著者
鐘ヶ江 靖史 加藤 真紀 茶山 秀一
出版者
科学技術政策研究所 第1調査研究グループ
巻号頁・発行日
2012-06-25 (Released:2012-08-08)

本報告書では、2010年度に実施した「博士課程修了者の進路と就職活動に関する調査」を基に、我が国の博士課程修了者の就職活動の実態を分析した。この結果、博士課程進学時は回答者(全回答者から論文博士、社会人学生および留学生を除いた一般学生(1,537名)のうち、博士課程在籍中に就職活動を実施した1,055名)のおよそ3人に1人は、博士課程進学時には国外機関を就職候補先の1つとして考えており、日本国内の機関については半数以上の回答者が複数の機関種別(教育機関(大学等)、民間企業、公的研究機関)を就職候補先として考えていたことが示された。ただし、実際の就職活動において国外機関に応募した者の割合はおよそ8人に1人程度にとどまり、複数の国内機関種別に対して応募した割合についても4人に1人程度であることが明らかとなった。また、教育機関(大学等)と民間企業では就職活動時期が異なり、就職活動期間の時間的な負荷は就職活動先によって差があることが示された。
著者
加藤 謙介 カトウ ケンスケ Kensuke KATO
雑誌
九州保健福祉大学研究紀要 = Journal of Kyushu University of Health and Welfare
巻号頁・発行日
vol.15, pp.51-60, 2014-03

This study investigated the long-term transition of community conflict caused by cat breeding, especially the case of `community cats' activity in Isogo, Yokohama-city. In this practice, residents treated `cat problem' as `residents-relation problem' thoroughly to manage community conflict, and established "guideline" including two divided claims (like/dislike cats). To examine the features of the long-term practice, content analysis on volunteers' annual reports from 2001 to 2011 was performed. The results suggested that volunteers faced many difficulties during the `community cats' activity and that appropriate communication in a community is vital in conducting the `community cats' activity.
著者
加藤 祐三
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山.第2集 (ISSN:24330590)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.21-30, 1988-04-01 (Released:2018-01-15)

Since the late of May, 1986, many pumices have drifted to the Ryukyu Islands. These pumices are characterized by their size, color and components. The pumices vary in size: some are about 5 mm and the maximum size is about 20 cm. Most of these pumices are gray and a few of them are drak- or light-gray. The pumices contain several percent of essential black xenolithes which vary in size from 1 mm to 5 mm and rarely 2 cm. The rock name of pumices is olivine-augite-bearing trachyte and that of xenolithes is forsterite chromian diopside trachybasalt. These characteristics of the pumices correspond with those of pumices erupted from Fukutoku-oka-no-ba in the north of the Mariana Islands in January 18-21, 1986. Moreover, the chemical composition of host pumice (free from xenolith), bulk composition (including xenolith) and mineral chemistry of phenocryst also correspond with those of the pumices effused from Fukutoku-oka-no-ba. Based on these facts, it is evident that the pumices drifted to the Ryukyu Islands had their origins in Fukutoku-oka-no-ba. Judging from the data concerning the current and wind around the area through Fukutoku-oka-no-ba toward the Ryukyu Islands, it is confirmed that the pumices reached the Ryukyu Islands from Fukutoku-oka-no-ba after four months under the effect of current and wind which run both to the direction of west.
著者
加藤 元海 見並 由梨 井上 光也
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.77-85, 2015-07-30

地球上における急激な人口増加に伴う食料問題の対策の1つとして、栄養価や生産コストの面から昆虫を利用することが有益であるとの報告書を2013年に国連食糧農業機関がまとめた。現在食べられているのはほとんどが陸生昆虫で、水生昆虫は少ない。しかし、水生昆虫の一部はザザムシや孫太郎虫として日本では食用とされてきた。本研究では、比較的大型で採集しやすい水生昆虫であるヘビトンボ、ヒゲナガカワトビケラ、大型カワゲラを対象に食用昆虫としての可能性を探るため、水生昆虫の生物量や収穫のしやすさを河川において現地調査し、加えて水生昆虫食に対する意識調査を行なった。底生動物の生物量は0.1から7.5g/m^2の範囲で、うち食用昆虫の割合は平均で63%だった。また、生物量と捕獲努力量との間には正の相関がみられた。大型の水生昆虫を効率的に採集するには、降水や水生昆虫の生活史を考慮すると冬から初春に行なうのが適切であろう。昆虫食に対する意識では、見た目への抵抗感に関する記述が多くみられた。しかし、水生昆虫を食べる前より実際に食べた後の方が肯定的な意見が増えた。水生昆虫食の普及には、見た目の工夫を施し、抵抗感を打ち消す広報や教育によって、今後、水生昆虫が食材として受け入れられる可能性はあると結論付けた。
著者
加藤 隆文
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.47-58, 2013

This paper is an attempt to suggest a provoking theory about actions of human beings (including art-creating actions, art-appreciating actions, etc.). With this aim, I refer to Alfred Gell's posthumous book, Art and Agency (AA hereinafter), especially focusing on his concepts of 'agency' and 'index'. Because 'index' is a concept derived from C. S. Peirce's semiotics, Gell's theory may also imply a kind of applicability of Peirce's idea, though Gell's 'index' is not necessarily compatible with Peirce's. In Gell's terminology, 'index' is an object that mediates 'agency'. What he argues is that 'agency' can be attributed to not only persons but also things such as god statues as long as they (persons and things) are seen as initiating causal sequences caused by some sort of intention. Utilizing these concepts, Gell puts forward 'Anthropology of Art'. He suggests that art objects should be anthropologically examined in order to grasp their 'behaviour' (AA, p.11) in the context of social relations. In this paper, above all I remark on Gell's unique idea The Extended Mind', which is also the title for the last chapter of AA. Interestingly, according to this idea, artworks (and artefacts) and persons can be regarded analogously as 'indexes' embodying collective consciousness of social agents.
著者
陳 黙 蔡 立義 加藤 たか子 和泉 俊一郎 樋口 雅司 加藤 幸雄
出版者
公益社団法人 日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第104回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.206, 2011 (Released:2011-09-10)

【背景】我々は以前の本大会で、ブタFSHプロモーターにヘルペスウイルスの一つであるHSVチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を連結して作成したトランスジェニック(TG)ラットが雄性不妊を示す事を報告している。その原因を調べると、精巣では、FSHプロモーターに依存せずにウイルスTK遺伝子に内在する精巣特異的な転写開始点により異所性に円形精子細胞でHSV-TKが発現されることにより精子形成異常を示すことを確認した。つまり、ヘルペスウイルスに感染したヒトの精巣では、HSV-TKの発現により精子形成に影響が出て男性不妊になる可能性が考えられる事になる。そこで、男性不妊患者の精液から回収したDNAを調べる事で、ウイルス感染の有無を調べることにした。 【方法】今回は、ヒトの男性不妊患者153名(年齢21-40代)の精巣から採取した精液をより調製したDNAについて、Nested-PCR法による増幅反応を行い、増幅物については塩基配列の測定を行った。また、不妊患者の精液における精液量、精子数、精子運動性などの測定を行った。 【結果】検査した不妊患者でウイルスDNAが確認された。その感染率は、HSVが39例(26%)、CMVが33例(22%)で、EBVとHHVは共に4%以下であった。しかも、感染者全体(59名)の37%の感染者にウイルスの2重感染が認められ、そのほとんどはHSVとCMVの2重感染であった。一方、ウイルス感染者と非感染者の間には、疫学的に精子異常の差が認められなかった。 【考察と結語】不妊患者の精液にウイルスDNAを高頻度に検出した。しかも、その4割弱に2種類のウイルスが重感染していることを発見した。ウイルス感染者おける精子異常性には特に有意な差が認められなかった。つまり、非感染者とは原因が異なるにもかかわらず、男性不妊患者の精子は非感染の状態と同じと言うことになる。ウイルス感染者における不妊の機序を解明するには、1)HSV-TK遺伝子が精巣で実際に発現している事を確認することが急務で、その上で、2)HSV-TKの標的分子とその下流の出来事を調べる必要がある。
著者
石川 達也 竹内 大介 玉山(加藤) 葉 倉島 彰
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.20-00075, (Released:2021-06-11)
参考文献数
27
被引用文献数
3

三重県早田浦の磯焼け海域で2010年2月から2019年12月にガンガゼ類の除去実験を行った。ガンガゼ類はダイバーおよび船舶からの捕獲により除去した。磯焼け海域に除去区を3区設け,海藻被度とウニ類,サザエ,アワビ類の密度を調査した。継続的な除去でガンガゼ類密度が低く保った結果,除去区の海藻被度が増加した。また,除去前と比較してガンガゼ類以外のムラサキウニやナガウニ類等のウニ類密度が増加し,ウニ類の種数増加が認められた。除去前に確認されなかったサザエやアワビ類が,海藻被度が増加した後に確認された。
著者
杉本 秀樹 越智 由紀恵 浅木 直美 諸隈 正裕 加藤 尚 荒木 卓哉 ホセイン シェイク タンヴィ-ル
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.246-252, 2019-10-05 (Released:2019-11-12)
参考文献数
38
被引用文献数
1

近年,クラゲが日本近海に大量発生し,水産業や臨海施設に大きな被害を与えているが,このクラゲを脱塩・乾燥した細片(クラゲチップ)を水田に施用すると肥料効果だけでなく抑草効果を併せ持つことが示された.しかし,収量が慣行栽培(化成肥料,除草剤使用)より約10%低いこと,抑草効果が不十分でかつ不安定であることなど実用化に向けての様々な課題が指摘された.そこでクラゲチップと同様に2つの効果を併せ持ちながら含有成分や肥料効果の発現時期の異なる米ぬかに着目し,これをクラゲチップと併用して試験を行った.その結果,クラゲチップを単独に施用した場合に比べ,両者を併用した場合には収量は慣行栽培とほぼ等しく雑草発生量は顕著に減少した.本研究よりクラゲチップと米ぬかを併用することで,慣行栽培なみの収量が得られ,抑草効果も顕著に高まることが明らかになった.収量性の向上は,両者の成分含有率と肥料効果発現時期の違い,抑草効果の向上は両者がそれぞれ持つ成長抑制物質の違いによる相乗効果に起因したと考えられた.
著者
林 里奈 加藤 昇平
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.832-839, 2018-12-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
22

近年,ロボットとのふれあいを通して精神的な癒しを与えるロボット・セラピーが注目を集めている.ロボット・セラピーに使用されるセラピーロボットは,簡易な音声反応をするものが多い.本稿では,そのようなロボットに対し同調傾向の考え方を導入し,コミュニケーション活性時に最も強く同調する基本周波数を直前のユーザの発話音声の基本周波数と同調させることによる心理的・生理的ストレス緩和作用への影響を,評価実験を通して検証した.その結果,応答音声の基本周波数をユーザの発話音声の基本周波数に同調させた方が,得られる疲労の緩和と活気の向上作用,α波の含有率増進作用が有意に高いことを確認した.逆に,応答音声の基本周波数をユーザの発話音声の基本周波数とは無関係にランダムに調整させた方が,混乱の緩和作用が有意に低いことを確認した.したがって,応答音声の基本周波数は,ランダムに調整するのではなく,発話音声の基本周波数に同調するよう調整した方が,心理的・生理的ストレス緩和作用を引き出すことができると言える.
著者
林 里奈 加藤 昇平
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.75-81, 2017 (Released:2017-02-24)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

Interest in pet robots and virtual pets is currently increasing along with the pet boom. Pet robots and virtual pets have been found to be therapeutic. However, what characteristics of pet robots and virtual pets are therapeutically effective have yet to be clarified. In this study, we carried out experiments to compare the therapeutic effects between pet robots and virtual pets in terms of physical embodiment from psychological and physiological aspects. Psychological evaluation results showed that the reduction in the tension score and increase in the vigor score with pet robots were significantly higher than those with virtual pets. Physiological evaluation results showed that the increase in the percentage of alpha waves with pet robots was significantly higher than that with virtual pets. These results suggest that physical interaction is an element for reducing mental strain and improving vitality.
著者
大塚 浩仁 田中 健作 斉藤 晃一 森田 泰弘 加藤 洋一 佐伯 孝尚 山本 高行 後藤 日当美 山本 一二三
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.148-154, 2015-05-05 (Released:2017-06-12)
被引用文献数
1

イプシロンロケットは2013年9月14日に惑星分光観測衛星「ひさき」の打上げに成功し,目標とした軌道投入精度を達成し,新規に開発した誘導制御系の性能を遺憾なく発揮した.イプシロン開発では,惑星探査機「はやぶさ」を投入したM-Vロケットの誘導制御系の性能を継承しつつ新たな技術革新にチャレンジし,M-Vの機能,性能をさらに向上させた誘導制御系を実現した.最終段には信頼性の高い低コストなスラスタを用いた液体推進系の小型ポストブースタ(PBS)を開発し,新たに導入した誘導則とともに軌道投入精度を飛躍的に向上させた.フライトソフトにはM-Vで蓄積した各種シーケンスや姿勢マヌーバ機能をユーティリティ化して搭載し,科学衛星ユーザ等の多様な要望に容易に対応できる機能を実現し運用性を高めた.
著者
三輪 聖 森田 達也 松本 禎久 上原 優子 加藤 雅志 小杉 寿文 曽根 美雪 中村 直樹 水嶋 章郎 宮下 光令 山口 拓洋 里見 絵理子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.281-287, 2021 (Released:2021-10-26)
参考文献数
18

【目的】緩和ケア医が苦痛の評価を行う上で知っておくことが必要と考える方言を収集する.【方法】2020年2月から4月に緩和医療専門医・認定医762名を対象とした全国質問紙調査を実施した.緩和ケア医が苦痛の評価を行う上で知っておくことが必要と考える方言とその意味を自由記述で質問し,症状別に分類した.【結果】有効回答492名(64.8%).233名(47.4%)が方言として116語を挙げ,苦痛を表現する方言は101語であった.「倦怠感・特定できない苦痛・全体的な調子の悪さ」(N=62),「疼痛」(N=13),「呼吸器・循環器症状」,「精神症状」(各N=8),「消化器症状」,「神経・筋・皮膚症状」(各N=5)であった.【結語】緩和ケア医が苦痛の評価を行う上で知っておくことが必要と考える方言とその意味が明らかになった.苦痛の適切な評価のために,苦痛を表す様々な方言があることを理解することが必要である.
著者
加藤 郁佳 風間 北斗
雑誌
第43回日本神経科学大会
巻号頁・発行日
2020-06-15

The activity of dopaminergic neurons (DANs) has been most extensively studied in the context of associative learning. Specifically, DANs have been shown to respond to an unconditioned stimulus and a conditioned stimulus as it becomes predictive of the value of unconditioned stimulus through learning (Schultz et al., 1997; Eshel et al., 2015). However, a conditioned stimulus, especially an odor, is associated with an innate value because it can evoke approaching or avoiding behavior even without learning (Badel et al., 2016). Whether and how DANs represent such innate value of odors remain largely unknown. Here, we addressed these issues using an olfactory system of Drosophila melanogaster as a model. We focused on the DANs innervating the mushroom body (MB) where the olfactory information is modulated by reward or punishment (Aso et al., 2014). The MB comprises 15 compartments, each of which receives input from a distinct type of DANs and provides a place for synaptic modification underlying learning. We performed two-photon Ca2+ imaging to record the responses of DANs in all the 15 compartments to a panel of 27 odors with various values quantified based on the innate approach or avoidance behavior (Badel et al., 2016). We found that DANs differentially respond to attractive and aversive odors; the activity of DANs in specific compartments was correlated positively or negatively with the value of odors. Regression analysis showed that information about the value of odors can be decoded from the activity of DANs, and DANs in each compartment have specific contributions to the encoding of odor values. These results suggest that DANs drive not only associative learning but also moment-to-moment adaptive behaviors in an olfactory environment. In this presentation, we plan to discuss the neural circuit mechanism that gives rise to the odor-evoked activity of DANs.