著者
中村 世名
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.97-105, 2019-06-28 (Released:2019-06-28)
参考文献数
37

伝統的にマーケティング研究は競争を回避すべき対象と見なしてきた。しかし,激しく,素早い競争行動によって特徴づけられる今日の環境を踏まえると,競争が不回避であるという前提のもと,競合企業との競争に勝ち続けるために必要な要因を探究する新たなマーケティング研究が求められるであろう。本論は,そのような研究を「競争志向型のマーケティング戦略研究」と呼称し,競争志向型のマーケティング戦略研究が依拠すべきフレームワークを検討した。分野横断的なレビューの結果,オーストリア経済学をルーツとする競争ダイナミクス・ビューが競争志向型のマーケティング戦略論の依拠するフレームワークとしてふさわしいことが特定化された。また,今後の研究の方向性として,競争ダイナミクス・ビューの知見に(1)顧客との関係性,(2)流通業者との関係性,(3)ポートフォリオの視点を加えた研究を行うことによって,新たな示唆を提供できることが指摘された。
著者
綾部 時芳 中村 公則
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、小腸のPaneth細胞が分泌するαディフェンシンの作用から炎症性腸疾患の病因・病態を解明して新規治療を提案することが目的である。本年度は、αディフェンシンと腸内細菌からみた殺菌及び共生メカニズムを、cryptdin およびHD5と腸内細菌との会合から解析した。Acid-Urea PAGE、western blot法、sandwich ELISA等を用いた生化学的・免疫学的解析および殺菌活性測定によって、腸内常在細菌であるLactobacillus、Bifidobacterium等と、非常在菌(病原菌)であるSalmonella、Staphylococcus等でαディフェンシンとの会合状態が異なることを示した。また、クローン病モデルマウスを用いてαディフェンシン異常による腸内共生環境の破壊 (dysbiosis)の可能性について解析した。クローン病モデルマウスのパネト細胞顆粒のcryptdinおよびcryptdin分泌量についてRP-HPLC、Tris-Tricine SDS-PAGE、Acid Urea-PAGE、westen blot法およびsandwich ELISAで解析・測定して、病理病態進展におけるαディフェンシン異常の関与を明らかにした。さらに、小腸絨毛・陰窩におけるcryptdin、MMP7、CD24等の免疫局在を解析し、幹細胞とPaneth細胞が形成するニッチ相互作用の可能性を示した。以上のように、αディフェンシンの病態関与から、クローン病の新規治療法に繋がる重要な成果を得た。本研究で得られた新知見から、αディフェンシン異常によるdysbiosisがクローン病以外にも多くの疾患に寄与すると考え、実際に移植片対宿主病 (GVHD)における病態関与を証明した。
著者
中村 智幸
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.274-282, 2015 (Released:2015-03-20)
参考文献数
19
被引用文献数
8

レジャー白書の「釣り」に関するデータをもとに,日本における遊漁の推移を分析した。1998 年前後以降,参加率,参加人口,参加希望率は経年的に減少していた。しかし,参加順位,潜在需要は減少しておらず,レジャーの中で低くなかった。年間活動回数は減少していたが,1 回当たり費用は減少しておらず,2010 年前後の年間総支出額は約 5,000 億円であった。このように,遊漁は国民にとって重要なレジャーのひとつである。今後は魚種別や釣り方の似通った魚種群別に分析を行い,具体的な振興策を検討する必要がある。
著者
杉山 卓也 中村 武彦 西井 良 菅沼 柾希 宅野 信輔 千葉 裕花 増田 百恵 三井 玲奈
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1_31-1_40, 2020 (Released:2020-01-24)
参考文献数
12

The purpose of this research was to investigate the current situation in which youth teams in Europe are producing football players in strong teams and to explore the success model of the youth teams. The youth teams of the European top four major league division teams were examined, and as a result of calculating the contribution points based on the UEFA club ranking, the first place was Real Madrid youth, the second place was Barcelona Youth. Among the top 10 teams in total points, there were teams that showed high points even if they were not such strong teams. Also, although Manchester City Youth has produced many players, it did not differ much from other teams in regard to total points. In addition, there were teams that promoted many players in their top teams, like Athletic Bilbao Youth. Based on the above surveys, it was considered that the teams that successfully trained players could be classified into the following three major categories. ① Multi-player High Level Type, including Real Madrid youth and Barcelona youth, producing many players and operating at a high level. ② Self-Team Contribution Type, including Athletic Bilbao Youth, promoting many players to their own top team. ③ Release to Other Teams Type, including Manchester City Youth, producing numerous players who join other teams
著者
高野 正博 緒方 俊二 野崎 良一 久野 三朗 佐伯 泰愼 福永 光子 高野 正太 田中 正文 眞方 紳一郎 中村 寧 坂田 玄太郎 山田 一隆
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.201-213, 2011 (Released:2011-04-01)
参考文献数
43

陰部神経に沿って圧痛ある硬結が存在し,肛門痛,括約不全,排便障害,腹部症状,腰椎症状を訴える症例がある.これらの症候の合併率は85.1%と高く,仙骨神経と骨盤内臓神経の両者の障害が関与していることがわかり,神経因性骨盤臓器症候群(Neurogenic Intrapelvic Syndrome,NIS)と名付けた. この症候群と診断した537例に,病態に応じて,肛門痛には主としてブロック療法,括約不全にはバイオフィードバック療法,腸管の運動不全には薬物療法,神経障害には理学療法と運動療法,また症候群に附随する精神障害には心理療法を組み合わせて治療した. その結果,肛門痛74.2%,括約不全83.3%,排便障害78.1%,腹部症状81.5%,腰椎症状66.0%で症状が改善し,これらの治療法は治療効果が高率に得られる適切なものであると判断した.多症候を有する症例でもそれぞれの病態に対する治療法を組み合わせ,総合的な治療を加え行うことによって高い効果が得られた.
著者
中村 亜希子
出版者
東京大学
雑誌
東京大学考古学研究室研究紀要 (ISSN:02873850)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.71-108, 2006-03-31

小稿は中国黒龍江省寧安県に位置する渤海の上京龍泉府址から出土した軒丸瓦を文様によって編年し,それを製作技法の観察から裏づけしたものである。渤海国は自国書を持たないため,その歴史を考えるにあたっては遺跡からの出土遺物の検討が非常に重要な位置を占めている。従来,中国や日本,北朝鮮等の研究者が軒丸瓦の文様の分類や編年などの研究を行っており,近年は特に日本において東京大学考古学研究室所蔵の遺物を対象資料とした研究が盛んに行われている。しかし,従来の研究は主に文様によるもののみであることから,製作技法との対応関係を明確にし,さらに九瓦や平瓦との対応関係を明らかにしていく必要性を感じている。本稿ではまずその研究の基本をなす編年を提示し,今後,上京龍泉府址での出土地点による比較や他遺跡の出土品との比較を通して渤海国の歴史を明らかにしていきたい。
著者
竹ノ内 敏一 片桐 広子 岩野 恵子 中村 敦子
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.658, 2010-09-01 (Released:2011-03-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

The authors, using sodium hypochlorite solution, hydrochloric acid, and sodium chloride, prepared acidic synthesized water having the same characteristics and composition as an anodically electrolyzed sodium chloride solution (acidic electrolyzed water). The following findings were obtained by investigating the characteristics of each solution and the dissolution behavior of copper. 1) The dissolved oxygen concentration and free chlorine concentration decrease immediately after electrolysis in acidic electrolyzed water. Their rates of decline are higher than in acidic synthesized water. 2) The dissolution rate and surface morphology of copper immersed in the respective solutions are almost identical. 3) Free chlorine in these solutions accelerates the dissolution rate. The dissolved chlorine increases the surface roughness of copper. 4) Oxygen nanobubbles probably exist much in acidic electrolyzed water. 5) Dissolution behavior of copper immersed in acidic electrolyzed water differs between during electrolysis and after electrolysis. Dissolution rate of copper is larger, and surface was not roughened in acidic electrolyzed water during electrolysis. These phenomena are presumably attributable to the actions of hydroxyl radicals generated during electrolysis.
著者
中村 麻子 島崎 信夫 田中 梨恵 飯田 秀夫
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.193-202, 2018-09-25 (Released:2019-03-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

2013年9月にL. pneumophila serogroup 1によるレジオネラ肺炎の院内発生を認めた.調査の結果,パルスフィールド電気泳動にて病室内給湯水と患者から採取した喀痰のレジオネラDNAのバンドパターンが一致したことから感染源が給湯系であると推察した.給湯系の汚染を調査した結果,混合水栓1か所からL. pneumophila SG 1が検出された.除菌対策として熱水消毒後,配管内の湯温低下防止のため湯の持続放流を実施し,さらに不要配管を除去した結果,除菌は成功した.しかし40℃の混合水から再びL. pneumophila SG 1が検出されたことを契機に92か所の水を調査したところ,23か所から同菌が検出され給水系の汚染を認めた.給水系の除菌対策として,末端混合栓での水の遊離残留塩素濃度が0.87 mg/L以上となるよう受水槽に次亜塩素酸ナトリウムを持続的添加に加え,最遠位の混合水栓から毎日6分間および全病室洗面台から毎日1分間水を放流した.これらの対策により遊離残留塩素濃度は平均0.81 mg/Lに上昇(p<0.01)し,同菌の検出が13.6%から0.4%に減少(p<0.01)し有効性を認めた.本研究の結果から,給湯系のレジオネラ属菌汚染を認めた場合,給水系に汚染源がある可能性を考慮して調査が必要であると考える.
著者
草野 拳 西下 智 中村 雅俊 梅垣 雄心 小林 拓也 田中 浩基 梅原 潤 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1366, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】腱板筋は肩関節の動的安定性に強く関与しており,自由度が高く運動範囲が広い肩関節において重要な役割を果たしている。棘下筋や小円筋などの腱板筋の柔軟性が低下することで,可動域制限や疼痛により日常生活動作が制限されることもある。筋の柔軟性低下や可動域制限に対してはストレッチング(ストレッチ)が用いられている。臨床で多く行われているストレッチにスタティックストレッチ(SS)があり,筋の柔軟性を向上させるためには,適切な肢位で十分な時間SSを継続する必要がある。棘下筋の効果的なSS肢位に関する報告は解剖学や運動学の知見をもとに幾つかあるが,確立されていない。新鮮遺体を用いて棘下筋に対するストレッチ研究を行ったMurakiらによると,棘下筋が最も伸張される肢位は挙上位での内旋,または伸展位での内旋である。この結果をもとに生体における検証を行った我々の研究においても,伸展位での内旋が最も効果的であるという結果が確かめられている。しかし実際にSS前後での柔軟性の変化については検証されていない。そこで本研究では,計3分間の伸展,内旋方向SSが棘下筋の柔軟性向上,内旋可動域拡大に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。そのなかで,SSを30秒刻みで行うことでSS間における柔軟性の時間的な推移を見ることにした。【方法】対象筋は健常成人男性16名(平均年齢22.7±1.6歳)の非利き手側の棘下筋とした。筋の硬さの程度を表す指標である弾性率の計測は,超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用いた。弾性率は低値を示す程筋が柔らかいことを意味する。計測部位は棘下筋上部で統一し,筋腹に設定した関心領域の弾性率を3回計測し,その平均値を算出した。計測肢位は腹臥位にて母指を第7胸椎に合わせた肢位とした。SSは腹臥位にて肩甲骨を上から圧迫し固定した状態で,結帯肢位から母指を脊椎に沿わせて他動的に肩関節伸展,内旋運動を行った。運動強度は被験者が疼痛を訴える直前までとし,SS30秒,計測30秒の間隔で6セット行った。計測はSS介入前(Pre),各SS間(SS1,SS2,SS3,SS4,SS5),SS介入後(Post)で行い,計7回計測した。また,PreとPostに腹臥位にて,外転90°(2nd)での内旋角度をデジタル角度計で3回計測し,その平均値を算出した。統計学的検定は,測定ごとの棘下筋の弾性率について一元配置分散分析および多重比較を行い,またPreとPostの2nd内旋角度間で対応のあるt検定を行った。有意水準は5%とした。【結果】測定ごとの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はPreが12.0±5.1,SS1が10.4±4.1,SS2が9.5±3.4,SS3が9.7±3.9,SS4が9.3±3.5,SS5が9.1±3.4,Postが8.6±3.3であった。また2nd内旋角度(単位:°)はPreが58.4±7.5,Postが62.6±5.9であった。統計学的には,多重比較によりPreに対しSS1,SS2,SS3,SS4,SS5,Postで有意に弾性率の低下が見られた。対応のあるt検定により,Preに対しPostで有意に2nd内旋角度の拡大が見られた。【考察】PreとPostの比較より,計3分間の肩関節伸展,内旋方向SSによって棘下筋の柔軟性は向上し,可動域の拡大も得られることが明らかとなった。さらに30秒ごとに弾性率の変化を見ることで,30秒のSSにより弾性率が低下し,30秒と3分のSSでは弾性率に変化が見られないことが明らかとなった。弾性率を指標に下肢でストレッチ研究を行った我々の研究では,腓腹筋の柔軟性の向上には2分以上のSSが必要であることが明らかとなっているが,それに対し棘下筋ではより短いSS時間で柔軟性が向上したと考えられる。これは棘下筋の筋断面積が腓腹筋に比べ非常に小さいことが理由として考えられる。【理学療法学研究としての意義】これまでストレッチ前後での柔軟性の変化が検証されていなかった棘下筋に対し,先行研究で最も効果的であるとされている伸展,内旋方向SSを3分間行うことによって棘下筋の柔軟性は向上し,内旋可動域も有意に拡大することが明らかとなった。また,このSSにより30秒で棘下筋の柔軟性が向上していることが明らかとなった。
著者
中村 一樹 森 文香 森田 紘圭 紀伊 雅敦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_683-I_692, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
21

近年,道路整備の方針は歩行者中心の多機能な空間整備へと転換が求められているが,従来の歩行空間整備は個別の機能に注目しており,多機能性を包括的に評価する手法が確立されていない.そこで本研究では,歩行空間の機能別のデザインが包括的な知覚的評価に与える影響を特定することを目的とする.まず,歩行空間整備のガイドラインをレビューして,多様なデザイン要素を機能別に整理した.そして,全国の整備事例のデザイン要素の水準を指標化し,道路タイプごとにデザイン要素の特徴を類型化した.最後に,各機能のデザインの知覚的評価のアンケート調査を行い,その意識構造について共分散構造分析を行った.この結果,歩行者は歩行空間デザインの機能に階層的なニーズを持ち,これを考慮した機能間のデザインの組合せが重要であることが示された.
著者
中村 晃 神藤 貴昭 田口 真奈 西森 年寿 中原 淳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.491-500, 2007-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究では, 大学教員初任者がもつ教育に対する不安について検討し, さらにこのような不安と同時に周囲からのサポートについても考慮し, これらがどのように仕事に対する満足感と関係するかを検討することを目的とした。そのため, まず教育不安尺度を作成し, 次に教育不安が周囲からのサポート, および職務満足感とどのような関係にあるかを質問紙により検討した。その結果, 教育不安尺度では因子分析により「教育方法に関する不安」「学生に関する不安」「教育システムに関する不安」の3因子が見出された。また教育不安と職場におけるサポート, および職務内容満足感との関係を検討した結果, 教育に関する不安が高い場合, 先輩教員のサポートが満足感を上げる要因になること, および教育システムに関する不安が高い場合, 同世代教員によるサポートが少ないと満足感が低くなることが示唆された。これらのことから, 特に不安の高い教員に対しては, 職場のサポートが仕事の満足感を上げるうえで重要であると考えられる。
著者
中村 浩二 富田 美穂子 中村 弘之 中村 こず枝
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療技術短期大学紀要 (ISSN:09120513)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.17-23, 2006-03-31
被引用文献数
1

We investigated the opinion poll to dental asset value. As a result of the questionnaire, the asset value of 28 teeth became 9.73 million yen on the average. One's thirties reached the highest value for 13.78 million yen compared with other age. The treatment expense that you may pay to one tooth became 24,300 yen on the average, and one's thirties became the highest result similarly. It was suggested that one's thirties felt dental asset value the highest from these result. Moreover, it was suggested that general people had not only the practical but also a aesthetic view for teeth. The survey result shows that general people felt the amount of money paid at the dentists'counter is 7,600 yen or more higher on the average. From these results, preset dental treatment fee was thought to be an amount of money accepted enough by the patient.
著者
梅原 潤 長谷川 聡 中村 雅俊 西下 智 草野 拳 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0374, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】上肢運動は肩甲骨,上腕骨,鎖骨などからなる複雑な運動であり,これらの協調的な運動の破綻は,肩関節障害に関連すると考えられている。その中でも,肩甲骨異常運動は肩関節疾患に頻繁にみられ,理学療法の治療対象となることが多い。肩甲骨周囲軟部組織の柔軟性低下,特に小胸筋の短縮は肩甲骨異常運動に関係すると報告されており,我々はこれまでに小胸筋の効果的なストレッチング方法及びその効果を調べてきた。そこでこれまでの研究を元に,ストレッチングによる小胸筋の即時的な柔軟性の変化が肩甲骨運動に与える影響を検討することを本研究の目的とした。【方法】対象は,健常成人男性20名(25±3.2歳)の非利き手側の上肢とした。実験手順は動作課題,5分間休息,動作課題,ストレッチング,動作課題の順とした。各動作課題は,座位での肩甲骨面挙上,外転,結髪動作をランダムに実施した。磁気センサー式三次元動作計測装置(3SPACE-LIBERTY,Polhemus社製)を用いて,肩甲骨面挙上と外転においては胸郭に対する上腕骨挙上30°~120°の範囲,結髪動作においては30°~100°の範囲で10°ごとに肩甲骨外旋角度,上方回旋角度,後傾角度を計測した。ストレッチングによる変化を調べるため,各肩甲骨運動のストレッチング前の動作課題変化量(ΔPre)とストレッチング前後の動作課題変化量(ΔPost)を算出した。小胸筋のストレッチングは,安静座位にて肩関節150°外転位から他動的に最大水平外転,最大外旋を行う方法を5分間(30秒×10回)実施した。超音波診断装置せん断波エラストグラフィー機能(SuperSonic Imagine社製)を用いて,ストレッチング前後に小胸筋の弾性率を計測した。なお,弾性率は低値な程,柔軟性が向上したことを示す。計測姿勢は肩関節90°外転位で上腕を台に置いた安静座位とし,計測部位は烏口突起と第4肋骨の中点で小胸筋の外側部とした。統計学的検定は,肩甲骨運動の変化量について反復測定二元配置分散分析および対応のあるt検定,小胸筋の弾性率について対応のあるt検定を用いた。なお,統計学的有意水準は5%とした。【結果】ストレッチング後に小胸筋の柔軟性向上が認められた。肩甲骨運動の変化量については,肩甲骨面挙上では上腕骨挙上40°~120°の肩甲骨外旋角度と60~120°の後傾角度,外転では30~120°の外旋角度と後傾角度,結髪動作では60~120°の後傾角度において,ΔPostはΔPreと比較して有意に増加した。【結論】ストレッチングによる小胸筋の即時的な柔軟性の向上は,動作課題中の肩甲骨運動を変化させることが示された。小胸筋のストレッチング後に増加した肩甲骨の外旋と後傾は上肢運動に重要であり,本研究結果は,肩甲骨異常運動の治療戦略におけるストレッチングの有用性を示す一助となると考える。
著者
山本 けい子 寺門 修 竹内 孝 中村 和之 広瀬 義朗 八重樫 忠郎 瀬川 拓郎
出版者
独立行政法人国立高等専門学校機構 函館工業高等専門学校
雑誌
函館工業高等専門学校紀要 (ISSN:02865491)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.105-110, 2018 (Released:2018-01-31)
参考文献数
9

Based on the hypothesis that Hokkaido gold dust was contained in the enormous amount of gold that supported the wealth of the Oshu-Fujiwara clan, we analyzed gold dusts which were obtained from relics excavated in Yanagi-no-Gosho Site in Hiraizumi.In this research, we conducted the analysis using statistical methods such as data similarity, principal component analysis(PCA) and support vector machine(SVM). The target data are elemental analysis data sets of gold on relics excavated from Hiraizumi and they are compared to data sets of gold dust picked in Hokkaido and Tohoku region.Through these statistical analysis, we concluded that the gold on relics excavated from Hiraizumi was closer to the elemental constituents of gold dust picked in Iwate Prefecture. About this Hiraizumi sample, we were not able to estimate that its gold might have been brought from Hokkaido. However, we are thinking that these statistical approaches are useful methods to clarify facts of the trade between the Oshu-Fujiwara clan and indigenous people in Hokkaido.
著者
季 翔 正木 光裕 梅垣 雄心 中村 雅俊 小林 拓也 山内 大士 建内 宏重 池添 冬芽 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0486, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】近年開発された超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能で測定される弾性率は,筋の伸張性を反映することが報告されている(Maïsetti 2012, Koo 2013)。そのため,この弾性率を指標として個別の筋の伸張の程度を定量的に評価することが可能となった。臨床において筋・筋膜性腰痛や背部筋の過緊張に対する運動療法として,背部筋のストレッチングがよく用いられている。背部筋のなかで脊柱起立筋は脊柱の伸展,同側側屈,同側回旋,多裂筋は脊柱の伸展,同側側屈,反対側回旋の作用を有する。そのため,脊柱起立筋は脊柱の屈曲,反対側側屈,反対側回旋,多裂筋は脊柱の屈曲,反対側側屈,同側回旋で伸張される可能性が考えられる。しかし,どのような肢位で脊柱起立筋や多裂筋が最も効果的に伸張されるかについては明らかではない。本研究の目的は,せん断波エラストグラフィー機能で測定した弾性率を用いて,脊柱起立筋と多裂筋の効果的なストレッチング方法を明らかにすることである。【方法】対象は整形外科的および神経学的疾患を有さない健常若年男性10名(年齢22.9±2.3歳)とした。なお,腰痛を有する者は対象から除外した。筋の弾性率(kPa)の評価には,せん断波エラストグラフィー機能を有する超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)を用い,各筋の筋腹に設定した関心領域のせん断速度から弾性率を求めた。なお,弾性率の値が高いほど筋は硬く,伸張されていることを意味する。対象筋は左腰部の脊柱起立筋(腰腸肋筋)および右腰部の多裂筋とした。測定部位は脊柱起立筋が第3腰椎棘突起の7cm外側,多裂筋が第4腰椎棘突起の2cm外側とした。測定肢位は①安静腹臥位(以下,rest),②正座の姿勢から体幹を前傾し,胸腰推を40~45°屈曲した肢位(以下,屈曲),③ ②の胸腰推を40~45°屈曲した肢位からさらに胸腰推を30°右側屈した姿勢(以下,屈曲右側屈),④ ②の胸腰推を40~45°屈曲した肢位からさらに胸腰推を30°右回旋した姿勢(以下,屈曲右回旋)とした。なお,本研究においては多くのストレッチング肢位をとることで筋の柔軟性が増加し,弾性率に影響が生じる可能性を考慮し,ストレッチング肢位は上記②~④の3条件のみとし,測定の順序はランダムとした。また,②~④の肢位では,できるだけ安楽な姿勢をとらせるために腹部にストレッチポールを挟んだ。なお,胸腰推の角度は日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会による測定法に準じた。統計学的検定には,Bonferroni法による多重比較検定を用いて,測定肢位による弾性率の違いを分析した。なお,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究内容について十分な説明を行い,同意を得たうえで実施した。【結果】左脊柱起立筋の弾性率については,屈曲右側屈(20.8kPa),屈曲(13.7kPa)がrest(5.0kPa)よりも有意に高かった。また,屈曲右側屈が屈曲,屈曲右回旋(9.2kPa)よりも有意に高い値を示し,屈曲と屈曲右回旋との間に有意な差はなかった。右多裂筋の弾性率については,屈曲(30.7kPa),屈曲右回旋(30.2kPa)屈曲右側屈(17.6kPa)がrest(5.7kPa)よりも有意に高かった。また,屈曲右側屈が屈曲,屈曲右回旋よりも有意に低い値を示し,屈曲と屈曲右回旋との間に有意な差はなかった。【考察】せん断波エラストグラフィー機能による弾性率を用いて背部筋の伸張の程度を調べた結果,脊柱起立筋においては,脊柱屈曲位で反対側側屈することが最も効果的なストレッチング方法であることが明らかとなった。脊柱起立筋は,脊柱屈曲位,脊柱屈曲位で反対側側屈することで筋を伸張することができ,また,脊柱屈曲位で反対側側屈することは,脊柱屈曲位や脊柱屈曲位で反対側回旋することよりもより効果的に伸張することができることが示唆された。脊柱屈曲位で反対側回旋させるよりも反対側側屈させるほうが,脊柱起立筋を伸張させるのに効果的である理由としては,脊柱起立筋の側屈モーメントアームは回旋モーメントアームよりも大きいことが影響していると考えられる。また,多裂筋は特に脊柱屈曲位および脊柱屈曲位で同側回旋において伸張されることが示唆された。この脊柱屈曲位と脊柱屈曲位で同側回旋との間には有意差がみられなかったことから,同側回旋を加えなくても脊柱を屈曲するだけで多裂筋は効果的に伸張することができると考えられた。脊柱屈曲位で同側回旋を加えても多裂筋に影響を与えなかった理由として,多裂筋は回旋作用を有するが,回旋モーメントアームは小さいことによるものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究によって,脊柱起立筋は脊柱屈曲位でさらに反対側側屈を加えることで,多裂筋は脊柱を屈曲することで,より効果的に伸張できることが示唆された。
著者
横田 樹広 中村 早耶香 味岡 ゆい 南 基泰 那須 守 米村 惣太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.II_45-II_55, 2011 (Released:2012-03-16)
参考文献数
25

土岐川・庄内川流域圏を対象として,景観,生態系,ハビタットの3つのスケール間で生物多様性の特徴を評価した.小流域の類型化により流域圏の環境特性を把握したうえで,種多様性と固有種ヒメタイコウチの潜在的生息適地の分布予測を行い,それらの空間的関係性を把握した.その結果,流域圏中~上流域の里山地域において,流域の環境構造は植生条件よりも地史的な環境条件により特徴づけられ,とくにヒメタイコウチの生息適地の分布に影響する古い地層を伴った土岐砂礫層の分布が,種多様性と固有種生息適地の空間的な重複と不一致にも影響していることが明らかになった.これらをもとに,生態系の地域固有性に配慮した,流域圏の生物多様性マネージメントの空間指針について検討した.