著者
白井 克彦 林 良彦 平田 裕一 久保田 淳市
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.706-714, 1985-07-15
被引用文献数
3

日本語文の構造は 文の構文的・意味的な構造に大きく関わっている.よって 日本語文の処理を行う場合 その係り受け構造を明らかにすることが重要である.計算機により日本語文の係り受け解析を行う研究は広く行われているが そのために必要な知識の獲得・構造化を半自動的にかつ適応的に行うための研究は少ないように思われる.本論文では テキストデータに対する分析から直接的に以後の成長の核となる初期辞書データベースを構成する方法 および成長のための学習機能について検討した.この辞書データベース中では 単語はその係り受け特性に基づいてクラスタリングされ 分析対象としたテキスト中の単語間の係り受け関係は クラスタ間の係り受け可能関係として抽象化されて記述される.本辞書データベースは 実験文解析システムESSAYによる文解析に適用され その評価を受ける.さらに 解析が不成功である文において そのネガティブな状況より獲得される情報を用い 学習構造化の処理を受ける.このように 言語要素(単語等)の使われ方に基づいて知識の獲得を行うため 対象世界における拘束を緩やかに含んだ形の知識を得ることができる.また辞書データベースという記述的な形で構造化を行うため それ自身インクリメンタルに成長することが可能となった.
著者
加藤 敏洋 平田 富夫 斉藤 豊文 吉瀬 謙二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.1750-1757, 1995-12-25
被引用文献数
11

本論文では,サイズがN×Nの2値画像のユークリッド距離変換をO(N^2)時間で実行するアルゴリズムを与える.距離変換とは,入力として与えられた2値画像の各画素についてそこから最も近い0画素への距離を求める処理で,ディジタル画像処理における基本的な処理である.このアルゴリズムは,4近傍距離や8近傍距離などユークリッド距離以外の他の距離についてもアルゴリズム中の距離関数を置き換えるだけで距離変換が実行でき,その意味で一般的な距離変換アルゴリズムとなっている.また,p(1≦p≦N)台のプロセッサを用意すればO(N^2/p)時間の並列アルゴリズムが得られ,これまでの並列アルゴリズムより効率が良い.
著者
山本 裕二 工藤 和俊 山田 憲政 北原 俊一 平田 智秋 宮崎 真 平川 武仁 木島 章文 奥村 基生 郷原 一寿 門田 浩二 山際 伸一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,様々なスポーツ技能の生成機序を力学系の観点から統合的に理解することを目的とした.その結果,ブランコ漕ぎの協応パタンは振り子の等時性にほぼかなっていること,音に合わせたダンスでは,運動周波数が高い場合でも熟練者は逆相同期を維持できること,卓球では技能水準を切替ダイナミクスのフラクタル次元で評価できること,剣道では二者間距離によって詰め引き速度の相対位相が切り替わること,タグ鬼ごっこでは,学習に伴い両者の詰め引き速度の相対位相が逆相同期になること,サッカーの3対1ボール保持課題における三者の連携パタンは,技能レベルによって環状連結振動子における対称性のホップ分岐理論で予測されるパタンを示すこと,サッカーゲームのパス行動にはベキ則が見られることなどを明らかにした.
著者
平田 邦男
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.291-294, 1989

本論説は1990年8月6日に東海大学湘南校舎で開催された第7回物理教育研究大会における講演『物理カリキュラム研究のすすめ』を編集部の依頼により要約したものである。高校物理教育の危機は教育現場の荒廃とは無縁ではないこと,高校物理カリキュラム研究の視点として,構成主義者的学習論の重視,数式物理の追放,文系志望者のための物理カリキュラムのあり方の3点を挙げたこと,および次期学習指導要領の改訂に向けての準備について述べた。
著者
松尾 正輝 平田 雄也 Syafei Wahyul Amien 黒崎 正行 黒木 祥光 宮崎 明雄 斉 培恒 尾知 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIP, 信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.202, pp.17-22, 2009-09-17

本報告では,4Kデジタルシネマ画像の無線伝送システムを提案する.本システムでは,次世代無線方式として国際標準化に向けて動き出したIEEE802.11TGac(ac task group)を基本とした伝送速度1.2Gbpsの無線伝送システムを用いる.このシステムは5GHz帯を使用し,80MHzの周波数を用いることで33メートルの伝送距離を実現した.また,ビデオデータをJPEG2000符号化を用いて圧縮し,かつ,誤り耐性機能を持たせることにより,無線伝送での誤りの影響を低減しつつ,1.2Gbpsの伝送速度での伝送を可能としている.シミュレーションにより,本システムの有効性を示し,リアルタイムアプリケーションの実例を示す.
著者
大川 和男 中元 崇 井上 義朗 平田 雄志
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.352-360, 2005
被引用文献数
6 7

三次元屈曲チャネル内での流体層の分割,180°回転,再合流・重ね合せを組み合わせて流体を多層化する静止型マイクロミキサーの単位エレメントの構成則を求め,それに基づいてY字分岐と120°と60°の屈曲チャネルからなるY型平板静止マイクロミキサーを開発した.正方形のチャネル断面をもつY型ミキサーを用いてヨウ素の脱色実験を行い,混合完了に必要な単位エレメント数<i>n</i>を測定した.レイノルズ数<i>Re</i>が低い場合には<i>n</i>は<i>Re</i>の増加とともに増加した.1単位エレメント通過ごとに厚さが1/2となる流体層内の混合過程をモデル化し,<i>n</i>を表す関数関係を導出し,この関係に基づいて<i>Re</i>が低い場合の<i>n</i>の実験結果を相関した.<i>Re</i>が高い場合,<i>Re</i>の増加とともに<i>n</i>は減少した.この場合の<i>n</i>については上記の関数に用いられる変数を用いて実験的に相関した.<i>Re</i>を50まで変化させてCFD解析を行い,<i>Re</i>の影響を調べた結果,<i>Re</i>=50では流体層は三次元屈曲チャネル内で発生する二次流によって大きく変形していることがわかった.この界面の変形が混合速度を加速させ,<i>n</i>を減少させる.さらに,ミキサーを構成するチャネルのアスペクト比<i>a</i>/<i>b</i>の影響をCFD計算によって検討した.<i>a</i>/<i>b</i>が2.0以上では流体界面の湾曲が大きく,<i>a</i>/<i>b</i>が0.2以下では分岐チャネルで流体が均一に分割されない.したがって,本研究で開発した平板静止型ミキサーにおいて理想的な流体層の分割・再合流を進行させるためには,できるだけ正方形に近いアスペクト比をもつ流路断面を採用することが望ましい.
著者
山名 伸樹 亀井 雅浩 平田 晃 竹内 愛国 広兼 信夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.30-37, 1998-04-30
被引用文献数
3

収量が低下した草地の収量回復や草種構成の改善などの作業を省力的かつ低コストに行うため, ロータリ耕転装置をベースにして細幅作溝を行い, シードペレットあるいは種子, の追播, 施肥, 鎮圧を1行程で行うペレット種子用と通常の種子用作溝型簡易草地更新機を開発した。 ペレット用更新機は, 作業幅2.2mで, ホッパ容量, 機体質量等の改善点はあるが, 良好な作業精度は確保できた。また, 作溝条数8条, 作業幅2.16mで作溝部を2枚の直刃とL刃で構成した種子用の更新機(2号機)での更新作業は, 植生改善, 草地の収量増に効果的であることが実証できた。なお, 種子用2号機の適応トラクタの大きさは44kW以上と判断された。
著者
平田 陽一 松倉 健志 田島 敬史 田中 克己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.69, pp.137-144, 2000-07-26
被引用文献数
5

従来のWeb検索における適合フィードバックでは,ユーザがサンプルページの内容を見て評価し,その評価をもとに再検索または検索結果の再構成を行なう.その際,ページの評価は「良い」または「悪い」の2種類であった.そのため,従来の適合フィードバックの手法は,「良い」と評価されたページに類似したページを獲得するのには有効だが,ユーザの要求が「この話題についてのより詳しいページが欲しい」などのように複雑になると,十分にユーザの意図を汲み取ることが難しく,うまく機能しないことがあった.そこで,本研究では,単に「良い」または「悪い」の二元論的な評価に基づいて,サンプルページに類似するページを集めるのではなくて,サンプルページと実際に欲しいページの違いを評価として与えることによって,そのような差異を持つページを探してくれるような,意味的な適合フィードバック機構を提案する.ページ間の差異としては,各ページ中の単語数や,お互いのページ内の単語の共起度を用いて,ページ間の情報量や話題の広がりの相対的な差を測定する.In conventional relevance feedback for Web query systems, the user evaluates some sample pages, and then based on that evaluation, the original query is revised, or the query results are reorganized. In that evaluation, sample pages are classified as good or bad. This approach is effective to find pages similar to the pages evaluated as good. In some cases, however, the users want to specify their requirements more specifically, such as, "I want pages discussing this topic in more detail." In the usual relevance feedback, the users cannot express such requirements in the evaluation. In this paper, we propose a framework where the users can express such requirements, which we call semantic relevance feedback. In our framework, the users specify the difference between a sample page and pages they want. We estimate the difference between pages based on the amount of information and the extent of the topic in each page. We measure the former by the number of word occurrences, and measure the latter by the ratio of cooccurrence of words in pages.
著者
中野 尚夫 平田 清則 大西 政夫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.175-180, 2004-06-05
被引用文献数
1

一辺15,20,25,30,35,40cmの正方形播(1本仕立て,44.4,25.0,16.0,11.1,8.2,6.3株/m^2)のもとで,ダイズ(品種タマホマレ)における栽植密度と生育・収量の関係を光受容の変化から検討した.m^2当たり茎重は,m^2当たり分枝数と高い相関関係(r=0.74^<**>)にあり,栽植密度が高いほど高かった.分枝の発生率は,その発生する節位置の相対照度が35%程度以上では照度による差がみられなかったが,それより低い照度では照度の低下に伴って低下した.また,分枝の発生した節の相対照度が10%程度より低いと分枝の生存率が急速に低下し,5%程度の相対照度では約60%の生存率となり,個体当たりの分枝数は栽植密度が高いほど少なく,15cm区の分枝数は40cm区の約1/3になった.このためm^2当たり茎重は,密植に伴って増加程度が小さくなった.子実収量は,11.1株/m^2で最も高く,それより密植,あるいはそれより疎植になるに伴って低下する傾向にあった.子実収量はm^2当たり着莢数と有意な相関関係にあった.m^2当たり総節数,同着花数は,同分枝数と0.99^<**>あるいは0.93^<**>の高い相関関係にあり,密植ほど多かった.m^2当たり着莢数は,結莢率が節位置の相対照度が20%程度以下でその低下に伴って低下して密植ほど低かったため,栽植密度に伴う増加が同総節数,同着花数に比べ一層抑えられ,さらに一莢粒数も密植ほど少ない傾向にあった.以上から密植では分枝,節数,着花数に加え,結莢率,一莢粒数も低下するため,20cm区や15cm区のような密植では25cm区や30cm区よりもかえって子実収量が低い傾向になったと考えられた.
著者
平田 拓也 舩津 敏之 毛戸 祥博 阿久沢 忍 秋保 啓 西田 明登 笹又 理央 宮田 桂司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.5, pp.281-291, 2009 (Released:2009-05-14)
参考文献数
35

イリボー®錠(ラモセトロン塩酸塩)は,男性における下痢型過敏性腸症候群(IBS)治療薬として2008年に上市された,強力かつ選択的なセロトニン5-HT3受容体拮抗薬である.ラットを用いた薬理試験において,ラモセトロンは恐怖条件付けストレス(CFS)およびコルチコトロピン放出因子(CRF)により惹起される排便亢進を用量依存的に抑制し,その効力は他の5-HT3受容体拮抗薬や既存のIBS治療薬よりも強力であった.また,これらの排便異常を抑制する用量とほぼ同じ用量範囲で,ラモセトロンはCFSによる大腸輸送能亢進およびCRFによる大腸水分輸送異常に対しても有意な改善効果を示したことから,その排便異常抑制作用には,ストレスによる大腸輸送能および水分輸送の異常に対する改善作用が寄与していると考えられた.さらに,ラモセトロンは拘束ストレスによる下痢および大腸痛覚閾値低下をほぼ同じ用量範囲で有意に抑制したことから,ストレスによる排便異常および大腸痛覚過敏のいずれにも有効であることが明らかとなった.一方,臨床においては,RomeII基準に合致した下痢型IBS患者を対象に,第II相および第III相多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験を実施した.その結果,ラモセトロン5μgの1日1回12週間投与は,全般症状,腹痛・腹部不快感および便通異常のいずれに対しても優れた改善効果を示し,プラセボに対する優越性が確認された.また,同じく下痢型IBS患者を対象に実施した長期投与試験の結果から,ラモセトロンの治療効果が長期間持続するとともに,効果や副作用の発現に応じて用量を適宜増減することで,より高い有効性と安全性が得られることが明らかとなった.以上,非臨床薬理試験および臨床試験の結果から,ラモセトロンは下痢型IBS患者において便通異常と腹痛をともに抑制し,その症状の寛解に極めて有効な薬剤であると考えられる.
著者
平田 勝哉 清水 康介 福原 憲典 山内 一樹 川口 大輔 舟木 治郎
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.75, no.749, pp.28-39, 2009-01-25

In this study, we deal with the tumbling, which is rotating motion with the axis perpendicular to the falling direction. Our purpose is to reveal the fundamental aerodynamic characteristics of the tumbling, experimentally. Regarding a test plate, we consider a prism with a rectangular cross section with a depth-to-width ratio λ of 0.3. The results are as follows. The reduced terminal rotating rate Ω^*, the lift coefficient C_L, the drag coefficient C_D and the lift-to-drag ratio C_L/C_D are independent of the aspect ratio AR, when AR is greater than 10. As the inertia momen ratio I^* increases from zero to 50, Ω^*, C_L and C_D increase. However, Ω^*, C_L and C_D become almost constant, at I^* greater than 50. We propose the empirical formulae to predict them. At low I^*, the tumbling shows a dominant periodicity of 360deg.
著者
曽田 五月也 和田 純一 平田 裕一 山中 久幸
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.59, no.457, pp.29-36, 1994
被引用文献数
10 6

The damper investigated is an assemblage of a couple of units composed of two parallel steel plates and a layer of epoxy visco-elastic material (VEM) between them. When subjected to shear deformation, the VEM exhibits a hysteretic property or an energy absorbing capacity. The purpose of this paper is to present a method to construct a mechanical model to exactly simulate the dynamic behaviors of this damper, paving the way to putting it to practical use in the passive vibration-control design of buildings. A series of cyclic loading tests on the damper reveals that an equivalent stiffness and an equivalent damping coefficient, representing the hysteretic properties of the damper, are mainly dependent on the loading frequency and the current temperature. A linear three-element dashpot-spring model proposed has been confirmed capable of simulating these properties exactly .
著者
間宮 良美 平田 亨 栃木 真人 成田 佳乃 秋谷 司 古堅 進亮 石橋 啓一郎 小川 正至 三木 誠
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.1969-1974, 1993-11-20
被引用文献数
7

上部尿路結石に対するESWLは徐々に外来施行での治療が中心となり,我々の施設では78.6%,最近2年間に限れば90%近くと大半を占めるようになった.そこで,その有用性・安全性・問題点などを見極めるために,外来ESWLを行った最初の500腎について検討した.対象は1989年3月から1992年1月までに,LithostarでESWLを行った600例636腎のうち,外来のみで治療を行った481例500腎(両側19例)で,性別は男367・女114例,年齢は16〜77歳であった.結石の部位は腎結石227・尿管結石273腎で,結石の大きさは90%以上が長径20mm以下の結石であった1腎あたりの平均治療回数及び衝撃波数は1.4回・6,988発で,全体の74%が1回の治療のみで,3回以上を要したものは9%であった.また,補助的処置を要したのは23腎(D-Jステント留置が5腎,尿管カテーテル挿入が18腎)のみで,474腎(94.8%)は補助的処置なく実施可能であった. 3ヵ月後の治療成績を評価可能であった470腎についてみると,完全排石率は腎結石70.3%・尿管結石84.5%,全体では78.1%と満足すべき結果であった.合併症として,実施帰宅後に疼痛のため当院または近医にて鎮痛処置を受けたものが4.6%,38℃以上の発熱が2.5%などが認められたが重篤なものはなかった.しかし,その実施にあたっては特に術後合併症の可能性についての十分な説明と,慎重な症例の選択が必要と考えられた.