著者
加藤 義臣 矢田 脩
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.171-183, 2005
参考文献数
31
被引用文献数
2

Brown and yellow types in the forewing fringe color in the so-called "Eurema hecabe (L.)" show sympatric distribution on Okinawajima Island in the Ryukyu Islands and occurrence of their characters is closely linked with seasonal wing morph expression and host plant use (Kato, 2000a, b). Further, these sympatric types are sexually isolated at the level of behavior (Kobayashi et al., 2001). In the present study, distribution pattern of these two types was investigated in southwestern Japan (16 sites) and Taiwan (3 sites) and their taxonomic status was reevaluated. In Amami-Oshima, Kuroshima, Kumejima, Taketomijima, Iriomotejima and Yonagunijima Islands, only the brown type was found while in Kagoshima-shi, and Okinoerabujima, Yoronjima and Tokashikijima Islands, only the yellow type was seen. Sympatric distribution of the two types was found in Tokunoshima, Okinawajima, Miyakojima, Ishigakijima and Haterumajima Islands, and Taiwan. The fringe color type was linked with seasonal wing morph expression and host plant use in all populations, as shown in previous papers (Kato, 2000a, b). These results strongly suggest that the two types have differentiated at the species level. The examination of the lectotype of Papilio hecabe Linnaeus, 1758 revealed that it was the brown type. Based on these, we here propose that the yellow type butterflies belong to a different species, Eurema sp.
著者
鈴木 和博 南 雅代 加藤 丈典
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

・電子プローブマイクロアナライザを高性能・高機能化して分析値の精度と確度を高めた.・トリウムやウランを含む鉱物のコンコーダントな分析値を選別する化学的基準を確立して、CHIME年代の確度を高くした.・氷上花簡岩、領家帯ミグマタイト、肥後変成岩、韓国京畿地塊の準片麻岩、中国南東部の花商岩類、中国吉林省の東清花簡岩のCHIME年代を再検討して、地質学的推定年代や同位体年代との矛盾を解明した.矛盾の原因は肥後変成岩と東清花商岩では同位体年代、氷上花商岩と京畿地塊では地質学的解釈、領家帯ミグマタイトと中国南東部花商岩ではCHIME年代にあった.
著者
加藤 宏之 橋本 律夫 樋渡 正夫
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

脳卒中後の運動機能回復の機序を解明するために、fMRIと拡散テンソル・トラクトグラフィーによる錐体路の描出の同時計測を行った。脳卒中後の脳機能の再構築は動的であり、片麻痺の回復は運動ネットワークの損傷の程度に応じて、可逆性障害からの回復と、ネットワークの代償、動員、再構築を駆使して最良の運動機能の回復を得るための機構が存在する。この変化は脳卒中発症後の1、2か月以内に見られ、機能回復の臨界期の存在を示唆する。
著者
袴田 哲司 加藤 公彦 牧野 孝宏 山本 茂弘
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.162-167, 2004-08-25
被引用文献数
6

マツノザイセンチュウを接種したクロマツ小枝からの微弱発光の特徴を明らかにした.マツノザイセンチュウの接種後30分以内に微弱発光の第1ピークが現れ,接種の約70時間後には第2ピークが観察された.微弱発光が増大している時間は第1ピークでは1時間程度と短かっかが,第2ピークは100時間以上に及んだ.第1ピークはマツノザイセンチュウを殺して処理しても,また,マツノザイセンチュウの懸濁液を遠沈した上澄液を処理しても発生が確認されたが,第2ピークはこれらの処理では認められなかった.マツノザイセンチュウを接種すると,テーダマツはクロマツよりも発光強度は低いもののクロマツと同様な微弱発光の発生パターンを示したが,スギでは微弱発光の増大は観察されなかった.これらのことから,第1ピークの発生にはマツノザイセンチュウ由来の物質が,また,第2ピークの発生にはマツノザイセンチュウによるクロマツ組織の加害が関与する可能性が考えられた.
著者
瀬古 弘 加藤 輝之 斉藤 和雄 吉崎 正憲 楠 研一 真木 雅之 「つくば域降雨観測実験」グループ
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.929-948, 1999-08-25
被引用文献数
7

台風9426号(Orchid)が日本列島に接近した1994年9月29日に、関東平野にほぼ停滞するバンド状降雨帯が見られ10時間以上持続した。つくばにおける特別高層観測、2台のドップラーレーダーおよびルーチン観測のデータを用いて、この降雨帯を解析した。この降雨帯はニンジン形の雲域を持ち、バックビルディング型の特徴を持っていた。南北に延びた降雨帝はマルチセル型の構造をしていて、その中のセルは降雨帯の南端で繰り返し発生し, 西側に広がりながら北に移動した。水平分解能2kmの気象研究所非静水圧メソスケールモデルを用いて、数値実験を行った。メソ前線は実際の位置の約100km南東に形成されたが、バックビルディング型の特徴を持つニンジン型の形状のほぼ停滞する降雨帯が再現され、3時間以上持続した。セルが北西に移動すると共に降雨帯の東側で降水が強化されて、ニンジン形が形成されていた。降雨帯の形成メカニズムを調べるためにまわりの場と雲物理過程を変えて感度実験を行った。その結果、中層風の風上側からの高相当温位の気塊の供給と風の鉛直シアが重要であることがわかった。
著者
見上 彪 内貴 正治 松田 治男 板倉 智敏 平井 莞二 加藤 四郎 森口 良三
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

本研究はマレック病(MD)のワクチンブレイクに対抗しうる有効なワクチンの開発を最終目標としている. 以下に3年間で得られた成績の概要を述べる.1)MDウイルス(MDV)・七面鳥ヘルペスウイルス(HVT)のウイルス群は血清型として3型に分類されている. それぞれの血清型あるいは免疫原として用いたウイルス株に特異的な単クローン性抗体が班員により, 多数樹立され, これら抗体を用いることにより野外分離ウイルスの同定が容易になった. また, MD腫瘍細胞を免疫原として用いて, MDに特異的な単クローン抗体も作出され腫瘍細胞の同定に有用と思われた.2)ニホンウズラにおけるMDの浸潤状況とHVTによるワクチン予防効果を検討したところ, 実質臓器のリンパ腫瘍を主病変としたMDがウズラの間で多数発生していること, リンパ腫病変とMDV羽包抗原との間に正の相関が, またリンパ腫病変とHVT血清抗体との間に負の相関があることが明らかとなった. MDワクチンブレイクの発生をみたウズラ群から4種のMDVが分離され, これらウイルスは単クローン性抗体により血清型1に属し, 鶏に対しても強い腫瘍原性が示された. 同様にニワトリ群からも5種のウイルスが分離された.3)MDに対するワクチン候補株として, 非腫瘍原性MDVの分離が急がれている. 我々はニワトリ及びキジ類それぞれ13羽, 10羽からウイルス分離を試みたところ, 調べたすべてのニワトリからウイルスが分離され, 単クローン性抗体により血清型2に属していることが明らかとなった. 今後, これらウイルスを用いてワクチンブレイクに対抗しうるワクチンが開発されることが期待される.
著者
加藤 寛
出版者
読売新聞社
雑誌
This is読売 (ISSN:09164529)
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.48-55, 1997-01
著者
地頭薗 隆 下川 悦郎 松本 舞恵 加藤 昭一 三浦 郁人
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林報告 (ISSN:03899454)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.33-54, 1995-10-20

鹿児島県は1993年幾度となく豪雨に見舞われた。これによって県内のあちこちで斜面崩壊・土石流による土砂災害が発生し,大きな被害がでた。8月6日の災害直後,鹿児島市とその北部域の垂直空中写真が撮影された。空中写真判読に基づき,斜面崩壊・土石流の発生分布とそれによる侵食土砂量について解析を行った。得られた結果をまとめると次のようである。1)空中写真判読区域(南北方向20.6km×東西方向15.8km,面積約325km^2)に発生した斜面崩壊・土石流は大小合わせて6,500個以上にのぼった。それらの約60%は侵食域の面積が300m^2未満のものである。2)斜面崩壊・土石流による侵食域分布図に200m間隔でメッシュをかけ,200×200mグリッド内の斜面崩壊・土石流の個数を求めた。グリッド総数8,137個のうちグリッド内に斜面崩壊・土石流が1箇所以上存在するものは全体の約26%に相当した。斜面崩壊・土石流が10個以上存在するグリッドは甲突川中流域および思川中流域に集中している。3)空中写真判読区域を5区域に区分し,それぞれの区域の斜面崩壊・土石流による侵食域の面積を求めた。さらに,侵食域面積に平均的な侵食深を乗じて各区域の侵食土砂量を計算した。8月1〜2日豪雨で約1,600箇所の斜面崩壊・土石流が発生した思川流域では約500×103m^2(約8,000m^3/km^2)の土砂が侵食された。8月6日豪雨で約3,700箇所の斜面崩壊・土石流が発生した甲突川流域では約655×10^3m^3(約6,000m^3/km^2)の土砂が侵食されている。また多くの死者やJR日豊本線,国道10号の大きな被害が発生した姶良カルデラの西壁でも約55×10^3m^3(約7,000m^3/km^2)の土砂が侵食されている。4)空中写真判読区域を表層地質で大まかに3区域に区分し,それぞれの区域の斜面崩壊・土石流による侵食域の面積,土砂量を計算した。その結果,火砕流堆積物の非溶結部であるしらす区域で約942×10^3m^3(約5,OOOm^3/km^2),火成岩類区域で約224×10^3m^3(約3,O00m^3/km^2),堆積層区域で約202×10^3m^3(約4,O00m^3/km^2)であった。
著者
佐藤 貢 山岸 久雄 加藤 泰男 西野 正徳
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.251-267, 1992-07
被引用文献数
1

高エネルギー粒子の降下による銀河電波雑音の電離層吸収(CNA)を測定するリオメーターは, 粒子降下領域の空間構造を求めるため, 二次元高空間分解能化への試みがなされ, イメージングリオメーターが開発された。これまでのイメージングリオメーターによるCNA観測は, 観測データを大容量MTやディスクに取り込み, ある一定期間観測後, 持ち帰り, 大型計算機処理により背景となる銀河電波雑音の静穏時の日変化曲線(QDC)を求めて, その差から真の吸収量を導き出し画像化している。本論文のイメージングリオメーター吸収画像QLシステムは, データ収集と画像化処理にパーソナルコンピューターを用いて, あらかじめ観測した十数日間のデータから1日分のQDCデータを作成し, 以後の観測では, データ収集と同時にそのQDCデータを恒星時補正して参照し, 観測データとQDCデータの比を演算する処理を行い, 吸収領域の吸収量及び形状の時間的変動の二次元カラーイメージを実時間で表示することが可能である。これにより, 観測現場で, オーロラTV観測による映像と二次元CNA画像を実時間で比較することができる。
著者
鈴木 晶子 小田 伸午 西平 直 金森 修 今井 康雄 生田 久美子 加藤 守通 清水 禎文
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

スポーツや音楽演奏や伝統芸能における「わざ」の修練・継承においては、(1)目習いと手習いの連動、(2)修練と継承の一体化が軸となっていた。(1)目習いにおいては単に視覚のみでなく様々な運動感覚が統合的に働くこと、また手習いにおいても自己の身体動作の実際と身体イメージとの間を繋ぐために表象・言語の力が大きく関与していること、(2)修練における経験の内在化が常に継承行為の一部となっていること、創造的模倣(ミメーシス)が、経験の再構成において広義の制作的行為(ポイエーシス)へと移行していく機構が認められることが解明された。
著者
加藤 祥子
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.10, pp.221-227, 2007-02

2006年7月末から8月初めの土日にトヨタテクノミュージアム産業技術記念館で行われた『夏休みワークショップ』で「オリジナル素材を使ったモノづくり体験」と題して博物館内の自動織機で織り上げた布を使ってクッションカバーを作った。「モノづくりの楽しさ」として被服製作を見直し「被服離れ」,「ミシン離れ」を解消することを目的とする。2回目の試みでもある今回は,参加者を小中学生に限定して行い,作品完成までの製作時間を30分として布の前処理,裁断,縫製の最初の工程は本研究室で準備した。参加者には最終段階のみを作ってもらい,参加人数,学年・性別による製作時間を調査した。また指導者として参加した学生にアンケート調査を行い,次回に繋げる反省とした。2週に渡る土曜,日曜の計4日間の取り組みだったが約400名の参加をみた。 ミシンに触れた事のない小学校低学年の児童も作品作りに興味を持ち,楽しそうに参加していた。主催する側として昨年度に行った同取り組みの課題を克服して今期に臨んだが,活動が概ね成功であったことは昨年度に残された課題の解決が妥当であったと考えられる。
著者
王 芙蓉 加藤 伸郎 須貝 外喜夫 孫 鵬
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アルツハイマー病は大脳皮質での緩慢な神経細胞減少を特徴とする。神経幹細胞で補充する手法を開発し、その神経生物学的根拠について特に脳由来神経栄養因子の関与の面から明らかにすることを目的とした。アルツハイマー病モデルマウスにおいて、脳由来神経栄養因子を発現させることが知られている経頭蓋磁気刺激によって学習能力が改善することを見出した。蛍光を発する神経幹細胞を単離し、これを脳内へ移行させるための手技を利用可能にした。
著者
蓬田 高正 吉田 充 加藤 譲
出版者
筑波大学体育センター
雑誌
大学体育研究 (ISSN:03867129)
巻号頁・発行日
no.24, pp.35-42, 2002-03

現在の大学教育では、初等中等教育における自ら学び、自ら考える力の育成を基礎に「課題探求能力の育成」を重視することがもとめられている。そうした自ら学ぶ力や課題探求能力は、自発的な取り組み、つまりはその行動自体が「報酬」でその行動をするという内発的動機づけとして捉えることができよう。 ...
著者
加藤 昌英 辻 元 田原 秀敏 横山 和夫 青柳 美輝 山田 美紀子 谷口 肇
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本年度(補助金が交付されてきた期間を含む)に行った研究によって得られた結果は以下のとおりである。1.複素3次元射影空間のある種の領域(「広い領域」)の商多様体の分類に関して次のことが分かった。すなわち(1)この問題を(複素1次元の)クライン群理論の高次元化(奇数次元のみ可能)と考えた。特に複素3次元の場合には、Grassmann多様体G(4,2)に作用する群と考えることによって、うまく問題の定式化(2)クライン群理論における初等型の群に対応する部分の複素3次元版がほぼ完成した。ここで初等型の群とは3次元射影空間の稠密な領域に作用する「端点(end)」が有限である群と定義する。特に固有不連続な開集合の商空間が正の代数次元を持つコンパクトな成分を少なくともひとつ持てば、固有不連続な開集合は3次元射影空間の稠密な領域であって、クライン群は初等型になることが示された。同時に商多様体も有限不分岐被覆を除いて分類された。ここの議論では、(非Kaehler多様体を含む)複素多様体への正則写像の、S.Ivashkovichによる拡張定理が有効に用いられる。現在、発表のための草稿の作成と、証明の改良(なるべく概念的な証明に直すこと)を行っている。が出来ることがわかった。これによって基礎になる種々の概念が固まった。2.複素多様体がprobableになるための良い十分条件を求める問題についてはまだ手がついていない。複素射影構造が特異点集合の持つ場合の考察についても進歩がなかった。ともに今後の課題である。
著者
島尻 優香 加藤 昇平 世木 博久 伊藤 英則
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.213-214, 1994-03-07

仮説推論の研究に関しては、その理論的枠組の提案、効率的な推論システムの実現方法、並びに診断・設計問題などへの応用など、多くの研究結果が報告されている。我々は、すでにホーン節で表現された論理知識ベースを対象とした仮説推論の効率化手法について提案した。そこで、本稿ではより表現力の高い不確定論理データベースを対象とした仮説推論について述べる。不確定論理データベースのような非ホーン節(non-Horn 節)集合を対象とした推論方法として最近提案された定理証明系SATCHMOREがある。本研究では、 SATCHMOREで導入されている"関連性(relevancy)"の概念を仮説推論に適用することを考える。不確定論理データベースに対する問合せの答としては、"真(true)"、"偽(false)"、"不定(unknown or possibly true)"の三つが考えられる。そこで、SATCHMOREのような充足可能性を調べる定理証明系では区別されることのない"偽"と"不定"を仮説推論においては判別する処理を行なわなければならない。本稿ではその際の処理においても関連性の概念を用いることにより、冗長なOR分岐の抑制ができることを示す。
著者
加藤 哲男 君塚 隆太 岡田 あゆみ
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

歯周病は口腔の主要な感染症であり、その原因となっているのは口腔内バイオフィルムであるデンタル・プラーク中に存在する細菌である。本研究は、歯周病原性バイオフィルムの形成に関わる因子について解析するとともに、その形成を抑制あるいはバイオフィルム細菌に対して抗菌性を発揮するような機能性タンパク質について検索した。培養細胞やマウスを用いて、シスタチンやガレクチンなどの機能性タンパク質のバイオフィルム形成抑制作用や内毒素活性抑制作用などを解明した。
著者
田中 寛 加藤 禎一 柿木 宏介 西尾 正一 前川 正信 辻田 正昭 西島 高明 柏原 昇 甲野 三郎 早原 信行
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.p95-103, 1983-01

Cefmenoxime (CMX)について,基礎的ならびに臨床的検討を行った.1.健康成人4名に対しCMX250 mgをcross over法を用いて,筋注,静注および1時間の点滴静注の3方法で投与した.各投与法における最高血中濃度(時間),血中半減期はそれぞれ,筋注5.9±0.1 μg/ml(30分),1.41時間,静注11.1±1.2 μg/ml(15分),1.26時間,1時間の点滴静注12.4±1.4(点滴静注終了時)0.94時間であった(いずれもMean±S.E.).またCMXの投与後6時間までの尿中排泄率は,いずれも60~70%であった.2.急性単純性膀胱炎4例に対するCMXの有効率は100%であった.3.複雑性尿路感染症10例に対する有効率は70%であった.無効例はいずれもカテーテル留置例でPseudomonasが存続もしくは菌交代として出現したものであった.なお従来のcephalosporin系抗生剤に耐性のSerratiaが陰性化した.4. CMX投与による自覚的副作用は認められなかった.しかし一過性に軽度のtransaminaseの上昇が1例にみられたBasic and clinical studies were made on Cefmenoxime (CMX), a new cephalosporin antibiotic, and the following results were obtained. The serum concentration of CMX was examined in four healthy adults after administration of 250 mg of CMX by intramuscular injection, intravenous injection and one-hour intravenous drip infusion (cross over). In the case of intramuscular injection, the peak value of 5.9 micrograms/ml was obtained 30 minutes after administration, and the half-life in serum was 1.41 hours. In the case of intravenous drip infusion, injection, a concentration value of 11.1 micrograms/ml on the average was obtained after 15 minutes of administration, and the half-life in serum was 1.26 hours. In the case of intravenous drip infusion, the concentration was 12.4 micrograms/ml upon completion of drip infusion, and CMX disappeared from serum at a half-life of 0.94 hour. The urinary recovery up to 6 hours was from 60 to 70% in each The efficacy rate of this preparation was 100% for 4 cases of acute simple cystitis. The efficacy rate of CMX was 70% for 10 cases of complicated urinary tract infection; the 3 cases in which CMX was not effective were patients with a residual catheter and Pseudomonas persisting or appearing as superinfection. It was noted that Serratia, which was resistant to the conventional cephalosporin antibiotics, became negative. No subjective side effects due to the administration of this preparation were observed. As for abnormal laboratory findings, a slight and transient rise in transaminases was observed in one case. On the basis of the above-mentioned results, it was concluded that CMX is an effective preparation for the treatment of urinary tract infections.
著者
清水 孝一 加藤 祐次 山下 政司 北間 正崇
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

従来、カプセル内視鏡など体内機器との通信には、電波による単純な通信方式が用いられてきた。これに対し本研究は、体内を伝搬する散乱光を積極的に用いた光通信を新たに提案し、その実現可能性を実証することを目的とする。体内深部からの光信号は、生体組織で散乱され広く拡散していく。体表面に装着した複数の光センサでこの信号をとらえ、体内生理情報を復元する。光散乱を積極的に利用し、体表上いくつかの点に光センサを配置することにより、死角のない常に安定した信号伝送が期待できる。本年度は、前年度までの検討内容を踏まえ、提案手法の基本をなす体内散乱光による信号伝送実験装置を試作すると共に、それを用いた実験により信号伝送方式の最適化を図った。具体的内容は次のとおりである。1.生体内・光通信システムを試作した。2.試作システムを用い、生体モデルファントムと生体において本手法の特性を実験的に解析した。その結果、提案手法の実現可能性が実証された。3.種々のダイバーシティ方式の比較などを通し、提案手法の最適化を図った。その結果、提案手法の実用における有用性が実証された。研究成果の発表:国際学術誌(Applied Optics 2件、Optics Express 1件)および国際会議(invited talk 2件を含め4件)において、本研究の成果を報告した。