著者
尾崎 文昭 LIN Yi-qiang
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

研究実績は主に以下の二編の論文があり、いずれも『東洋文化研究所紀要』に掲載される。その概要は以下の通り:1:「古音、方言、白話に託す言語ユートピア--章炳麟と劉師培の中国語再建論」章柄麟と劉師培は、清末の中国語現状に対する批判的見方に基づき、古音、方言、白話と注音方法という四大課題から構成された中国語重建論を提起した。章と劉の研究によって、古音の正統的地位は固められ、方言も低俗のイメージから解放され、両者はともに純正中国語の「一体両面」となった。方言から古音を遡り、そして、古音で方言を統一することは、彼らの独特の研究方法になったばかりではなく、彼らが目指した中国語改造の道となった。白話文学の伝統と地域差異を超えた言語標準は、その中国語改造論においても重要な資源となる。彼らの白話研究と論述は、その語言の均質性と言文一致の可能性に集中しており、それらは恰も古音と方言の弱点を補う形となった。章炳麟と劉師培の中国語再建論は、古音、方言、白話についての研究を尽くしてからはじめて建て直しを開始できるという長いプロセスであった。それは多大な研究実績を伴った周到な再建論であるにもかかわらず、今日の中国語の現状から見れば、もはや一種のユートピアにすぎない。2:「排満論再考」本稿は清末排満論が民族論から体制論へ転向する過程を研究対象とし、清末国学と辛亥革命の結果についてより合理的な解釈を与えようとする。初期排満論は民族浄化を鼓吹する復讐論であったが、清末の最後数年において、それが転向しなければならないところまで行き詰まっていた。『民報』対『新民叢報』の論争を経て、排満論はその「満漢」、「華夷」の対立論式を修正し、その排除範囲を漢民族官僚も含む特権階層に限定し、その基調は「排満」から「排清」へと転向した。章炳麟の建国理想と劉師培のアナーキズムはその転向を促成した重要な要因と考えられる。章炳麟と厳復、楊度の論争に至ると、問題の核心は満漢問題から、ナショナリズムとアイデンティティに移した現象が見られた。章炳麟はアメリカの現状から示唆を受けて、「中国人」を漢民族に等しい概念から「合漢満蒙回蔵為一体」の上層概念へと上げた。その上で、「文化」、「民族」、「国家」「三位一体」の新しい中国像を提示し、排満論の目的を「民族」から「民国」へと移行させた。そのような転向は清末国学にも影響を与え、その重心がより大きな幅で政論から学術研究へと傾み、民族問題は再び文化問題として帰着した。その結果として、辛亥革命は排満論の勝利ではなく、むしろ排満論の放棄を意味するものと考えられる。
著者
尾崎 勤
出版者
二松學舎大学
雑誌
日本漢文学研究 (ISSN:18805914)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.59-81, 2007-03

In 660 A.D. Admiral Abe no Hirafu 阿倍比羅夫 and his fleet crossed the Sea of Japan and arrived at what is most likely Hokkaido 北海道. After a violent battle, Hirafu defeated an unknown ethnic group there. He captured the survivors and took them to the capital. The Nihon Shoki <<日本書紀>> describes the group using the name "Sushen" 粛愼 The Sushen are a legendary tribe appearing in ancient Chinese literature. When the Duke of Zhou (Zhou-gong Dan 周公旦) ruled as regent, the Sushen offered tribute to the Zhou 周 dynasty. Establishers of new dynasties followed the precedent of the Duke of Zhou, and legitimized their kingships in accordance with the right of revolution (geming 革命). In.660 A.D. when Prince Naka no Oe (Naka no Oe no Miko 中大兄皇子), son of Empress Saimei (Saimei Tenno 齊明天皇), siezed power, he used the same ideology - right of revolution - to validate his kingship. Prince Naka no Oe arbitrarily identified the tribe brought to the court by Hirafu as the legendary Sushen people.
著者
日野 秀逸 吉田 浩 尾崎 裕之 関田 康慶 藤井 敦史 佐々木 伯朗
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、第1に高齢化社会に対応した福祉・経済社会システムの事例研究として、最も福祉水準が高い北欧のリーダー的存在であるスウェーデンを事例として取り上げた。ここでは、日本との対比もしながら、スウェーデンの1990年代改革を分析し、スウェーデンの福祉国家再生・発展における地方分権と協同組合の役割を検討した。第2に、高齢者福祉に関する地域モデルの構築に関し、具体的には宮城県の市町村の福祉財政に焦点を当て、介護保険制度における介護者の意識と実態に関する研究として、在宅サービス提供者に対するアンケート調査を行った。その結果、「介護の社会化」、「在宅サービスの市場化」などに介護者の意識が変化していること、介護サービスに関するニーズが変化していることなど、行動学の面から介護者の現状が明らかになった。第3に、福祉NPOの実態を調べるため、阪神高齢者・障害者支援ネットワークの事例を通してNPOにおける<市民的専門性>の形成について検討した。また、神戸のコミュニティ・ビジネスと社会的企業に関して、神戸市において、主として対人サービスを行うコミュニティ・ビジネスに関してフィールド・ワークを行った。その結果、神戸のコミュニティ・ビジネスが、幅広いソーシャル・キャピタルを基盤として成立している一方、行政委託への依存体質が強いことなどが明らかとなった。第4に、高齢社会における財政の役割を、財政社会学の観点から評価を行った。現代国家はいずれも憲法やその他の法律上では公共の福祉を尊重しているが、日本においては、福祉政策に適した財政システムと、現実の福祉政策との間に大きなギャップが存在する。こうした現象の説明として、新制度学派の説く制度の「補完性」原理は有益ではあるが、国家の相対的自律性を説明するには不十分である。ドイツ財政学から生じた「財政社会学」はこの点を既に指摘していた。深刻な財政危機が生じている現在の日本で、財政社会学の再評価は不可欠である。第5に高齢社会における世代間の不均衡の問題を定量的に検討するため、社会保障をはじめとした世代間の拠出、受給の状況、生涯純受給の格差について、所得再分配調査のデータに基づき世代会計の手法を援用して検討した。その結果、今後100年間の政府の財政収支を均衡させるためには、将来世代に現在世代に比して1.5倍あまりの一世帯当たり約4,900万円の追加的な負担が必要であるという結果も得られた。この世代間の格差を公平にするため、より早い時点で受益を削減する改革が将来世代に望ましく、2005年で改革する場合は、およそ35%の受益を削減すれば良いという結果が得られた。また2期間の世代重複モデルを用いて高齢化と財政政策、社会保障政策を動学的にシミュレートした結果によると、短期の減税、ベビーブーム世代の存在の中で高齢化、世代間所得移転政策の存在は、資本蓄積に大きくかつ長期のネガティブな効果を及ぼすことがわかった。

2 0 0 0 OA 干宝晋紀考

著者
尾崎 康
出版者
慶應義塾大学
雑誌
斯道文庫論集 (ISSN:05597927)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.285-316, 1970-12-01
著者
草野 源次郎 芝野 真喜雄 渡辺 斉 尾崎 和男
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.123, no.8, pp.619-631, 2003-08-01 (Released:2003-08-01)
参考文献数
38
被引用文献数
9 9

Some Glycyrrhiza species grown in several domestic research gardens of medicinal plants were collected by the Osaka University of Pharmaceutical Sciences and were cultivated to compare their morphological properties. HPLC profile analysis was performed and index compounds of MeOH extracts of aerial parts and EtOAc extracts of subterranean parts were determined. Glycyrrhizin contents and growth rates of the underground parts of some types of Glycyrrhiza uralensis and Glycyrrhiza glabra were compared and four excellent types were selected as candidates for cultivation. One of them was due to Kanzo-Yashiki (Enzan, Yamanashi prefecture), where G. uralensis was cultivated in the Edo period. Alkaloidal constituents of G. uralensis and G. glabra were also investigated and anabasine (an insecticide) and a new tricyclic alkaloid were obtained.
著者
原 大輔 尾崎 亮太 兵頭 和樹 中山 泰一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.3127-3137, 2005-12-15
被引用文献数
2

現在のWWWサーバには実行時のユーザ権限に起因する問題が存在する.PHP プログラムがデータをファイルに書き込む場合,データファイルの所有者がWWW サーバを実行するユーザとなるため,サーバを共有する別の利用者のPHP プログラムからそのデータファイルを盗視されたり削除されたりする危険性がある.1 台のサーバ計算機を多数の利用者で共有する共有型ホスティングサービスにおいて,これは深刻な問題である.本研究では,この問題を克服するWWW サーバ,Haracheを提案する.提案するシステムではサーバプロセスをファイル所有者の権限で動作させる.これにより,WebDAV やPHP といったサーバ組み込みのプログラムを用いる際の問題を解決することができる.また,不必要なサーバプロセスを適宜終了することで利用者数に対する高いスケーラビリティを達成できる.本論文では,Harache の設計および実装法について述べる.Harache をSELinux を有効にしたLinux OS 上に実現し,評価実験を行った.その結果,ユーザ権限に起因する問題を解決すること,他の実現方式に対してスケーラビリティの面で優位性を持つこと,実用に耐えうるだけの性能を達成していることを確認した.This paper presents a WWW server named Harache, that runs under the authority of the file owner. Existing servers have problems that occur because of the user authority during execution. When a PHP program creates data files, the owner of the created files is the special user account that runs a server. Therefore, other users that share the same server can steal and delete these data files. These problems are serious for a hosting service where many users share a server. Harache has server processes that run under the authority of the file owner. Hence Harache can solve these problems that occur because of the user authority. In addition, Harache terminates unnecessary server processes when needed to improve scalability of the number of users. For a proof of concept, we implemented Harache on a Linux OS with a SELinux and performed evaluation experiments. Experimental results show that Harache achieves high performance and scalability.
著者
尾崎 雅彦 南浦 純一 北島 良則 溝上 宗二 竹内 和久 畠中 勝則
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
no.187, pp.185-192, 2000-06
被引用文献数
3

Ocean sequestration of the captured CO_2 from fossil fuel burning is a possible option to mitigate the increase of CO_2 concentration in the atmosphere. It can isolate huge amount of CO_2 from the atmosphere for long time in relatively low cost, if it is acceptable from the viewpoint of the oceanic environmental impact. The dissolution type treated in this paper is based on the idea that CO_2 dissolved and sufficiently diluted in seawater does no more harms than slightly increasing the concentration of CO_2 already contained in the seawater. The concept of CO_2 dispersion in the ocean depths by ship is a promising implementation for the efficient dilution. That is, liquefied CO_2 is delivered by ship to the site and injected into ocean depths of 1,000 to 2,500m with a suspended and towed pipe by a slowly moving ship. The constant movement of releasing point of CO_2 causes no stagnation and accumulation of CO_2 in seawater. The released CO_2 will form plenty of droplets, and then they rise gently due to the buoyancy, while reducing in the size to disappear by dissolution in the ambient seawater. Since the turbulent diffusion in the intermediate ocean is dominant horizontally, use of the vertical journey of CO_2 droplets will be very effective for the initial dilution. Thus, authors have good prospects for the dilution ratio of one to a hundred thousands in a couple of hours after injection on an engineering realistic scale, by means that the initial size of droplets is controlled. Drop formations from a fixed nozzle are investigated referring the common knowledge on textbooks. And the possibility of generating relatively large size of droplets from a moving nozzle is experimentally studied. As a result, it is found that the horizontal nozzle towed by the slowly moving ship is promising for the control of the drop formations in a realistic scale .
著者
五十嵐 創 植野 研 尾崎 知伸 森田 想平 古川 康一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.30, pp.1-6, 2003-03-13
被引用文献数
1

チェロ演奏スキルは,訓練によって獲得される,筋骨格系の整合的な一連の動作を行う能力であり,、身体知の一種である.身体知の獲得の目的は,演奏,踊り,各種のスポーツなどのスキルを向上させることである.身体知のもんだいは,それが暗黙的であり,職業演奏家や,プロスポーツプレイヤーが自身で何をおこなっているのかを把握できない点である.本研究の目的は,身体知をモデル化し,その暗黙知を言語化することである.本論文では,特に基本的なチェロ演奏スキルのひとつとして,しなやかな弓の返し動作を取り上げ,そのモデル化にベイジアンネットワークを用いることを検討した.ここでは,その基本構想を明らかにする.In this paper, we discuss the problem of modeling human skill in Bayesian network. The purpose of skill modeling is to use the model to improve performances in such activities as playing instruments, dancing, and playing various kinds of sports. The difficulty of human skill analysis comes from its tacitness: even professional viloinists or cellists do not know how they are playing. This paper defines a basic framesork of the research by proposing possible representations and structures of the Bayesian networks for human skill, and by defining the purpose of model usage. We furthermore discuss how to assign conditional probability tables in each node of the proposed Bayesian networks by accumulating obserbational data by a motion capturing system as well as by a surface electromyogram. We also discuss how to compare profeessional players with amateurs using Bayesian network representations.
著者
神藤 貴昭 尾崎 仁美
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.345-355, 2004-12-20

近年,大学における教育的側面が検討されるようになってきた。本研究の目的は,大学授業における教授者のストレスと対処行動の過程を明らかにすることであった。研究1では大学授業における教授者の認知するストレッサーの種類を調査した。研究2では,3名の大学教員によっておこなわれた実際の7つの授業をもとにして,教員への面接や授業VTRの分析をとおして,教授者と授業中のストレッサーとの相互作用を詳細に記述した。主な結果は以下のようであった。(1)全体的には学生の反応に関するストレッサーが多いこと,(2)放置という対処が多く見られたこと,(3)教授者の経験年数が少ないほど,学生の否定的反応に関するストレッサーを多く認知していること,(4)対処行動にもかなり個人差があるということ,(5)あるストレッサーを解決しようとすると,別のストレッサーが生起する可能性があること,の5点である。これらの結果はファカルティ・ディベロップメントの観点から議論された。
著者
吉田 正人 向原 伸彦 大保 英文 尾崎 喜就 本多 祐 金 賢一 溝口 和博 井上 武 深瀬 圭吾 三里 卓也 志田 力
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.61-65, 2007-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
1

2000年1月から2003年12月までの4年間に当院で施行した80歳以上の大動脈弁置換術(AVR)症例29例を高齢者群とし,その手術成績ならびに中期成績について検討した.使用した弁は,全例,生体弁(Carpentier-Edwards PERIMOUNT)であった.また,同時期に施行された75歳以下の生体弁によるAVR症例36例を対照群として,2群間で比較検討を行った.平均年齢は高齢者群で82.9歳,対照群で71.6歳であり,病変は高齢者群では大動脈弁狭窄(AS)症例が79%と対照群の53%に比較して有意に多く,ASの程度も高度であった.術前合併症としては,高齢者群では糖尿病と腎機能障害(Cr≧1.5)の頻度が有意に高く,緊急手術例も高齢者群24%,対照群6%と高齢者群で緊急手術の頻度が有意に高かった.術後合併症は,48時間以上の長期の人工呼吸器管理を要した症例と一時的にCHDFを必要とするような腎機能障害をきたした症例の頻度が高齢者群で有意に高かったが,病院死亡は高齢者群6.9%,対照群5.6%と差はなく,3年生存率も高齢者群89%,対照群78%と差は認めなかった.80歳以上の超高齢者に対するAVR症例では術前の重症度が高かったが,その手術成績ならびに遠隔成績は良好であり,外科的治療を積極的に考慮すべきであると考えられた.
著者
加藤 秀一 尾崎 紀夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001240, (Released:2018-12-29)
参考文献数
50

自閉スペクトラム症は,社会性やコミュニケーションの障害,および行動・興味・活動の限局を特徴とし,米国精神医学会の精神障害診断・統計マニュアル第5版では,非常に多様な表現型を包含することとなった.何らかの身体症状や精神障害を併存することが多く,包括的評価が求められる.ゲノム解析が広く行われ,頻度は低いものの発症に強い影響を与えるゲノムバリアントの同定により,一部の患者に共通する発症メカニズムが明らかとなりつつある.その結果,クロマチン制御の異常によるエピジェネティックな変化が,発症に強く影響を及ぼしている可能性が示唆されている.病態の解明,治療法開発に向けてさらなる研究が求められている.
著者
大渕 正博 藤井 中 鈴木 理恵 吉澤 睦博 近藤 正芳 尾崎 文宣 森 保宏
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.29, no.73, pp.1215-1220, 2023-10-20 (Released:2023-10-20)
参考文献数
14

The authors conducted a questionnaire survey for the purpose of analyzing how severe the disasters are assumed in BCP and which measures are being taken. We have analyzed priority of risk countermeasures and content of countermeasures. In this paper, ratio of cumulative number of respondents to the questionnaire to the total number of respondents is regarded as subjective probabilities of restoration periods or frequencies of assumed disasters. In this way, we regard the recovery performance of facilities or the frequency of assumed disasters as a subjective probability that quantitatively evaluates how people think, and propose them as assumed curves.
著者
大西 正男 尾崎 文子 吉野 富佐子 村上 淑子
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.158-162, 1981 (Released:2010-03-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1 14

100匹のWister純系鼠を5群に分け, 全群に同一う蝕誘発食餌6PMVを与えたが, 飲物としてコントロール群には脱イオン水を, 残りの4群には同一フッ素濃度 (10ppm) のNaF溶液, 茶の浸出液とその稀釈液を与えた。30日のう蝕期間で, 茶投与群はNaF溶液群よりも効果的なう蝕抑制をもたらした。抑制率は茶の稀釈度に反比例した。茶は多くの生物学的活性物質を含みまたう蝕予防に好ましい物理化学的性質をもつていると考察された。
著者
渡辺 能行 尾崎 悦子 松井 大輔 小山 晃英 栗山 長門
出版者
京都先端科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

過敏性腸症候群は腹痛や腹部不快感、便通異常を主症状とした消化器症状が持続、または寛解と増悪を繰り返す機能性消化管障害の一つである。これまでの国内外の研究では偏りのある有病症例が対象となっていて罹患率や罹患のリスク要因も全く検討されていないので、主として臨床症状に基づいた診断の国際基準である「RomeⅢ」日本語版質問紙票を用いた調査が既に5年前に実施されている40~74歳の一般京都府民3,910人において再調査を行い、その罹患率と罹患に関わるリスク要因を前向き研究として実施する。
著者
尾崎 崇
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.787-791, 2006-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

腎不全で特にBUN値の高い患者に対して大黄あるいは大黄含有方剤が有効であることが報告されている。しかし大黄は瀉下活性を有するために多量に投与しがたい。そこで筆者は瀉下活性を減少させる目的で加熱大黄を作成し, 腎不全患者に用いてみた。処理にあたっては高速液体クロマトグラフィーによるセンノサイドAの定量値を参考にした。第1例には100℃以下で4時間煎じた熱水処理大黄エキスを用いたが, 腎機能は改善しなかった。加熱により腎臓に対する保護作用も失ったものと推測された。第2例には130℃10分間の短期高熱で処理した乾熱処理大黄を用いたところ, 瀉下活性の著明な減弱により大黄として4g/日まで増量できただけでなく, 血液尿素窒素値 (BUN) の緩徐な低下を得た。その後BUN, 血清クレアチニン値 (Cr) が漸増したので, 温脾湯として投与を試みた。しかし, 温脾湯のエキス製剤はないので, 人参湯加大黄, 附子として投与したところ, 大黄単独よりより良い効果が得られた。乾熱処理大黄は瀉下作用が弱く窒素代謝改善作用は優れており, 今後は腎不全治療に使用が検討されるべきである。
著者
高安 美佐子 尾崎 順一
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

約100万人のスマホGPSデータを解析し都市圏の人流に関する基本的な特性を明らかにした。大都市圏での人流パターンを流域という視点に基づいてマクロ的に捉える新しいデータ解析手法を確立し、流域のサイズの分布や形状が都市に依存しない普遍的な特性を持ち、さらに、Covid-19の感染下でも基本特性が維持されていることを見出した。また、人流を電流とみなすアナロジーによって、都市圏の交通流を近似する電気回路モデルを構築し、新たなシミュレーション手法の基盤を構築した。さらに、基本的な感染症の数理モデルをGPSデータに基づく人口集中の効果を考慮するように改良し、感染者数の増減を予測可能とするモデルを開発した。
著者
尾崎 喜光
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.58-73, 2003-03-31 (Released:2017-04-29)

関西では男女共通に使われるが関東では主として男性の間で使われる間投助詞「なぁ」と推量的確認表現「やろ」(関東では「だろ」)について,関西の女性がこうした表現を使った場合,関東の人がそれをどう評価するか,また関西の人は関東の人がどう評価しているとイメージするかを調べた.その結果,判断保留的な回答を除く部分で見ると,関東の人は「良い感じがする」と肯定的に評価する人の方が,「あまり良い感じがしない」と否定的に評価する人よりもむしろ多いことが分かった.その一方で関西の人は,関東の人は「あまり良い感じがしない」と否定的に評価しているだろうと考える人の方が,「良い感じがする」と肯定的に評価しているだろうと考える人よりもむしろ多かった.関東の人は,関西の女性が使うこうした表現を,当の関西の人が推測するほどには否定的に受け止めていないようである.他方,関西では使用がそれほど一般的でないが関東では男性よりも女性の間で一層よく使われている間投助詞「ねぇ」と推量的確認表現「でしょ」について,関東の男性がこうした表現を使った場合,関西の人がそれをどう評価するか,また関東の人は関西の人がどう評価しているとイメージするかを調べた.その結果,判断保留的な回答を除く部分で見ると,関西の人は「あまり良い感じがしない」と否定的に評価する人が5〜6割と多数を占め,「良い感じがする」と肯定的に評価する人よりもはるかに多いことが分かった.その一方で,関東の人も,関西の人は「あまり良い感じがしない」と否定的に評価しているだろうと考える人の方が,「良い感じがする」と肯定的に評価しているだろうと考える人よりも多いものの,否定的な評価の数値は当の関西ほど高くなく,実際よりもやや楽観的に推測しているところが見られた.
著者
尾崎(和賀) 萌子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.181-196, 2023-09-30 (Released:2023-10-31)
参考文献数
51

本稿では,日本人の親が0–4歳の子どもに対して絵本の読み聞かせを行う際に,どのように登場人物になりきった発話をするのかを量的,及び質的に検討した.親子間の絵本の読み聞かせ場面において,親が絵本の登場人物になりきって発話することは日本の家庭において一般的に行われることであるにもかかわらず,それがどのような時期にどのような目的でなされるのかについてこれまでの研究において十分に検討されていない.そこで日本人親子(子どもの年齢:0;2–4;11, n=105)を対象に,親が子どもに日本語で『はらぺこあおむし』を読んでいる様子をビデオ録画し,書き起こした後に探索的コード付けを行った.その結果,なりきり発話は行為・感覚・会話という3つに分類することが可能であり,それぞれが子どもの年齢に応じて使い分けがされていることがわかった.さらに日本人の親は子どもの乳幼児期から「なりきり発話」を豊富に用いる一方で,子どもが成長するにつれて徐々にその使用頻度を減らしていくことが明らかとなった.定量的な結果と合わせて個別のデータの質的分析を行うことで,絵本の読み聞かせ場面における「なりきり発話」の使用は,乳児期から4歳頃までの共感形成と社会的ルーチンの習得のための足場である可能性が示唆された.
著者
尾崎 良太郎 丸飯 虎太朗 門脇 一則 小田原 和史
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 2022年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.6, 2022 (Released:2022-07-08)
参考文献数
2

真珠の構造色は、表面の真珠結晶層内のアラゴナイト結晶層とコンキオリン層で発生する光の干渉によって発色することが知られている。一般的な構造色では、反射光の干渉が色彩を決めることが多いが、アコヤ真珠の場合は、特に透過の干渉色が重要であることを小松氏は指摘している。我々は、透過の干渉色と反射の干渉色のメカニズムを光学の視点から考え、そのモデル化に成功した。真珠の光学特性は、透過と反射と散乱の組み合わせである。真珠核および真珠結晶層での多重散乱は Kubelka-Munk 理論で計算し、アラゴナイト結晶層とコンキオリン層での干渉は、 Transfer Matrix 法で計算した。計算で得られたスペクトルを色情報に変換し、その色情報に基づき OpenGL シェーディング言語で作成したプログラムで可視化した。図 1 は、コンキオリン層を 20 nm として、アラゴナイト結晶層が 360 nm のときの結果である。上段が写真であり、下段がコンピュータグラフィックス(CG)であるが、撮影角度に伴う干渉色のグラデーションの変化をよく再現できている。また、アラゴナイト結晶層を300 nm、 360 nm、 400 nm としたときの結果を図 2 に示す。結晶層厚の変化に伴う、干渉色のグラデーションの変化も再現可能である。今後は、 CG の更なる高度化を目指し開発を進める予定である。【謝辞】本研究は農研機構生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち先導プロジェクト)」の支援を受けて行われたものです。
著者
尾崎 修治
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.104, no.10, pp.1756-1776,1838-, 1995-10-20 (Released:2017-11-30)

Die Rheinischen Loslosungsbestrebungen hatten zum Ziel, die rheinische Region von dem PreuBenstaat loszutrennen und so eine selbstandige Republik innerhalb des Deutschen Reiches zu grunden. Diese Bewegungen genossen vor allem in der politischen und verfassungsrechtlichen Ubergangszeit vom November 1918 bis Februar 1919 Unterstutzung durch Politiker und durch Teile der Bevolkerung im Rheinland. In diesem Artikel wird versucht, neben der Betrachtung der Entwicklung dieser Bestrebungen auch die Reaktionen der rheinischen Parteien und der zentralen Regierungen zu analysieren, um die Hintergrunde und die Tragweite der Loslosungsbestrebungen zu klaren. Unter den rheinischen Loslosungsbestrebungen dieser Zeit lassen sich zwei wichtige Richtungen erkennen. Zum einen der "Westdeutsche AusschuB", in dem sich Vertreter aller rheinischen Parteien zusammenschlossen, um eine mogliche Loslosung von PreuBen zu erortern. Diese Bewegung war durch die Furcht vor der Annexion durch Frankreich motiviert, und ihre Mitglieder waren sich daher darin einig, daB man das Konzept einer "westdeutschen Republik" nur dann in die Tat umsetzen durfe, wenn es die einzige Moglichkeit darstelle, um die Annexion durch Frankreich zu vermeiden. Diese Gefahr war jedoch niemals ernst geworden. Zum anderen ist die Richtung der Kolner Zentrumspartei zu nennen. Sie war im Gegensatz zum Westdeutschen AusschuB die aktivere treibende Kraft fur die sofortige Erfullung der Loslosung von PreuBen. Sie kritisierte die Unordnung in Berlin und die Machtlosigkeit der gegenwartigen Regierung und warnte vor der Gefahr der Annexion durch Frankreich. Diese Begrundung fuhrte zur Behauptung, daB das Rheinland sofort zur Selbsthilfe greifen musse. Die ungeduldigen Aktionen der Kolner Zentrumspartei wurden jedoch sowohl von den anderen rheinischen Parteien als auch von der Reichsund preuBischen Staatsregierung heftig kritisiert. Nicht zuletzt wegen dieser Gegenaktion wurde diese Bestrebung zuruckgestellt. Die Handlungen der Kolner Zentrumspartei wurden zwar kritisiert, doch die Motive, die hinter dem Konzept der Selbsttindigkeit von PreuBen steckten, wurden auch von den anderen rheinischen Parteien geteilt. Der Angriff der preuBischen Regierung auf die Rolle der Kirche stieB nicht nur auf den Widerstand des Zentrums, sondern auch auf den des ganzen rechten Lagers. Auch die Abneigung gegen die Revolution war im ganzen rechten und konservativen Lager zu beobachten. AuBerdem spielte das MiBtrauen gegen die zentralen Behorden eine wichtige Rolle. Es wurde dadurch geschurt, daB die Bevolkerung des Rheinlands in Berlin wenig Verstandnis fur ihre Bedurfnisse erkennen konnte und den Eindruck gewann, daB das besetzte Rheinland von der Regierung im Stich gelassen wurde. Daher lag die SchluBfolgerung nahe, daB die Rettung in der Selbsthilfe liege. Die Entstehung der rheinischen Loslosungsbestrebungen laBt sich daher nicht nur von der uberlieferten konfessionellen Besonderheit des katholischen Rheinlandes, sondern auch von den politischen und sozialen Bedingungen nach dem Ersten Weltkrieg, vor allem der Revolution und der Besatzung, erklaren.