著者
佐藤 学 上村 仁 小坂 浩司 浅見 真理 鎌田 素之
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.153-162, 2016 (Released:2016-09-10)
参考文献数
38
被引用文献数
4 17

神奈川県の水道水源河川である相模川水系の河川水及びそれらを水源とする水道水について, 2014年4月より一年間, ネオニコチノイド系農薬6種, ブロマシル, テブコナゾール, テフリルトリオンおよびテフリルトリオン分解物の実態調査を行った。河川水からは調査期間中9物質が検出された。イミダクロプリド, テフリルトリオン等は農薬の適用時期に濃度が上昇する傾向がみられたが, 都市部の除草剤等としても使用されるテブコナゾール, ブロマシルは農薬の適用期間外においても検出された。実態調査の結果を環境中予測濃度 (PEC) と比較したところ, テブコナゾール及びブロマシルにおいて測定値が水産動植物PECを超える採水地点が確認された。水道水からはイミダクロプリド, クロチアニジンが河川水中濃度と比較的近い値で検出された。また, 水道水中からはテフリルトリオン分解物が検出され, その濃度推移は河川水中のテフリルトリオンの濃度推移とほぼ一致した。
著者
岸田 直裕 島崎 大 小坂 浩司 小菅 瑠香 秋葉 道宏 林 謙治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.579-585, 2013 (Released:2013-10-11)
参考文献数
33
被引用文献数
1

目的 近年注目を集めている銅を用いた水中の微生物の不活化技術の現状および課題を明らかとする。方法 国内外の学術雑誌等に掲載された文献情報を基に,銅を用いた微生物の不活化技術の歴史,不活化機構,不活化効果が確認されている微生物,水中の微生物の不活化技術について整理した。結果 銅を用いた微生物の不活化技術は古くから利用されていたが,1930年代より抗生物質の利用が広まったことから,銅を用いた不活化技術は使用されなくなった。一方で,近年は抗生物質耐性菌の存在が問題視されており,抗生物質に代わる微生物の制御アプローチの 1 つとして,銅を用いた微生物の不活化技術が再認識され始めている。不活化機構については,その詳細はいまだ明らかとなっていないものの,銅イオン自体の毒性と銅表面に生成される活性酸素による強力な酸化作用によって不活化が起こると推測されている。Legionella pneumophila, Salmonella enterica, Mycobacterium tuberculosis 等の公衆衛生上問題となる多くの病原微生物に対して不活化効果が確認されている。建物内の給水管を中心に多くの水関連設備において,近年銅を用いた不活化技術の導入が検討されており,人への健康影響がほとんど発生しないと推測される水道水質基準を満たす濃度範囲であっても,水中の微生物を不活化可能であることが一部の研究でわかってきた。一方で,不活化効果が短期間に留まることも多く,効果を長期間持続させる技術を開発することが今後の課題であるといえる。また,銅管は残留塩素の低減や消毒副生成の生成にも影響を及ぼしていると報告されており,このようなリスクと不活化効果というベネフィットのアセスメントが今後必要であろう。結論 銅を用いた水中の微生物の不活化技術には,実用上の課題は残るものの,その有用性は十分に明らかとなっており,病院施設の給水設備等での利用が今後期待される。
著者
森川 美羽 石崎 武志 高野 智早 渡辺 享平 田畑 麻里 佐藤 義高 西本 武史 小坂 浩隆 片山 寛次
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.541-544, 2012 (Released:2012-08-21)
参考文献数
18

【目的】がんの診療に伴い, 吃逆はしばしば経験し, 治療に難渋することが多い. 化学療法に伴って出現した持続性の吃逆に対して, プレガバリンが奏効した2症例を経験したので報告する. 【症例】症例は共に進行肺扁平上皮がんであり, 症例1はカルボプラチン+パクリタキセル, 症例2はネダプラチン+イリノテカンの2剤併用化学療法を施行した. 2症例共に抗がん剤の投与に応じて吃逆の出現, 増悪を認めており, 薬剤が誘発したと考えられた. 吃逆はメトクロプラミド, クロルプロマジン, ガバペンチンに抵抗性であり, プレガバリン 150 mg/日の投与によりすみやかに改善した. 【結論】鎮痛補助薬として近年用いられるようになったプレガバリンは, その薬理作用である神経細胞の過剰興奮の抑制により吃逆にも効果がある可能性がある.
著者
小坂 浩嗣 佐藤 亨 末内 佳代 山下 一夫
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.160-170, 2011

This paper examined merits and demerits of naming parents who claim unreasonable things "monster?parents" ased on real cases. And, it described the movement of the educational world about "monster?parent" around 2007, based on newspaper articles and response?manuals made by school boards. Finally, it discussed how eachers should react the situation that it is difficult to have good relation with parents from the viewpoint of School Clinical Psychology.
著者
小林 憲弘 小坂 浩司 浅見 真理 中川 慎也 木下 輝昭 高木 総吉 中島 孝江 古川 浩司 中村 弘揮 工藤 清惣 粕谷 智浩 土屋 かおり 寺中 郁夫 若月 紀代子 加登 優樹 小関 栄一郎 井上 智 村上 真一 金田 智 関 桂子 北本 靖子 堀池 秀樹 米久保 淳 清水 尚登 髙原 玲華 齊藤 香織 五十嵐 良明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.223-233, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

水道水中の臭素酸イオン (BrO3-) を既存の告示法よりも高精度かつ迅速・簡便に分析するために, LC/MS/MSによる測定方法を検討し, 臭素酸イオンを高感度に検出でき, さらに水道水中に含まれる他の陰イオンを良好に分離可能な測定条件を確立した。さらに, 本研究で確立した測定条件が全国の水道水に適用できるかどうかを検証するために, 水道事業体等の23機関において水道水に臭素酸イオンを基準値 (0.01 mg L-1) およびその1/10 (0.001 mg L-1) となるように添加した試料を調製し, 各機関で最適化した様々な測定条件で試験を行った。その結果, いずれの機関においても厚生労働省が示している「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の真度, 併行精度および室内精度の目標を満たしたことから, 本分析法は水道水中の臭素酸イオンを基準値の1/10 (0.001 mg L-1) まで高精度に分析可能であると評価した。
著者
中村 怜奈 小橋川 直哉 小坂 浩司 久本 祐資 越後 信哉 浅見 真理 秋葉 道宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_641-III_650, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
23
被引用文献数
2

カルキ臭の主要な原因物質の一つであるトリクロラミンについて,原水中での生成能を評価するとともに,トリクロラミン生成への共存物質の影響について評価した.15原水のトリクロラミン生成能は6~140μg Cl2/Lの範囲であった.一般水質項目との関係について検討したところ,アンモニア態窒素濃度と関連性が認められた.また,アンモニア態窒素濃度が同じ場合,アンモニウム水溶液中のトリクロラミン生成能の方が原水中よりも大きい値であった.アンモニウム水溶液,グリシン水溶液に天然有機物(NOM)が共存した場合,トリクロラミン生成能は低下したことから,NOMにはトリクロラミンの生成を低下させる影響があることがわかった.対象としたNOMのうち,ポニー湖フルボ酸はトリクロラミン前駆物質でもあった.アンモニウム水溶液,グリシン水溶液に臭化物イオンが共存した場合,トリクロラミン生成能は低下した.一方,NOM共存下で臭化物イオンを添加した場合,アンモニウム水溶液ではその影響は認められなかった.グリシン水溶液の場合,50 μg/Lまでは影響しなかったが,200 μg/Lではトリクロラミン生成能が若干低下した.原水に臭化物イオンを添加した場合,トリクロラミン生成能は影響を受けなかった.
著者
坂本 美徳 吉村 陽 小坂 浩 平木 隆年
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.201-208, 2005-09-10
被引用文献数
3

光化学オキシダント(O_x)の原因物質が週日に比べ週末に減少するにもかかわらず, O_xは増加するというweekend effectと呼ばれる現象が米国等で報告されている。1976〜2003年度の大気汚染常時監視データを用いて, 兵庫県におけるweekend effectの有無を検討した。解析した全13測定局でweekend effectは認められ, 全測定期間をとおした全測定局平均の週日と週末の差は, 一酸化窒素(NO), 窒素酸化物(NO_x)及び非メタン炭化水素(NMHC)はそれぞれ-34%, -27%, -16%であるのに対し, O_xは6%であった。weekend effectは地域差があり, 全測定期間をとおしたO_xの週日と週末の差の最大は尼崎市の11%で, 最小は丹波市の1%であった。O_xの週日と週末の差が最大であった1997年度の尼崎市の曜日別の経時変化で, 週日に比べてO_x濃度が高かったのは, 土曜日の午後及び日曜日の終日であった。兵庫県におけるweekend effectの原因として, (1) NO排出量の減少, (2) O_xの生成条件がVOC-limitedの時のNO_x排出量の減少について考察した。
著者
岩永 定 小坂 浩嗣 芝山 明義 柏木 智子 仲田 康一
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

子育て困難な家庭への支援ネットワーク構築の可能性を探るために,児童相談所職員と養護教諭を対象とした質問紙調査を実施した。また,家庭教育支援事業を展開している和歌山県湯浅町教育委員会の担当者に対してインタビュー調査を行った。その結果,児童相談所職員も養護教諭も相互の連携の必要性は感じているものの,現実には連携は不十分であること,連携を阻害する要因が複数存在することを意識した回答内容であった。それらの阻害要因を除去することができれば,連携は進展する可能性も示された。
著者
山下 一夫 末内 佳代 小坂 浩嗣
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.108-118, 2009

The field survey, named as Survey I, was conducted at schools of all three levels as well as specialneeds schools in order to analyze present situations. These studies were carried out to investigate the present situation and issues about the teachers qualified as clinical psychologists who finished the Graduate School of Naruto Univesity of Education.The questionnaire was focused on teachres' works, worries, worthwhile activities among school management and their shifts of minds and benefits after acquiring their qualification as a clinical psychologist. Questionnaires were given to 34 teachers, at schools of all three levels, and special-needs schools and 21 answers were received. (response rate of 62%). The results from the survey were as follows:(1) 76% of the respondents were aged over 40, (2) most of them work as "an educational consultant" (42%) and "a coordinator for special supportive education" (32%), (3) 84% of schools have a guidance or counseling room at their own schools, (4) most of their activities as clinical psychologists are counseling and community psychological supports for schools and their local communities, on the other hand, psychological assessments and research activities were not often conducted as a part of their works, (5) the limitation of their working hours and their positions on the brink between a clinical psychologist and a student's consultant at school are their major concerns, (6) the worthwhile activities in their works were to make their students or their parents change their feelings by their approach, (7) their shifts of minds can be found inthe way of having relationship with students and their parents using clinical psychological approach.
著者
井上 建 小坂 浩隆 岡崎 玲子 飯田 直子 磯部 昌憲 稲田 修士 岡田 あゆみ 岡本 百合 香山 雪彦 河合 啓介 河野 次郎 菊地 裕絵 木村 大 越野 由紀 小林 聡幸 清水 真理子 庄司 保子 髙倉 修 高宮 静男 竹林 淳和 林田 麻衣子 樋口 文宏 細木 瑞穂 水田 桂子 米良 貴嗣 山内 常生 山崎 允宏 和田 良久 北島 翼 大谷 良子 永田 利彦 作田 亮一
出版者
日本摂食障害学会
雑誌
日本摂食障害学会雑誌 (ISSN:24360139)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.3-12, 2023-10-05 (Released:2023-10-05)
参考文献数
19

COVID-19パンデミック下,摂⾷障害患者における社会からの孤立,受診控え,症状の悪化,さらに新規患者の増加などが報告された。そこで我々は,2019,2020,2021年の神経性やせ症(Anorexia Nervosa: AN)および回避/制限性食物摂取障害(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder: ARFID)の新規患者数,入院患者数,性別,年齢層,COVID-19の影響の有無について,国内で摂食障害を専門的に診療している医療機関に対して調査を依頼した。すべての項目に回答のあった28施設の結果について集計・解析した。ANの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は400人,266人,2020年は480人,300人,2021年は610人,309人であった。一方,ARFIDの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は70人,15人,2020年は97人,22人,2021年は112人,17人であった。AN,ARFIDともに2019年と比較して2020年,2021年は新規患者数,入院患者数ともに増加し,これは10代でより顕著であった。さらにANにおいては20代の患者も増加していた。COVID-19 パンデミック下にARFID 患者数の増加が示されたことは重要な知見であると考えた。
著者
小坂 浩隆 田邊 宏樹 守田 知代 岡本 悠子 齋藤 大輔 石飛 信 棟居 俊夫 和田 有司 定藤 規弘
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.255-261, 2012 (Released:2017-02-16)
参考文献数
21

自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核症状である社会性障害の脳基盤を解明するために,青年期の高機能ASD群に対して,共同研究機関とともに行ってきたfMRI研究を一部紹介する。自己顔認知課題においては,ASD群は自己顔認知処理がなされる後部帯状回の機能低下と情動処理に関わる右島の賦活異常を認め,認知と情動的評価に解離がみられた。相互模倣課題においては,自己動作実行と他者動作観察の同一性効果を求め,ASD群は左側の extrastriate body area の賦活が不十分で,症状重症度と逆相関を認めた。アイコンタクト・共同注視課題における2 台 MR同時測定(Dual-fMRI)においては,ASD群は視覚野の賦活低下を認めたほか,定型発達者ペアで認められた意図の共有を示す右下前頭葉活動の同調性が認められなかった。これらの脳領域が,ASD の social brain markerになる可能性があると考えられた。
著者
和田 祐次郎 柴崎 隆一 小坂 浩之 渡部 大輔 伊東 弘人 坪田 建明 荒谷 太郎 泉山 卓 岩佐 竜至
出版者
公益社団法人 日本船舶海洋工学会
雑誌
日本船舶海洋工学会論文集 (ISSN:18803717)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.123-138, 2021 (Released:2022-02-28)
参考文献数
154
被引用文献数
1

By developing Automatic Identification System (AIS), vessel positioning and detailed movement can be understood in real time. Although vessel movement data including AIS have been conventionally utilized in suspicious vessel detection, collision avoidance, and vessel trajectory analysis, etc., this study focuses on the new application fields of vessel movement data including logistics, shipping, shipbuilding, environment, and cruise industry. In this paper, description of AIS data and literature review of each field are first summarized, then the results of the questionnaire survey to the industry and application service of AIS data are analyzed. Finally, the future prospects of research and application to the industry in the fields that the authors focus are summarized.
著者
米田 誠 田中 雅嗣 小坂 浩隆
出版者
福井県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「橋本脳症」は、慢性甲状腺炎に伴う自己免疫性精神神経疾患で、免疫治療が奏効する。橋本脳症の中には幻覚・妄想を呈する患者も多く、統合失調症の中に橋本脳症が潜在する可能性がある。本研究では、①抗NAE抗体を用いて統合失調症と診断されている患者から橋本脳症を抽出し、②その臨床的特徴(臨床情報・症候、脳画像MRI、脳還流SPECT)と背景遺伝子多型(免疫関連)を明らかにし、最終的に③診断指針を作成する。
著者
中村 怜奈 小橋川 直哉 小坂 浩司 久本 祐資 越後 信哉 浅見 真理 秋葉 道宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_641-III_650, 2012
被引用文献数
2

カルキ臭の主要な原因物質の一つであるトリクロラミンについて,原水中での生成能を評価するとともに,トリクロラミン生成への共存物質の影響について評価した.15原水のトリクロラミン生成能は6~140μg Cl<sub>2</sub>/Lの範囲であった.一般水質項目との関係について検討したところ,アンモニア態窒素濃度と関連性が認められた.また,アンモニア態窒素濃度が同じ場合,アンモニウム水溶液中のトリクロラミン生成能の方が原水中よりも大きい値であった.アンモニウム水溶液,グリシン水溶液に天然有機物(NOM)が共存した場合,トリクロラミン生成能は低下したことから,NOMにはトリクロラミンの生成を低下させる影響があることがわかった.対象としたNOMのうち,ポニー湖フルボ酸はトリクロラミン前駆物質でもあった.アンモニウム水溶液,グリシン水溶液に臭化物イオンが共存した場合,トリクロラミン生成能は低下した.一方,NOM共存下で臭化物イオンを添加した場合,アンモニウム水溶液ではその影響は認められなかった.グリシン水溶液の場合,50 μg/Lまでは影響しなかったが,200 μg/Lではトリクロラミン生成能が若干低下した.原水に臭化物イオンを添加した場合,トリクロラミン生成能は影響を受けなかった.
著者
小坂 浩隆 田邊 宏樹 守田 知代 岡本 悠子 齋藤 大輔 石飛 信 棟居 俊夫 和田 有司 定藤 規弘
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.255-261, 2012

自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核症状である社会性障害の脳基盤を解明するために,青年期の高機能ASD群に対して,共同研究機関とともに行ってきたfMRI研究を一部紹介する。自己顔認知課題においては,ASD群は自己顔認知処理がなされる後部帯状回の機能低下と情動処理に関わる右島の賦活異常を認め,認知と情動的評価に解離がみられた。相互模倣課題においては,自己動作実行と他者動作観察の同一性効果を求め,ASD群は左側の extrastriate body area の賦活が不十分で,症状重症度と逆相関を認めた。アイコンタクト・共同注視課題における2 台 MR同時測定(Dual-fMRI)においては,ASD群は視覚野の賦活低下を認めたほか,定型発達者ペアで認められた意図の共有を示す右下前頭葉活動の同調性が認められなかった。これらの脳領域が,ASD の social brain markerになる可能性があると考えられた。
著者
浅見 真理 小坂 浩司 島崎 大 武井 佳奈子
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.189-195, 2014 (Released:2014-09-10)
参考文献数
36
被引用文献数
1 2

塩水電解における次亜塩素酸の生成における塩素酸,過塩素酸の特性を把握するための検討を行った。6種類の異なる電極(主たる成分A:RuO2-TiO2,B:RuO2-IrO2-TiO2,C:IrO2-SnO2,D:IrO2-Pt,E:Pt,F:PbO2)を用いて塩水電解を行ったところ,生成装置の電極の材質により反応時の電位が異なり,次亜塩素酸の生成にともなって生成する塩素酸,過塩素酸の生成量が異なることが分かった。電流値が一定の条件では,端子間電圧が高い電極で電圧が高く,塩素(次亜塩素酸)の生成量が少なく,塩素酸,過塩素酸の生成量が多くなった。特に,白金電極(E)や二酸化鉛電極(F)において,次亜塩素酸あたりの過塩素酸の生成が顕著であった。電解における電位の違いにより,塩素酸,過塩素酸の濃度が高くなるため,次亜塩素酸を生成する工程,工場における電解等でも注意が必要である。