著者
徳井 淑子 小山 直子 伊藤 亜紀
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

情報が伝達され、流行・流儀として定着したことは、そこに一つの文化が成立したことを意味する。ゆえに情報伝達のしくみを追究することは文化の形成過程を追究することに等しい。本研究は、服飾流行における情報媒体について、特に日本の近代、およびヨーロッパの中世・近代において考察し、それぞれの文明における情報伝達の特質と相違を明らかにしたものである。1 近代日本の愛用した「天平風俗」という文化的表象は、文化的概念「東亜」の将来が予告的に可視化されたものであった。つまり、近代日本における「可視化された情報」としての服飾は、文化的表象あるいは趣味(=taste)として感覚的な媒体でありながらも、それ以上に政治的概念を無意識のうちに浸透させる媒体でもあったと考えられる。2 中世ヨーロッパでは婚姻、祝祭、文芸活動を通した宮廷間交流が、16世紀以後はエンブレム・ブックの刊行が、涙模様など紋章に基付いた服飾意匠の汎ヨーロッパ的な伝播に貢献した。一方、ロマン主義時代のパリにおける歴史服の流行が、演劇と文芸とファッションの情報の相互媒介によることは、19世紀の情報伝達の特徴とされる。3 チェーザレ・リーパの『イコノロジーア』(初版1593年)における色彩シンボリズムは、15-16世紀のイタリアとフランスで書かれた複数の色彩論に典拠をもつ。これらの色彩論は、文芸作品における人物の服飾描写に大きな影響を与えたばかりか、近代初期のヨーロッパ人の服飾における色彩流行に影響を与え、ファッション情報のメディアとしての機能を果たした。
著者
根岸 孝 伊藤 精亮 藤野 安彦
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.374-377, 1971
被引用文献数
1

スフィゴシルボスホリルコリンが<i>Cl. perjringens</i>から調製したホスホリパーゼCによってスフィンゴシンとリン酸コリンに分解されることを証明した.この場合,エリスロースフィンゴシルホスホリルコリンの方が,スレオースフィンゴシルホスホリルコリンよりも分解されやすいことを認めた.<br> 本研究は,主として文部省科学研究費によって行なわれた.記して謝意を表する.
著者
喜田 宏 岡崎 克則 迫田 義博 河岡 義裕 高田 礼人 伊藤 壽啓
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

新型ウイルスの亜型予測に資するため、鳥類および動物インフルエンザウイルスの疫学調査を実施した。ロシア、モンゴル、中国および北海道で、渡りカモの糞便3,987検体を採取し、亜型の異なるインフルエンザAウイルス212株を分離した。宮城県のブタからH1N2ウイルスを分離した。北海道大学を含む動物インフルエンザセンター5機関で25株のH9ウイルス株を交換し、解析を共同で開始した。渡りカモのウイルス遺伝子を比較解析したところ、日本で分離されたH9インフルエンザウイルスと1996年に韓国でニワトリに被害をもたらしたウイルスが近縁であった。1995~1999年に中国のニワトリから分離されたH9N2ウイルスの遺伝子解析の結果、渡りカモのウイルスと異なる亜群に分類され、ノイラミニダーゼに欠損が認められた。内部蛋白遺伝子は1997年の香港の強毒H5N1ウイルスに内部蛋白遺伝子を供給したH9N2ウイルスの系統とは異なった。香港のブタ、カスピ海のアザラシの抗体調査を行い、インフルエンザウイルスが感染した成績を得た。インフルエンザウイルスの異種動物間伝播機構を明らかにするため、ニワトリ雛の気嚢継代によって得たニワトリ馴化株の遺伝子再集合体を作出し、ニワトリ肺における増殖性を調べた。HA遺伝子を入れ替えた遺伝子再集合体の増殖性に変化はなく、他の因子が関与することが示唆された。新型ウイルスの出現に備え世界の動物インフルエンザの疫学調査とワクチン候補株を系統保存・管理するプロジェクトをWHOに提案し、各国とのネットワーク形成に支援が得られることになった。
著者
片岡 洋子 伊藤 葉子 高野 俊 鶴田 敦子 宮下 理恵子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.226-237, 2011-01-01

In 1963, the Japanese National Curriculum Standards for upper secondary school made home economics the compulsory subject for only female students. However, some home economics teachers in Kyoto Prefecture, who had opposed to the subject as "an education to become good wives and wise mothers", were united to create alternative home economics education as a coeducational subject. They requested Kyoto Board of Education to change home economics education from female-only to coeducational subject which resulted in the implementation of coeducational home economics in 1973. This study aims to clarify the process to implement home economics as a coeducational subject, and analyze the theory of school subjects in 1960s to 1970s in Kyoto Prefecture. Results were as follows 1. In Kyoto Prefecture, not only many teachers but also the Board of Education supported the principle of coeducation. This was one of the reasons which contributed to realize coeducational home economics despite the opposition by the National Curriculum Standards. 2. Teachers who promoted coeducational home economics attempted to home economics from an education to become good wives and wise mothers to an education about managing a new family life based on couples' gender-equal relationship. 3. The theory of coeducational home economics needs to be composed of sciences and cultures, and to be revised from the subject dealing only home maintenance skills to that of family life education including historical, social, and scientific perspectives.
著者
秋山 朝子 今井 かおり 石田 幸子 伊藤 健司 小林 正志 中村 秀男 野瀬 和利 津田 孝雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.787-792, 2006 (Released:2006-11-17)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

An analytical method for the determination of aromatic compounds exhalated from hand skin has been proposed. The sampling of exhalated aromatic compounds was performed as follows: after the intake of aromatic compounds included in chewing gum or a capsule, exhalated skin gas was collected from a hand. The hand was covered with a sampling bag of poly vinyl fluoride (PVF) for 30 min. Then, the inner space of the sampling bag was sprayed with a 25% of ethanol aqueous solution. After removing the hand from the bag, the trapped solution containing skin gas was collected. The aromatic compounds in the trapped solution were extracted to the solid phase as Twister® (stir bar coated with poly dimethyl siloxane, Gerstel). Extracts were determined by gas-chromatograph mass spectrometry using a thermo desorption system and a selective ion mode. Linalool, citronellol and geraniol, which are the main components of rose essential oil, were detected from the skin of a hand after an oral intake of rose oil. The exhalated absolute amount of linalool, citronellol and geraniol increased in 30 to 60 min, and then decreased after intake. The recoveries of linalool, citronellol and geraniol were 53.5%, 66.7% and 55.1%, respectively. The correlation coefficient of the standard curves for linalool, citronellol and geraniol were 0.9977, 0.9994 and 0.9987, respectively. Each compound exahalated from the skin of a human body during 6 hours after intake was estimated to be, according to the amount of intake, 0.39%, 0.09% and 0.25%, respectively, for one subject. The absolute amount of geraniol exhalated from a hand increased significantly after oral intake for 8 subjects (P<0.025). This is the first report to present hard proof that an aromatic compound was exhalated from human skin after its intake as food.
著者
鄭 雲珠 末松 はるか 伊藤 貴之 藤巻 遼平 森永 聡 河原 吉伸
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

散布図の集合を用いた高次元データ可視化の一手法を提案する。本手法ではまず、高次元データから相関性の高い複数の次元ペアを選択し、各々の次元ペアから複数の散布図を生成する。 続いて、次元を共有する散布図どうしを連結したネットワークを構成し、力学モデルを適用することでネットワークの画面配置を適正化する。 以上により、関係性の高い散布図が画面上で隣接するような可視化結果を得る。
著者
伊藤 友貴 赤石 美奈 堀 浩一
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

本研究ではマルチエージェントシステム(MAS)の機能を向上させる手法として、実時間タスクプランニングに着目している。実時間タスクプランニングとは時々刻々と変化する環境に適応するように必要なタスク列を導出する推論技術であり、時間制約があるミッションを行うエージェントへの応用が期待される。我々は簡単なレスキュー問題についてシミュレーションを行い、MASにおける実時間タスクプランニングの有用性を示した。
著者
伊藤 好孝 増田 公明 さこ 隆志 毛受 弘彰 三塚 学
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

2009-2010年の0.9TeV及び7TeVでのLHC陽子陽子衝突に於いて、超前方領域における中性粒子の測定LHCf実験を行い、超高エネルギー宇宙線の空気シャワー形成に重要な0度ガンマ線スペクトルを測定した。7TeV衝突での0度でのガンマ線エネルギー分布の解析を進め、ハドロン相互作用モデルとの比較を行った最初の成果を公開した。その結果、データは従来のハドロン相互作用モデルの予測とは完全には一致せず、空気シャワー実験の解釈に一定の影響を及ぼすと示唆される。
著者
寺田 和憲 岩瀬 寛 伊藤 昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.117-127, 2012-01-01
被引用文献数
2

哲学者Dennettは人間が他者の振舞いを理解し予測するために意図,設計,物理の三つのスタンスを使い分けているとし,哲学的論考によってその妥当性を示した.しかし,人間が本当にそのようなスタンスを使い分けているかどうかは定かではなく心理学的研究によってその存在が証明されているわけではない.そこで,本研究では,スタンスを科学的に定義し,実際に振舞い理解において用いられているかどうかを検証するために三つの心理実験を行った.まず,Dennettのスタンスをアニメーション化し,アニメーションに対する被験者の印象記述を分析することで,振舞い理解のための四つの言語的概念カテゴリーを明らかにした.次に,60個の様々な対象の振舞いを参照基準として用いることで,四つのうち三つの言語的概念カテゴリーがDennettのスタンスと近いものであることが分かった.しかし,Dennettの主張のような原理帰属による理解がなされているという直接的証拠は得られなかった.議論から,実際の振舞い理解においては振舞いの性質が注目され,意図,決定,受動,複雑の四つの概念的カテゴリー化が行われていると結論づけた.
著者
中島 聡美 金 吉晴 小西 聖子 白井 明美 伊藤 正哉
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

複雑性悲嘆の治療法の開発および有効性の検証のために2つの研究を行った。(1)Shearが開発した複雑性悲嘆療法を複雑性悲嘆を主訴とする成人(6例)を対象に、実施したところ、治療後に複雑性悲嘆症状、うつ症状、PTSD症状のいずれも有意な改善を示した。(2)Wagnerによるインターネットを媒介とした認知行動療法を参考に筆記課題を行う治療プログラムを開発した。重要な他者を喪失した一般成人遺族28名を対象に紙面べ一スにて実施したところ、筆記後において複雑性悲嘆での有意な減少が見られた。複雑性悲嘆に対して2つの認知行動療法の有効性が示唆された。
著者
広渕 崇宏 中田 秀基 伊藤 智 関口 智嗣
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.248-262, 2010-09-17
被引用文献数
3

ポストコピー型の仮想マシン再配置機構は仮想マシンの実行ホストを素早く切り替えられるため,データセンタの運用効率を向上させるうえで有用な技術であると考えられる.しかしながら,今日一般的に利用できるまでには至っていない.先行研究におけるポストコピー型再配置機構は,既存の仮想マシンモニタ(VMM)への変更が大きく,ゲストOSの改変も必要になる点に問題がある.そこで我々は,既存VMMのへ拡張が単純でゲストOSの改変も不要な,新たなポストコピー型ライブマイグレーション機構を提案する.メモリアクセスのトラップ処理とメモリページのコピー処理をVMMの外部で実装することで,VMMへの変更量を抑えながらポストコピー型再配置を実現する.再配置性能を検証するため,SPECweb2005を用いて評価実験を行った.負荷の高いウェブサーバを実行するVMであっても,1秒以内に実行ホストを切り替えることができた.実行ホスト切替え後の性能低下は限定的であった.プレコピー型再配置に比べて,VMのすべての状態を移動する時間も短縮できた.Post-copy-based VM migration is considered a promising technology for next-generation datacenters; memory pages are transferred after a VM restarts at a destination host, thereby minimizing the time of switching the execution host. Post-copy-based migration mechanisms, however, have not yet been available in industry. Prototype implementations in prior work need major modifications to existing virtual machine monitors (VMMs), and also require special software support in guest operating systems. In this paper, we propose a simple and plain implementation of post-copy-based migration, which is implemented as a lightweight extension to KVM. It supports any guest operating systems without their modifications. The RAM of a migrated VM is mapped to a special character device, which transparently transfers memory pages on demand. Experiments were conducted by using the SPECweb2005 benchmark. A running VM with heavily-loaded web servers was successfully relocated to a destination within one second. Temporal performance degradation after relocation was alleviated by pre-caching memory pages. In addition, for memory intensive workloads, our migration mechanism moved all the states of a VM faster than a pre-copy-based migration mechanism.
著者
伊藤 純一郎 横手 靖彦 所 真理雄
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.30-34, 1997-01-16

インターネットで現在利用されているIPv4プロトコルは,インターネットの爆発的成長に耐えられない,という指摘がある.このため,IPv6プロトコルが提案され,現在移行へ向けた考察が行われている.しかしながら,現在のルータソフトウェア構成法では,今後行われるプロトコル策定やプロトコルの仕様変更などに柔軟に対処することが困難である.本論文では,Apertosオペレーティングシステム上にIPv6ルータのプロトコル処理部を実装することで,これらの問題の解決を目指している.本方法では,並行オブジェクトによるソフトウェア構成によりプロトコル処理部のモジュール間の独立性を確保し,自己反映計算に基づくOSアーキテクチャの利用によりプログラマに最適なプログラミング環境を提供することができる.
著者
塚本 泰司 三熊 直人 舛森 直哉 宮尾 則臣 伊藤 直樹
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

‘老化'と前立腺肥大症の発生との関係の一端を解明するために、1)ヒト前立腺の加齢による形態変化、2)前立腺平滑筋の機能、3)前立腺上皮、間質細胞の増殖と抑制、について臨床的、生理学的および分子生物学的検討を行った。その結果以下の知見を得た。1) Community-based studyにおける検討により、加齢にともなう経直腸的超音波断層上の前立腺の形態は、一部の男子では50歳前後にかけて、それまで均一であった前立腺が結節を呈するようになり、これらのうちの一部の男子でさらに肥大結節が増大するという経過を辿ると推測された。したがって、臨床的な前立腺肥大出現のtumingpointは50歳にあると考えられた。2) 前立腺平滑筋細胞の培養細胞株をguinea-pig前立腺より確立した。この細胞は形態学的および機能的所見からも平滑筋細胞であり、今後のin vitroの実験モデルとして有用と考えられた。3) 前立腺平滑筋の加齢による機能的変化の検討から、8週齢の若年guinea-pigと比較すると12か月の高齢guinea-pigでは収縮張力の低下が認められ、加齢が前立腺平滑筋の機能に影響を及ぼす可能性が示唆された。4) 前立腺肥大症の一部には下部尿路閉塞に対する治療のみでは排尿障害を改善できないことがあり、膀胱平滑筋の機能を改善させる治療が必要であることが示された。5) 前立腺の上皮および間質細胞はandrogenおよび各種の成長因子regulationを受けているが、TGF-betaを中心とするこれらの間のネットワークの解明を試みた。今回の結果とこれまでの知見を総合すると、androgen存在下では増殖に作用する成長因子により上皮および間質の恒常性が保たれ、androgen低下時にはTGF-beta発現が亢進し上皮細胞はapoptosisにより減少する。一方、TGF-beta発現増加によりFGF産生が刺激され間質の増殖が起こる。これが加齢にともなう前立腺肥大の発生機序の一つと推測された。