著者
山本 晶友 入江 ひとみ 大石 有里花 上杉 優 樋口 匡貴
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.33-39, 2023-06-30 (Released:2023-07-28)
参考文献数
29

Zero-sum belief is the belief that someone’s gains are another’s losses. Assuming that beneficiaries’ zero-sum beliefs let them perceive benefactors’ cost resulting from giving benefits, this study examined whether the zero-sum belief increases the occurrences of grateful feelings and expression in apologetic form, which is represented by “sumimasen” in Japanese. We manipulated participants’ zero-sum beliefs and rewarded them for the task. Thereafter, we asked participants what they wanted to say, how they felt, and how much they perceived our (i.e., benefactors’) cost. The results revealed that participants whose zero-sum beliefs were experimentally strengthened were inclined to select the grateful expression in apologetic form from some options to convey what they wanted to say, though grateful feelings in apologetic form and perceived costs were not significantly affected. These results suggested the possibility that individuals’ zero-sum beliefs let them express their gratitude in apologetic form independently from the extent to which they have such feelings or perceive benefactors’ cost.
著者
山本 峻平 佐藤 弘隆 髙橋 彰 河角 直美 井上 学 矢野 桂司
雑誌
じんもんこん2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.199-206, 2017-12-02

本研究では,1978(昭和53)年に全面廃止となった京都市電の写真資料に撮影位置の情報を付加させたデータベースを構築し,それを活用した過去の記憶のアーカイブの可能性について検討する.過去の京都市電の写真の撮影位置を特定するには,過去の大縮尺の地図などを用いることが有効である.しかし,都市景観の急速な変化から,撮影場所を特定することが難しい場合も多い.そこで,本研究では,クラウドソーシングを用いた撮影場所の特定方法を提案した.また,一般市民を対象とした京都市電の写真の展示会を実施し,過去の写真と大縮尺の地図を用いて,人々の過去の記憶のアーカイブの作成を行った.その結果,写真や史資料に残らない,当時の生活や体験などに関する記憶を蓄積することが可能となった.
著者
山本 耕平
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.25-36, 2019 (Released:2020-08-31)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究は, 作曲家の林光 (1931~2012) が日本教職員組合主催の教育研究全国集会に講師として参加していた1960年代後半から1970年代を中心に取り上げ, 彼の音楽教育論を明らかにすることを目的とする。林は1950年代にうたごえ運動や労音などの社会運動と積極的に関わる中で, 「民衆芸術論」の実践をこれらの社会運動に見出していた。そして後に彼は1968年から教育研究全国集会に講師として参加し, 民衆芸術論を基に「歌うことを中心とした音楽教育」を構想した。歌曲の教材選択について林は教科書にこだわらず子どもたちが生き生きと歌えるものを選ぶべきだと考えていた。そして教師の伴奏については, 楽譜通りに弾くことよりもむしろ教師の持てる技術の中で子どもの歌声を引き出すことを重視していた。林の音楽教育論とは, 知識や技術を重視する傾向にあった当時の音楽教育に対し, 子どもが主体的に音楽を楽しむ中で人間的に成長していくことを目指すものであった。
著者
中井 大貴 河南 壮太 田原 映理 山本 有貴 福山 尚 五味 文 角所 考 岡留 剛
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.8, pp.419-430, 2023-08-01

非侵襲な検査を可能にする光干渉断層計(OCT: Optical Coherence Tomography)によるスキャン画像において,網膜の層の厚みと,視力や病状との関係性を捉えるためには,画像における網膜の層を抽出する必要がある.本研究では,網膜剥離を伴う眼科疾患におけるOCTスキャン画像で網膜の層を抽出する手法を提案する.その手法では,各層に対し,それぞれの特徴を反映したコスト関数の最小化により層の境界を決定し,とりわけ,治療後視力と相関があると考えられる厚みを求めるために必要な網膜剥離領域の輪郭線と内境界膜・外境界膜が抽出できる.その応用として,得られた境界から層の厚みに関する特徴量を算出し,中心性漿液性脈絡網膜症の治療後視力を予測するARDガウス過程回帰を構築し,予測に有意な特徴量が,中心窩における内境界膜から外境界膜までの長さと,外境界膜から網膜色素上皮までの長さの剥離前後での変化度であることを明らかにした.
著者
宮口 翔太 大西 秀明 小島 翔 菅原 和広 桐本 光 田巻 弘之 山本 智章
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.213-219, 2015-06-20 (Released:2017-06-09)

【目的】本研究の目的は,電流強度および電極貼付部位の違いが経頭蓋直流電流刺激(transcranial direct current stimulation;以下,tDCS)の効果に与える影響を明らかにすることとした。【方法】対象は健常成人9名とした。tDCS介入条件は,陽極電極を左一次運動野領域に貼付し,陰極電極を対側前額部または対側一次運動野領域(bilateral tDCS)に貼付し,1.0mAまたは2.0mAにて10分間刺激する計4条件とした。各条件におけるtDCS介入前後に経頭蓋磁気刺激により左一次運動野領域を刺激し,運動誘発電位を記録した。【結果】bilateral_2.0mA条件においてのみtDCS介入前に比べ介入終了2分後,10分後の運動誘発電位が有意に増大した。【結論】bilateral tDCSにより2.0mAにて刺激することで,大脳皮質の興奮性が安定して増大することが明らかになった。
著者
山本 荘毅
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.517-527, 1978-07-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
90
被引用文献数
1

The author summarized a history of development of groundwater hydrology in Japan. In general, the historical development of hydrology can be viewed through a series of periods and through series of events and articles such as number of books, papers and theories related to groundwater studies. Correlating to the historical division of Chow, Ven Te and that of Hida, N. et al., he proposed the division of development of groundwater hydrology in Japan as follows: a) Period of noninterference study (_??_1940), I-II1 b) Period of study of researcher's own free will ('40_??_'50), II2 c) Period of study under governmental readerships ('50_??_'55), II3 d) Period of cooperation with government and researcher ('55_??_'60), II3 e) Period of independant and free study ('60_??_date), IIISince these periods may overlap, their time division should not be considered exact. Generally speaking, all stages correspond to that of Chow's but those begin on about ten years later than those of western one. He tried to explain such a stage of development by political and socio-economic situations and stimulation of UNESCO's IHD. Because groundwater science is an interdisciplinal and practical science for needs of water resources in a country. Finally, he pointed out present problems of modern groundwater sciences on data with regards to accurracy, collection and coordinations, terminology and its redefinition, and groundwater law in Japan.
著者
鈴木 聡 山本 冬馬 小山 夏晴海 広谷 浩子
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.101-105, 2020 (Released:2020-03-31)
被引用文献数
2

神奈川県周辺におけるタヌキ Nyctereutes procyonoides の体サイズの変異に疥癬が与える影響を調査した。体重には季節変異があり、冬は大きく、夏は小さい傾向が見られた。しかし、この傾向は疥癬症に罹患した個体には見られなかった。夏季には、疥癬非罹患個体の中にも罹患個体より体重の小さい個体が見られたことから、疥癬による削痩が直接的な死因になることは少ないと考えられる。一方で、冬季には疥癬罹患個体と非罹患個体の体重に差が見られた。このことから、罹患個体が冬の寒さに耐えられるだけの十分な脂肪を蓄積できていないことが、罹患個体の直接の死因と推測される。サイズを示す計測項目間の相関検定においては、全ての組み合わせで有意な相関がみられたが、いずれも相関性は弱かった。このような相関のパターンは、疥癬によってもたらされる形態的変化には影響されないと考えられた。サイズを示す計測項目間で相関が小さいことは、タヌキの形態的特徴の一つであると考えられる。
著者
武田 峻 山本 直樹 長井 紀章 出口 粧央里 平松 範子 初坂 奈津子 永田 万由美 松島 博之 久保 江理 佐々木 洋
出版者
日本白内障学会
雑誌
日本白内障学会誌 (ISSN:09154302)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.76-82, 2022 (Released:2022-07-19)
参考文献数
32

核白内障(nuclear cataract: NUC)の発症要因として,高温環境による影響が報告されている.今回,体温に着目し,水晶体再建術施行例を対象とし,体温とヒト水晶体上皮細胞(human lens epithelial cells: HLECs)中ミトコンドリア活性およびATP含量の関係,体温とNUC発症リスクの関連について検討した.NUC患者では体温36.5℃以下患者(L群)に比べ36.5℃超過の患者(H群)でHLECs中のミトコンドリアゲノムチトクロムcオキシダーゼmRNA発現量は増加傾向を示した.また,H群におけるATP量はNUC患者が透明水晶体患者に比較し高く,NUC患者ではL群より有意に高値を示した.一方,ロジスティック回帰分析によるL群に対するH群のNUC発症リスクのオッズ比は1.131(95% 信頼区間: 0.583-2.193)であり,有意な関連性は認められなかった.
著者
山本 純也 東 和樹 小山 佳祐 清川 拓哉 万 偉偉 原田 研介
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.569-572, 2023 (Released:2023-07-27)
参考文献数
14

To extend the paralyzed fingers of a stroke victim with hemiplegia, we have proposed a low-dimensional control system for a robotic finger which can grasp an object between the robotic finger and the paralyzed human fingers. In this study, we newly propose an extra finger that can face multiple fingers with low-dimensional control. This can be realized by adding a rotational joint for moving the base of the robotic finger where it is controlled by the common low-dimensional synergy controller. Experimental results showed that the proposed extra finger could realize 33 grasping postures and 4 peg manipulation patterns.
著者
樋口 雄三 林 義貢 山本 竜隆
出版者
International Society of Life Information Science
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.91-95, 2007-03-01 (Released:2019-04-30)
参考文献数
4

前立腺癌の患者に内分泌療法とともに霊的施療を行い、著しい改善が認められた症例について報告する。患者は67歳で、2003年12月から夜間頻尿、尿勢低下を訴え、2004年5月に受診し、前立腺癌(stage D_2)と診断された。前立腺特異抗原(PSA)は39.01ng/ml、直腸内触診(DRE)において硬く、針生検では中分化-低分化腺癌(Gleason grade 4+5, score 9)であった。さらにCT、MRIにおいても確認され、また骨シンチグラフィーにより左坐骨に異常集積が認められた。6月より内分泌療法を行うとともに7月から5回の霊的施療を行った結果、2005年2月に前立腺癌の縮小と左坐骨を含め骨には異常なしと診断された。
著者
大場 亨 柳町 紀久子 木下 禮子 山本 直英 玉川 英則 伊藤 史子
出版者
Geographic Information Systems Association
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.59-66, 2002-03-29 (Released:2009-05-29)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

This paper estimates the benefit of a plan for information providing system on road administration by WebGIS. The system will reduce travel costs of visitors from their business establishments to a road administration section of a city office. The authors had individual interviews with the visitors at the section of the Ichikawa City Office. Annual total sum of travel costs was estimated at 37 million yen at most. This paper also proposes formulas which expect the frequency of visits or the total sum of travel costs from the spatial distribution of the business establishments without questionnaires.
著者
上田 凌大 今井 啓輔 山田 丈弘 猪奥 徹也 長 正訓 崔 聡 徳田 直輝 山本 敦史 加藤 拓真
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.303-309, 2023 (Released:2023-07-25)
参考文献数
21

【背景および目的】中大脳動脈水平部開存型の内頸動脈閉塞症(ICOPM)に対する急性期血行再建術(EVT)の成績と転帰関連因子を明らかにする.【方法】2014年5月から2021年7月にEVTを実施した511例中,ICOPM例を対象とし,背景因子と時間指標,治療内容,手術成績を検討した.対象を転帰良好群(3カ月後mRS 0–2:G群)と転帰不良群(同3–6:P群)に分類し,比較した.【結果】対象は36例で年齢85歳,NIHSS 17.5点,発症–来院時間200分,穿刺–再開通時間(P2R)84.5分(中央値),術中血栓移動9例,有効再開通32例であった.G群は13例でP群と比較しP2Rが短かった.【結論】EVTを受けたICOPM例は36例で,有効再開通32例,転帰良好13例と成績不良ではなかった.転帰良好例ではP2Rが短かったが,ICOPMは複雑な病態であり,P2R短縮が転帰改善に直結するとはいえない.
著者
田中 惣治 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.873-876, 2014 (Released:2015-01-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

〔目的〕麻痺側立脚期に膝が伸展する歩行(extension thrust pattern :以下,ETP)と膝の動きが健常者と近い歩行(normal knee pattern:以下,NKP)の片麻痺者に対し歩行時の麻痺側足関節の筋活動を分析した.〔対象〕対象は回復期片麻痺者14名とした.〔方法〕自由速度の歩行での麻痺側立脚期における麻痺側前脛骨筋と腓腹筋の筋活動を測定した.〔結果〕NPは単脚支持期と比較し荷重応答期で前脛骨筋の筋活動が有意に大きかったが,ETPは立脚期の間で前脛骨筋の活動に有意差を認めなかった.腓腹筋の筋活動は両者において立脚期の間で有意差を認めなかった.〔結語〕麻痺側立脚期に膝が伸展する要因として麻痺側荷重応答期の前脛骨筋の筋活動が関与している可能性が示された.
著者
岡本 健太郎 山本 潤 福田 光男 林田 健志 峰 寛明 大橋 正臣 田畑 真一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_388-I_393, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
6

著者らは,廃棄物を利用することで“ホタテ貝殻の人工礁”を開発した。貝殻礁は,貝殻の空隙に有機堆積物の捕食生物のための生息空間を作り,港内の有機汚染物質を除去するのに有効である.小型試験礁を用いて試した結果,設置後3年が経過しても浄化効果が持続することが確認された.そして,その過程は生態系モデルによって再現された.より大きな効果を得るため,大型ホタテ貝殻礁の設置を行った.蝟集生物量は減少していくが,それは貝殻礁中心部の海水交換不足のためと考えられた.そこで,通水孔を設けた“実用的ホタテ貝殻礁”を開発した.その結果,生物は中心部に集まり,その効果は証明された.
著者
遠藤 佑介 山本 尚人 石川 諄武 露木 肇 山中 裕太 嘉山 貴文 矢田 達朗 片橋 一人 佐野 真規 犬塚 和徳 竹内 裕也 海野 直樹
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.21-27, 2022-02-17 (Released:2022-02-17)
参考文献数
18

直接作用型経口抗凝固薬(以下DOAC)が広く使用されるようになり,患者の実情に即した適応用量以外の使用も増えている.われわれも一定数で低用量のエドキサバンを選択している.2014年から2019年までに経験した静脈血栓塞栓症は528例であった.経口抗凝固薬の使用なしが105例,DOACの通常用量が249例,エドキサバン低用量が98例,ワルファリンが78例であった.低用量エドキサバン使用例についてその患者背景と出血性・血栓性の有害事象について検討した.低用量エドキサバン96症例では,中枢型40例/末梢型56例,有症状11例/無症状85例で,低用量での使用理由は出血のリスクが48例,血栓伸展予防目的が48例であった.出血リスク症例48例中3例で出血のため抗凝固を中止したが速やかに止血が得られ,再開が可能であった.低用量エドキサバンは抗凝固なし/治療用量の抗凝固療法以外の選択肢として有用であり,出血リスクが高い症例に対しても有効な治療選択肢といえる.
著者
山本 輝太郎 久保田 善彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.23-26, 2022-03-27 (Released:2022-03-24)
参考文献数
13

新型コロナウイルスの世界的な流行によるいわゆる「コロナ禍」において,科学的根拠に乏しいとみなしうるさまざまな説(疑似科学的言説)も登場し,問題となっている.なかには「新型コロナワクチンを接種すると不妊になる」といった,それが蔓延することでより深刻な問題を引き起こしかねない説もあり,そうした説に傾倒する背景要因の究明は社会的な喫緊の課題であるといえる.本研究では,こうした新型コロナに関連する疑似科学的言説への態度に関わる背景要因の分析を行った.具体的には,新型コロナに関して科学的根拠に乏しいと思われる個別の説を収集,質問項目を作成したうえで,「科学に対する認識」や「新型コロナ以外の疑似科学的言説への態度」「科学知識」などとの関連性を検討した.クラウドソーシングを用いた調査を行った結果,新型コロナに関する疑似科学的言説への態度に対して,従来の疑似科学への態度や科学に対する認識,科学知識との一定の関連性が示された.これらの結果に基づき,科学に対する認識の次元にまで踏み込んだ教材開発およびその教育実践の重要性について提案したい.
著者
片山 一朗 濱崎 洋一郎 有馬 優子 天満 美輪 前田 亜紀 野村 昌代 武石 恵美子 山本 雅一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.648-654, 2000-10-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
12

シェーグレン症候群患者15名,膠原病患者9名,対照皮膚疾患患者14名において更年期症状と原疾患との関連性を検討した。非閉経群では膠原病疾患,皮膚疾患患者共にその更年期症状数は3前後であったが,シェーグレン症候群患者では7と倍以上の陽性数であり,統計的にも有意差が見られた。閉経群ではシェーグレン症候群で8.5とやや高い傾向が見られたが他群との有意差は見られなかった。更年期症状のうち,顔が火照る,足が冷える,汗をかきやすい,手足が痺れるなどの自律神経系ないし循環障害に基づく症状は非閉経シェーグレン症候群患者では80%近くに見られた。閉経群でもこれらの症状は高頻度に見られたが皮膚疾患群での陽性頻度と差は見られず,シェーグレン症候群で閉経前より更年期症状に類似した症状が見られるものと考えられた。閉経前のシェーグレン症候群患者では凍瘡(約80%)と眼の乾燥感(約50%)が多く見られたことより,更年期症状を主訴とする非閉経患者ではこれらの症状はシェーグレン症候群の存在を考える上で重要と考えられた。皮膚温の測定では冷水誘発前に健常人コントロールより3℃以上皮膚温の低下が見られた患者は閉経前,後いずれにおいてもシェーグレン症候群において多く,対照では一例も見られなかった事より皮膚温の測定は更年期症状を訴える患者におけるシェーグレン症候群患者のスクリーニングに有用であると考えられた。冷水負荷後の皮膚温回復時間はシェーグレン症候群,膠原病患者いずれも15分程度とその遷延化が見られた。
著者
本間 崇教 山本 悦史
出版者
学校法人松商学園松本大学
雑誌
松本大学研究紀要 = The Journal of Matsumoto University (ISSN:13480618)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.107-113, 2023-03-10

本研究は、学術的な観察対象にされることの少ない野球独立リーグ観戦者を対象とした基礎資料の作成を目的とする。調査対象として、BCリーグに所属する新潟アルビレックスBCを取り上げ、観戦者及び球団のマーケティング施策に関する定量データを収集した。データ収集は新潟アルビレックスBCのホームゲームにて実施し、マーケティング施策の参考となるデータ収集のために、調査前に球団職員へヒアリングを行いながら調査票を作成した。得られたデータを用いて、一部Jリーグ観戦者調査のデータと比較しながら、独立リーグ観戦者調査の特性について明らかにした。その結果、基本属性や行動特性においてJリーグ観戦者とは異なる性質が確認された。
著者
高田 祐輔 中谷 知生 山本 征孝 堤 万佐子 田口 潤智 笹岡 保典 藤本 康浩 佐川 明 天竺 俊太
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Bb0768, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 近年、治療用装具として長下肢装具を積極的に活用することの有用性が認識されつつある。脳卒中片麻痺患者の歩行練習に際し、長下肢装具を使用する利点の一つとして、ターミナルスタンス(以下Tst)における股関節伸展・足関節背屈運動が保障されると考えられており、先行研究においても短下肢装具装着下に比べ足関節背屈運動の可動域が拡大することが明らかとなっている。しかし長下肢装具を装着することによる、股関節伸展運動への影響についてまとまった報告はこれまでなされていない。そこで今回、長下肢装具を装着することが麻痺側立脚期の股関節伸展角度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、短下肢装具装着下との比較検討を行ったのでここに報告する。【方法】 対象は当院入院中の脳卒中片麻痺患者6名(左片麻痺3名・右片麻痺3名、男性3名、女性3名、平均年齢69±10歳)とした。発症日からの平均経過日数は155±39日で、下肢Bruunstrom Recovery Stageは3が4名、4が2名であった。すべての対象者が当院にて長下肢装具作成後カットダウンを行っており、計測時点では短下肢装具を用いた歩行トレーニングを行っていた。作成した下肢装具はいずれも足継手に底屈制動・背屈フリーの機能を有する川村義肢社製Gait Solutionを使用していた。計測は長下肢装具、短下肢装具それぞれ前後3mの予備路を設けた10mを自由速度で歩行する様子を、矢状面から三脚台に固定したデジタルカメラにて撮影した。すべての対象者は杖を使用し、計測時は転倒防止のため理学療法士が見守った。デジタルカメラは床面から1.2mの高さの位置に歩行の進行方向と垂直になるように、歩行路から4m離れた位置に設置した。股関節角度は倉林らの報告を参照に股関節点(上前腸骨棘点と大転子最外側突出点を結ぶ線上で大転子最外側突出点から1/3の位置)をとり、上前腸骨棘、膝関節外側裂隙を結んだ線のなす角とした。対象者には上記3点にマーカーを貼り付け、静止立位時の角度を基準にそこからの増減角度を計測した。計測は2回実施し、画像解析ソフト(NIH ImageJ)を利用し得られた3歩行周期分の平均角度を、Wilcoxonの符号付順位和検定を用い統計学的処理を行った。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は所属施設長の承認を得て、対象者に口頭にて説明し同意を得た【結果】 Tstでの股関節伸展角度は、長下肢装具装着下では5.8±2.3°であり、短下肢装具装着下では-0.9±2.1°であった。すべての対象者が長下肢装具装着下ではTstにて股関節伸展位を保持でき、短下肢装具装着下と比べ股関節伸展角度が有意に増大していた。短下肢装具装着下ではTstで股関節伸展位を保持できた者は3名(1±0.4°)であり、屈曲位となった者が3名(-2.7±0.9°)であった。【考察】 脳卒中片麻痺患者の歩行の特徴の一つとして、Tstにおける股関節伸展運動の不足が挙げられる。吉尾らは、股関節伸展運動の不足により股関節屈筋群が十分に伸張されず、遊脚初期に必要な筋力の発揮が困難となると述べている。当院において長下肢装具を積極的に使用する目的の一つは、不足する股関節伸展運動を補い、力学的に有利なアライメント下で歩行練習が行えるという点にある。しかし、実際に短下肢装具装着下と比較しTstでの股関節伸展角度が増大しているのかについては目測の域で終わってしまうことが多かった。今回の調査から、すべての対象者において長下肢装具装着下のTstの股関節伸展角度は有意に拡大し、長下肢装具の有する役割が明らかとなった。一方、短下肢装具装着下ではTstにて股関節伸展位を保持することが可能な者と不可能な者の2群に分けられた。一般的に長下肢装具におけるカットダウンの基準は、立位での麻痺側下肢の支持性、歩行時の下肢アライメントなどが挙げられている。今回、股関節屈曲位となった3名について運動学的見地からはカットダウンの時期でなかった可能性があるが、病棟での生活動作においても使用することを目的に短下肢装具へと変更していた。理学療法場面においては、より有利なアライメント下での歩行練習としては長下肢装具が適していると考えられるが、カットダウンについては症例の個別性も配慮する必要性があると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究は長下肢装具を装着することで、短下肢装具と比較しTstでの股関節伸展角度が有意に増大することを示したものである。このことにより、脳卒中片麻痺患者の歩行練習において長下肢装具を使用することの利点がより明確にされたものと考える。