著者
池 睦美 中村 勝 小西 健一 津畑 豊 五十嵐 宏三 齋藤 徳子 森岡 哲夫 島田 久基
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.561-570, 2021 (Released:2021-11-28)
参考文献数
19

【背景】透析患者において睡眠障害の訴えの頻度は高いものの,その実態については十分に解明されていない.【目的・方法】透析患者の睡眠評価のため,維持血液透析患者41名に自記式ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)による主観的評価とアクチグラフによる客観的評価を行った.【結果】PSQIでは,睡眠薬群では全例,睡眠薬なし群でも40%が睡眠障害ありと判定された.アクチグラフでは,入眠障害・中途覚醒の指標が不良で,総睡眠時間が短縮していた.睡眠薬なし群は,睡眠薬群より中途覚醒が多く,これは日中の覚醒困難の訴えと関連していた.【考察】健常人の報告例と比較し,主観では中途覚醒が頻回で,客観には入眠障害を示し中途覚醒も頻回であった.【結論】透析患者の睡眠は不良であり,睡眠薬の服用は中途覚醒に一部奏効しているが,入眠障害は残っている.睡眠薬なし群では入眠障害の訴えが表れにくく,日中覚醒困難を伴う中途覚醒とともに問題となる.
著者
島田 潤 渡辺 祐基 小峰 幸夫 佐藤 嘉則 木川 りか
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

紙資料を食害するシミ類は、日本の博物館・美術館・文書館に広く分布しており、貴重書の保存において重要な害虫の一つである。これまで国内で知られているシミとは異なる種が博物館と文書館で相次いで確認された。いずれも生息個体数が多いという共通点があったことから、既知種とは生態が大きく異なり強い繁殖力を持つことが考えられる。本研究ではこの未知種に関して、全国の施設での分布状況の把握を行い、本種を特定し、食性や繁殖力などの生態学的な特徴を解明する。さらに、文化財IPMの考え方に基づく有効な新規防除方法の確立を目的とする。貴重書を始めとする紙資料の保存の観点から、早急な調査と対策が必要とされる。
著者
齋藤 晃 島田 紀朋 新谷 稔 山根 建樹 藤瀬 清隆 小林 正之 戸田 剛太郎 鳥海 弥寿雄 柳沢 暁
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.605-611, 2005 (Released:2005-06-14)
参考文献数
12
被引用文献数
3

症例は30歳,女性.黄疸と右季肋部の腫瘤を自覚し当科受診.貧血および間接型優位の高ビリルビン血症と腹部USにて膵頭部に60 mm大の嚢胞性腫瘤を認め入院.腫瘤はCTにて隔壁が一部造影される低吸収を示したが,ERCPや血管造影の特異的所見や腫瘍マーカーの上昇はなく,確定診断に至らなかった.貧血,黄疸は遺伝性球状赤血球症によるものと診断されたが,腫瘤は幽門輪温存膵頭十二指腸切除にて膵神経鞘腫と診断された.
著者
榊田 希 佐藤 実佳 貫洞 里美 鹿島 かおり 島田 慎一 石井 里枝
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.151-157, 2022-08-25 (Released:2022-08-30)
参考文献数
32

埼玉県内の市販国産鶏肉および市販国産豚肉を対象として,Campylobacter jejuni/coli,サルモネラ,腸管出血性大腸菌(EHEC),腸管毒素原性大腸菌(ETEC), Yersinia enterocolitica,Escherichia albertiiによる汚染状況を調査した.カンピロバクターは鶏肉の35.7%(60/168検体),豚肉の7.3%(14/190検体)から検出された.鶏肉においてはC. jejuniが優勢であり,豚肉においてはC. coliが優勢であった.サルモネラは鶏肉の58.1%(100/172検体),豚肉の19.9%(41/206検体)から検出された.検出率の高い血清型は,鶏肉由来株においてはS. Schwarzengrund,豚肉由来株においてはS. Typhimuriumの単相変異株であった.EHECは鶏肉82検体および豚肉124検体からは検出されなかった.ETECは鶏肉の0.6%(1/160検体),豚肉の2.4%(5/206検体)から検出された.Y. enterocoliticaは鶏肉83検体からは検出されず,豚肉の9.3%(18/193検体)から検出された.特にタンの検出率が21.0%(13/62検体)と高かった.E. albertiiは,鶏肉49検体,豚肉59検体からは検出されなかった.鶏肉はカンピロバクターおよびサルモネラによる汚染率が高いこと,また豚肉はカンピロバクター等に加え,ETECおよびY. enterocolitica血清型O3により汚染されていることが確認された.
著者
江浜 律子 島田 有紀 仲西 城太郎 萩原 基文 岩渕 徳郎
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.16-23, 2018-03-20 (Released:2018-03-20)
参考文献数
21

一般に健康な毛髪を育むには頭皮の健康が重要であると考えられているが,これまでに頭皮状態が毛髪物性に及ぼす影響を遺伝子レベルで検証した報告はない。本研究では,日本人女性101名の頭皮状態を観察し,頭皮トラブルの程度が高い被験者ほど皮脂量が多く,また毛髪のハリ・コシが弱いことを明らかにした。これらの結果から,皮脂由来の刺激物質が頭皮トラブルを引き起こし,それに伴い放出される炎症性因子を介して毛包細胞における毛形成を阻害するという仮説に基づき,培養実験モデルでの検証を試みた。外毛根鞘細胞に過酸化脂質を作用させると炎症性サイトカイン(IL-1,IL-8)の遺伝子発現が亢進し,器官培養毛においてこれらの炎症性サイトカインがキューティクル強度に寄与するKAP5.1の遺伝子発現を低下させた。さらに過酸化脂質等による炎症性サイトカインの遺伝子発現亢進を抑制する植物成分を見出した。以上より皮脂由来物質等に起因する頭皮トラブルに伴い炎症性因子が亢進し,毛髪形成が遺伝子レベルで阻害されて新たに作られる毛髪のハリ・コシなどが低下することが示唆され,また,それを防ぐ植物由来成分の可能性を提示した。
著者
赤林 英夫 敷島 千鶴 島田 夏美 竹ノ下 弘久 加藤 承彦 井深 陽子 稲葉 昭英 野崎 華世 川本 哲也 中村 亮介 直井 道生 佐野 晋平 田村 輝之 栗野 盛光
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2021-07-05

新型コロナパンデミックは、子供の教育格差研究に対し、取り組むべき課題と研究手法との双方に、変革の必要性を迫っている。社会のオンライン化に伴い、家庭環境が子供に与える影響が強まることが懸念されている。また、教育格差拡大を防ぐために、世界各国で、新たな政策的対応の必要性が議論されている。そこで、本研究では、全国の子供を対象とし、オンラインにより、ポストコロナの新たな課題に対応した調査や実験による研究手法を考案する。それらを通じ、コロナ禍が子供の学力や日常生活に及ぼした影響を厳密に分析し、国際比較も行うことで、コロナ後の研究と政策のあり方を提示する。
著者
東 修平 森田 雅文 真野 翔 島田 亮
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.293-297, 2018-11-15 (Released:2018-11-30)
参考文献数
9

今回われわれは,下行大動脈にエントリーを有する慢性B型解離の偽腔の拡大に対して,偽腔から起始する右腎動脈に対してVIABAHNを用いて再建およびリエントリー閉鎖を行ったうえで,TEVARによるエントリー閉鎖を施行した症例を報告する.症例は78歳,男性.発症時期不明のB型解離に対して過去に2回のTEVARによる治療歴がある.外来フォロー中に残存偽腔の拡大傾向を認め,胸部下行大動脈の最大径が58 mmとなったために手術適応となった.大動脈造影CTでは胸部下行大動脈に明らかなエントリーを有し,右腎動脈は偽腔から起始しており,その根部はリエントリーを形成していた.その他の腹部分枝はすべて真腔から起始し,また,術前大動脈造影検査にて,右腎動脈起始部以外に明らかなリエントリーは認めなかった.手術は,VIABAHNを腹部大動脈真腔から偽腔を通過して右腎動脈に留置したうえでTEVARによるエントリー閉鎖を行った.術後経過良好で,脊髄梗塞等の合併症を認めることなく,偽腔は完全に血栓閉鎖され,右腎動脈血流も良好であった.術後10日目に独歩退院となった.術後10カ月目のフォローアップのCTでは血栓化偽腔の縮小傾向を認めた.慢性大動脈解離に対するTEVARにおいては,エントリーおよびリエントリーの位置等によっては,偽腔血流が残存して,期待どおりの大動脈リモデリングが得られない症例が存在する.特に腹部分枝が解離によりパンチアウト状態でリエントリーを形成している症例では,分枝は偽腔起始となり,TEVARによるエントリー閉鎖だけでは不十分となる可能性がある.今回われわれの経験した,偽腔から起始する右腎動脈に対してVIABAHNを用いて再建およびリエントリー閉鎖を行ったうえで,TEVARによるエントリー閉鎖を行う方法は,慢性B型大動脈解離における偽腔拡大に対するTEVARにおいて有用な方法である可能性があり,報告する.
著者
小川 陽子 島田 伸敬
出版者
横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)
雑誌
横幹連合コンファレンス予稿集 第8回横幹連合コンファレンス
巻号頁・発行日
pp.E-2-4, 2017 (Released:2018-02-18)

Interfaces for people with severe motor impairments that enables them to interact with a healthy person and manipulates a wheelchair by extending the body motion ability through information equipment recently has been put to practical use. It is well known that tongue and gaze motion can remain even in much serious stage. It is a problem to assure the electric insulation of the device in oral cavity. In this research, we propose a pointing I/F using the intraoral image taken by a small camera for the endoscope available at low cost. Since the individual movement of the tongue is largely different according to disease condition and it may changes over time, a learning signal to the CNN is dynamically generated and adapted to ensure the invariant operative output range.
著者
島田 恭子 島津 明人 川上 憲人
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.76-84, 2016 (Released:2017-06-23)

本研究では、未就学児を持つ日本人の共働き夫婦496組を対象に、ワーカホリズムとパートナーの精神的健康との関連における心理社会的メカニズムを検討した。ワーカホリズムがパートナーの精神的健康に影響を及ぼす心理社会的プロセスとしては、これまでに、パートナーのワーク・ライフ・バランスの悪化(家庭役割から仕事役割への葛藤の上昇)、パートナーへの社会的支援の低下、の2つのプロセスが明らかにされてきたが、本研究では、第3のプロセスとして、パートナーとのコミュニケーションに注目した。具体的には、自己のワーカホリズムが自己の心理的ストレス反応の上昇と職務満足感の低下を導き、パートナーとのネガティブなコミュニケーションを増加させることで、パートナーの心理的ストレス反応の上昇と家庭生活満足感の低下につながることを想定した。東京都某区の保育園に児を通わせる共働き夫婦を対象に自記式質問紙による調査を行った。想定した因果関係を共分散構造分析により分析し、モデル全体の妥当性を確認後、概念間の因果係数によりモデル各部の検証を行った。その結果、仮説モデルは男女ともに支持された。すなわち自己のワーカホリズムは、自己の心理的ストレス反応の上昇および職務満足感の低下を媒介して、パートナーへのネガティブなコミュニケーションの増加につながり、さらにパートナーの心理的ストレス反応の上昇とパートナーの生活満足感の低さにつながること、これらの関連は夫から妻、妻から夫のいずれの方向にも当てはまることが明らかになった。共働き夫婦のワーカホリズムに注目し、その影響が自己からパートナーへと至る心理社会的プロセスを大規模なカップルデータを用いて検討した本研究は、ワーカホリズムおよびワーク・ライフ・バランスに関する研究と実践に重要な示唆を与えるものと考えられる。
著者
鈴木 晃志郎 島田 章代 伊藤 修一
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.50-65, 2018-06-28 (Released:2019-08-21)
参考文献数
35

対象者が未知の財やサービス,製品にアクセスするときに依拠するのがいわゆる口コミ(WoM)である。観光行動もサービスを選択・消費する消費行動の一つであり,リピート率の向上や顧客満足度の上昇に及ぼすWoMの効果に注目した分析の対象となりうる。そこで本研究は富山県の湧水池「穴の谷霊場」をとりあげ,来訪者の特性を分析するとともに,入込客数の維持にWoMがもたらす効果を調査した。半構造化インタビューを交えたアンケート調査により来訪者86人の類型化を行いその動機を分析したところ,病気治療,健康維持,味の良さでカテゴリー化される一方,当初の霊場としての場所性はその影響力を大きく失っていた。また来訪者の76%が信頼のおける肉親や知人からのWoM情報を最初の来訪のきっかけに挙げ,WoM研究の知見を裏付けた。開祖が世を去って40年,穴の谷は宗教的な聖地としてよりも,霊水を求める一種の自然信仰に支えられた観光地へと変容を遂げており,WoM効果は観光客数の維持に少なからず貢献していると考えられる。
著者
島田 昌和
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.46-55, 2003-06-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
19

新たなビジネスを創出するには,さまざまなタイプの経営者に対して事業に適合した枠組みを準備し,適切に資金を供給することが不可欠である.資本主義草創期の渋沢栄一は,株式会社による公益モデル,合資会社によるハイリスク・ハイリターンモデル,合名会社と匿名組合による個人ビジネスモデルを提供した.同時に株式市場の持つ信用創造機能をフルに活用して様々なタイプの経営者への資金供給を自らが率先して担った.
著者
島田 達巳
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.32-43, 2001-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
28

情報システム(IS)のアウトソーシングは,「請負的」から「戦略的」の度合いを高めつつある.本稿では,社会ISの形成に向けて,民間企業と自治体との比較の視点から,ISのアウトソーシングの背景は何か,民間企業と自治体におけるアウトソーシングの違いは何か,そしてインターネット時代におけるアウトソーシングがどのような方向性を持ちどのような課題を抱えているのかについて述べる.