著者
大塚 美奈子
出版者
上田女子短期大学
雑誌
紀要 (ISSN:24368148)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.97-108, 2022-01-31

本研究では,23名の重度・中度知的障害児(者)が筆談援助法を通して語った「言いたいこと」における思考内容の共通点や対象児(者)自身の障害特性に関する内的捉えについて,計量テキスト分析を用い抽出語の結びつき及び文脈から検討した。共起ネットワーク分析から,【仲間の話を聞く】【自分のことを話す】【言葉を理解するお母さん】【知られていない本当の気持ち】【障害とともに人生を生きる意味】の5つのカテゴリー及びテーマが見出され,いずれのカテゴリーにおいても他の人への関心や思い(仲間意識)が語られている点,自身の障害を受け入れている点が共通して示された。
著者
松原 仁 佐藤 理史 赤石 美奈 角 薫 迎山 和司 中島 秀之 瀬名 秀明 村井 源 大塚 裕子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第27回全国大会(2013)
巻号頁・発行日
pp.2D11, 2013 (Released:2018-07-30)

人工知能の新しいグランドチャレンジとしてコンピュータに星新一のようなショートショートを創作させるプロジェクトを開始した。知性を理性と感性とに分けるとこれまでの人工知能はもっぱら理性を対象としていたが、ある程度理性はコンピュータに扱えるようになってきた。芸術作品の創作ができればコンピュータにも感性が扱えると示せたことになると考える。ここでは本プロジェクトの概要について述べる。
著者
大塚 明子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.171-181, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、17歳の身体醜形障害(BDD)を伴う強迫性障害(OCD)の女性患者に対して、曝露反応妨害法(E/RP)を中心とする認知行動療法(CBT)を行った結果、 CBT開始3か月間で不潔恐怖を主とする強迫観念、強迫行為やBDD症状に改善がみられた事例の報告である。治療においては、治療への動機づけや継続性を高める心理教育、治療意欲を高める課題を設定し、宿題でE/RPを繰り返し、成功体験をセルフモニタリングすることを通して、セルフコントロール力を高めることに重点が置かれた。最後に、本研究の結果をもとに、OCDと生物学的ならびに認知行動学的な共通性が指摘されているBDDに対するCBTの効果について考察した。
著者
大塚 みさ
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The Bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:21896364)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.87-96, 2018-03-09

近年、大学生の日本語力の低下が指摘されている。日本語力を支える語彙力の養成が必須であることは言うまでもないが、自在に使いこなせる使用語彙をいかに増強するかが課題である。一方で国語辞書離れも進んでいるが、スマートフォンを介したオンライン辞書の可能性に期待することはできないだろうか。本稿では学生たちの意味の分からない語への対処と辞書情報の活用について実態調査を行い、その可能性を探る。
著者
竹内 茂 大塚 恭弘 林 高志 永野 伸郎 安藤 哲郎 小林 充
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.197-201, 2017 (Released:2017-03-28)
参考文献数
10

透析時血管痛は局所冷却や加温などで対応されるが, 不十分なケースも多い. 透析時血管痛を呈する3症例に対し, マイクロコーン (ソマレゾン®) を用いた耳介治療を行った. 症例1は80歳代, 女性. 透析時のシャント肢の右肩血管痛に対し同側の耳穴 (SF-4) を治療し, visual analogue scale (VAS) が74→0となった. 症例2は50歳代, 女性. 透析時のシャント肢前腕痛に対し同側の耳穴 (SF-2) を治療し, VASが34→6に減じた. 症例3は80歳代, 女性. 透析中の頸静脈長期留置カテーテル留置側の上腕血管痛に対し同側の耳穴 (SF-4) を治療し, VASが78→0となった. いずれも痛みが出現する前に耳介治療を行い, 治療開始日より著効が得られた. 同様の治療を透析ごとに行うことにより, その後の痛みが予防できた. マイクロコーンによる加療は穿刺を必要としない簡便な治療法のため, 透析時血管痛に対する本治療の有効性が広く確認できれば, 今後普及する可能性がある.
著者
大塚 康民 岩田 吉弘 小野沢 昭彦 宮本 吉教
出版者
航空医学実験隊
雑誌
航空医学実験隊報告 (ISSN:00232858)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.109-113, 2006

Urinary catecholamine responses of fighter pilots were investigated in Aerial Combat Maneuver(ACM). The levels of urinary adrenaline (Ad) and noradrenaline (NA) were determined in fighterpilots during ACM with three types of aircraft (F-4, F-15 and F-2). The levels of Ad for post-flightwere significantly higher than for pre-flight, while changes were not significant for NA. The ratios(post-/pre-flight) of Ad in ACM with different types of aircraft are relatively similar values. Ourresults indicate that the ratio of urinary Ad as a good indicator to stress adaptation during ACM infighter pilots.
著者
横田 賀英子 渡邉 和美 和智 妙子 大塚 祐輔 倉石 宏樹 藤田 悟郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.86.13086, (Released:2015-05-28)
参考文献数
37
被引用文献数
9 3

The purpose of this study was twofold: first, to create an index for a behavioral linkage analysis of serial sex crimes, and second, to construct a predictive model for the analysis. Data on 720 sex crimes (rape, indecent assault) committed by 360 offenders arrested between 1993 and 2005 throughout Japan were collected. The following seven behaviors were examined during a series of analyses aimed at illustrating the effectiveness of crime linkage in serial sex crimes: victim age group, area type, publicness of offense site, weapon, time, contact method, and day of the week. The results indicated that six of the seven behaviors (excluding “day of the week”) significantly distinguished between linked and unlinked crime pairs. Under a logistic regression of these six variables, which were dichotomously coded in terms of the concordance or discordance between each pair of incidents, the area under the receiver operating characteristic (ROC) curve was 0.85 (95% CI = 0.82–0.87), indicating a high level of discriminative accuracy in identifying disparate sex crimes committed by the same person.
著者
谷出 康士 沖 貞明 田坂 厚志 甲田 宗嗣 長谷川 正哉 島谷 康司 金井 秀作 小野 武也 田中 聡 大塚 彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P1368, 2009

【目的】イメージトレーニングによる運動学習や運動習熟に関する研究は数多く報告されている.しかし,イメージトレーニングの筋力増強効果についての研究は少ない.そこで本研究では大腿四頭筋を対象とし,イメージトレーニングによる筋力増強効果を検討した.また,イメージ能力の高い被験者群とイメージ能力の低い被験者群との2群を設け,イメージ能力の差が筋力増強効果にどのような影響を与えるかを調べることとした.<BR><BR>【方法】研究の実施にあたって対象者には十分説明を行い,同意を得た.対象は健常学生24人とし,筋収縮を伴う筋力増強運動群(以下,MS群),イメージ能力の低いイメージトレーニング群(以下,Ns群),イメージ能力の高いイメージトレーニング群(以下,PT群)に分類した.Biodexを用いて,膝関節屈曲60°での膝関節伸展筋力を計測した.MS群には大腿四頭筋の等尺性最大収縮をトレーニングとして行わせた.一方Ns群とPT群にはトレーニング前に運動を想起させる原稿を読ませ,上記のトレーニングをイメージさせた.4週間のトレーニング実施前後に等尺性収縮を5秒間持続し,最大値を記録した.また,全被験者に自己効力感についてのアンケート調査を実施した.統計は各群内の筋力差にt検定を,3群間の筋力上昇率の差に一元配置分散分析を行い,有意差を5%未満とした.<BR><BR>【結果】1)筋力測定の結果:初期評価と最終評価における筋力平均値の変化は,MS群(p<0.01),Ns群(p<0.05),PT群(p<0.01)で有意に増加したが,各群間での筋力上昇率に有意差は認められなかった.2)アンケート:「トレーニングにより筋力は向上したと思うか」という問いと筋力上昇率との間に,MS群は正の相関が認められたのに対し,Ns群およびPT群では負の相関が認められた.<BR><BR>【考察】筋力測定の結果,3群全てにおいて筋力が向上した.イメージトレーニングのみ行ったNs群とPT群においても筋力増強が認められた理由として,運動イメージを繰り返すことにより筋収縮を起こすためのプログラムが改善されたためと考える.次に,Ns群・PT群間の筋力上昇率に有意差は認められない理由として,イメージの誘導に用いた原稿が影響したと考えられる.この原稿によってイメージ能力が低いと想定したNs群でも,一定の水準でイメージを持続できていたと考えられる.原稿によるイメージのし易さは,PT群に比べてNs群で高く,Ns群は原稿の誘導を頼りにイメージを想起し,PT群とのイメージ能力の差を補った可能性が示唆された.最後に,MS群では筋力上昇率と自己効力感との間に正の相関があったが,Ns群・PT群では負の相関が認められた.イメージトレーニングのみ行ったNs群・PT群では,フィードバックが無いことで,「この練習で筋力は向上するのか」という懐疑心が強くなったと考えられる.
著者
小川 秀幸 西尾 尚倫 牧野 諒平 越前谷 友樹 大塚 三和子 中野 克己
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.20048, (Released:2021-06-26)
参考文献数
23

目的:回復期脳卒中患者における下肢装具による医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)に関連する要因を検討すること.方法:研究デザインは後ろ向きコホート研究とした.対象は回復期リハビリテーション病棟入棟中に下肢装具を作製した脳卒中患者95名とした.調査項目は,基本属性,入棟時のBrunnstrom Recovery Stage,感覚障害の有無,半側空間無視の有無,入棟時と退院時のFunctional Independence Measureとした.メインアウトカムであるMDRPUの発生は,National Pressure Ulcer Advisory Panel分類ステージⅠ以上とした.統計解析では,MDRPUの発生あり群となし群に分けて群間比較を実施し,多重ロジスティック回帰分析を行った.変数の選択には,尤度比検定による変数増加法を用いた.結果:MDRPUの発生要因として抽出されたのは,年齢(オッズ比=1.05,95%信頼区間:1.01~1.10,p<0.05)と,入棟時感覚障害の有無(オッズ比=5.17,95%信頼区間:1.39~19.28,p<0.05)であった.結論:回復期入棟時に若年層で感覚障害を有する場合は,下肢装具によるMDRPU発生の危険性が高く注意が必要であることが示唆された.
著者
斉藤 英俊 大塚 攻 河合 幸一郎
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

1)スジエビ類および寄生種の遺伝属性: エビノコバンは、これまで沖縄県から山形県までの15県でエビノコバンを採集し、ミトコンドリア DNAの配列情報を明らかにして中国産エビノコバンのデータ(NCBLより引用)を加えて分子系統樹作成を行った。その結果、エビノコバンの分子系統樹は、本州~九州、沖縄および中国の3つのクレードに区分された。愛媛県のエビノコバン(宿主:チュウゴクスジエビ)は中国産個体に近い遺伝的属性を示したことから、チュウゴクスジエビの輸入にともないエビノコバンも中国から侵入している可能性が示唆された。2)寄生種がスジエビ類に及ぼす生態的影響:スジエビ類に対するエビノコバンの奇生生態の地域差を比較するため、前年度に引き続き野外調査をおこなった。その結果、宿主への寄生は東京都(利根川水系水路)では2018年7月(体長2mm)から2019年5月(体長12mm)までみられた。これに対して滋賀県(琵琶湖周辺河川) では2018年8月から2019年6月までみられた。また、エビノコバンの体長が比較的小型の時期にはスジエビ類よりも体サイズの小さいカワリヌマエビ類にも寄生する事例がみられた。なお、エビノコバンの室内飼育実験を試みたが、長期的なエビノコバンのエビ類への寄生状態を維持できなかった。これについては、次年度以降、野外調査データを利用してエビノコバンの寄生の有無と宿主であるエビ類の成長や肥満度の関係を解析することで明らかにできると考えている。3)スジエビ類および寄生種の流通状況:大阪府の釣具店において、スジエビ類を調査したところ、令和元年度はすべてスジエビであり、チュウゴクスジエビは流通していなかった。また、琵琶湖産スジエビに付随するエビノコバンを確認した。
著者
大塚 篤司 椛島 健治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.973-977, 2014 (Released:2016-09-30)
参考文献数
22

我が国には約40万人のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)の患者がいるとされる.ADは慢性的なかゆみを伴う皮膚疾患であり,その背景として湿疹ができやすい体質があると考えられている.その体質として皮膚の乾燥が候補因子であったが,十分な解析はなされていなかった.ところが,2006年にADの有病率とフィラグリン遺伝子の相関関係が指摘されたことで,皮膚のバリア機能と免疫とのクロストークが注目を集めることとなった.
著者
大塚 義顕 石川 哲 斉藤 雅史 斎藤 隆夫 大森 恵子 渋谷 泰子 佐藤 孝宏 長谷川 正行
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.69-74, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
14

呼吸器疾患患者の中でも慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)には嚥下障害が高率に併存し,増悪と嚥下障害との関連が指摘されている.一般的に,呼吸と嚥下は文字通り表裏一体の協調関係にあるとされ,切り離しては考えられない.嚥下筋は呼吸中枢からの制御を受けて呼吸と協調した運動をするが,COPDでは呼吸のサイクルが増し,呼気が短くなることから異常な嚥下反射が起こりやすくなると考えられる.そのため嚥下障害の特徴を踏まえたうえで対応することが望まれる.一方,フレイル・サルコペニアを考えたときにオーラルフレイルから咀嚼障害や嚥下障害に移行しないようにしなければならないし低栄養に陥らないようにもする必要がある.そこで,本報告はCOPDのオーラルフレイル・サルコペニア,嚥下障害との関連,および包括的な嚥下リハビリテーションの介入でCOPD増悪の頻度を低下できた症例を提示する.
著者
西中川 駿 松元 光春 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.19-24, 1993-03-31

鹿児島の縄文46,弥生22遺跡の動物遺体の出土状況を調査し, そのうち31遺跡の哺乳類遺体について, 肉眼的ならびに計測学的に検索し, 出土動物種を明らかにした.1.出土した動物遺体は, 哺乳類, 鳥類, 爬虫類, 両生類, 魚類, 甲殻類および貝類のものであり, 貝類, 哺乳類の出土した遺跡が最も多く, 両生類は少ない.地域別では薩摩半島が28ヵ所で最も多く, 次いで南西諸島の22ヵ所である.時期別では, 縄文後, 晩期が40ヵ所で最も多く, 弥生が22ヵ所である.2.動物種の同定された哺乳類遺体は, モグラ, コウモリ, サル, ノウサギ, アマミノクロウサギ, ムササビ, ネズミ, ツキノワグマ, オオカミ, イヌ, タヌキ, アナグマ, カワウソ, テン, イタチ, オオヤマネコ, イエネコ, アシカ, イノシシ, シカ, カモシカ, ウシ, ウマ, クジラ, イルカおよびジュゴンの10目26種のものである.これらのうちイノシシ, シカが全体の97%(出土骨片数)を占め, 当時の鹿児島の狩猟獣の中心であったことが示唆された.なお, ウシ, ウマ, イエネコは同時代のものかは疑問視される.3.イノシシは県下の全遺跡で検出されたが, 南西諸島のものは県本土のものとは形状が異なり小型である.また, 南西諸島の遺跡からは, シカ, サル, タヌキ, アナグマなどの出土例はなく, トカラ海峡を境にすでに縄文時代から, 哺乳動物相が異なっていたことが示唆された.
著者
渡邉 守邦 鈴木 俊幸 岡 雅彦 大塚 英明 水上 文義 松永 知海
出版者
実践女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1 前年度の総括第一回の打合会を3月21日に行った。これは今年が最終年度に当り、取りまとめを急ぐところから、前倒し的に開催したものである。2 調査活動(1)前年度までの実績を継続して「箪笥」「木箱」双方の活字につき配列を終え、新調した箪笥のレプリカを使って収納した。なお、この作業に要する補助者の謝金に関しては、寛永寺に要請して過分のご配慮を得た。(2)刷本の調査研究使用される活字の同定を中心に、台東区の護国山天王寺、杉並区の佼成図書館、港区の三縁山増上寺、京都市の五台山清涼寺、同市大谷大学図書館、奈良県の豊山長谷寺等の所蔵資料について実地調査を行った。このうち、天王寺と佼成図書館との分は、天保期の重彫活字の調査である。3 木質研究今年度から新たに京都大学木質科学研究所の伊東隆夫氏を研究分担者にお迎えして、活字の木質的特徴を中心に研究を行った。4 成果の公表研究分担者それぞれが関連する研究分野につき個別に成果を発表したほか、本研究の成果を報告書にまとめ、印刷刊行した。
著者
菅野 敦 正宗 淳 花田 敬士 真口 宏介 清水 泰博 植木 敏晴 長谷部 修 大塚 隆生 中村 雅史 竹中 完 北野 雅之 菊山 正隆 蒲田 敏文 吉田 浩司 佐々木 民人 芹川 正浩 古川 徹 柳澤 昭夫 下瀬川 徹
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.16-22, 2017-02-25 (Released:2017-03-17)
参考文献数
16
被引用文献数
5 3

膵癌早期診断研究会が主導して行った,早期診断された膵癌の実態調査について報告する.40例のStage 0膵癌と119例のStage I膵癌が集積された.膵癌全体に占めるStage 0膵癌とStage I膵癌の割合は約2%であり,Stage 0膵癌は0.6%であった.症状を認めたために医療機関を受診した症例は38例(23.9%)と少なかったのに対して,検診にて異常を指摘され受診した症例は27例(17.0%),他疾患の経過観察中に異常を指摘された症例は85例(53.5%)と無症状で医療機関を受診した症例が多かった.検診にて異常を指摘された27例中,膵管拡張を指摘された症例が19例と画像における副所見の指摘から精査を行った症例が多かった.術前の病理診断では,超音波内視鏡下穿刺吸引法を用いた症例(30.8%)と比較して,内視鏡的逆行性胆管膵管造影下にて病理検体を採取した症例(77.8%)が多かった.予後は良好であったが,14.5%の症例で術後の残膵に膵癌が新たに発生した.今回の調査が,膵癌の早期発見ならびに予後改善に寄与をすることが期待される.