著者
小出 祐一 石垣 博邦 松永 博充 福士 直己 白木 智美
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.77, no.774, pp.319-328, 2011 (Released:2011-02-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

In the seismic design of the boiling water reactor, we need to estimate the dynamic insertion behavior of control rods into the core region to secure the safety of the reactor under seismic events. In particular, estimation of the insertion time is one of the most important design tasks affecting the scrammability of the reactor. We developed a numerical analysis model to predict the control rod insertion time under seismic events using multibody dynamics. The effect of the interaction force between the control rod and the fuel assemblies is considered in three-dimensional contact analysis. This interaction force causes resistance force acting on the control rod under insertion. The hydraulic control unit and the control rod drive, which provide the control rod with driving force, were modeled in the concentrated parameter system considering dynamic characteristics, such as the inertance of the working fluid in the scram piping and the capacitance of the working gas in the accumulator. The numerical analysis can simulate the realistic insertion behavior of the control rod by coupling these models together and using an interactive process to calculate how they interact. The validity of the numerical analysis model was confirmed by comparing the analytical results with the experimental ones. The results of our analysis showed that the numerical analysis model provides good agreement with the insertion time of the control rod.
著者
松永 達雄 幸池 浩子 務台 英樹
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ミトコンドリアDNAのA1555G変異とA3243G変異およびGJB2遺伝子変異を除外した日本人の原因不明の両側性感音難聴患者(先天性難聴100家系および後天性難聴120家系)において、これまでに難聴遺伝子としての報告があるミトコンドリア遺伝子7種類(12SrRNA、tRNA Leu (UUR)、tRNA Ser (UCN)、tRNA Lys、tRNA His、tRNA Ser (AGY)、tRNA Glu)の変異をスクリーニングした。この結果、難聴者のみで同定される遺伝子変異が、12SrRNA遺伝子を含む2遺伝子に同定された。本研究成果は日本人難聴者の診断におけるミトコンドリア遺伝子変異解析の重要性を示すものである。
著者
松永 宣明 藤田 誠一 金子 由芳 駿河 輝和 香川 孝三 河村 有教 河村 有教
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

経済発展にとって制度的インフラの整備は決定的に重要であり、とりわけ法整備は市場経済の発展にとって不可欠の要素である。本研究では、アジア市場経済化諸国を対象に法整備支援の現状と問題点、さらには今後の課題について学際的研究を行ない、その成果の一部は『法整備支援論-制度構築の国際協力入門』として出版した。調査結果は現在とりまとめ中であるが、各国のコーポレート・ガバナンスのありようが市場経済化の成否に大きく関わっているという暫定的な結論を得ている。
著者
角 知憲 外井 哲志 大枝 良直 梶田 佳孝 松永 千晶 小林 敏樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

九州地方の中小都市を対象に、高齢化と人口減少がもたらす都市の閑散化・低密度化と高齢者の日常的な交通の実態を調査した。さらに、将来の年齢構成に基づいて交通需要を予測し、それを支える交通システムと都市の改造の方向性を検討した。その結果、軽便な軌道交通システムと進歩した情報システムを用いた効率的な公共交通網とそれに沿って住宅やショッピングセンターなどを適切に再配置する必要と、そのために都市の土地利用を誘導し規制する方策が求められることが判明した。
著者
酒井 啓子 飯塚 正人 保坂 修司 松本 弘 井上 あえか 河野 毅 末近 浩太 廣瀬 陽子 横田 貴之 松永 泰行 青山 弘之 落合 雄彦 廣瀬 陽子 横田 貴之
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

9-11事件以降、(1) 米国の中東支配に対する反米意識の高まり、(2) イスラエルのパレスチナ攻撃に対するアラブ、イスラーム社会での連帯意識、(3) 国家機能の破綻に伴う代替的社会サービス提供母体の必要性、を背景として、トランスナショナルなイスラーム運動が出現した。それはインターネット、衛星放送の大衆的普及によりヴァーチャルな領域意識を生んだ。また国家と社会運動の相互暴力化の結果、運動が地場社会から遊離し、トランスナショナルな暴力的運動に化す場合がある。
著者
安浦 寛人 佐藤 寿倫 松永 裕介 井上 創造 池田 大輔 石田 浩二 馬場 謙介 吉村 正義 ウッディン モハマッド・メスバ 稲永 俊介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

社会に不可欠になっている「価値」や「信用」を搭載するLSIについて、ディペンダビリティの定義と評価尺度を提案し、その阻害要因の明確化と要因間の関係の解明を行った。また、LSIのディペンダビリティを向上させる対策を提案し、ディペンダブルLSIの設計フローを提示した。独自技術によるICカードを大学の学生証・職員証として発行し、設計から運用まで一貫してディペンダビリティの一万人規模の社会実験を行える環境を実現した。
著者
吉田 英生 幸地 克憲 田川 雅敏 松永 正訓
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

小児悪性腫瘍に対しても極めて積極的な治療が行なわれるようになり、その治療成績は向上してきている。しかし、進行神経芽腫に代表される予後不良癌の治癒率はいまだ低く、新たな治療法の導入が不可欠である。今回、われわれは遺伝子治療の有効性につき基礎的検討を行なった。1)免疫遺伝子治療の検討:レトロウイルスベクターLXSNにサイトカイン遺伝子を組み込み、マウス神経芽腫細胞C1300に感染させ遺伝子導入を行いサイトカイン産生C1300細胞を得た。IL-2,GM-CSF産生C1300腫瘍細胞の接種は腫瘍の生着・増殖を認めなかった。腫瘍の生着を拒絶したマウスに親株を接種しても増殖を認めなかった。肝転移モデルにおいてもIL-2,GM-CSF産生腫瘍細胞は転移を抑制した。さらにIL-2,GM-CSF産生腫瘍細胞は先行接種増殖した親株細胞の増殖を抑制した。以上、腫瘍原性の抑制、腫瘍免疫の誘導、癌治療効果を確認した。2)自殺遺伝子治療の検討:進行神経芽腫に高発現するMidkine遺伝子をプロモーターとし、HSV-TK(ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)とGCV(ガンシクロビール)の組み合わせによる自殺遺伝子治療の検討を行った。MidkineをプロモーターとすることによりMidkineを高発現しているヒト神経芽腫細胞に特異的にHSV-TKを発現させGCVに対する感受性を高めることが確認された。以上、神経芽腫に対する免疫遺伝子治療、ならびに自殺遺伝子治療の抗腫瘍効果が明らかとなり臨床応用へ向け有用な基礎的結果が得られた。
著者
松永 泰義 山森 一人 阿部 亨 堀口 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.674, pp.111-116, 2000-03-09

マルチメディア通信は大きな帯域幅を必要とするため, 限られた帯域を効率よく利用するための帯域制御方式の研究が現在盛んに行われている.我々は, WFQ(Weighted Fair Queuing)法に帯域要求量の最大値と最小値を用いたWFQMM(WFQ with the Maximum and Minimum bandwidth)法による公平な帯域割り当て法を提案した.本稿では, 待ち行列のM / M / sモデルを用いたシミュレーションを行い, WFQMM法の性能について議論した.その結果, 帯域制御を行わない場合に比べて安定した満足度が得られ, 帯域予約開始までの待ち時間を削減できた.また, 詳細なパケット通信シミュレーションにより, WFQMM法を用いて予約を行ったストリームは, 帯域制御を行わずに帯域予約を行った場合に比較してパケットの遅延を小さくすることができた.
著者
松永 泰義 山森 一人 阿部 享 堀口 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.676, pp.111-116, 2000-03-09

マルチメディア通信は大きな帯域幅を必要とするため, 限られた帯域を効率よく利用するための帯域制御方式の研究が現在盛んに行われている.我々は, WFQ(Weighted Fair Queuing)法に帯域要求量の最大値と最小値を用いたWFQMM(WFQ with the Maximum and Minimum bandwidth)法による公平な帯域割り当て法を提案した.本稿では、待ち行列のM / M / sモデルを用いたシミュレーションを行い, WFQMM法の性能について議論した.その結果, 帯域制御を行わない場合に比べて安定した満足度が得られ, 帯域予約開始までの待ち時間を削減できた.また, 詳細なパケット通信シミュレーションにより, WFQMM法を用いて予約を行ったストリームは, 帯域制御を行わずに帯域予約を行った場合に比較してパケットの遅延を小さくすることができた.
著者
松永 茂樹
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

平成20年度の検討において従来型のビナフトールを使用した希土類アート錯体では満足のいく結果を与えなかった反応について、21年度には、その課題克服に向けての検討を行った。ジエノラート生成を鍵とする反応形式の追求においてはアルカリ土類錯体が優れた結果を与えることを見いだした。特にβ,γ不飽和エステルをドナーとするアルドール反応においてバリウム-ビナフトール触媒を活用することで最高99%eeにて生成物を得ることに成功した。詳細なメカニズム解析も行い、その結果、直接的触媒的アルドール反応は非常に速い可逆プロセスであり、アルドール反応に続く異性化プロセスにおいて動的な速度論変換が起こっていることが確認された。これは従来型のアルドール反応とは違う制御機構であり、非常に興味深い成果である。また、別なジエノラート生成を鍵とする反応形式として不飽和γ-ラクタムをドナーとする反応の開発にも取り組んだ。この場合には、当初の想定とは異なり、希土類あるいはアルカリ土類金属錯体では良好な結果を得ることは出来なかった。そこで、より幅広く様々な触媒系について探索を進めた結果、最終的に複核のニッケル触媒をうまく活用することで反応が効果的に進行することを見いだした。特に不飽和γ-ラクタムを用いたニトロオレフィンへのマイケル反応およびイミンへのマンニッヒ型反応において非常に高い立体選択性を実現することができた。特に、マンニッヒ型反応においてはすべての基質において99%eeにて反応が進行することを見いだした。
著者
木部 暢子 松永 修一 岸江 信介
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1、従来、言語地図は手作業により記号を一つ一つ押していく方法で作成されていたが、この研究ではパソコンのデータベースソフトを利用して、正確かつ効率的に言語地図を作成する方法を開発し、さらに、記号から音声の出てくる「声の言語地図」の作成を試みた。2、研究の遂行のために、次のような作業を行った。まず、南九州37地点(熊本県2地点、鹿児島県19地点、宮崎県16地点)の音声の特徴について調査し、基本単語約150語の発話をDAT(デジタルオーディオテープ)に収録した。収録した音声データは1単語ごとに編集しなおし、5,550(150単語×37地点)の音声ファイルからなる音声データベースを作成した。次に、この音声データベースを基にして「南九州言語地図」(記号言語地図)を作成した。この作業には岸江信介他(2000)「エクセルとファイルメーカープロを利用した言語地図の作成」の方法を用いた。最後に「南九州言語地図」の記号と音声データベースをリンクさせて、声の出てくる「南九州声の言語地図」を完成させた。なお、ファイルメーカープロが一般にはあまり普及していないソフトであることを考慮し、これをPDFファイル形式に置き換えることにした。3、その成果をまとめて以下の2種類の報告書を作成した。(1)『南九州声の言語地図』 (冊子版)(2)『南九州声の言語地図』 (CD-ROM版)4、研究の遂行にあたり、広く専門家の意見を乞うため、研究期間中に以下の発表を行なった。(1)「南九州地方における音声言語地図の開発と作成の試み」日本方言研究会第74回研究発表会(東京都立大学) 2002年5月(2)「声の言語地図」ネットワーク構想国語学会デモンストレーション(徳島大学) 2002年11月
著者
芳賀 洋一 松永 忠雄 牧志 渉
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

1本の光ファイバーを電磁的に2次元スキャンさせ画像を構成する原理を用い、細径かつ解像度の高い医療用内視鏡の実現を目指した。血管内、乳管内、歯周ポケットなどへ挿入し光学的観察を行うことを想定している。外径2mmのポリイミドチューブを基板とし、円筒面上へのフォトリソグラフィーと銅の電解めっきにより2次元駆動のための多層コイルを作製した。円筒状基板へのフォトリソグラフィーは、露光光としてレーザ光をスポットで照射し、基板をステージ制御で動かすレーザ描画で行う。スプレーコーターでレジストを均一な膜厚で塗布し、レーザ描画露光装置を用いてコイル形状をパターニングする。その後レジストを型として電解めっきを行いコイルの作成を行った。光ファイバーを電磁的に駆動し振動させるため、永久磁石を取り付けたコリメートレンズ付き光ファイバーをコイル内に内蔵する。永久磁石は、外径500μm、内径140μm、長さ2mmのFe-Cr-Co系永久磁石を使用した。また、コリメートレンズは外径125μmで長さ790μm、焦点距離750μmのファイバー融着型グリンレンズを使用した。コイルに交流電流を流すと永久磁石の磁気モーメントが磁界と揃うように曲がり光ファイバーを振動させる。X,Yそれぞれの1次元の駆動および、X方向とY方向の位相を90度ずらした状態で正弦波振動させ円を描き、2次元駆動を確認した。
著者
木部 暢子 岸江 信介 松永 修一 福島 真司 中井 精一
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、音声を聞くことのできる言語地図『西日本声の言語地図』を作成した。これは164枚の地図よりなり、1枚のDVDに164個のPDFファイルとして収録されている。内容は「枝」「鉛筆」などの単語項目151項目、「おはようございます」などの挨拶ことば13項目の計164項目、地点は富山県から鹿児島県種子島に至る65地点。44KHzサンプリング周波数で音声処理を行なったので、音声データベースとしての価値も高い。『西日本声の言語地図』は『南九州声の言語地図』(試作版)に続いて、岸江のHP(http://www.ias.tokushima-u.ac.jp/kokugo/_private/kishie.htm)で公開し、中井のHPと声の言語地図のネットワークを結ぶ。地図作成の過程の中で、以下のことが明らかとなった。1.変化の途中の形が各地の方言音声に現れている。「声の言語地図」では、地理的分布と音声を同時に確認することにより、変化のプロセスを地理的関係で捉えることができる。2.二通りの聞き取り:「地点ごと(横)の聞き取り」と「項目ごと(縦)の聞き取り」の間に微妙な差がある。従来の研究ではこの違いが見過ごされていた。3.方言音声を公開することの重要性について主張し、その方法を提示した。これらについては、Twelfth International Conference on Methods in Dialectology(2005.8.2、カナダ モンクトン)、日本方言研究会第81回研究発表会(2005.11.10、東北大学)、変異理論研究会(2005.11.11、東北大学)等で発表した。
著者
畑 俊明 増田 好治 須見 尚文 松永 泰弘 紅林 秀治 江口 啓 碇 寛
出版者
静岡大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

(1)児童生徒自身でつくる「手作りセラミックス磁石」の創造的思考力に及ぼす効果児童は、石ころが磁化装置の中で簡単に磁化される状況に接すると、今までの磁力は絶対的なものであるという概念が一瞬にして崩壊し、磁力が付加できるものであるという概念が構築されると、磁力についての新しいイメージができあがり、磁石に異常に関心をもつようになる。本年度は、この実践を科学の祭典静岡大会、富士サイエンスプロジェクト、日本未来館での研究成果展示会などのイベントに参加し積極的に活動した。しかし、あくまでも、授業実践が主体であるので、静岡市の長田東小学校5年生を対象に、方位磁針を作成する授業を実践し手づくり方位磁針の製作を通して、子供達の独創性を刺激した。この創造的思考力が付く過程を脳科学的解析により解明すべく、他の脳科学者との交流も深めた。(2)児童生徒自身でつくる「手作りセラミックス磁石」利用での創造的思考力に及ぼす効果セラミックス磁石を応用したものづくり学習法は種々考えられるが大きくは2領域に限定する。それは、電気領域でのものづくり学習と、機械領域でのものづくり学習である。電気領域を担当するのは増田好治、江口啓で、増田・江口は、セラミックス磁石を用いたモータとそれを利用した発電機を教材化し、機械領域を担当する須見、松永は、磁気ライントレース型ロボットの教材化に取り組んだ。手づくりペットボトルモータの実践は、富士サイエンスプロジェクト、科学教育学会、静岡大学共通教育で実践し、子供たちの創造性を高めることに成功した。また、磁気ライントレース型ロボットでは、児童生徒が自分自身で「手作りセラミックス磁石」を作製しこれをレールとして利用し、その磁力を感知する新しいアイデアでのロボコン製作を行う教材を開発した。これらについて、紅林は教材としての価値について総合評価を行い優れていると判定している。
著者
佐藤 博信 松浦 尚志 都築 尊 松永 興昌 片渕 三千綱 生山 隆
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

老年性骨粗鬆症モデルマウス(SAMP6)の下顎骨が骨粗鬆症様の骨の性質を有する可能性を組織学的および生化学的に検証した.コントロールマウス(SAMR1)と比べると,SAMP6の下顎骨は骨形態計測学的に骨量が少なく,骨基質の透過型電子顕微鏡像で明らかなコラーゲン線維の狭小化が認められた.両マウスの下顎骨の骨基質の生化学分析によると,その大部分はI型コラーゲンであった.SAMP6の下顎骨は,SAMR1に比べ,基質中のコラーゲン量が少なく,またコラーゲンの翻訳後修飾の一つであるハイドロキシリシンの量が多く認められた.リシンのハイドロキシル化が亢進するとコラーゲン線維の狭小化が起こることが報告されており,SAMP6の下顎骨のコラーゲンに認められるコラーゲン線維の狭小化はおそらくリシンのハイドロキシル化の亢進が関与しているものと推察された.リシンのハイドロキシル化の亢進は,同マウスおよび骨粗鬆症患者の大腿骨でも認められることが報告されており,骨粗霧症の骨質に大きく関与するコラーゲン性状に,コラーゲン翻訳後修飾の一つであるリシンのハイドロキシル化が寄与している可能性が示唆された.本研究の結果から,老年性骨粗鬆症モデルマウスの下顎骨は骨量的にも骨質的にも骨粗鬆症様の性質を有していることが明らかとなった.骨粗鬆症患者の顎骨も量的のみならず質的に低下している可能性が考えられ,今後の臨床研究により骨粗鬆症患者での傾向を明らかにしていくとともに,ゲノム解析による骨質診断法の確立とそれに対応した歯科治療の開発へと発展させていける可能性が見出せた.