ第一篇「イヌリン」若クハ菊芋ノ健康體及ビ糖尿病患者ニ於ケル態度ニ就テ」ヲ東京醫學會雜誌ニ寄セタルガ今次ノ震災ニ依リ不幸登戴ノ運ニ到ラズシテ原稿ハ烏有ニ歸セリ。本篇ハ第一篇ノ諸事項ヲ前提トスルモノ尠カラザルガ故ニ茲ニ兩篇ノ内容抄録ヲ併記スベシ。第一篇内容抄録。著者ハ三名ノ健康體及ビ七名ノ糖尿病患者ニ就テ行ヒタル諸試驗ノ成績ヨリ經口的ニ攝取シタル「イヌリン」ハ健康人タルト糖尿病患者タルトヲ問ハズ全ク利用セラル、事無キカ或ハ利用セラル、トスルモ其一少部分ノミナリト結論セリ。而シテ「イヌリン」ガ糖尿病患者ノ糖排泄ニ對シテ好影響ヲ與フル所以ハ從來主トシテストラウス等ニ依リテ提唱セラル、「イヌリン」ガ消化管内ニ於テ徐々ニ分解セラレツ、徐々ニ吸收セラル、爲メナリト云フガ如キ直接ノ結果ニ非ズシテ寧ロ「イヌリン」自身ガ利用セラレ難キノミナラズ亦夫ハ同時ニ攝取シタル他ノ食品ノ利用ヲモ阻害スル間接ノ結果ニ他ナラズ。蓋シ此際急劇ニ增殖セル腸内細菌ニ依リテ生成セラレタル「イヌリン」ノ分解産物ガ糖尿病ニ對シテ間接ニ好影響ヲ呈スルモノアルベシ。之等ニ就テハ尚精細ナル檢索ヲ要ス。第二篇内容抄録。著者ハ其實驗成績ヨリ動物體内ニアリテ「イヌリン」ヲ吸收、利用スベク分解スルモノハ唯胃液ノ鹽酸アルノミニシテ「アルカリ」、唾液、膵液等ニハ其作用無ク、防衛酵素トシテ恐クハ又適應性酵素トシテモ「イヌリン」ヲ分解スルモノナシトノ結論セリ。從テ動物體内ニテ鹽酸以外ニ「イヌリン」ヲ分解スルモノハ腸内細菌ノミトナル理ナルガ此細菌ニ依ル分解ハ「イヌリン」ヲ果糖ヨリ以上ニ進デ分解スThe author has reached to the following conculsions as the results of experiments. 1. The hydrochloric acid secreted in the stomach is the only one agent which chemically attacks and hydrolyses the inulin to the absorbable and utilizable sugar. Neither the alkali of the intestinal juice and saliva nor the pancreatic juice has similar functions. Also no protective or adaptive enzyme, which influences the inulin hydrolysis, is to be found. 2. In addition to the hydrochloric acid, the bacteria in the intestinal canal have the possibility of hydrolysing inulin. However the latter destruct inulin far beyond the utilizable sugar, say fructose, so that the utilization of this products might not be remarkable. 3. The inulin prepared by me from Jersalem artichocke, found to be purest in comparison with other preparations, 1.00 gram giving 1.02 gram of fructose. 4. Inulin diffundiert the semipermeable membran proportionally to the duration and concentration. 5. The optimal concentration of hydrochloric acid for the inulin hydrolysis is from 1/10 to 1/20 mol. The concentration of 2g/dl or 2% is not fitted as it destructs inulin further than fructose. 6. The serum of rabbit which manipulated with inulin previously gets no power of hydrolysing inulin. By injection of inulin no increase of blood sugar was observed and after repeating the injection the excretion of inulin rather increases. 7. The serum of rabbit after manipulation with inulin shows no reaction against the inulin in the form of complementbindingpower or of precipitations. (Abstract by Author).新字体抄録:予ハ曩キニ本研究ノ第一編「イヌリン」若クハ菊芋ノ健康体及ビ糖尿病患者ニ於ケル態度ニ就テ」ヲ東京医学会雑誌ニ寄セタルガ今次ノ震災ニ依リ不幸登戴ノ運ニ到ラズシテ原稿ハ烏有ニ帰セリ。本編ハ第一編ノ諸事項ヲ前提トスルモノ少カラザルガ故ニ茲ニ両編ノ内容抄録ヲ併記スベシ。第一編内容抄録。著者ハ三名ノ健康体及ビ七名ノ糖尿病患者ニ就テ行ヒタル諸試験ノ成績ヨリ経口的ニ摂取シタル「イヌリン」ハ健康人タルト糖尿病患者タルトヲ問ハズ全ク利用セラル、事無キカ或ハ利用セラル、トスルモ其一少部分ノミナリト結論セリ。而シテ「イヌリン」ガ糖尿病患者ノ糖排泄ニ対シテ好影響ヲ与フル所以ハ従来主トシテストラウス等ニ依リテ提唱セラル、「イヌリン」ガ消化管内ニ於テ徐々ニ分解セラレツ、徐々ニ吸収セラル、為メナリト云フガ如キ直接ノ結果ニ非ズシテ寧ロ「イヌリン」自身ガ利用セラレ難キノミナラズ又夫ハ同時ニ摂取シタル他ノ食品ノ利用ヲモ阻害スル間接ノ結果ニ他ナラズ。蓋シ此際急激ニ増殖セル腸内細菌ニ依リテ生成セラレタル「イヌリン」ノ分解産物ガ糖尿病ニ対シテ間接ニ好影響ヲ呈スルモノアルベシ。之等ニ就テハ尚精細ナル検索ヲ要ス。第二編内容抄録。著者ハ其実験成績ヨリ動物体内ニアリテ「イヌリン」ヲ吸収、利用スベク分解スルモノハ唯胃液ノ塩酸アルノミニシテ「アルカリ」、唾液、膵液等ニハ其作用無ク、防衛酵素トシテ恐クハ又適応性酵素トシテモ「イヌリン」ヲ分解スルモノナシトノ結論セリ。従テ動物体内ニテ塩酸以外ニ「イヌリン」ヲ分解スルモノハ腸内細菌ノミトナル理ナルガ此細菌ニ依ル分解ハ「イヌリン」ヲ果糖ヨリ以上
著者
中村 拓 園部 達也 戸田 裕行 藤澤 奈緒美 武富 貴史 プロプスキ アレクサンダー サンドア クリスチャン 加藤 博一
出版者
一般社団法人 測位航法学会
雑誌
測位航法学会論文誌 (ISSN:21852952)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-12, 2019 (Released:2019-06-01)
参考文献数
13

船舶の着桟支援を想定したロバストな高精度測位手法を開発した.本手法は,自船に固定したカメラで撮影した動画像データ,複数のGNSSアンテナから受信した民生用L1信号データ,及び,6軸IMUデータの融合により実現する.動画像データの視覚オドメトリを用いて,港湾構造物の3次元構造を復元しつつ,6軸IMUデータとGNSS衛星単位の搬送波位相の時空間変化量とのタイトカップリングによって高精度に自船の軌跡を推定する新しいオドメトリ技術を構築した.さらに,クロックを共有した複数のGNSS受信機のクロックドリフト推定を共通化することで,約10cmの高精度な軌跡精度を維持するための衛星数の条件が緩和できたことを確認した.
著者
中村 志津香 大塚 泰正
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.77-84, 2014 (Released:2014-11-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

ストレスフルな状況において、数あるコーピングの中のどのコーピングが有効であるのかは状況に依存する。そのため、状況に応じてコーピングを柔軟に使い分ける能力であるコーピングの柔軟性の重要性が指摘され、研究が進められてきている。これまでの研究では、コーピングの柔軟性における認知機能の役割を理解することが重要であるといわれ、認知機能の中でも1つの認知活動に固執することを避けたり、認知活動を柔軟に切り替えたりする能力が重要であると指摘されている。さらに、個人が実行することのできるコーピング方略が多様であることだけでは不十分であり、ストレッサーの変化に応じてコーピング方略の有効性をモニタリングする能力としてのメタ認知能力が必要であることが指摘されている。また、コーピングの柔軟性を規定するもう一つの要因として自己注目が挙げられ、自己注目の高い人はストレスフルな状況におかれた場合でも、自己へ注意が向かいやすく、柔軟なコーピングを行うことができない可能性が考えられる。こうした先行研究を踏まえ、本研究では、5つのメタ認知(認知能力への自信のなさ、心配に対するポジティブな信念、認知的自己意識、思考統制の必要性に関する信念、思考の統制不能と危機に関するネガティブな信念)と自己注目が抑うつに与える影響について、大学生396名(男性230名、女性166名)を対象に調査を行った。メタ認知と自己注目がコーピングの柔軟性と抑うつに影響を与えるモデルを作成した。共分散構造分析の結果、思考統制の必要性に関する信念からコーピングの柔軟性に正の関連が認められ、思考の統制不能と危機に関するネガティブな信念からコーピングの柔軟性に負の関連が認められた。さらに、コーピングの柔軟性は抑うつと負の関連があること、認知能力の自信のなさ、思考の統制不能と危機に関するネガティブな信念、自己注目は抑うつと正の関連があることが認められた。これらの結果から、非適応的な思考やコーピングを止める必要があると考えることができる人は、コーピングの柔軟性が高いことが明らかになった。一方、非適応的な思考やコーピングを止めることができないと考える人は、それを適応的な思考やコーピングに切り替えることができないことも明らかになった。また、自己注目とコーピングの柔軟性には関連が認められなかった。さらに、コーピングの柔軟性に富む人は抑うつが低いことが明らかになった。
著者
扇野 綾子 中村 由美子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.1-9, 2014 (Released:2016-12-09)
参考文献数
19
被引用文献数
3

本研究の目的は、慢性疾患患児を育てる母親の心理的適応の構造の特徴について明らかにすることである。 病児の母親247名と健康児の母親332名を対象に、自記式質問紙調査を行った。心理的適応に関連する要因として精神的健康度、コーピング、レジリエンスを測定し、分析は記述統計と平均値の差の検定の後、共分散構造分析を用い母親の心理的適応モデルを作成した。 各尺度の得点を比較した結果、病児の母親は健康児の母親に比べて精神的健康度が低く、レジリエンスの 「I AM」 「I WILL/DO」、コーピングの 「肯定的解釈」 が有意に低かった。共分散構造モデルについて、子どもの疾患の有無による多母集団の同時分析を行った結果、病児の母親の心理的適応を構成する要因では 「自信」 の影響が大きく、『柔軟な力』を構成する 「楽観視」 と 「こころのゆとり」 のパス係数が高かった。 これらの結果より、病児の母親に対しては育児を承認し、長期的な視点をもち関わるなど支援の方向性の示唆が得られた。
著者
田中 輝和 田中 恭子 高原 二郎 藤岡 譲 田村 敬博 山ノ井 康弘 北条 聰子 高橋 敏也 三木 茂裕 中村 之信
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.790-797, 1994-06-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
13

MRSAとその複数菌感染症に対し, Arbekacin (ABK), Fosfomycin (FOM) 投与30分後に Ceftazidime (CAZ) を投与する時間差併用療法を設定し, 基礎的, 臨床的検討を行い以下の成績を得た。臨床分離のMRSA 1727及びPseudomonas aeruginosa KIに対し, 1/4~1/8MICのABK, FOM, CAZの同時及び時間差処理を行い, 殺菌効果を比較したところ, 時間差処理群により優れた相乗的殺菌効果が認められた。両菌による複数菌感染にマクロファージを用いた系では, 三薬剤の時間差併用により, マクロファージによる著しい殺菌効果の増強が認められた。MRSA感染症を呈した15症例に対する臨床的検討では, 有効率は80.0%であった。MRSAに対する除菌率は60.0%であった。ABK, FOM, CAZを用いた時間差併用療法は, MRSAを含む複数菌感染症に対し, 非常に有効な治療法であると考えられる。