著者
村瀬 天出夫 伊藤 博明 小野 純一 中西 悠喜 平井 浩
出版者
聖学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

イスラム圏および西欧圏という地中海の東西二大文化圏における双方向的な魔術思想の交流を扱う。魔術は「自然の操作」という観念のもとに、近代以前の「知の歴史」に多大な寄与をなし、実験科学の興隆や人間観・自然観の形成に影響を与えた。その背景には中世・近世にかけて両文化圏をまたぐ魔術思想の交流があった。対立的(「イスラム対キリスト教」)と捉えられがちな両者の関係を、相互依存的・相互発展的な知の往来という観点から包括的に明らかにする。そのために、分断されている現在の研究潮流の統合を試みるとともに、当時の「魔術的知」の伝統と「自然の操作」の観念が現代へ連なる「近代世界」を準備した重要な要因であることを示す。
著者
小野澤 泰子
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.75-96, 2023-03-31 (Released:2023-08-04)
参考文献数
55

本稿では,緑川ゆき原作のアニメ作品『夏目友人帳』のロケ地である熊本県人吉市を事例として取り上げ,この地域が2008年に作品が放送されて以来,長期間にわたりファンによりアニメツーリズムの聖地になり続けている要因について,地域の特色や取り組みに着目しつつ考察を行った。近年の他のアニメ聖地の場合,作品の描く世界観の再現に注力したテーマパーク化を志向する傾向が見られるが,人吉市の場合,作品で描かれた人吉の自然と社会を未加工のままファンに体験させることに力点がおかれている。『夏目』作品自体が豊かな自然とゆったりとした主人公の日常生活の描写を特色としているが,人吉市の取り組みはそれに沿った形で自然体の地域性を強調している。そうした人吉市のスタンスが『夏目』ファンから支持され,人吉市におけるアニメツーリズムの長期継続に繋がっていると考えられる。
著者
玉置 勝司 石垣 尚一 小川 匠 尾口 仁志 加藤 隆史 菅沼 岳史 島田 淳 貞森 紳丞 築山 能大 西川 洋二 鱒見 進一 山口 泰彦 會田 英紀 小野 高裕 近藤 尚知 塚崎 弘明 笛木 賢治 藤澤 政紀 松香 芳三 馬場 一美 古谷野 潔
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.369-386, 2013 (Released:2013-11-14)
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

難症例の1つに咬み合わせ異常感や違和感があり,その訴えに対応する客観的所見が確認できない症例に遭遇することがある.通常,咬合紙,ワックス,シリコーンなどを用いて確認はするものの,咬合接触状態に特に異常は見つからない.さらに,患者の咬合に関する執拗な訴えに対して歯科医師が患者に問題の部位を確認してもらい,患者の指示により咬合調整を行ってしまうといった患者の感覚主導型治療に陥ってしまうことがある.その結果,患者の訴えは改善しないばかりか,逆に悪化することもさえもある.そして,患者と歯科医師の信頼関係が壊れ,思わぬ方向に陥ってしまうことも珍しくない. このような患者が訴える咬合に関する違和感に対して,社団法人日本補綴歯科学会,診療ガイドライン委員会において,平成23年度「咬合感覚異常(症)」に関する診療ガイドラインの策定が検討された.診療ガイドラインの策定に際し,委員会の作成パネルによるガイドライン策定を試みたが,咬合感覚異常(症)に関する十分に質の高い論文は少なく,診療ガイドラインの作成には至らなかった.そこで,本委員会のパネルで協議した結果,「咬合感覚異常(症)」に対する日本補綴歯科学会としてのコンセンサス・ミーティングを開催して本疾患の適切な呼称の検討を行った.また事前のアンケート調査結果から,このような病態を「咬合違和感症候群(occlusal discomfort syndrome)」とした. 今回のポジションペーパーは,今後の診療ガイドラインの作成とそれに対する研究活動の方向性を示す目的で,過去の文献と咬合違和感症候群患者のこれまでの歯科治療の経過や現在の状況について実施した多施設による患者の調査結果をもとに作成された.
著者
鈴木 智康 小野 孝也 髙橋 賢 野田 和彦
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.112-115, 2019-05-10 (Released:2019-10-25)
参考文献数
7
被引用文献数
5 4

物理現象としての結露時におけるACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサの出力挙動と腐食量の関係を明らかにするため種々の試験を行った.結露時のセンサ出力は降雨でのぬれや付着塩の吸水と比較して挙動が異なるため,切り分けて評価する必要があることがわかった.いずれの現象においても,その場測定(in situ)によって得られた出力と腐食量には相関が認められたので,ACMセンサ出力から短時間での腐食速度の推定が可能と考えられる.
著者
小野 伴忠
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.53-62, 2005 (Released:2014-03-15)
参考文献数
47
被引用文献数
2

3 0 0 0 OA 蘭山禽譜

著者
小野蘭山 著
巻号頁・発行日
1000

小野蘭山(1729-1810)の自筆本天地2冊が明治42年(1909)の蘭山没後百年記念会までは存在していたが、現在は行方不明である。しかし、諸書の検討によって、天之巻(水鳥)と地之巻(水鳥以外の鳥類と獣類)の2冊から成り、鳥類計307品・獣9品と推定されている。その諸書のうち、東京大学総合図書館蔵『禽譜』(T86-177本、鳥305品・獣9品)がほぼ完全な転写本らしい。なぜ獣類が少数含まれるのかは不明である。本資料はその「地之巻」に当たり、鳥171品と獣7品を含み、各品とも雌雄を描く例が多い。記文では産地や渡来年、形状や色彩を簡潔に記す。なお、『水谷禽譜』(特7-526)には、『蘭山禽譜』から転写した図と記文が少なくない。木村蒹葭堂の『蒹葭堂禽譜』も、『蘭山禽譜』を転写した禽譜である。:『豊文(とよふみ)禽譜』『蒹葭堂遺物』解題参照(磯野直秀)
著者
浅原 正幸 小野 創 宮本 エジソン 正
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.156, pp.67-96, 2019 (Released:2020-04-14)
参考文献数
65

Kennedy et al.(2003)は,英語・フランス語の新聞社説を呈示サンプルとした母語話者の読み時間データをDundee Eye-Tracking Corpusとして構築し,公開している。一方,日本語で同様なデータは整備されていない。日本語においてはわかち書きの問題があり,心理言語実験においてどのように文を呈示するかがあまり共有されておらず,呈示方法間の実証的な比較が求められている。我々は『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(Maekawa et al. 2014)の一部に対して視線走査法と自己ペース読文法を用いた読み時間付与を行った。24人の日本語母語話者を実験協力者とし,2手法に対して,文節単位の半角空白ありと半角空白なしの2種類のデータを収集した。その結果,半角空白ありの方が読み時間が短くなる現象を確認した。また,係り受けアノテーションとの重ね合わせの結果,係り受けの数が多い文節ほど読み時間が短くなる現象を確認した。
著者
小野 真紀子
出版者
イタリア学会
雑誌
イタリア学会誌 (ISSN:03872947)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.155-176, 2010-10-20 (Released:2017-04-05)

Allo scopo di approfondire l'evoluzione delle "buone creanze" nell'eta moderna, questo studio prende in esame le buone maniere a tavola nei banchetti delle corti italiane del XVI secolo, nei quali si riteneva che fossero piu raffinate, attraverso l'analisi del modo di servire a tavola. In quest'epoca stavano iniziando a svilupparsi, soprattutto nella societa di corte, le "buone creanze" moderne e stava crescendo l'importanza dei regolamenti in ogni aspetto della vita sociale. Nello stesso tempo venivano inoltre pubblicati numerosi trattati sulle "buone creanze", come per esempio il Galateo di Giovanni della Casa, ma non e da escludersi che le buone maniere a tavola qui regolamentate non fossero appropriate a tutte le situazioni in cui si consumava del cibo. La pubblicazione di manuali di scalcheria e invece degna di nota, perche si ritiene che il servizio a tavola fosse eseguito in base alle regole delle buona educazione dei commensali a tavola. Tutti i manuali esaminati in questo studio sono stati pubblicati nella seconda meta' del XVI secolo (La singolare dottorina di D. Romoli, Dello Scalco di G. B. Rossetti, Dialogo del maestro di casa di C. Evitascandalo e Il Trinciante di V. Cervio). Il servizio a tavola nel banchetto a quel tempo era ben ordinato ed era eseguito sotto la direzione dello scalco, ovvero di un direttore dei mestieri attenenti alla tavola a corte che organizza tutto cio che riguarda il banchetto nell'ambito del suo incarico di responsabile e ideatore del festino. Gli scalchi adottavano diversi espedienti nel servizio, affinche i commensali potessero mangiare e seguire il banchetto piacevolmente. Eliminavano infatti tutto cio che poteva risultare sgradito ai commensali e che andava evitato secondo le regole della buona creanza dei convitati: la vista dello sporco, il contatto con la saliva altrui e la pulizia per gli altri. Inoltre, il servizio a tavola era effettuato rispettando la gerarchia dei commensali, interpretando la loro buona creanza, preoccupandosi cosi di eseguire una parte dei comportamenti culturali dei convitati al posto loro. Si ritiene dunque che nella fase iniziale della formazione della "buone creanze" moderne, un sistema che avrebbe potuto agire su tutti, come il servizio del maestro di tavola, abbia influenzato la sensibilita e il comportamento. Pertanto, non si deve trascurare che tale servizio, nel banchetto del XVI secolo, nel quale si tende a evidenziare l'ostentazione del potere del signore e l'aspetto cerimonioso, poteva contribuire anche alla buona creanza dei commensali a tavola. Si ritiene che il presente studio abbia potuto mettere in luce il rapporto tra le buone maniere mostrate dai commensali a tavola e il servizio svolto dallo scalco, aggiungendo cosi un nuovo punto di vista agli studi precedenti, per esempio quello di N. Elias, che analizzavano in prevalenza le regole dei manuali, che permette di comprendere in modo piu approfondito le buone maniere a tavola dell'eta moderna.
著者
坂本 祐太 甘利 貴志 寄持 貴代 山田 徹 小野 美奈
出版者
日本ヘルスサポート学会
雑誌
日本ヘルスサポート学会年報 (ISSN:21882924)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.25-32, 2019 (Released:2020-01-11)
参考文献数
25

目的:地域在住高齢者の5 回立ち上がりテスト(Sit to Stand-5、以下、SS-5)におけるQuality Of Life (以下、QOL)低下のカットオフ値を算出する。方法:一次介護予防事業に参加した65 歳以上の参加者155 名を対象に、SS-5 とEuro QOL 5 dimension の項目で主観的にQOL を評価した。Euro QOL 5 dimension は項目を正常と低下の2 群とした。カットオフ値はReceiver Operating Characteristic曲線のAria under curve (以下、AUC)により算出した。結果:SS-5 のカットオフ値は、それぞれ「移動の程度」で10.0 秒(AUC=0.72)、「普段の活動」で10.0 秒(AUC=0.77)、「痛み/不快感」で8.3秒(AUC=0.77)であった。結論:この研究ではSS-5 のカットオフ値を検証した。SS-5 におけるQOL 低下のカットオフ値は下肢とQOL の関連を示し、運動の動機づけするための具体的な目標値となる可能性が有る。
著者
三浦 彩子 小野田 滋
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.15, no.30, pp.577-580, 2009

Railway foot bridge at stations is one of the station structures for use of passengers. Although it is a universal railway structure in Japan, its historical development is poorly understood until now. This paper describes the history of railway foot bridges on the Tokaido Line based on historical records and drawings in the Meiji era. As the results of this survey, the diffusion process from large stations to local stations, and the standardization process in the end of the Meiji era have become clear.
著者
近藤 高史 小野 武年 西条 寿夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.12, pp.812-821, 2017 (Released:2023-06-05)
参考文献数
29

味噌汁やお吸い物だけでなく,うどんやそばのつゆ/つけ汁を飲んだ時に,ほっとする感覚を覚える日本人は多い。心が落ち着くと,問題行動が改善する可能性も考えられる。そこで,著者らは実験動物(マウス)にだしの代表格であるかつおだしを継続摂取させた結果,予想通りに攻撃行動およびうつ様行動が低下(すなわち改善)することを見出した。本稿では,かつおだしの継続摂取によって生じる「攻撃行動の低下」に焦点を絞り,その仕組みについて解説いただいた。
著者
池田 勇 小野 友道
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.522-524, 2001-10-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
6

肝細胞癌で加療中の79歳男性患者の右示指先端に水疱形成を伴う硬い腫瘤が生じ,生検により転移性皮膚癌であることが判明した。本転移癌に対して使い捨てカイロを利用した局所温熱療法を試みた。腫瘍は治療に反応して縮小し,約2ヵ月の経過で消失した。内臓悪性腫瘍の指尖部への転移は稀であるが,温熱療法の良い適応となる可能性がある。使い捨てカイロの局所加温効果にっいてサーモグラフィを用いて検討した。
著者
更科 紗和子 松崎 孝 小野 大輔 中村 龍 賀来 隆治 森松 博史
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-4, 2021-01-25 (Released:2021-01-25)
参考文献数
10

ドライアイ類似の慢性難治性眼痛の3症例を経験した.当院の眼科治療後難治性眼痛の治療プロトコールに基づき,オキシブプロカイン点眼検査,リドカイン静脈内投与,薬物療法,神経ブロックを行い,痛みの機序を考慮し診断的治療を施行した.眼科領域では,客観的所見と疼痛の乖離を説明する概念として神経障害性眼痛(neuropathic ocular pain:NOP)が報告されているが,病態が国際疼痛学会の提唱する神経障害性痛の定義に適さないため,本稿では神経障害性痛を部分的に有する神経障害類似の眼痛(neuropathic like ocular pain:NLOP)と定義して症例を提示した.
著者
小野 厚夫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.347-351, 2005-04-15

今日のキーワードとなっている情報という言葉は,日本で造られた言葉で,1976年出版の訳書「仏国歩兵陣中要務実地演習軌典」に最初の用例がある.原語はフランス語のrenseignementで,敵の「情状の報知」の意味で使われた.初期には情報と状報が併用されたが,情報に統一された.兵語として用いられていたが,次第に一般化し,日露戦争後には国語事典に収録されるようになった.戦後情報理論の導入に伴い,英語のinformationの日本語訳として用いられるようになった.これら130年に及ぶ情報という言葉の歴史について調べた内容を,用例を示しながた辿ってみた.