著者
林 直保子 神 信人 山岸 俊男
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.33-43, 1993-01-22 (Released:2016-12-01)

The main purpose of this study was to examine how the existence of multiple Prisoner's Dilemma relations among group members affects their choices in each PD relation. Twenty-eight computer simulated actors were used to simulate group members. Each simulated-actor had two kinds of strategies: (1) designation strategy (i.e., strategy to determine whom to choose as a game partner), and (2) behavior strategy (i.e., strategy to determine when to cooperate and when to defect). The simulation involved four designation strategies, and seven behavior strategies. Five of behavior strategies were variants of the tit-for tat strategy, said to be most effective in iterated 2-person PD games. Results of the simulation indicate that: (1) the designation strategy has a greater influence on the simulated-actor' total score than the behavior strategy; (2) effectiveness of the behavior strategy changes depending on the designation strategy adopted; (3) the relationship between disignation and behavior strategies mentioned above depends on the nature of the pay-off matrix used in each game played along the PD network.
著者
林 達也 髙石 鉄雄 本田 寛人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

2型糖尿病患者を対象として、短時間の階段昇降運動による血糖コントロール改善効果を検討した。食後90分に行う8~10分間、及び食後60分と120分に行う3分間の階段昇降運動は食後高血糖を急性的に緩和した。階段昇降運動と自転車運動を同じ心拍数で行ったところ前者でより急性的な血糖降下が得られた。さらに自宅内で毎食60分後と120分後に3分間の階段昇降運動を2セットずつ行うことで24時間にわたる血糖コントロールが改善するとともに、この運動を2週間継続することで血糖コントロール指標(血中1,5-アンヒドログルシトール)が改善した。以上より、階段昇降運動の2型糖尿病治療における臨床的有用性が示唆された。
著者
木村 義成 山本 啓雅 林田 純人 溝端 康光
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2021年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.144, 2021 (Released:2021-03-29)

研究発表の背景 令和元年度版の消防白書によると,全国における医療機関への平均搬送時間は35.0分(平成20年)から 39.5.分(平成30年)と10年間で4.5分増加しており,救急搬送の長時間化が指摘されている.また,患者の受入先医療機関が速やかに決定しない救急事案(救急搬送困難事案)が全国的に報告されている. 傷病者に対する救急搬送の時間フェーズは大きく分類すると,「傷病発生〜消防署による覚知」,「覚知〜救急車の現場到着」,「現場到着〜傷病者の医療機関への収容」の三段階となる.救急救命活動においては,傷病者に対して一定時間内に適切な初期処置を行わなければ救命率が下回ることが報告されており,救急搬送の時間フェーズの中では,特に救急覚知場所への到着,「覚知〜救急車の現場到着」までの時間短縮が重要となる. 高齢化社会が進展する中で,今後も救急需要は高まることが予想されており,救急施策において消防組織の改善努力では限界があり,救急車の適正な利用促進や夏季における熱中症の注意喚起など,搬送対象となる地域住民への啓発活動が推進されている.研究発表の目的 このような社会的な背景のもと,本研究発表では,現場到着からみた救急活動,不要不急な救急車の利用,熱中症と社会地区属性の3つの課題を例に,地理学がどのように救急医療の諸課題に貢献できるか紹介する. 本研究発表では,救急隊の活動において重要視される「出場〜現場到着」時間の観点から考案した「救急隊最近接地域」という空間分析単位と都市内部の居住者特性の空間的分布パターンや居住分化に関する分析から派生したジオデモグラフィックスと呼ばれる小地域における地区類型データを用いた分析を上記の3つの課題に適用する方法について解説する.救急隊最近接地域を用いた分析例 救急活動においては,救急隊配置場所から救急覚知場所(「出場~現場」)の現場到着時間の短縮が重要となる.したがって,発表者らは,各救急隊がそれぞれ最短時間で現場到着できる地域を「救急隊最近接地域」と定義し,カーナビゲーション・システムで利用される道路ネットワーク・データとGIS(地理情報システム)を用いることで,この独自に定義した地域を作成した(木村, 2020). 本研究発表では,大阪市を事例にした「救急隊最近接地域」の作成(図1)と,この独自に作成した空間分析単位を用いて,現場到着からみた救急活動,不要不急な救急車の利用に関して,それぞれの地域差について分析した例を示す.ジオデモグラフィックスを用いた分析例 本研究発表では,Experian Japan社のMosaic Japanというジオデモグラフィックス・データと大阪市消防局の救急搬送記録から判明した熱中症発生データから,熱中症が多発する地区類型を見出す分析例を紹介する. この分析例から,どのような地区特性の,どのような人を対象に,熱中症の注意喚起を促す広報活動を行うか,救急施策に対する地区類型データの利活用の可能性について本研究発表で触れる。参考文献木村義成 2020. 大阪市における消化出血患者の搬送特性からみた地域グループ.史林 103(1):215-241.
著者
縄手 祥平 壺井 祥史 成清 道久 大橋 聡 長崎 弘和 神林 智作 村山 雄一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.551-555, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
15

【目的】脳空気塞栓症は潜水病としてダイバーに多く報告される病態である.今回我々は,筋力トレーニング後に脳空気塞栓症を発症した症例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.ジムでの筋力トレーニング後,自宅で突然の意識障害を認め,当院へ救急搬送となった.意識レベルは JCS 300,GCS E1V1M1,強直性の痙攣重積状態であった.頭部CTで右前頭葉に散在する低吸収域を認め,空気塞栓症と診断した.痙攣重積状態であったため,高圧酸素療法は施行せず,抗痙攣薬とエダラボンの投与を行った.意識レベルは徐々に改善し,発語が認められ,指示動作に応じられるようになったが,重度の左片麻痺が残存した.発症53日目に modified Rankin Scale 3で回復期リハビリテーション病院へ転院した.【結論】既往歴に間質性肺炎を指摘されていたため,筋力トレーニング中の胸腔内圧上昇により肺胞が破裂したことが空気塞栓症の原因と考えられた.筋力トレーニングに伴う空気塞栓症は脳卒中の一因として認識しておくべきであると思われた.
著者
荒井 弘和 榎本 恭介 栗林 千聡 金澤 潤一郎 深町 花子 宅 香菜子
出版者
Japan Society of Sports Industry
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_281-4_293, 2023-10-01 (Released:2023-10-18)
参考文献数
30

The four aims of this study were: (1) Qualitative data were used to identify the diverse content of values expressed by university student-athletes in their own words. (2) Gender differences in value–related factors were examined. (3) The relationship between value–related factors and well–being (subjective well–being and interdependent happiness) was examined. (4) The effects of value–related factors and gender on well–being (subjective and cooperative well–being) were examined. The participants of this study were athletes who were members of university athletics departments. Three measures of values were used in this study: the Personal Values Questionnaire–II, the Values Clarification Questionnaire, and the Japanese version of the Valuing Questionnaire. First, the analysis showed that 90 different values were obtained from the content of the open–ended statements. Second, differences between men and women were found in two value–related factors. Third, the relationship between value–related factors and well–being was examined, but overall, no significant differences were found between men and women. Moreover fourth, subjective well–being was influenced by perceptions of ‘Progress’ and ‘Awareness of Reinforcement,’ such as feeling more energized when acting towards that value.
著者
林 真輝人
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.82-89, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
24

近年,キャッシュレス決済が急速に普及したことによって,消費者が使用可能な支払方法は多様化している。支払方法に関する既存研究においては,多様化する支払方法が消費者行動にどのような影響を与えるのかということに関して,盛んに議論が行われている。そこで,本論では,支払方法に関する既存研究を,(1)特定の支払方法の使用意図に関する研究群,(2)支払方法の違いが消費者行動に及ぼす影響に関する研究群,(3)支払方法の違いの影響を媒介する要因に関する研究群に分類したうえで,概観する。そして,支払方法に関する研究が今後検討するべき課題として,(1)消費者の過剰な支出を抑制する要因の探究,(2)感覚マーケティング領域における知見の応用,(3)新たな調整変数の識別を指摘する。
著者
木村 紀子 戸出 浩之 辻本 恵美 小林 さゆき 玉野 正也 望月 純二 二階堂 暁 幡 芳樹
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.32-38, 2020-02-01 (Released:2020-02-05)
参考文献数
16

症例は70代女性.胸痛にて救急搬送され,心臓CTで左冠動脈主幹部から左前下行枝にかけて高度狭窄と左室内に異常隔壁様構造物を認めた.心臓超音波検査にて隔壁は左室を2分するように基部から心尖部までの下壁中隔から下壁にかけて存在し,乳頭筋レベルで複数の切れ込みを有して心基部で大きく開口していた.さらに大動脈弁輪部左室流出路側には膜様構造物を観察し,ひも状構造物により僧帽弁前尖弁腹に繋がっていた.また多胞性膜様部心室中隔瘤を認めた.以上より僧帽弁副組織及び膜様部心室中隔瘤が併存する左室二腔症と診断した.急性冠症候群にて来院し,心臓CTおよび心臓超音波検査にて診断しえた貴重な症例と考え報告する.
著者
服部 和裕 山本 明美 笹井 みさ 谷内 昇一郎 小島 崇嗣 小林 陽之助 岩本 洋 難波 恭子 八重島 智子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.20-30, 2003-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
27
被引用文献数
1

腸内にBifidobacteriumが少ないアトピー性皮膚炎患児15例を予備的な菌叢の検索から選択し,うち投与群8例に対してビフィズス菌凍結乾燥末(Bifidobacterium breve M-16V株)を経口投与した.腸内細菌叢の変動とアレルギー症状の推移を観察し,対照群7例と比較した.投与群では,ビフィズス菌末投与1カ月目の時点で,腸内のBifidobacterium占有割合の有意(P=0.0173)な上昇と,総好気性菌占有割合の有意(P=0.0499)な低下を認め,さらにアレルギー症状も有意(皮膚スコアでP=0.0176,総合スコアでP=0.0117)に改善した.一方,ビフィズス菌末の投与はアトピー性皮膚炎の症状改善を対照群に比較して有意に促進したが,自然排泄便を検体とした腸内細菌叢の変動と,アレルギー症状の推移の間には,明確な相関を認めなかった.
著者
小林 謙一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.469-476, 2020-08-01 (Released:2021-08-01)
参考文献数
40

キノリン酸は,必須アミノ酸であるトリプトファンの中間代謝産物であり神経毒である.キノリン酸の脳内蓄積が,ハンチントン舞踏病などの神経変性疾患と関連するという「キノリン酸仮説」が提唱されてから40年が経つ.筆者らは,キノリン酸を体内に蓄積できる遺伝子改変マウスを用いた解析で,このマウスが腎線維化と腎性貧血様の症状を呈することを見いだした.これは,キノリン酸と慢性腎臓病とが関連するという第2の「キノリン酸仮説」といえる.本稿では,キノリン酸と慢性腎臓病とのかかわりについて解説するとともに,これらを踏まえて「腎」を守る機能性食品の創出が可能かどうかについて考えてみたい
著者
森川 嘉之 水上 純一 田端 竹千穂 平林 弘
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集 第39回地盤工学研究発表会
巻号頁・発行日
pp.983-984, 2004-03-05 (Released:2007-01-18)

関西国際空港二期事業においては、平均層厚25mの沖積粘性土層が存在し、埋立部では2.5mピッチの正方形配置されたサンドドレーン工法により沖積粘性土地盤が改良されている。埋立工事の進捗に伴い、途中2回のチェックボーリングを実施し、埋立載荷重による地盤強度の発現が設計強度に達しているかを確認しながら施工を行っている。チェックボーリング結果から、埋立荷重載荷前後の強度増加量の深度分布に顕著な特徴が見られた。この強度増加量の深度分布について、圧密特性の応力レベルによる変化を考慮して考察した。
著者
根岸 雅夫 笠間 毅 福島 俊之 田畑 穣 小林 和夫 井出 宏嗣 高橋 昭三
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.121-124, 1991-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
7

39歳女性の筋炎症状を伴った全身性強皮症〔progressive systemic sclerosis (PSS) 〕を精査加療した.患者は強度のレイノー現象にひき続く一過性の頭痛が頻発していた.附加観察として, 本症例を含む6例のPSS患者に寒冷刺激負荷試験を行い, その前後における眼底血管の変化を観察した.その結果レイノー現象に伴って頭痛を訴える患者群には眼底動脈の拡張が認められた.以上よりレイノー現象は四肢末端にとどまることなく大脳内末梢血管にも影響していることが示唆された.
著者
村澤 昌崇 椿 美智子 松繁 寿和 清水 裕士 筒井 淳也 林 岳彦 宮田 弘一 中尾 走 樊 怡舟
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究は,因果推論の勃興を契機とし,社会科学の半ば慣習的な統計分析が再考を迫られると認識した.そこで,従来は因果分析とされたが,厳密には因果推論ではない分析を仮に“説明”とし,その再定義,モデル評価,係数の解釈に関する新たな理論を構築する.この取組について、社会科学の方法論について深遠な議論を展開している専門家、心理学、経済学、統計科学、データサイエンスを代表する専門家と共同し議論を深めていく。併せて、新たな実験的調査を実施し、得られた情報に関して、新たな"解釈"の可能性を検討する。
著者
小林 渓紳 那須 高志
出版者
Saitama Physical Therapy Association
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.25-29, 2023 (Released:2023-09-01)
参考文献数
10

本研究の目的は大腿骨近位部骨折患者において,歩行の再獲得までの時期や歩行様式について,荷重率の観点から術後早期に予後予測が可能かを検討したものである。受傷前は自宅居住し,屋内外を独歩またはT-caneにて自立していた者40例を対象に年齢,性別,手術時間,麻酔時間,手術待機日数,術中出血量術,術後の生化学データをカルテから調査した。それらを術後7日目に73.8%以上の荷重率を獲得した者24例と獲得できなかった者16例の2群に分類し,2群間で各因子について比較検討した。その結果,73.8%以上の荷重率を獲得できなかった群は,術後CRP,WBCのピーク値,術後7日目の荷重時痛が有意に高値であった。そのため,術後の炎症が強い患者は受傷前歩行獲得が難しくなる可能性が示唆された。
著者
縄手 祥平 壺井 祥史 成清 道久 大橋 聡 長崎 弘和 神林 智作 村山 雄一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10886, (Released:2021-07-07)
参考文献数
15

【目的】脳空気塞栓症は潜水病としてダイバーに多く報告される病態である.今回我々は,筋力トレーニング後に脳空気塞栓症を発症した症例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.ジムでの筋力トレーニング後,自宅で突然の意識障害を認め,当院へ救急搬送となった.意識レベルは JCS 300,GCS E1V1M1,強直性の痙攣重積状態であった.頭部CTで右前頭葉に散在する低吸収域を認め,空気塞栓症と診断した.痙攣重積状態であったため,高圧酸素療法は施行せず,抗痙攣薬とエダラボンの投与を行った.意識レベルは徐々に改善し,発語が認められ,指示動作に応じられるようになったが,重度の左片麻痺が残存した.発症53日目に modified Rankin Scale 3で回復期リハビリテーション病院へ転院した.【結論】既往歴に間質性肺炎を指摘されていたため,筋力トレーニング中の胸腔内圧上昇により肺胞が破裂したことが空気塞栓症の原因と考えられた.筋力トレーニングに伴う空気塞栓症は脳卒中の一因として認識しておくべきであると思われた.