著者
田中 秀数 小野 俊雄 栗田 伸之 佐藤 卓
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

我々はフラストレーションの強いスピン系での顕著な量子効果を調べた。まず,我々はBa3CoSb2O9の磁化過程を測定し,全磁場領域で磁化曲線が理論と一致することより,この物質が理想に近いスピン1/2三角格子反強磁性体であることを示した。続いて,スピン1/2籠目格子反強磁性体Cs2Cu3SnF12の磁気励起を中性子非弾性散乱で測定し,励起エネルギーが通常とは逆に,スピン波理論で求めた値よりも大きく減少する負の量子再規格化現象を発見した。更に,新規ダイマー磁性体Ba2CoSi2O6Cl2を合成し,その強磁場磁化過程を測定することより,磁場中でマグノン結晶ができることを見出した。
著者
小野田 慶一 岡本 泰昌 国里 愛彦 岡田 剛 山脇 成人
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
脳と精神の医学 (ISSN:09157328)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.249-254, 2009-09-25 (Released:2010-10-05)
参考文献数
21
被引用文献数
1

近年,抑うつと衝動性の関係性が指摘されている。我々は抑うつ傾向と,遅延報酬選択課題における衝動性の関連を検討した。衝動性の変数として,遅延報酬選択課題における行動データを指数関数及び双曲線モデルにフィットさせて算出した割引率を用いた。抑うつ傾向は,指数関数モデルの割引率と負の相関を示した。この結果は,抑うつが強い個人ほど遅延報酬に対する割引が強く,衝動性が高いことを示唆している。
著者
小口 和代 才藤 栄一 馬場 尊 楠戸 正子 田中 ともみ 小野木 啓子
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.383-388, 2000-06-18
参考文献数
10
被引用文献数
36

131名の機能的嚥下障害患者の「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)と嚥下ビデオレントゲン造影(videofluorography : VF)所見を比較し,RSSTの妥当性を検討した.RSSTはVF所見と相関が高く,カットオフ値として3回/30秒間が妥当であると思われた.誤嚥の有無の判別に関する感度と特異度は,0.98,0.66と,感度が非常に高かった.摂食・嚥下障害の診断・評価としては,まずRSSTでスクリーニングを行い,3回/30秒間未満の場合はさらに詳細な病歴,身体所見をとり,必要と判断されればVFを行い,治療方針を決定するのが適当である.
著者
小野 文孝
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.616-621, 2001-05-20 (Released:2011-03-14)
参考文献数
8
被引用文献数
1

ISOとITU-Tに共通の新たな2値画像符号化標準JBIG2が誕生した.新標準は, パターンマッチング技術の利用により, テキスト画像のビジュアリロスレス圧縮で従来標準の数倍の圧縮性能を有し, ロスレス圧縮やハーフトーン画像圧縮でも従来標準を大きく凌駕する.本稿では2値画像符号化の歴史にもふれつつ, JBIG, JBIG2の最新動向を紹介する.
著者
高田 智和 石塚 晴通 小野 芳彦 豊島 正之 赤尾 栄慶 池田 証壽 大槻 信 小助川 貞次 白井 純 當山 日出夫 横山 詔一
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

奈良時代から現代までの日本の漢字(日本の筆写漢字に多大な影響を与えた唐から宋時代の中国漢字も含む)について、公的性格・規範性の高い文献での用例整理と、私的性格の強い文献での用例整理に基づき、歴史的変遷・共時的異化の二面からなる資料体を作成した。また、この資料体の作成により、漢字字体の基礎概念を明確化し、字体編年基準の透明化を行い、その知見を『漢字字体史研究』(石塚晴通編、勉誠出版、2012年)として公刊した。
著者
小野沢 あかね
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1 戦時戦後の廃娼運動・売春反対運動・売買春の実態に関して、以下の史料収集・調査・執筆準備を行なった。(1)戦時売春問題・廃娼運動に関して、昨年に引き続き群馬県立図書館などで史料収集を行なうと同時に、『廓清』『婦人新報』などの戦前雑誌から関係史料を抽出・入力し、論文執筆の準備を行なった。戦時労働力動員を背景とした売買春の実態と戦後への連続性、新体制下の遊興取締の実態、廃娼運動の担い手と方面委員制度・社会福祉・国民精神総動員運動・大政翼賛会・優生学との関係、戦時における廃娼の主張の地域社会への拡大の回路などに関して新たな知見を獲得しつつあり、論文の構想を深めている。(2)戦後の沖縄県における売買春の実態に関して、バーの元経営者、元ホステスなどからの聞き取り調査を行なうと同時に、新聞史料調査を行なった。2 戦間期の廃娼運動・公娼制度政策に関して、以下の論文を執筆、学術雑誌に掲載した。「公娼制度廃止問題の歴史的位置-戦間期日本における勤倹貯蓄と女たち-」『歴史学研究特集 性と権力関係の歴史(I)』764号、2002年7月、2〜12頁。3 「女性史研究の運動と方法-1950〜60年代の可能性(仮)」というタイトルの論文執筆をすすめている。本稿は『展望日本歴史1 歴史学の現在と未来』東京堂出版(近刊予定)に執筆依頼されたものだが、近年の女性学研究が完全に見落としている1950〜60年代における日本の女性史研究の問題意識とその可能性を論じたものである。
著者
小野 由莉花 及川 昌典 及川 晴
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.19042, (Released:2021-03-31)
参考文献数
65

In modern society, gender equality is respected. However, the entanglement of gender relations remains a problem. In this study, we investigated the possibility that activation of thoughts about romantic love increases the salience of stereotypical gender role expectations, outside of consciousness, which causes a gender difference in the interpretation of ambiguous messages. In Study 1, in which participants carefully analyzed the scenario via conscious processing, and in Study 2, in which participants spontaneously responded to real-life situations via nonconscious processing, male participants in the romantic love priming conditions, compared to male participants in the control conditions, were more likely to respond to ambiguous messages with more positive emotions, and evaluated the message sender as being more attractive. However, such bias was not observed among female participants. Instead, they showed higher distrust toward ambiguous messages. These results show that even if the awareness of gender equality is raised, the activation of thoughts about romantic love makes stereotypical gender role expectations more salient, which leads to a difference in interpretation of ambiguous messages between males and females.
著者
松浦 正孝 保城 広至 空井 護 白鳥 潤一郎 中北 浩爾 浅井 良夫 石川 健治 砂原 庸介 満薗 勇 孫 斉庸 溝口 聡 加藤 聖文 河崎 信樹 小島 庸平 軽部 謙介 小野澤 透 小堀 聡
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

「戦後体制」の何が戦前・戦時と異なり、どのような新たな体制を築いたのか。それはその後どのような変遷をたどり、どこでどう変わって現在に至ったのか。本研究は、その解明のために異分野(政治史、外交史、政治学、憲法学、経済史)の若手・中堅の最先端研究者を集めた多分野横断による問題発見型プロジェクトである。初めの2年度は、各メンバーの業績と学問背景をより深く理解し「戦後」についての問題を洗い出すため、毎回2名ずつの主要業績をテキストとする書評会と、その2名が それぞれ自分野における「戦後」をめぐる 時期区分論と構造について報告する研究会を、年4回開くこととした。しかるにコロナ禍の拡大により、第2年度目最後の2019年3月、京都の会議施設を何度も予約しながら対面式研究会のキャンセルを余儀なくされた。しかし20年度に入ると研究会をオンラインで再開することとし、以後、オンライン研究会を中心に共同研究を進めた。コロナ禍による遅れを取り戻すべく、20年7月・8月・9月と毎月研究会を行い、与党連立政権、貿易・為替システム、消費者金融などのテーマについてメンバーの業績を中心に討議を行った。オリジナル・メンバーの間での相互理解と共通認識が深まったため、12月にはゲスト3名をお招きして、戦犯・遺骨収集・旧軍人特権の戦後処理問題を扱うと共に、メンバーによる復員研究の書評会を行った。「家族」という重要テーマの第一人者である倉敷伸子氏にも、新たにプロジェクトに加わって頂いた。この間、メンバーの数名を中心に今後の研究方針案を調整した上で、21年3月には3日間にわたり「編集全体会議」を開催した。後半2年間に行うべき成果のとりまとめ方針を話し合うと共に、憲法・経済史・労働史・現代史の新メンバー加入を決め、各メンバーが取り組むテーマを報告し議論した。また、各メンバーは各自で本プロジェクトの成果を発表した。
著者
小野寺 英輝
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.74, no.746, pp.2371-2378, 2008-10-25 (Released:2011-03-04)
参考文献数
14

In Japan, western technology was rapidly introduced from the last stage of the Edo era. However, a lot of examples of technology transfer failure were included in the process. This paper deals with the cause of failure of the Kamaishi national iron mill. Lack of the domestic pig iron demand and insufficient marketing research, the Kamaishi iron mill generated large amount of deficit and was the greatest failure at that period. Analyzing several remained documents, it was under-stood that Japanese engineers throw large raw ore into the furnace under operation, to make it blockade. It was the simplest way to avoid further financial loss, and to conceal serious carelessness of preliminary survey. Blockage of the furnace was not the main factor of the iron mill business discontinuance, however, it had significant meaning. It was useful to minimize the initial risk of the following private enterprise, which succeeded the iron mill management. And it had big influence in iron manufacture which had grown up to the Japanese key industry in modern ages.
著者
小野田 雄介 中嶋 聖徳 板東 玲青 小南 裕志
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

大きな森林では、隣り合う樹木のは完全に独立し、「樹冠の譲り合い」(Crown shyness)と呼ばれる隙間をもつ。「譲り合い」という優しい響きとは裏腹に、この樹冠の隙間は、強風時の樹冠の衝突によって形成されると考えられる。しかし、樹冠の隙間を研究した例は少なく、天然の森林で、樹種や樹木の形状にどう依存しているのかはわかっていなかった。そこで本研究では、以下の課題に取り組んだ。(1) 風によって、樹木がどのくらいたわむのか?(2) UAVを使用した樹冠の隙間を定量方法の確立、(3)樹冠の隙間が樹種や樹高、幹太さにどの程度依存するのか?
著者
小野 克重
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-19, 2010 (Released:2010-07-14)
参考文献数
36
被引用文献数
1

Vaughan-Williams分類第4群に属するCa拮抗薬は,主に電位依存性L型Ca2+チャネルに結合してCa2+電流を抑制する.このため,Ca2+電流依存性興奮組織の洞房結節や房室結節における自動能の亢進もしくはこの部位を回路の一部とするリエントリー性不整脈に対しCa拮抗薬は有効である.撃発活動(triggered activity)とは活動電位の再分極相,あるいはその直後に生じる小さな膜電位振動から発生する単発,あるいは反復性の興奮で,活動電位持続時間が延長している時や細胞内Ca2+過負荷が生じている病的条件で起こる.Ca拮抗薬は撃発活動に対して顕著にこれを抑制する.抗不整脈作用を有するCa拮抗薬は,ベラパミル(フェニルアルキラミン系)とジルチアゼム(ベンゾチアゼピン系)に限られ,通常降圧剤として用いられるジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は血管選択性が強いために心臓作用は期待できない.一方,Vaughan-Williams分類では抗不整脈薬に分類されていないが,アデノシンやATP(アデノシン三リン酸)は受容体を介した心筋細胞外からの作用によって洞房結節の自動能を抑制する(陰性変時作用;negative chronotropic effect)とともに,房室伝導を抑える(陰性変伝導作用;negative dronotropic effect).また,心室筋に対しては間接作用(抗β受容体作用)によって電位依存性L型Ca2+チャネルを抑制する.血管内に投与されたATPは直ちに代謝を受けてアデノシンに変換されるが,それまでの間はATPとしての作用と変換後のアデノシンとしての両作用で心筋や血管機能を調節し,不整脈の診断や治療に欠かせない.本章では,Ca2+チャネルとCa拮抗薬の薬理作用,さらにATPとアデノシンの作用機序を概説する.