著者
小川 真実 森貞 亜紀子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.398-408, 2002 (Released:2003-01-28)
参考文献数
26
被引用文献数
1

リバビリン(レベトール®)はC型慢性肝炎の治療にインターフェロンα-2b(IFNα-2b)と併用して使用される抗ウイルス薬である.本薬は主にRNAウイルスに対して幅広い抗ウイルス作用を示すことが報告されており,C型肝炎ウイルス(HCV)の代替ウイルスとしてウシウイルス性下痢症ウイルスを用いた感染細胞系において,IFNα-2bと併用することにより増強作用が認められた.本薬の作用機序として,宿主のイノシン一リン酸脱水素酵素の阻害作用,RNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)の阻害作用等が報告されていた.最近,リバビリンがHCVと同じRNAウイルスであるポリオウイルスのRdRpによりRNAに取り込まれ,新生RNAの鋳型となり,突然変異を誘導することが明らかにされた.更に,リバビリンにより誘導される突然変異のわずかな増加により,ウイルスの感染能が激減することが証明された.このRNAウイルスに対する変異原としての作用は本薬の新規機序であり,本薬は新しいクラスの抗ウイルス薬として分類されるものと考えられる.
著者
小川 康雄 馬場 聖至
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

EPS (Earth, Planets and Space) is a peer-reviewed open access journal published on behalf of the following five societies; The Society of Geomagnetism and Earth, Planetary and Space Sciences, The Seismological Society of Japan, The Volcanological Society of Japan, The Geodetic Society of Japan, The Japanese Society for Planetary Sciences. These five societies are all society members of the Japan Geoscience Union.EPS was established in 1998 as a continuation of the two journals, the Journal of Geomagnetism and Geoelectricity (1949 to 1997) and the Journal of Physics of the Earth (1952 to 1997). In 2014 we started open access publication under the SpringerOpen platform. Open Access publication successfully shortened the publication time, increased visibility of the journal and widened its international readership. We publish average of 190 papers per year and half of the authors are from overseas. One of the qualification indices of the journal, impact factor (IF), is continuously increasing from 1.328 (2014) to 2.773 (2017) and it will also go over 2.6 in 2018. The increasing IF is supported both by increase of highly cited papers and by decrease of uncited papers, suggesting the success of quality control by the editorial board and possibly increasing of the visibility via open access.The scope of EPS covers Earth and Planetary Sciences, particularly geomagnetism, aeronomy, space science, seismology, volcanology, geodesy, and planetary science. The EPS share common scopes as well as a common journal platform with PEPS (Progress in Earth and Planetary Science). In contrast to PEPS, which emphasizes review papers, EPS is characterized by the following article types: (1) “Express Letter” which aims at fast publications, (2) “Technical reports“, which describe technical developments for scientific researches and (3) “Frontier Letters” for leading edge researches only with the invitation from the editor in chief. EPS promotes topical article collections (what we call special issues) on the first results of geoscientific events (earthquakes and volcanic eruptions) and scientific missions (satellite missions). EPS has been recently successful in attractive special issues. Aiming at fast and qualified review system, we have expanded editorial board members internationally since 2017. Now we have currently 50 regular editors (including 22 oversea editors). The oversea editors are 10 from Europe, 3 from North America, 5 from Asia, and 3 from Oceania.As part of the promotion of the journal we have four annual awards to recognize authors and reviewers: (1) EPS Excellent paper awards, (2) EPS Young researcher award, (3) Highlighted Paper Awards and (4) Excellent Paper Awards. From 2018, EPS has strengthened ties with JpGU. EPS has started collaborative advertisement activities at major domestic and international academic meetings, like JpGU, AGU, EGU and AOGS. EPS has updated the APC (Article Processing Charge) in September 2018 for sustainable operations of the journal.
著者
三島 怜 小川 恵子 有光 潤介 津田 昌樹
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.29-33, 2017 (Released:2017-07-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1

一般的にがん終末期においては,症状は右肩下がりに悪化し,症状の改善を図ることは非常に困難である。中でも骨転移疼痛のコントロールは難しい。症例は67歳男性,左腎癌右骨盤骨転移にて,緩和的化学療法や疼痛緩和治療が施行されていたが,疼痛コントロールが不十分であった。当初盗汗を主訴に湯液治療を開始し,さらに骨転移疼痛に対する疼痛緩和目的で鍼灸治療の併用を開始した。併用治療により,十分かつ,迅速な疼痛緩和が得られたため報告する。
著者
柳 綾香 小川 賀代
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.237-245, 2011
被引用文献数
1

近年の経済減速に伴う就職状況の悪化や,若年層の離職率増加の問題に対し,就職時のミスマッチの解消が課題とされている.このミスマッチの解消の一つとして,メタ認知や振り返りを通して真正な自己分析を行い,適性を把握することがあげられる.我々がこれまで提案・開発してきたロールモデル(卒業生)との能力値を比較・分析できるRMPシステムにおいて未活用であった文書データ(自己アピール文,エントリーシート)には,主観的意見が含まれており,数値では測れない情報が含まれている.これらの文書情報を活用した適性職種診断,企業マッチング診断機能は,新しい知見を示すことができるため,振り返りの材料となり,ポートフォリオサイクルを活性化することができる.そこで,本研究では,ロールモデルの文書データを解析し,適性職種診断と企業マッチング診断機能の開発と評価を行った.また,これらの機能をRMPシステムへ実装し,自己分析の自律的活動を促すキャリア支援システムの構築を行った.
著者
小川 剛生
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本には250もの年号が存在し、とくに中世は頻繁に年号が改められた。改元は国家の大事であり、武家政権も重大な関心を示してしばしばこれに干渉した。しかし年号制定の手続きや、年号に関する当事者の意識については、これまで十分な整理が行われていなかった、そこで年号の選定に関する文献について、旧公家蔵書を中心として調査を実施し、新たな史料をいくつか見出した。さらに、こうした史料と分析を踏まえて、以下の研究を行った。(1)年号改元文献の書誌調査(2)中世の年号制定手続きと難陳から窺える歴史認識(3)室町幕府将軍の年号制定への介入(4)年号文字の反切と『韻鏡』の受容(5)迎陽記諸本の研究と、史料纂集『迎陽記一』の校刊
著者
外山 勝彦 小川 泰弘 角田 篤泰 松浦 好治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の目的は,法令文作成支援と法令英訳支援のために,法令のターミノロジーおよび翻訳メモリの構築と利用のための手法と環境を確立することである.研究の結果,戦後のすべての日本語法律からなるコーパス(法律10,067本),戦後占領期における文対応付き日英対訳法律コーパス(法律1,624本,日英対訳156,562文)),法令翻訳メモリ(法令259本,日英対訳147,119文)を構築した.また,チャンキングや文書出現頻度を用いて法令用語を抽出する手法,対訳文からの対訳語彙意味カテゴリ自動抽出手法,法令用語とその語義文や法令用語間の関係を抽出する手法などを開発した.
著者
小川 和孝
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.225-244, 2017-07-28 (Released:2019-03-08)
参考文献数
21

本論文では,日本の教育政策に対する人々の選好に関して,公的支出の水準と支出の配分を,それぞれ区別して分析する。これによって,日本の公教育におけるマクロな特徴を支えている,ミクロな意識構造を明らかにする。 2011年に東京都内で行われた質問紙調査をデータとして,(1)税金を増やしてでも教育への公的支出を拡大すべきか,(2)異なる教育段階間ではどこに資源を配分すべきか,(3)同一教育段階内では,エリート的・非エリート的学校のどちらに資源を配分すべきか,という3つの次元を従属変数とする。独立変数としては,人々の持つ利害と,平等性規範が影響するという仮説を立てる。具体的には,性別,年齢,学歴,世帯年収,政党支持,高校生以下の子どもの有無,就業の有無を用いる。 第一に,公的支出の水準に関しては,学歴や世帯収入による選好の違いは見られず,政党支持と高校以下の子どもの有無が影響している。第二に,異なる教育段階間における支出では,高学歴者は低次の教育段階への配分を望み,また左派的な人々は高次の教育段階への配分を望む傾向にある。第三に,同一教育段階内における支出では,高学歴者や富裕な人々はエリート的な教育機関への配分を,また左派的な人々は非エリート的な教育機関への配分を,それぞれ支持している。これらの理論的な示唆として,高等教育への公的支出に伴う逆進性と,意識の次元に見られる社会的な閉鎖性について考察する。
著者
小川原 正道
出版者
慶應義塾福澤研究センター
雑誌
近代日本研究 (ISSN:09114181)
巻号頁・発行日
no.21, pp.241-276, 2004

柏田盛文の名は、自由党幹事、鹿児島選出の衆議院議員、あるいは教科書疑獄事件で逮捕された新潟県知事、などとして記憶されている。彼については、『自由党史』や鹿児島の政党研究関係の諸文献をはじめ、人名辞典においても、『日本現今人名辞典』(日本現今人名辞典発行所、明治三十三年)から、『明治過去帳新訂』(東京美術、昭和四十六年)、『幕末維新人名事典』(新人物往来社、平成六年〉に至るまで多数紹介されており、その名は、自由党員の中でも比較的著名の位置にある。しかしながらこれまで、柏田についてのまとまった伝記や小伝はなく、川内郷土史編さん委員会編『川内市史』下巻(川内市発行、昭和五十五年)、野村英一「三田の政治家たち」(『塾友』昭和六十三年十月号)、森田美比『茨城県政と歴代知事』(暁印書館、平成三年)などに、ややまとまった経歴の記述がみられるにすぎない。筆者自身も前稿(「自由民権運動と西南戦争」『法学研究』七十七巻四号、平成十六年四月) において、主に西南戦争前後の柏田について論じたが、その人生全体については十分に論じられなかった。彼が自由党の幹部、鹿児島県会議長を経て、衆議院議員や文部次官、さらに各県知事を歴任したことを考えるとき、また近年、これまで研究の遅れが指摘されてきた鹿児島の民権運動研究が、出原政雄氏などによってようやく進展しつつあることに鑑みるとき、柏田の生涯について明らかにすることは、民権運動史上有意義なことだと考えられる。そこで本稿では、右の研究成果をふまえつつ、明治十年に柏田自身が記した「始末書」(「鹿児島征討始末二」国立公文書館蔵、所収)、大久保利夫『衆議院議員候補者列伝』(六法館、明治二十三年)、および衆議院の議事録や新聞各紙などを用いながら、柏田の出生から書生時代、西南戦争、そして国会開設運動を経て自由党幹事となり、やがて衆議院議員から県知事となるまでの思想および行動を論じ、もって自由党幹事柏田盛文の小伝としたい。未熟な一論に過ぎないが、大方の御叱正を仰げれば幸いである。
著者
池田 志斈 真鍋 求 小川 秀興 稲葉 裕
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, 1990

全国アンケート調査から得られた単純型およおび劣性栄養障害型表皮水疱症患者の身長・体重の値を統計学的に処理し,全国平均の値と比較した.その結果,1)単純型では女性の身長が全国平均値より有意(1%以下の危険率)に低い.しかし女性の体重,男性の身長・体重には有意の差を認めない.2)劣性栄養障害型では,男女とも身長・体重が全国平均値より有意(1%以下の危険率)に低い,などが示された.本疾患々者の成長発育状態及び栄養状態を把握し,十分な栄養を補給を行うことがなされるならば,本疾患々者の予後が比較的良好となることが期待できるものと思われる.
著者
山口 智史 西田 明日香 小川 佐代子 東郷 史治 佐々木 司
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.45-53, 2018-10-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
36

精神疾患の発症は思春期に急増する。精神不調を抱える若者は援助を求めにくく,周りの大人がそれに気づき適切に援助する必要がある。若者は多くの時間を学校で過ごすため,教員はこの役割を担うのに適した立場にある。本研究は,教員が生徒の精神不調,特に不安・抑うつ症状に気づく力をどれ位有するかを明らかにすることを目的に,生徒の不安・抑うつ症状についての生徒本人と教員による報告の一致率を調べた研究の系統的レビューを行った。PubMed, ERIC, CINAHL, PsycInfo, Web of Science, CiNii, 医中誌で検索しヒットした13,442件のうち,上記一致率を調べた8件の論文を検討した。教員は抑うつ症状のある生徒の38~75%に気づいたのに対し,不安症状のある生徒への気づきは19%と41%であった。教員研修では不安症状についてもきちんと教育する必要があると考えられる。
著者
山本 由弦 大田 恭史綜 小川 勇二郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.XVII-XVIII, 1998 (Released:2010-12-14)
参考文献数
4
被引用文献数
2 3

デュープレックス構造は, サイスミックプロファイルなどに表れることもあるが, 露頭観察やマッピングによって, 陸上でも認められる構造である. その基本形態は, 衝上断層によるものの場合はroof thrustとfloor thrustに挟まれた領域で, ある特定の地層がそれに対して低角な衝上断層によって繰り返して覆瓦状構造を形成するものである. またデュープレックス構造は, 付加体の比較的深部での底づけ作用によって形成されると考えられ, 付加体の指標になりうる構造として考えられている. これまで日本では, 露頭サイズのデュープレックス構造の報告例は, Hanamura and Ogawa(1993), Ogawa and Taniguchi(1996), Ujiie (1997)などを除いてほとんどなかったが, 筆者らは三浦半島南端部の三浦市海外町から浜諸磯にかけての海岸沿いの三浦層群下部の三崎層(中新統上部~鮮新統下部)からいくつかの典型例を見いだした. それらのうちのいくつかは, Hanamura and Ogawa(1993)によって報告されている. これらのデュープレックス構造は, ゆるく北方へ傾斜する特定の層準(厚さ約数10cm)内部に限られて発達する. 今回, この地域におけるデュープレックス構造の形態的多様性, フェルゲンツなどが明らかになった. 3次元的な露頭観察により, この地域のデュープレックス構造は, 1か所を除いて, すべて南南東~南東フェルゲンツであることがわかった. Kanamatsu(1995)による古地磁気学的研究によると, この地域の三浦層群は時計回りに約20度回転しているので, もともとのフェルゲンツは南東ないし東南東であったと考えられる. これは, デュープレックス構造形成時の, フィリピン海プレートの沈み込みの向きに制約を与えるものとして, この地域のテクトニクス解明に非常に有用なものとなろう.
著者
小川 将司
出版者
Hokkaido University(北海道大学)
巻号頁・発行日
2015-03-25

Recently, inverters which are the key technology component in power electronics are widely used in many fields for energy saving. The switching speed of next-generation switching devices is expected to improve to 10-fold that of conventional Si IGBTs by using wide band gap semiconductors, which are SiC and GaN. These devices can improve PWM inverter carrier frequency which is difficult to operate conventional inverters. High-frequency PWM inverter can output high response waveform and be downsized. However, High-frequency PWM inverters will increase output voltage distortion and EMI(electromagnetic interference). Major reasons of these problems are dead-time and common-mode voltage. Dead-time is essential for inverters to prevent a short circuit induced by delaying the time of devices. Dead-time generates output voltage error which is proportional to the carriar frequency. Common-mode current, which caused by common-mode voltage, flows through the loop consisting of main circuit, ground-line and power source. Therefore, common-mode current injects into other devices connecting to same power source and causes conducted EMI. Furthermore, the high-frequency common-mode current flowing in the main circuit may cause radiated EMI. To solve above problems, this paper describes the following topics using 100 kHz PWM inverter. 1. A novel feedback-type dead-time compensation method with high-speed and high-response is proposed. The basic operation of proposed method is matching the pulse width of the output signal to that of input signal. If the short pulses, which are shorter than minimum output pulse of PWM inverter, are input, proposed method generates an output pulse after a few input pulses so that the average voltage of output signal equal to the input signal. Therefore, proposed method has no compensation limit theoretically. Experimental result using PWM signal shows that proposed method has low voltage distortion and high-voltage utilization factor characteristics. 2. To cancel the common-mode voltage which causes common-mode noise, active common-noise canceler(ACC) is applied to 100 kHz PWM inverter. An ACC for 100 kHz PWM inverter is designed and constructed for compare with an ACC for 10 kHz PWM inverter. Although the weight of a part of the ACC for 100 kHz PWM inverter is 16% of that of the ACC for 10 kHz PWM inverter, the prototype ACC cancels the common-mode voltage equivalent to the ACC for 10 kHz PWM inverter. A new circuit configuration of the ACC for 100 kHz SVPWM inverter is proposed. A new circuit configuration has small size because it operates without another power supply and large parts. Combination of above 2 methods, high-frequency PWM inverter reducing distortion and noise will be developed.
著者
小川 晋史
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.99-111, 2011-10-01 (Released:2017-07-28)

琉球(諸)語には、一般に受け入れられていて規格の定まった表記法と言えるものは存在せず、方言によって、あるいは一つの方言の中でも様々な表記が提案されたり、個人によって書き方が違ったりしている。これは、現代において危機言語が生き残っていく上で不利な状況である。本稿では、琉球語がこのような状況になった歴史的背景を概観するとともに、表記の現状に関して具体的な問題点を複数とりあげる。その上で、それらの背後に存在するより大きな問題について考える。具体的には、方言の多様性に起因する問題と、言語研究者に起因する問題について考える。その後で、筆者が考えるこれからの琉球語に必要な表記法のかたちについて述べる。本稿全体を通じて、琉球語の表記を整えることは研究者にしかできないことであり、研究者が協力して取り組むべき課題であるということを論じる。
著者
湯田 厚司 小川 由起子 鈴木 祐輔 有方 雅彦 神前 英明 清水 猛史 太田 伸男
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.44-51, 2017-01-20 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
4

舌下免疫の最初の数年間の効果は治療年数により高まるとされる. スギ花粉舌下免疫の同一患者での症状を, ともに中等度飛散であった2015年 (花粉総数2,509個/cm2) と2016年 (同3,505個/cm2) の2年間で検討した. 【方法】発売初年に開始した舌下免疫132例 (41.8±17.5歳, 男女比75: 57) と対照に初期療法56例 (44.9±13.5歳, 同25: 31) を選択した. 2015年と2016年の両方のスギ花粉飛散ピーク時に, 1) 症状スコアと症状薬物スコア, 2) Visual analog scale, 3) 日本アレルギー性鼻炎標準 QOL 調査票 (JRQLQ No1) で調査した. 主目的に舌下免疫療法2年目に効果が増強するか, 副次目的に舌下免疫と初期療法の比較とした. 【結果】推定周辺平均ですべてに治療方法と年度に交互作用はなく, くしゃみ, 鼻汁, 鼻閉, 眼のかゆみなどの眼鼻症状において, 初期療法には2年での差はなく, 舌下免疫療法の多くで2年目は1年目より有意に良かった. 全般症状の項目も同様であった. QOL (quality of life) は, 舌下免疫の17項目中2項目のみで有意に2年目が良かった. また, ほとんどの項目で舌下免疫は初期療法より有意に効果的であった. 【結論】初期療法を対照にした中等度飛散の2年の比較で, 舌下免疫の治療効果は治療1年目より2年目で高まっていたと考えられる.

3 0 0 0 OA 底の社会へ

著者
小川未明 著
出版者
岡村書店
巻号頁・発行日
1914
著者
竜田 庸平 福本 礼 橋本 俊顕 岩本 浩二 宮内 良浩 小川 哲史 藤元 麻衣子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P3012-A4P3012, 2010

【目的】<BR> 広汎性発達障害の原因説にはミラーニューロン(以下MN)障害説があり,MNは模倣と運動学習に関連している.今回,MNの存在する44野付近の運動模倣中の賦活状態を計測することを目的に光トポグラフィー(以下NIRS)を用いて測定し,広汎性発達障害児と健常児との間に差があるか検証したので報告する.<BR>【方法】<BR> 広汎性発達障害児群は20名(11.7±3.53歳) 障害別内訳(高機能自閉症10名・アスペルガー症候群10名)男児19名,女児1名であった.健常児群は,健常児10名(12.3±2.95歳),男児8名,女児2名であった.なお,対象は全員右利きであった.NIRSの測定は近赤外光イメージング装置OMM-3000シリーズ;島津製作所を使用した.測定は,Czより11cm側方3cm前方の44野付近を測定した.NIRSのプローペパッドを2枚用意し両側に貼り付けた. 課題には田中の改訂版随意運動発達検査を用いた. 30秒×3を1セット,合計2セット行った.1番目,3番目の30秒は休憩,2つ目の30秒は課題を行った.課題は健常成人の右手のb-4,b-5,b-6を動画撮影し,PC画面に呈示した.対象には動画上の運動を模倣してもらった.分析方法として,ビデオによる行動分析と,ピーク振幅を求めU検定を行った.加えて, 44野付近の平均加算を2群それぞれグラフ化し,目視にて分析を行った. <BR>【説明と同意】<BR> 対象者には十分に説明を行い,同意を得た後測定した.なお,本研究は当校倫理委員会の承認を得た.<BR>【結果】<BR> 広汎性発達障害児群には何らかの異常な模倣行動が認められ,健常児群には認められなかった. 異常な模倣行動の内訳として,課題施行中の集中力低下8例・鏡像模倣1例・左右逆模倣4例・鏡像模倣だが鏡になっていない模倣5例・動画と非同調な模倣13例であった.U検定の結果,課題の1セット目では,24個中10個のチャンネル(以下CH)で,2セット目では24個中8個のCHで広汎性発達障害児群が健常児に比べ有意に低かった. 中でも,健常児群と比較して広汎性発達障害児群は44野付近の12CHと23CHが1セット目2セット目にわたり,有意に低下していた. 44野付近の平均加算の結果,健常児群と比較して広汎性発達障害児群は,平坦なグラフとなり,44野付近の活動が確認できなかった.健常児群では課題施行中にoxy-Hbが上昇するグラフとなり,44野付近の活動が確認できた.<BR>【考察】<BR> 模倣は6歳前半に完成するとされている.模倣には身体図式が関係しているため,広汎性発達障害児群も身体図式に障害があったのではと考える.人が身体図式を利用するにはMNが関係し,広汎性発達障害児の場合,MNに障害があるために身体図式を用いたdirect matchingがうまく機能していないことが考えられた.実際に広汎性発達障害児群は,44野付近のCHで有意差が見られ,平均加算データも,健常児群と比較して平坦になっていた.このことはdirect matchingの機能をうまくコントロールできていない状態をリアルタイムに採取できたと考える.運動学習は3段階に分けられ,このなかでも初期の認知段階では教示・示唆・運動見本の提示が重要となる.この初期の認知段階には模倣を必要とし,模倣を行うことによって運動学習の見本を自己にインプットする.Meltzoff(1989)によると模倣行動は新生児より出現するとの報告があり,新生児の時期からの模倣行動の重要性が伺える.しかし,これら模倣に関連した44野を含むMNシステムに障害があるとされる広汎性発達障害児において,運動学習には不利な状況であることが今回の研究により考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 模倣とコミュニケーション能力,模倣とMNの研究,模倣と身体図式等,いろいろな方面から模倣に対する研究が盛んに行われており,模倣を理解することは,運動学習を教示する立場である私たちにとって有益なものになると考える.