著者
加藤 良太
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.145-157, 2006-12

2005年11月末に始まった、小泉政権におけるODA(政府開発援助)一元化議論は、ODA政策に対するアドボカシーを行なってきた市民・NGOにとって、ODA政策形成への「市民・NGO参加」を自ら問い直す契機となった。経済財政諮問会議の決定に基づき、2005年12月から開催された「海外経済協力に関する検討会」(以下、「検討会」)では、内閣に「ODAの司令塔」となる「海外経済協力会議」を設置し、ODA実施機関であるJICA(国際協力機構)とJBIC(国際協力銀行)の一部を統合、一元化することが決定されたが、市民・NGOはこのプロセスに公式に参加することができなかったのである。 市民・NGOはこれに抗議し、検討会への働きかけや提言、報道関係者や国会議員などとの連携を通じて、市民・NGOの意見がODA一元化議論に反映されるよう取り組んだものの、結果的には、市民・NGOの意見が十分に反映されず、国益志向の強いODAの流れを後押しする報告が検討会から出される結果となった。一方で、ODAの話題が報道で広く取り上げられたこと、報道関係者や国会議員との新たなつながりなど、市民・NGO参加の今後に資する成果も残された。 こうした結果を受け、今後の新たなODA政策形成の枠組みの動向を見極めながら、市民・NGOとして、新たな参加のあり方を模索していくことが必要である。
著者
加藤 祐三 新城 竜一 林 大五郎
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

火山豆石の内部構造は同心円構造が発達したもの(CONC)と、これが認められず不規則なもの(RAND)の2群に大別される。いずれが含まれるかは各火砕物固有の性質である。火山豆石が形成されるとき、構成粒子を結びつける膠着剤が氷の場合がCONC、水の場合がRANDになると考えられる。この推定は後者の場合について、1991年雲仙火山で降下した火山豆石の研究で立証された。火山豆石の内部構造の観察、直径・形状・間隙率・比重の測定を行い詳細に検討した結果、これらの性質と火砕物の噴出様式の差、すなわち降下堆積物(fall)/火砕流堆積物(flow)/ベースサージ堆積物(surge)の別とは密度な関係があることが明らかになった。CONCにはfallとflowの双方が、RANDにはfallとsurgeの場合がある。また、RANDはCONCよりも、間隙率と直径が小さい/見かけ比重が大きい/結晶と岩片が多くガラス片が少ない、という傾向が認められる。沖縄島呉我の火砕物には、一般的な例と異なりCONCとRANDの双方の火山豆石が共存している。含まれるガラスの化学組成を比較すると、基質はRANDと一致しCONCとは異なる。このことから、CONCは別の噴煙柱で生じ、火山豆石だけがこの火砕物に混入したものと推定される。火山豆石は火砕物中に頻繁に産出するので、個々の火砕物を理解するにあたって重要で、豆石の内部構造と諸性質を詳しく調べることによって、火砕物の生成機構が推定できる。
著者
飯田 明由 小久保 あゆみ 塚本 裕一 本田 拓 横山 博史 貴島 敬 加藤 千幸
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.73, no.732, pp.1637-1646, 2007-08-25
被引用文献数
6

The aim of this investigation is to understand the generation mechanism of aero-acoustic feedback noise radiated from rear-view mirrors. In order to clarify the relationship between the velocity fluctuation and radiated noise, correlation in terms of aerodynamic noise and velocity fluctuations were measured in a low-noise wind tunnel. The experimental results showed that noise level of the tonal-noise depended on the ratio of the height of the bump to the thickness of the boundary layer. Strong tonal-noise was generated when the height of the bump was almost equal to 40% of the height of the boundary layer. The tonal-noise level also depended on the length between the trailing-edge of the bump and the edge of rear-view mirror. The frequency of the tonal noise can be calculated by modified Rossiter equation. The tonal-noise was disappeared in the case of the bump was placed at separated boundary layer. It revealed that the seed of the tonal noise was small disturbances generated by the bump on the surface of the rear-view mirror.
著者
加藤 内蔵進 青梨 和正
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

中国から直接入手した広域の日降水量や鉛直高分解能高層気象データ等や、人工衛星のマイクロ波放射計データ(SSM/I)から評価した降水量分布の解析等により、次の興味深い結果が明らかになった。1.1991年には、梅雨前線の長江・淮河流域での停滞が多く、特に淮河大洪水のあった7月前半には、位置もあまり変えずに半月も停滞した。その期間の前線帯は、約200kmの南北幅を持つ「広域大雨帯」(日雨量50ミリ以上)として維持されていた点が注目される。この期間は、前線帯の南側からの多量の水蒸気流入に対し北側からの流出は他期間に比べても小さく、前線帯スケールでの効率的な水蒸気収束と降水の集中化が示唆される。このような前線帯規模での降水分布の集中性は、過去35年ぐらいの中でも特に顕著であった可能性がある。2.日本列島で異常冷夏・大雨だった1993年には猛暑・渇水年の94年に比べて、梅雨前線帯でのSSM/Iで評価した総降水量の大変大きな期間が8月も含めて頻繁に出現し、また、台風に伴う降水の寄与も少なくなかった。このような状況は、1993年の梅雨前線帯では地上付近の南北音頭頻度が平年より大変大きく、南偏した上層の寒冷トラフの南縁と重なっており、また、60N以北の寒帯前線帯とは明瞭に分離した傾圧帯として維持されていた点が関連していたものと考えられる。SSM/Iにより算定した水蒸気量や降水量の情報は、日本周辺のメソ降水システムの数値予報モデルの初期値として、インパクトが大きいことがわかった。(1988年7月中旬頃の例)。4.1994年の中部・東日本では、秋には台風・秋雨前線により渇水が緩和されたが、95年には逆に秋に深刻化した。アノマリーの季節経過過程は、年によってかなり異なる可能性があり、今後解決すべき重要な問題が提起された。
著者
加藤 泰浩 中村 謙太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

我々は東太平洋の広範囲に,希土類元素(レアアース;REE)を豊冨に含有した『深海低含金属堆積物』が分布していることを発見した.この新発見の資源は,(1)レアアース含有量が非常に高い,(2)資源量が膨大かつ探査が容易,(3)放射性元素であるウラン,トリウムの含有量が低い,(3)弱酸でほとんどのレアアースが回収できる,など資源として理想的な条件を備えている.公海上に存在しているが,国際海底機構への鉱区申請を経て我が国が開発することができる(技術的にも採鉱が可能な)資源であり,レアアース資源の安定確保という国家的課題を解決する切り札となり得るものである.本研究では,この含金属堆積物鉱床について,特に有望と見込まれる東太平洋域における分布状況とレアアース含有量(併せて他の有用元素含有量も)を網羅的に把握し,将来的な資源開発を見据えた資源ポテンシャル評価を行うことを目的としている.本年度はその初年度として,テキサスA&M大学における堆積物コア試料採取を行い,それらの鉱物同定(XRD),および全岩化学組成分析(XRF,ICP-MS)を行う予定であったが,より包括的な研究である基盤研究(S)が採択されたため,本研究は2010年8月25日をもって廃止となった.
著者
小林 大二 加藤 喜久雄 油川 英明 兒玉 裕二 石川 信敬
出版者
北海道大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

融雪期の洪水で、その流出量が予想外に大きく危険な洪水は、融雪出水に雨の流出が重なった場合である。融雪出水期は豪雪地帯では1ケ月前後の長期にわたる。出水期の中期から末期にかけては日々出水が重なり、川の水位の高い状態が継続する。又斜面では地中流出が続くため地盤がゆるんでくる。そこへわずか30-50mm程度でも雨が重なると、水位は異常に高くなり洪水となるとともに、崖くずれが続発して、大災害となる。しかるに積雪を通しての、雨及び融雪水の出水予測は、その流出機構の煩雑性のため研究例が少なく、未解明な問題として残されている。融雪出水に重なる雨による異常出水の流出機構の解明と流出予測を試みるのが、本研究の目的である。研究は石狩川支流の雨龍川源頭部の豪雪地帯で行った。毎年融雪出水期を通じて、洪水の危険を有した出水は3-4回ある。63年度は、晴天の継続による出水の異常重量が2回、晴天日に続く雨による異常出水が1回あった。この雨量はわずか30mm前後であったが、夏期のこの程度の雨による出水の4-5倍以上の出水となった。夏の大雨の出水に比べると、積雪のため流出のピークが3時間程度遅くなっている。積雪1mにつきピークの遅れは2-4時間増すことが新たに設置された大ライシメーター(3.6×3.6m)及び堰によって確認された。河川水の比電導及び化学成分の分析結果によると、地中流出が約8割、表層流出が約2割となった。融雪出水が地すべり発生の要因となることが確かめられた。δ0の分析によって、河川水と融雪水のそれのわずかではあるが有意な差が認められた。積雪下の川の水温は融雪期を通じて3-4℃と高いが、この水温は、1.5の深の地温に相当する。融雪出水の主成分である地中流出水の流出経路の深さの概略がうかがえよう。
著者
赤堀 侃司 藤谷 哲 松田 岳士 中山 実 加藤 浩 福本 徹 加藤 浩 福本 徹
出版者
白鴎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、教員や研究者が場所、時間、専門分野などの制約を越えて教育実践知を可視化・共有し、再構築できる"場"としての電子ネットワーク基盤を開発し、実践的評価を通してその有効性を検証することであった。具体的には次のような研究課題に取り組んだ。(1)教育実践知の可視化・共有を支援する電子ネットワーク基盤の要件や支援方法に関する調査・分析。(2)場所・時間・専門分野などの制約を超えて参加者の結びつきを促進するSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の開発。(3)教育実践知を自動的に可視化し、関連知識を結びつけて強化する機能の開発。実践評価の結果、分散した実践知の共有には、知識の自動的な可視化と、関連する分散知を集合知へ変化させることが有効であることを明らかにし、本研究課題で開発したネットワーク基盤が、さらなる知の再構成、創造を促進する可能性を示した。
著者
加藤 一彦
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本の議院内閣制の特質に関する研究である。特に、参議院が「強い権限」を行使したとき、内閣統治がどのような変化を経験するかについて、論究した。その中で、(1)両院協議会の改革の方向性と立法改革の必要性、(2)内閣の連帯責任制が、事実上、個別大臣責任制に変化し、政治過程において内閣権限の強化が困難になった点を解明した。
著者
丸野 俊一 藤田 敦 藤田 豊 安永 悟 南 博文 加藤 和生
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

3ヶ年間の成果の概要をまとめる以下のようになる。1. 新たなMK式議論尺度の開発: これまでディスカション状況に積極的に参加し、創造的な問題解決行動を遂行していく上で不可欠なスキルや態度やモニタリング能力などを測定すす客観的な尺度がなかたので、新たに3つのコンポーネント(議論スキルの側面,モニタリングの側面,態度・価値の側面)から成り立つMK式議論尺度を開発した。また外部基準尺度を用いてその信頼性や妥当性を検証した結果、信頼性、妥当性は極めて高く、尺度の標準化へ向けての確信が得られた。2. 議論過程のモデル化: ディスカッション過程がどのように展開していくかについて、特にモニタリングに焦点を定め、モニタリングについて3位相モデル(pre-monitoring,monitoring in action,post-monitoring)を提案し、各位相ではどのような側面や内容が思考吟味の対象になるか、またそこで必要とされる思考特性とはどのようなものかについてのモデル構成を行った。3. モニタリング訓練効果: 自己反省的思考、前提の問い直し、常識への疑いなどを吟味することが創造的思考を育む上で不可欠であるという仮説の基に、複眼的思考を育成するようなモニタリング訓練を行い、議論スキルた議論に取り組む姿勢や態度の変容過程を検証した。4.「話し合い」活動に対する素朴認識: 大学生や小学生を対象に、「話し合い」活動に対する取り組みの姿勢や、話し合い活動の意義や価値に対する素朴認識を検討した。特に、教育現場では「話し合い活動」がどのように行われているのか、また子供たちはどのようにその意義や問題点を認識しているかについて体系的な調査研究を行い、対話型授業を効果的に展開していくための教授プログラムや教授環境設計の指針を示した。5. LTD学習法の実践: LTD学習法の手続き的知識やスクリプトを精緻化し、教育現場でその実践を繰り返し、LTD学習法が対人関係技法の開発や創造的・批判的思考の促進や他者への共感的理解の促進などに効果的であることを実証した。
著者
近藤 哲 蜂須賀 喜多男 山口 晃弘 堀 明洋 広瀬 省吾 深田 伸二 宮地 正彦 碓氷 章彦 渡辺 英世 石橋 宏之 加藤 純爾 神田 裕 松下 昌裕 中野 哲 武田 功 小沢 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.17, no.11, pp.1987-1995, 1984-11-01
被引用文献数
23

原発性十二指腸癌7切除例を対象として臨床的検討を行った. 5例は UGI, 内視鏡, 生検の3者で診断可能であったが, 2例は膵癌の十二指腸浸潤との鑑別が困難であった. しかし US と CT で膵癌を否定しえた. 血管造影では4例中2例が十二指腸原発と確認しえた. さらに切除可能性, 根治性を推定するのに有用であった. リンパ節転移は全例に認められ, 非治癒切除4例中3例の非治癒因子, 治癒切除後再発2例中1例の再発因子となっていたした. したがって, 乳頭上部癌では膵頭部癌第1群リンパ節郭清をともなう膵頭十二指腸切除を原則とし, 乳頭下部癌では腸間膜根部リンパ節をより徹底郭清し状況によっては血管合併切除再建が必要と思われた.
著者
位田 隆一 甲斐 克則 木南 敦 服部 高宏 ベッカー カール 藤田 潤 森崎 隆幸 山内 正剛 増井 徹 浅井 篤 江川 裕人 加藤 和人 熊谷 健一 玉井 眞理子 西村 周三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、ゲノム科学、再生医療、臓器移植、ヒト胚研究等の生命科学・医学の諸分野の科学的発展と課題を明らかにし、そこに生じうる倫理的法的社会的問題を把握し、学際的に理論的および実際的側面に配慮しつつ、新しい社会規範としての生命倫理のあり方と体系を総合的に検討して、生命倫理基本法の枠組みを提言した。具体的には、生命倫理基本法の必要性と基本的考え方、生命倫理一般原則群、分野別規範群、倫理審査体制、国や社会の取り組みを提示した。それらの内容は国際基準及びアジア的価値観とのすり合わせも行った。
著者
加藤 大
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ナノテクノロジーの進展により、優れたナノ物質が開発され注目を集めているが、高効率な分離精製法は報告されていなかった。我々は、カーボンナノチューブ(CNT)やアミロイドβなどのナノ物質の高精度な分離法を開発し、さらに分離したナノ物質1個の構造決定に成功した。分析法の開発と共に、溶媒に分散しないため分離することが難しいCNTを溶液や乾固した状態で安定に孤立分散させる方法を開発した。
著者
大木 幹生 片野 克紀 三塚 恵嗣 沼崎 隼一 涌井 智寛 加藤木 和夫 池田 陽祐 畠山 正行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.31, pp.49-56, 2009-03-11
被引用文献数
7

われわれの研究グループでは,以前よりプログラムの生成・取得を容易にするための一貫した記述言語とその環境である OOJ の研究を行ってきた.しかし,研究開始当初はいくつかの問題の障害から OOJ 構築の第一段階として,分析,設計,実装の三段階に分けて開発 (三言語独立方式) を進めてきた.その結果,分析段階からプログラムの生成までの一貫した記述例を得る事が出来たため,三言語独立した方式において OOJ のある程度の成果を得たと言える.しかしながら,それと同時に記述内容の一貫相似性に関して問題が浮上してきたため,この問題に対処するべく研究の段階を進め,一貫相似性問題に対処した三言語独立方式の OOJ の提案を行うと共にその開発を行った.その結果,三言語独立の方式に依っても一貫相似性のある記述やプログラムを得る事を立証した.We have been developing the Ob ject-oriented (OO) description language OOJ. The OOJ is a language to realize the Ob ject-oriented, Integrally Consistent Similarity in the various simulations with high similarity. The OOJ is, however, difficult to be developed in the sin- gleton language formalism. Then, we have developed the series of three kinds description languages, say the OONJ, ODDJ, OPDJ in stead of the OOJ. In the present paper, then, we have implemented these three languages, and validated the similarity among these descrip- tion languages by making use of the same description examples throughout the OONJ, the ODDJ, the OPDJ, and finally the Java program. Throughout the results, we have confirmed the integrally consistent similarity. In the future work, we will try to develop the singleton description language OOJ to verify the above described similarity.
著者
加藤 内蔵進 松本 淳 武田 喬男
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

1.梅雨前線帯付近の広域水収支過程の解析の一環として、人工衛星のマイクロ波放射計データ(SSM/Iの19.35GHzと85.5GHz)に基づき、Liu and Curry(1992)のアルゴリズムを用いて、海上も含めた前線帯付近の降水量分布を評価した。日本列島で冷夏・大雨だった1993年と猛暑・渇水に見舞われた1994年暖候期等を例に解析を行ない、次の点が明らかになった。(1)梅雨前線が日本付近で特に活発であった93年7月初めには、東シナ海〜日本列島で5日雨量140ミリを越える大雨域が南北約300kmと広域に広がり、その南北の少雨域との間のきわだったコントラストが明らかになった。気象庁のレーダーアメダス合成データのある日本近傍で比較すると、それと良く一致していた。(2)このような特徴を持つ降雨分布が、93年には8月も含めて出現しやすかったのに加え、台風に伴う降水量も多かったが、94年は梅雨前線帯の位置が93年に比べ北偏したのみでなく、そこでの降水量自体も少ない傾向にあったことが分かった。(3)93年は、平年に比べて梅雨前線帯付近での下層の頃圧性は大変強く、前線帯での降水の強化と集中に関しては、南からの多量の水蒸気輸送に加えて、なんらかの傾圧性の役割も大きかったものと考えられる。2.前線帯スケール水収支過程におけるメソα降水系の役割評価の前段階として、1996年6〜7月における種子島周辺域での別途経費による集中豪雨特別観測データも利用して、期間中の前線帯とメソα降水系の振舞いの概要を調べた。その結果、(1)梅雨期にしては希なぐらい発達した低気圧に伴う寒冷前線付近の現象、(2)九州南部で発生・発達した積乱雲群の集団から、メソα低気圧の種が形成され中部日本の前線帯の水循環にも大きな影響を与えた例、等、今後の相互比較解析のための特に興味深い事例を抽出できた。