著者
梶原 景昭
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.16, pp.21-37, 1995

フィリピン社会に、今日でもきわめて強い浸透力をもつフォークロアが存在する。それは太平洋戦争中、旧日本軍が戦争遂行のための財貨をフィリピン国内に隠匿し、現在でもまだ埋まっているというものである。戦争末期に山下奉文大将がフィリピン方面軍司令官として着任し、その後降伏したこともあって、この隠された財貨は「山下財宝」と総称されている。この覚書は、今日でも人びとがうわさし、実際に財宝を求めて探索を続けている「山下財宝」伝説を、フィリピン社会・文化の文脈のなかで位置づけ、戦後五〇年にわたる変化の軌跡についてもあわせて検討するものである。この伝説のありようは、フィリピン人の世界観、歴史的背景、対外関係、富の概念、経済の状況、国家のあり方、政治権力の性格などを、多層的に映し出している。なお本稿を書くにあたり、平成六年度文部省海外学術調査「異文化共存の可能性」(代表 青木保) に関わる実地調査に負うている。ここに感謝を示したい。
著者
梶田 展人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

中国の東シナ海大陸棚に存在する陸源砕屑物堆積帯(Inner shelf mud belt)から採取された堆積物コア(MD06-3040)のアルケノン古水温分析(Uk37’)を行い、完新世の表層水温(SST)変動を高時間解像度で明らかにした。コア採取地は沿岸の浅海であるため、SSTは気温(AT)と良い相関がある。よって、Uk37’-SSTの復元記録から揚子江デルタのATを定量的に推定することができた。Uk37’-SSTのデータに基づくと、Little Ice Age (約0.1-0.3 cal. kyr BPの寒冷期)など全球的な気候変動と整合的な温度変化が復元されたことから、この指標の信頼性は高いと言える。約4.4-3.8 cal. kyr BPには、複数回かつ急激な寒冷化 (3-4℃の水温低下、3-5℃の気温低下に相当) が発生していたことが示された。この寒冷化は4.2 kaイベントに呼応し、顕著な全地球規模の気候変動と関連するものと考えられる。この時期に、東アジア及び北西太平洋では、偏西風ジェットの北限位置の南下、エルニーニョの発生頻度の増加、黒潮の変調 (Pulleniatina Minimum Event) などの大きな環境変動が先行研究より示唆されている。これらの要素が相互に関係し、急激な寒冷化およびアジアモンスーンの変調がもたらされた可能性が高い。同時期は、揚子江デルタで栄えていた世界最古の水稲栽培を基盤とした長江文明が一時的に中断した期間と重なる。本研究が明らかにした急激で大きな寒冷化イベントは、稲作にダメージを与え、揚子江デルタの社会や文明を崩壊させる一因となったかもしれない。本研究のデータと考察の一部をオランダの国際誌Quaternary Science Reviews誌に投稿し、受理された。
著者
梶原 史恵 大川 裕行 江西 一成 植松 光俊 中駄 美佳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E0443, 2007 (Released:2007-05-09)

【はじめに】 慢性期のリハビリテーションでは,日常生活での身体活動量の確保が重要な課題となる。特に,施設入所高齢者では、生活範囲の狭小化や疾患の重症度から活動量が低下することが推察される。施設入所高齢者の身体活動量を24時間にわたり正確に評価できれば,実施しているリハビリテーション・プログラムの検証を行うことも可能となる。そこで今回、老人保健施設入所者を対象に、24時間の身体活動量と自律神経活動を測定し、歩行能力別・生活時間帯別に検討を加えたので報告する。【方法】 対象は、某介護老人保健施設入所中の者で、本研究の趣旨が理解でき協力可能な12名(年齢84±8歳、男性4名、女性8名)とした。被験者は,歩行可能群(6名),不可群(6名)に分けられた。 日常生活活動能力(Barthel Index)評価し,アクティブトレーサー(GMS社製AC-301)を用いて身体活動量、起床時間、および自律神経活動を24時間連続的に記録した。身体活動量,起床時間は,腰部に装着したアクティブトレーサーの3方向の加速度,及び傾きから算出した。また,自律神経活動は記録された心拍R-R間隔変動をスペクトル解析して求めた。得られた結果は,歩行可能群・不可群,日中時間帯・夜間時間帯で比較検討した。【結果】 24時間の身体活動量は、歩行可能群,不可群間で有意差を認めなかった。 時間帯による身体活動量の比較では,一部を除き両群ともに日中時間帯の身体活動量は夜間時間帯よりも有意に大きな値を示した.歩行可能群は不可群よりも日中時間帯の身体動量が大きかったが両群に有意な差は認めなかった。 歩行可能群の起床時間は,日中時間帯の方が夜間時間帯よりも有意に大きな値を示したが,不可群では時間帯による起床時間に差は認めなかった.さらに,両群の日中時間帯に有意な差はなかった。 自律神経活動の比較では,両群ともに24時間を通して交感神経・副交感神経活動に差は認められなかった。【考察】 歩行可能群と不可群の起床時間に差がないことは、歩行不可群でも介護スタッフ等により、座位起立姿勢を促されていたことが考えられた。また、歩行可能群で日中時間帯と夜間時間帯の起床時間に差を認めたことは、歩行可能群は日中時間帯に座位起立姿勢をとる機会が多いものの、活動量としては、歩行不可群と同程度のものであったことがわかった。さらに、自律神経活動の結果もこれを裏付けるものであった。また、歩行不可群の生活も昼夜の差が自律神経活動量に現れない程度のものであった。 今回得られた結果から、歩行不可群は、24時間の内、約8時間の起床時間を確保できていることがわかった。また、歩行可能群の高い運動機能を、日常生活の活動量に反映させる取り組みが必要であることを確認した。
著者
穂苅 諭 中山 秀章 梶原 大季 鈴木 涼子 大嶋 康義 高田 俊範 鈴木 栄一 成田 一衛
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-34, 2011-06-30 (Released:2016-07-05)
参考文献数
14

目的:呼吸機能低下患者での術後ハイリスク群を検討した.対象:術前呼吸機能検査で1秒量<1.2 Lを満たした80例.方法:術後呼吸不全の発生について診療録より後ろ向きに調査した.結果:7例で合併症が発生した.多因子より算出した呼吸不全リスク指数は合併症群で有意に高値であった.また,同リスク指数と合併症発生頻度の間に有意な傾向性が認められた.結論:呼吸不全リスク指数は術後呼吸不全の検出に有用である.
著者
梶本 五郎 村上 智嘉子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.209-218, 1999-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
49
被引用文献数
10 11

緑茶, 麦茶を含めいわゆる健康茶として市販されている15種について, これらの熱水抽出物量, 抽出物の抗酸化性およびバナバ茶中の抗酸化成分をTLCとHPLCの組み合わせで検索を試みた。1) 熱水抽出量の最も多いものはローズヒップ茶で, ついで, キダチアロエ茶, 麦茶, ギムネマ茶, 緑茶, 甘茶の順であった。抽出量の少ないものは, ハブ茶, バナバ茶, 柿の葉茶であった。2) ランシマット法による油脂の酸化に対する防止効果は, イチョウ茶, ルイボス茶, 緑茶などで高く, ついで, ヨモギ茶, 麦茶, バナバ茶, 甘茶, 柿の葉茶, びわ茶の順であった。一方, キダチァロエ茶, ローズヒップ茶では抗酸化性は認められなかった。3) 緑茶, 麦茶, イチョウ茶, バナバ茶およびびわ茶は, いずれも添加量が増すにしたがい油脂の酸化防止効果は高くなった。しかしながら, 柿の葉茶やびわ茶は0.1%添加濃度以下では防止効果はみられなかった。4) DPPHラジカル消去能は, 緑茶, バナバ茶ともに認められたが, バナバ茶は緑茶に比べてやや弱いものであった。5) 緑茶, バナバ茶にスーパーオキシド消去能が認められた。消去能は緑茶で高く, バナバ茶でやや低い。6) バナバ茶中に没食子酸, ゲンチシン酸, カテコール, レゾルシノールの存在とプロトカテキュ酸, アピゲニン, ルテオリン, シリンガ酸, バニリン酸, t-シナミン酸などの存在が推測された。7) バナバ茶中には没食子酸が最も多く含まれ, ついで, ゲンチシン酸, カテコール, レゾルシノールの順であった。これらのうち, ゲンチシン酸が最も抗酸化活性が高く, ついで, 没食子酸レゾルシノール, カテコールの順で, ルテオリン, ケルセチンにも認められた。
著者
小林 さやか 梶田 学 百瀬 邦和 米田 重玄 風間 辰夫
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.214-219, 2010-03-25 (Released:2012-03-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

A specimen of Rufous-chested Flycatcher Ficedula dumetoria was collected at Shidaihama, Seiro-machi, Kitakanbara-gun, Niigata Prefecture (38°01′ N, 139°17′E) on 15 June 2002. This is the first specimen of this species collected from Japan. However, it is unlikely that this individual had flown to Japan as a wild bird.
著者
梶井 公美子 藤森 眞理子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_313-I_321, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
19

本調査では,アジア太平洋地域の途上国に対して,実効性を確保した形で適応技術の移転を促進する必要性をふまえ,沿岸域における適応技術を対象に,技術を体系的に整理する手法,必要とされる対応(ニーズ)と日本等の先進国が有する適応効果をもつ技術(シーズ)の対応関係を整理する手法を構築した.これにより,1)適応技術については,気候変動への適応以外の目的で開発・普及されている技術も含めて幅広い分野の情報源から技術情報を入手・精査する必要があること,2)ニーズについては,気候要素,自然的・社会的要因,一次影響,二次影響という一連の因果関係をふまえて抽出できること,さらに,3)適応技術の沿岸タイプ別のニーズの高さを定性的な判断の目安に基づき整理できることを明らかにした.
著者
清田 恭平 吉光 真人 梶村 計志 山野 哲夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.17-21, 2020-02-25 (Released:2020-04-24)
参考文献数
16

オレンジは,健康に有益な栄養成分を含む一方で,アレルギーの発症原因となるアレルゲンも含んでいる.オレンジアレルギーの発症を予防するためには,アレルゲンの摂取リスクを抑えることが重要である.そこで本研究では,果物ミックスジュースにおいて,オレンジとの組合せで嗜好性のよいパイナップルに含まれるタンパク質分解酵素ブロメラインの利用に着目した.パイナップル由来酵素を利用して,オレンジの主要アレルゲンであるCit s 2の濃度減少が可能かどうか,Cit s 2定量ELISAにより評価を行った.生鮮オレンジ果汁に対して生鮮パイナップル果汁を添加したところ,Cit s 2濃度は反応の時間や温度に依存して減少する傾向が見られた.特に,オレンジ果汁に対し1/40量のパイナップル果汁を添加して37℃30分間処理した場合,Cit s 2濃度が15%未満(定量下限値未満)に減少した.今後,慎重な臨床的検証が必要であるものの,オレンジアレルゲン低含有量の果物ミックスジュースの調理・製造方法として,本研究の応用が期待される.
著者
梶田 忠 高山 浩司 梶田 結衣 山本 崇 榮村 奈緒子 井村 信弥 石垣 圭一 堤 ひとみ Wee Alison Kim Shan
出版者
琉球大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

汎熱帯海流散布植物のナガミハマナタマメについて、西表研究施設のガラス温室内で7地域19集団から得た植物を栽培し、人工交配実験を実施した。2015年から2017年までの3年間に実施した交配実験と観察実験により、(1) 観察できた全ての地域間の組み合わせで結実と種子形成は正常であること、(2) 種子の発芽も正常であること、(3) F1個体の花粉稔性に受粉後生殖隔離の影響が現れる可能性があること等が示された。F1個体に受粉後生殖隔離が見られた組み合わせのうち1つは、先行研究で遺伝子流動の無いことが示された新大陸東西の集団間であり、このことは、本種が輪状種としての性質を持つことを示すものであった。
著者
梶田 幸宏 岩堀 裕介 高橋 亮介 村松 由崇
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.350-353, 2017

<p> 超音波を用いて尺骨神経の前内側への移動量を肩の外転角度と肘の屈曲角度を変えて検討した.対象は健常人10名20肘で,超音波を用いて肘部管の短軸像を描出.上腕骨滑車から尺骨神経中央までの距離(TUD)を肩関節外転60・90・120度,肘関節屈曲30・60・90・120度の計12肢位で比較検討した.</p><p> 肘関節屈曲30・60・90・120度のTUDは各肩関節外転角度で利き手側と非利き手側の各肢位で有意差はなかった.肩関節の各外転角度において肘関節屈曲30度と比較して120度では有意にTUDは増加した.</p><p> 肘関節の屈曲角度を深くすることで,尺骨神経は有意に内側に移動したが,肩関節外転角度の影響は受けていなかった.肘部管における尺骨神経の位置の変化には肩関節の外転運動は関与しないことが示唆された.</p>
著者
小池 潤 田澤 賢次 並川 宏英 伊藤 佳代子 八塚 美樹 安田 智美 小林 祐子 梶原 睦子 大上 英夫 斎藤 智裕
出版者
富山医科薬科大学看護学会
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.153-160, 2000-04

十全大補湯, 四物湯, 補中益気湯, 小柴胡湯の経口投与は実験的ラット肝転移を抑制し, 十全大補湯と四物湯はマクロファージを, 補中益気湯はNK細胞を活性化するが, これら漢方方剤における活性酸素消去能の特徴を検討した.上記を含めて9種類の漢方方剤を検討したところ, ・O_2^-と・OH(Fenton反応・UV照射)の消去能の総和では小柴胡湯が最も強く, 温清飲, 補中益気湯十全大補湯四物湯人参養栄湯の順であった.更にこれら9種類の構成生薬23種類別における活性酸素消去能の検討の結果, 漢方方剤の特徴として十全大補湯, 四物湯温清飲は・O_2^-を, 補中益気湯と小柴胡湯は・OHを抑える傾向がみられ, ・O_2消去能の高い漢方方剤はマクロファージ活性に, ・OH消去能の高い漢方方剤はNK細胞活性に関与するという可能性が示唆された.
著者
梶田 洋一郎 羽渕 友則 賀本 敏行 奥野 博 寺井 章人 筧 善行 寺地 敏郎 小川 修 吉田 修
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.711-714, 2000-10

1)Sheldonらの分類でstage IIIA迄の尿膜管癌の初回手術として,臍・尿膜管全摘除術を加えた膀胱部分切除術にて長期の生存,膀胱温存が得られる可能性が示唆された.2)CEAは患者血清4例中2例,尿膜管癌組織5例中5例で陽性であり,尿膜管癌の腫瘍マーカーとなる可能性が示唆された.3)p53は尿膜管癌組織5例中4例で陽性であったが,stageや予後との相関は認められなかった
著者
梶田 真
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.1, pp.53-72, 2018-02-25 (Released:2018-04-14)
参考文献数
37
被引用文献数
1

Because of limitations regarding available statistical data for units of year and enumeration, studies on socio-spatial patterns of Tokyo have not responded sufficiently to the dynamics of the so-called “doughnut phenomenon” period—a combination of urban sprawl and inner city decay—from the late 1960s to the early 1990s. Social maps for 1965 at the cho scale are created using statistics produced separately by the Tokyo Metropolitan Government. These maps are compared to those for 1980, because only the population censuses for 1965 and 1980 enumerate occupation data at this geographical scale. Subsequently, the dynamics of socio-spatial patterns in Tokyo for this period are examined. There were significant changes to names and territories of cho following enactment of the Addressing System Act of 1964. This was a serious problem for creating a social map on the cho scale, which was overcome by allocating either the 1961 cho territory or the current one according to cho name and date of statistics. The results of the analysis demonstrate that, in 1965, white-collar areas were formed as buffers around radial commuting train lines in western Tokyo, and areas between these in outer western Tokyo were not white-collar. Therefore, a star-shaped model, rather than a sector one, is suitable for representing socio-spatial patterns of the inhabitants of Tokyo in 1965. In 1980, the white-collar occupation ratio of these “between” areas rose rapidly, and a sectoral pattern clearly emerged. In eastern Tokyo, almost all areas were blue-collar in 1965, and moderate white-collar areas emerged along radial commuting train lines. The four main reasons for these changes are: 1) housing complex development at the sites of large plants; 2) abolishment of green belt policy; 3) new construction and expansion of radial train lines, especially subway lines; and, 4) expansion of sewage service areas. In western Tokyo, the culvertization of medium and small rivers, around which were former industrial areas, also made an important contribution to transforming blue-collar areas into white-collar areas. These results show the importance of infrastructure development in bringing about socio-spatial changes in Tokyo during this period.
著者
劉 春艶 尾崎 未空 小暮 駿太 鈴木 玲雄 宮田 侑季 角 英樹 浅野 早苗 梶川 博 高橋 慶
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会第125回大会
巻号頁・発行日
2019-03-12

【目的】食品加工の過程で発生するダイコンとパイナップルの残渣は,高利用性飼料としての特性が期待される.本試験では両残渣の消化・発酵特性をイビトロ法により評価した.【方法】両残渣(ダイコン,パインと表記)の化学成分と併せて抗酸化能(FRAP)や硝酸Nを分析した.フィステル装着牛のルーメン内で経時的に培養するインシチュ法により消化パラメータを求めた.また嫌気的バッチ培養により経時的な発酵特性を測定した.対照飼料としてイタリアンライグラス(IRG)とコーンを用いた.【結果】飼料成分(OM,CP,NDP,%DM)ダイコンが89,9,34で,パインが95,7,60であり,FRAPがそれぞれIRGの0.7倍と3.4倍であった.DMのインシチュパラメータ(aとb%DM,kd%/hr)はダイコンで94,6,7.0,パイン20,68,4であり,ダイコンで溶解性が高く,パインでコーンと類似の反応を示した.発酵特性(総ガスとVFA)はコーンと比べてダイコンが同等の,パインが多少低い傾向を示した.ダイコンはメタン産生を強く抑制し,培養初期に乳酸産生を示した.
著者
本田 祐一郎 梶原 康宏 田中 なつみ 石川 空美子 竹下 いづみ 片岡 英樹 坂本 淳哉 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.I-112_1-I-112_1, 2019

<p>【はじめに,目的】</p><p>これまでわれわれは,骨格筋の不動によって惹起される筋性拘縮の主要な病態はコラーゲンの増生に伴う線維化であり,その発生メカニズムには筋核のアポトーシスを契機としたマクロファージの集積ならびにこれを発端とした筋線維萎縮の発生が関与することを明らかにしてきた.つまり,このメカニズムを踏まえ筋性拘縮の予防戦略を考えると,筋線維萎縮の発生を抑止できる積極的な筋収縮負荷が不可欠といえ,骨格筋に対する電気刺激療法は有用な方法と思われる.そして,最近は下肢の多くの骨格筋を同時に刺激できるベルト電極式骨格筋電気刺激法(Belt electrode-skeletal muscle electrical stimulation;B-SES)が開発されており,従来の方法より廃用性筋萎縮の予防・改善効果が高いと報告されている.そこで,本研究では動物実験用B-SESを用い,不動後早期からの筋収縮負荷が線維化の発生を抑制し,筋性拘縮の予防戦略として有用かを検討した.</p><p>【方法】</p><p>実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット16匹を用い,1)無処置の対照群(n = 4),2)ギプスを用いて両側足関節を最大底屈位で2週間不動化する不動群(n = 6),3)不動の過程で動物実験用B-SESを用い,後肢骨格筋に筋収縮を負荷する刺激群(n = 6)に振り分けた.刺激群の各ラットに対しては大腿近位部と下腿遠位部にB-SES電極を巻き,後肢骨格筋に強縮を誘発する目的で刺激周波数50Hz,パルス幅250µsec,刺激強度4.71 ± 0.32mAの条件で,1日2回,1回あたり20分間(6回/週),延べ2週間,電気刺激を行った.なお,本実験に先立ち正常ラットを用いて予備実験を行い,上記の条件で刺激強度を漸増させ,足関節中間位での最大等尺性筋力を測定した.そして,最大筋力の60%の筋力を発揮する刺激強度を求め,これを本実験の刺激強度に採用した.実験期間中は1週毎に麻酔下で各ラットの足関節背屈可動域を測定し,実験期間終了後は両側ヒラメ筋を採取した.そして,右側試料はその凍結横断切片に対してH&E染色を施し,各筋につき100本以上の筋線維横断面積を計測した.一方,左側試料は生化学的検索に供し,コラーゲン特有の構成アミノ酸であるヒドロキシプロリン含有量を定量した.</p><p>【結果】</p><p> 足関節背屈可動域と筋線維横断面積は不動群,刺激群とも対照群より有意に低値であったが,この2群間では刺激群が不動群より有意に高値を示した.また,ヒドロキシプロリン含有量は不動群が対照群より有意に高値であったが,刺激群は対照群と有意差を認めなかった.</p><p>【考察】</p><p> 今回の結果から,刺激群には筋線維萎縮の進行抑制効果ならびに骨格筋の線維化の発生抑制効果が認められ,このことが足関節背屈可動域制限,すなわち筋性拘縮の進行抑制効果に影響していると推察される. </p><p>【結論】</p><p> 不動後早期からの筋収縮負荷は線維化の発生を抑制し,筋性拘縮の予防戦略として有用であることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本実験は長崎大学動物実験委員会で承認を受けた後,同委員会が定める動物実験指針に準じ,長崎大学先導生命科学研究支援センター・動物実験施設で実施した.</p>
著者
田中 雄一郎 大塩 恒太郎 伊藤 英道 佐瀬 泰玄 池田 哲也 川口 公悠樹 梶 友紘 久代 裕一郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-6, 2020 (Released:2020-03-27)
参考文献数
12

For many years, neck clipping of large internal carotid artery paraclinoid aneurysms has been challenging. However, recent technical developments in coil embolization and flow diverters have been associated with great advancements. Indeed, reducing surgical complications related to neck clipping in the era of interventional radiology is essential. The basic techniques include 1) preparation of the cervical carotid artery, 2) cannulation of the carotid artery, 3) craniotomy, 4) sectioning of the falciform ligament, 5) removal of the anterior clinoid process, 6) preparation of the ophthalmic artery, 7) temporary arterial occlusion, and 8) intraoperative angiography or indocyanine green videoangiography. Key points of the surgical techniques include appropriate preparation of the parent artery and selection of the aneurysm clips. Here, some technical details, including the removal of the anterior clinoid process, the separation of the distal dural ring and the transposition of the sphenoparietal sinus, are described to both avoid surgical complications and improve the visual outcome.
著者
荒田 聡恵 梶原 篤
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.312-318, 2019-07-25 (Released:2019-07-25)
参考文献数
18

アクリル酸エステル類の成長ラジカルを通常のラジカル重合の条件で60°Cから80°Cくらいの温度にしてESRで測定すると成長ラジカルによるものとは考えられない不思議なスペクトルが観測された.アクリル酸エステルのラジカル重合系ではミッドチェインラジカルが形成することが古くから考察されてきた.本研究では30°C以上の高温で観測されるESRスペクトルがミッドチェインラジカルに基づくものであることの状況証拠を積み上げ,ラジカルの動的挙動を考慮したスペクトルシミュレーションで解析して,アクリル酸エステルのラジカル重合中に存在するラジカル種の同定を行った.

1 0 0 0 OA 〓の研究

著者
梶山,英二
出版者
東京動物學會
雑誌
動物学雑誌
巻号頁・発行日
vol.26, no.305, 1914-03-15