著者
今泉 敦美 小川 亞子 鄭 飛 田熊 公陽 阪元 甲子郎 松崎 航平 丸田 健介 矢野 佑菜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】長時間の精神作業や精神的ストレス負荷は,眠気の誘発と共に意欲・集中力の低下をもたらす。また,尾上ら(2004)は脳が疲労することにより前頭前野の血流低下がみられることを報告している。脳の疲労回復に効果的なものとしてアロマセラピー,ガムを噛むなどが挙げられているがそれらの効果を比較した文献は見当たらない。本研究の目的は,閉眼安静・ガム・アロマセラピーの3つの項目のうち短時間で脳の疲労を改善する手段を比較検討することである。【方法】対象は健常若年成人9名(男性3名,女性6名,平均年齢22.3±1.4歳)。脳表の血流変化は,光トポグラフィETG4000(株式会社日立メディコ製)を用い,国際10-20法に準じて脳疲労関連部位である前頭前野に3×3のプローブを設置した。今回,脳の疲労回復方法として3つの方法(閉眼安静,アロマセラピー,ガムを噛む)を用い,また脳を疲労状態にさせるため2桁の100マス計算を施行した。方法は1.10秒間安静,60秒間100マス計算を30秒の休憩をはさみ2回施行。その間NIRSによる脳血流量の測定を行う。2.30秒間安静後被験者は3つの方法をそれぞれ5分間実施。(1)安静:光を遮断した室内で閉眼し,5分間の安静をとる。(2)アロマセラピー:香りは精油(レモングラス)を匂い紙に浸したものを被験者より約3cmの距離で吸入させる。(3)ガム(ミディアムタイプ):メトロノームを用いて毎分60回の頻度で5分間咀嚼する。3.その後1分間安静をとり,その間にNIRSによる脳血流量の測定を再度行う。統計学的解析は,SPSS(Ver.21)を用いて多重比較検定を行った。なお,有意水準は5%未満とした。【結果】3つの課題において,閉眼安静がアロマセラピーとガムに比べて左右の背側前頭前野のoxy-Hb量が最も増加した。安静の次にoxy-Hb量の増加がみられたのはガムであり右側背側前頭前野において増加がみられた。また,アロマセラピーは他項目に比べ増加率は少なかったが,左側上部前頭前野のoxy-Hb量の増加が見られた。【結論】本研究では,3つの課題が大脳皮質前頭前野の脳血流に与える影響についてNIRSを用いて脳血流量の変化を比較・検討した。閉眼安静時に最も脳血流の増加がみられた。理由として,高橋ら(2003)は,入眠前になると,副交感神経が活発になり血管が拡張すると報告している。このことから,5分間の閉眼安静による視覚遮断,室内を暗くすることにより睡眠に近い状況に持っていくことで,副交感神経が活発になり心身・身体ともにリラックスできたことで脳血流量増加に至ったのではないかと推測される。また石黒ら(2013)は,測定部位である前頭前野は運動学習の課題遂行性の改善に重要な役割を果たしていると報告している。今後の課題として,臨床において閉眼安静が運動学習効率化に活かせるのかを検討していきたい。
著者
小川 誠司 明石 真言 鈴木 元 前川 和彦 牧 和宏
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

高線量の中性子線被爆がヒトの染色体および遺伝子におよぼす影響について、1999年9月30日茨城県東海村核燃料施設で発生した臨界事故において、中性子線を大量に含む放射線被爆を受けた患者2名を対象として以下の検討を行った。生物学的および物理学的な予測被爆線量は18Gy(Pt1)および8Gy(Pt2)であった。被爆後の末梢血および骨髄血の染色体分析においては、両名ともに著しい染色体の断片化と構造異常が観察された。被爆後両患者ともに造血幹細胞移植が施行され、一名については持続的な造血系が再構築された(Pt1)が、もう一名に関しては一時的に混合キメラの状態になったがもののDayに自己造血が回復し、移植片の拒絶が確認された。興味深いことに、理論的には二次被爆の影響は殆ど無視出来ると考えられる時期に移植が行われたにも関わらず、Pt1においては再構築された造血細胞においても染色体のランダムな異常が20分裂細胞中3細胞に観察され、大量の中性子線被爆後においては、直接的な放射線障害以外に染色体を障害する、細胞を隔てて作用するメカニズムが存在する可能性が示唆された。こ自己の造血が回復したPt2においては、染色体分析において、分裂細胞の60%ないし80%の細胞に細胞ごとに異なるランダムな染色体の異常が観察され、放射線被爆による染色体の異常が自己造血の回復ののちも再生した造血組織に維持されることが明らかとなった。しかし、これらの異常が最終的に造血器腫瘍を誘発するか否かについては、患者が被爆後早期に多臓器不全により死亡したため、検討不能であった。一方、剖検後に患者の遺族の同意を得て検討された被爆組織の遺伝子の突然変異をras遺伝子、p53遺伝子およびp16INK4A遺伝子について検討したが、これらの遺伝子における突然変異率の上昇は証明されなかった。
著者
成嶋 理恵 笛吹 達史 小川 孝 嶋崎 智章
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.630-633, 2010-08-20 (Released:2016-09-07)
参考文献数
8
被引用文献数
5 5

猫内在性レトロウイルス(RD114ウイルス)はすべての猫の体細胞と生殖細胞内に内在化していることから,猫由来培養細胞を用いて製造される猫用混合生ワクチンに混入することが懸念される. 最近,Miyazawaらはいくつかの猫用弱毒生ワクチンにRD114ウイルスが混入していることを報告した[Journal of Virology]. そこで,国内既承認ワクチンにおけるその混入状況をLacZ マーカーレスキュー法によって調査した結果,供試ワクチン(4製剤,計30製品)の30%から感染性RD114ウイルスが検出された. 今回の報告はわれわれがワクチン中に感染性RD114ウイルスが存在することを実証したものである. これまでRD114ウイルスの猫に対する病原性およびRD114ウイルスの混入する当該ワクチンの接種による副作用については,いまだ明確ではない. また,同一のワクチンが製造販売されている欧米においても特段の規制措置は講じられていないことから,われわれは,現段階ではこれらのワクチンに対して緊急的な措置を講じる必要はないと結論付け,今後とも有用情報収集に努めることとした.
著者
榎原 雅治 本郷 恵子 末柄 豊 伴瀬 明美 前川 祐一郎 高橋 典幸 井上 聡 須田 牧子 遠藤 珠紀 小川 剛生 高橋 一樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

室町時代は日本の伝統文化の形成された時代であるといわれている。本研究では、さまざまな理由によってこれまで全体像が把握されていなかったこの時代の公家や僧侶の日記を解読し、出版やデータベースの作成によって、その全文紹介を進めた。また日記に登場する人物について研究し、室町文化の形成を考える上で不可欠な人物データベースを作成した。
著者
高橋 原 鈴木 岩弓 木村 敏明 堀江 宗正 相澤 出 谷山 洋三 小川 有閑
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

東日本大震災の被災地において、大量死に直面し悲嘆を抱える人々は様々な形で死者の霊の表象と向き合っており、それが「心霊体験」として表現されたときに、宗教者は地域文化や各宗派の伝統を参照しながら臨機応変に対応していることが明らかになった。本研究ではその対応の特徴として、 (1)受容と傾聴、(2)儀礼の提供、(3) 倫理的教育、(4)自己解決(自然治癒)の了解、という諸点を指摘したが、これは、さまざまな支援者が存在する中で、宗教者が担い得る「心のケア」の特質を考える時に貴重な示唆を与えるものである。
著者
島谷 二郎 Palinko Oskar 吉川 雄一郎 陣内 寛大 小川 浩平 石黒 浩
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.369-380, 2020-11-25 (Released:2020-11-25)
参考文献数
24

During classroom-type lectures, some students feel difficulty in asking questions, although it is considered to improve the lecture quality and students’ understanding. We propose a system called Robot-Assisted Questioning System (RAQS) that can promote teacher-student communication in the lecture. It allows students to post questions and opinions on an online messaging interface. The messages were sent to a robot to be posed to the teacher, with or without the voting procedure. In this paper, we report a case study of the field experiment in a lecture which was assisted by RAQS. Students found RAQS efficient and useful for improving their communication with the teacher. For the practical use, the results suggest a future improvement of the system to add the function for controlling the number of robot utterance to avoid interference with the teaching process.
著者
小川 英晃 牧野 州明 石橋 隆 中野 聰志
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会2008年年会
巻号頁・発行日
pp.108, 2008 (Released:2009-04-07)

苗木花崗岩ペグマタイトに産出する玉滴石は紫外線照射下で緑色蛍光を発することがある.本研究ではこの蛍光原因・蛍光特性を明らかにするために,産地の異なる3種の玉滴石についてWDX,FT-IR,蛍光測定を行った.ひとつは苗木産の玉滴石,ひとつは滋賀産の玉滴石,最後のひとつは佐賀産の玉滴石である. 化学組成分析によると苗木産の玉滴石はUを含むのに対して,滋賀産及び佐賀産の玉滴石はUを含まず,蛍光も発しない.また,苗木産玉滴石の薄片試料における蛍光分布写真とU分布はよく一致している.そして蛍光強度とU含有量も整合性が認められる. 苗木産玉滴石の蛍光強度は400℃以上で加熱することにより小さくなる.そして,加熱温度が高くなるにつれて蛍光強度は小さくなる傾向が認められる.これは玉滴石中の水が蛍光に影響を及ぼしていることを意味する. 以上のことから苗木産玉滴石の蛍光にはU,H2OまたはOHの両者が原因だと推定できる.
著者
中澤 愛子 京 哲 中西 一吉 小川 晴幾 笹川 寿之 清水 廣 田中 善章 井上 正樹 上田 外幸 谷澤 修
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.467-472, 1991 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15

子宮頸部におけるHuman Papillomavirus 16型, 18型の感染を子宮頸部擦過細胞から得たDNAを用いてPolymerase Chain Reaction (PCR) 法により検出した.さらにHPV感染と組織診, 細胞診との関係を比較検討した.Dot blot法と比較してPCR法は検出感度に優れていた.PCR法にてHPV16型または18型を検出した症例数は, 正常69例中11例, 頸部コンジローマ3例中0例, CIN 67例中17例, 浸潤癌30例中11例であった.Koilocyte, binucleated cell, dyskeratocyteなどのHPV感染細胞所見を検討できた59例中, PCR法にてHPV 16型または18型が陽性となったのは19例, 陰性であったのは40例であった.HPV 16型または18型陽性の19例中, koilocyteは5例 (26%), binucleated cellは4例 (21%), dyskeratocyteは11例 (58%) で, HPV陰性例40例中では, それぞれ1例 (3%), 10例 (25%), 15例 (38%) に認めた.しかし, いずれの所見も特異的でなく, 細胞診のみではHPV感染を検出するのは困難であると思われた.また, 細胞診, 組織診にて正常の症例中, 約16%にHPV DNAを認め, これらの症例の今後のfollow upが重要であると思われた.
著者
小川 滋之 沖津 進
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.74-84, 2011-01-01 (Released:2015-01-16)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

日本列島のヤエガワカンバ林は本州中部と北海道の一部に分布するが,分布を規定する要因には未解明な点が多い.本研究では,埼玉県外秩父山地において地すべり地の微地形と表層土壌に着目してヤエガワカンバ林の分布要因を検討した.ヤエガワカンバは,地すべりにより形成された緩斜面に多く,この中でも礫質土となる区域に集中して分布していた.礫質土区域は,数十年周期で発生する地すべりに由来する土砂礫が堆積した区域であり,外秩父山地で主要優占種となるコナラやミズナラの侵入が少なく抑えられている.地すべり地におけるヤエガワカンバの分布は,地すべりで緩斜面が形成されることにより,種子や実生が流失することなく定着しやすいことや,数十年周期で発生する地すべりにより開放地が形成されることが要因として考えられる.ヤエガワカンバは,この開放地にいち早く侵入して生長速度の速さから林分を形成していると結論付けた.
著者
力石 嘉人 高野 淑識 小川 奈々子 佐々木 瑶子 土屋 正史 大河内 直彦
出版者
日本有機地球化学会
雑誌
Researches in Organic Geochemistry (ISSN:13449915)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.3-11, 2011-09-30 (Released:2017-04-13)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Recent evidences have suggested that compound-specific stable isotope analysis (CSIA) of amino acids has been employed as a new powerful method with that enables the estimation of trophic level of organisms in not only aquatic but also terrestrial food webs. This CSIA approach is based on contrasting the 15N-enrichment with each trophic level between two common amino acids: glutamic acid shows significant enrichment of +8.0‰ with each trophic level, whereas phenylalanine shows little enrichment of +0.4‰. These 15N-enrichments are well consistent in both aquatic and terrestrial organisms. The trophic level of organisms can be estimated within a small error as 1σ=0.12 for aquatic and 0.17 for terrestrial food webs, employing the eq.: [Trophic level]=(δ15Nglutamic acid-δ15Nphenylalanine+β)/7.6+1, where β represents the isotopic difference between these two amino acids in primary producers (-3.4‰ for aquatic cyanobacteria and algae, +8.4‰ for terrestrial C3 higher plants, and -0.4‰ for terrestrial C4 higher plants). Here, we briefly review this new method (i.e. CSIA of amino acids) and its application to natural organisms in terrestrial environments.
著者
下畑 享良 久保 真人 饗場 郁子 服部 信孝 吉田 一人 海野 佳子 横山 和正 小川 崇 加世田 ゆみ子 小池 亮子 清水 優子 坪井 義夫 道勇 学 三澤 園子 宮地 隆史 戸田 達史 武田 篤 日本神経学会キャリア形成促進委員会
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001533, (Released:2021-01-26)
参考文献数
24
被引用文献数
1

医師のバーンアウトに関連する要因を明らかにし,今後の対策に活かすため,2019年10月,日本神経学会はバーンアウトに関するアンケートを脳神経内科医に対して行った.学会員8,402名の15.0%にあたる1,261名から回答を得た.日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均は,情緒的消耗感2.86/5点,脱人格化2.21/5点,個人的達成感の低下3.17/5点であった.また本邦の脳神経内科医のバーンアウトは,労働時間や患者数といった労働負荷ではなく,自身の仕事を有意義と感じられないことやケアと直接関係のない作業などと強く関連していた.これらを改善する対策を,個人,病院,学会,国家レベルで行う必要がある.
著者
小川 剛伸 安達 修二
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.91-107, 2012-12-15 (Released:2015-06-18)
被引用文献数
1 1

Microsoft Excel® is most popularly used spreadsheet software. Although figures can be drawn using the software, their quality seems to be unsatisfactory for the use in scientific papers or reports. The quality can be improved using Microsoft PowerPoint®, which is also software in Microsoft Office® and is widely used as a presentation tool. A rough figure is prepared based on the data in the Excel, and it is modified to fine one using the PowerPoint. It will be explained how to draw fine figures using both the software.
著者
小川国治編
出版者
山川出版社
巻号頁・発行日
2012