著者
尾崎 朋文 北村 清一郎 森 俊豪 竹下 イキ子 西崎 泰清 上島 幸枝 巽 哲男 合田 光男 堺 章
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.185-194, 1989-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9

18遺体の両側で中頸および椎骨動脈神経節の出現率と大きさを調べた。また, 各神経節の椎骨, 天突穴, C6前結節, および輪状軟骨に対する位置, ならびにC6前結節の天突穴と輪状軟骨に対する位置を調べた。中頸神経節は右側で長さ14mm, 幅4mm, 厚さ2mm, 左側で各々14, 5, 2mmで約半数の例に存在した。その位置はほぼ輪状軟骨の高さで, C6前結節の内下方に近接した。中頸神経節の欠如例では, 交感神経幹はC6前結節のすぐ内方を通過した。椎骨動脈神経節は右側で長さ8mm, 幅5mm, 厚さ3mm, 左側で各々9, 5, 2mmで, ほぼ全例に存在した。位置は第7頸椎の高さで, 天突穴の外方15~30mm, 上方20 (左) もしくは25 (右) ~45mmの範囲に多く含まれた。C6前結節は, 天突穴の外方20~30mmで, 男性では輪状軟骨のやや上方, 女性ではほぼその高さに存在した。周囲の解剖構造物を比較すると, 中頸神経節では後方に頸椎横突起が存在するのみで, より安全な刺鍼が可能と考えられた。
著者
恩地 森一 阿部 雅則
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.1823-1836, 2011 (Released:2011-11-07)
参考文献数
82
被引用文献数
1

自己免疫性肝炎(AIH)の疾患概念が定着してきていて,最近の全国調査では高齢化,軽症例や急性肝不全症例が報告され,非典型例が増えている.また,急性肝炎例やIgG4関連AIHなどの新しい病態や病型も報告され,診療,研究に新しい話題が提供されている.発症機構は依然不明であるが,免疫学的解析と遺伝子解析が進んでいる.診断方法や治療法については大きな進歩がなく,今後,疾患特異的な治療法の開発が待たれる.
著者
金子 晃 巽 智秀 藥師神 崇行 平松 直樹 三田 英治 中西 文彦 尾下 正秀 吉原 治正 今井 康陽 福井 弘幸 小林 一三 土井 喜宣 林 英二朗 筒井 秀作 澁川 成弘 巽 信之 堀 由美子 森井 英一 竹原 徹郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.507-517, 2015-10-20 (Released:2015-11-02)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

自己免疫性肝炎200例を対象としてステロイド治療の現状と再燃に関連する因子について検討を行った.ステロイドは162例,81%の症例で投与されたが,そのうち149例92%で著効が得られた.一方,著効した症例のうち約半数で再燃を認めたが,そのうちの約半数はプレドニゾロン5 mg/日未満の時点で再燃していた.再燃群と非再燃群の2群間では有意差のある因子は認めなかったが,プレドニゾロン5 mg/日以上で再燃した32例をステロイド依存群,5 mg/日以下の維持量で再燃を認めなかった62例をステロイド非依存群として解析したところ,有意差のある因子を複数認めた.さらに,多変量解析にて年齢とγ-GTPが再燃に関連する因子であるという結果が得られた.このことより,再燃に関連する因子の検討においては,再燃時のステロイド用量も考慮して解析することが重要であると考えられた.
著者
山岸 未沙子 青木 宏文 田中 貴紘 高橋 一誠 米川 隆 金森 等
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.122, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究は,運転支援や機能訓練に役立てる知見を得るために,高齢ドライバの人間特性を多角的に把握することを目的とした.本報告は,そのうち運転適性検査を用いて高齢ドライバの刺激-反応特性を検討した.50代15名,60代40名,70歳以上45名が参加し,全員にインフォームド・コンセントを行った後,認知機能検査や高齢者講習と同種の運転適性検査器を用いて7つの検査を実施した.7つ中4つの検査の反応時間と正答率を用いた分析から,60代以上は刺激数が増加すると反応は遅延し,足反応と刺激数増加が同時に生じる場合には年齢差が顕著になることが示唆された.また,青色に対するパフォーマンス低下が60代以上の反応時間と正答率でみられ,赤色に対しては反応が速くなるという色の効果が示された.以上の結果から,運転適性検査により高齢ドライバの刺激-反応特性が得られ,運転時のパフォーマンス低下につながる要因が示唆された.
著者
三枝 淳 森信 暁雄 河野 誠司
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

関節リウマチ(RA)の関節破壊に関与している滑膜細胞(RA-FLS)の細胞内代謝に着目して研究を行い、以下の知見を得た。1. RA-FLSではグルタミナーゼ(GLS)1の発現が亢進しており、GLS1阻害によりRA-FLSの増殖は抑制された。2. GLS1阻害薬の投与により、関節炎モデルマウスの関節炎は抑制された。以上より、グルタミン代謝はRAの病態に関与していることが示唆され、GLS1は新たな治療標的と考えられた。
著者
中尾 恵 黒田 知宏 小山博史 小森 優 松田 哲也 高橋 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.2255-2265, 2003-08-15
参考文献数
29
被引用文献数
8

本稿では,高度な手術シミュレーションへの適用を目的とした軟組織切開フレームワークを提案する.最初に,質点系における各ノード間に生じる張力によって,軟組織の緊張状態をモデル化する.また,質点系のリモデリングと適応型の四面体分割手法によって,複数の四面体によって構成される3次元仮想オブジェクトに対する切開をシミュレートする.本手法は,組織切開後のトポロジーの変化とリアルタイムな変形に関する一貫した記述を与え,組織の物理的特性を反映した切開創を導出する.さらに,オブジェクト構成要素の階層構造を用いた力学計算の局所化によって,大規模なオブジェクトに対する広範囲でかつ対話的な操作を実現する.ノード階層を用いたリフレッシュレート管理機構は計算精度と計算コストの制御を可能とし,安定なシミュレーションを提供する.上記手法を1台の力覚デバイスをともなった実験システムに実装し,成人男性から取得した胸部MRIデータを適用した.導出される切開創の形状と計算時間に関する定量的な検証の結果,提案フレームワークが高精度かつ対話的な組織切開シミュレーションを提供することを確認した.This paper proposes a framework to simulate soft tissue cutting for advanced surgery simulation.A strained status of soft tissues is modeled as tension between neighboring vertices in a particle-based model.Both remodeling particle systems and adaptive tetrahedral subdivision achieve cutting simulation of tetrahedral objects.These methods deal with topological change and real-time deformation after soft tissue cutting consistently,and present volumetric cuts based on physical characteristics.Local calculation using dynamic elements hierarchy enables interactive and global cutting into large objects.Management structure of refresh rate performs stable simulation by controlling real time performance and simulation quality.3D MRI dataset acquired from an adult man was applied to simulation system with a force feedback device.Quantitative evaluation of calculation time and quality of cuts confirmed that our framework contributes to accurate and interactive tissue cutting.
著者
森下 俊一郎
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.115-121, 2017

おもてなしは日本独自の文化を反映した,提供者個々の器量や経験に依存する属人的なハイサービスと考えられている。一方,組織全体として従業員が優れたおもてなしを提供している旅館も散見される。先行研究では,おもてなしの個から個への伝承が中心に論じられ,組織的なマネジメントに関する論述は手薄である。本研究では,おもてなしで有名な「加賀屋」と「黒川温泉」を事例に,それらの優れたおもてなしを創出する要因を調査し,比較分析を行った。その結果,顧客志向の理念をおもてなしとして具現化し,個々の従業員に伝達,顧客へ実践され,そのフィードバックの共有と議論から,よりよいおもてなしを創出するマネジメントモデルを提示した。
著者
大場 健吉 杉山 豊樹 三浦 千明 森崎 やよい
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.1001-1008, 1977
被引用文献数
5 4

In case of evaluating possible effects on fish of lower levels of anionic surfactants present in the natural aquatic environment, the authors thought that it wax necessary to examine the effect of LAS on Japanese killifish, <i>Oryzias latipes</i>, in a dynamic system taking account of molecular change caused by biodegradation.<br> Considering the decrease in surfactant molecules and the changes in the distribution of the homologues and isomers of LAS (linear alkylbenzene sulfonate), the influence of LAS in the course of biodegradation on the mortality and hatchability of Japanese killifish was determined using a continuous flow river model. And there results was compared with the case of intact LAS in a static bioassay system.<br> It was shown that biodegraded LAS was less toxic for every stage of killifish in the river model than was intact LAS in the static bioassay. The longer alkyl chain homogues and external phenyl isomers, although more toxic for fish, were more rapidly biodegraded. To evaluate the effects of easily biodegradable chemicals such as LAS present in the natural aquatic the effects of easily biodegradable chemicals such as LAS present in the natural aquatic environment on aquatic organisms, the use of river models appears to be a promising new technique for the study of various environmental factors, e.g., biodegradation.
著者
森 星豪 岩井 彌 篠田 博之 森村 潔 芝池 正子
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.57, 2005

オフィス照明において作業者の集中力を高めかつ省エネルキ゛ー化が期待できる照明方法にタスク&アンヒ゛エント(以下、T&A)照明があるが、単に周辺のアンヒ゛エント照明の照度を下げただけでは室内の印象が暗く陰鬱に感じられ、明るさ感が低下するという問題があった。省エネルキ゛ーに貢献するT&A照明の普及には省エネルキ゛ーだけではなく快適性との両立が必要であり、そのためには明るさ感の低下を必要最小限に抑える技術の開発が不可欠となる。本稿では本照明方法を実現する照明機器の試作機を開発し、オフィス空間を想定した実験室に設置し(スハ゜ークル照明とタスク照明に関してはLEDを使用)、視環境評価実験を実施した。<BR>実験結果よりLED利用T&A照明にて従来アンヒ゛エント照明と同等レヘ゛ルの視環境を実現できることが分かったが、今回の実験条件では両者の総消費電力がほぼ同等であった。しかし、今回用いたLEDの発光効率は約30lm/Wであり、発光効率が4倍になると20%の消費電力を削減できることより、今回開発したT&A照明は近い将来(2011年にLEDの発光効率が120lm/Wになると予測)、省エネルキ゛ーと快適性との両立が図れる照明方法として期待することができる。今後はよりサイス゛の大きなオフィス空間にてさらなる実用化検討を行う。
著者
森 和俊 親泊 政一 原田 彰宏 南野 哲男
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

小胞体膜結合性転写因子ATF6は、小胞体ストレスを感知するとゴルジ装置へ移行し、プロテオリシスによる活性化を受ける。この小胞体ストレスの感知にATF6内腔領域のみが十分であることを証明した。ATF6αノックアウトマウスは正常に発育するが、腹腔に小胞体ストレス誘導剤を投与すると脂肪肝を形成して死亡する。その原因として、肝臓からの脂肪の放出を担う超低密度リポタンパク質形成に関与するApolipoprotein B-100の品質管理にATF6α非存在下では問題が生じることを突き止めた。
著者
加藤 泰浩 岩森 光 安川 和孝 藤永 公一郎 町田 嗣樹 大田 隼一郎 野崎 達生 高谷 雄太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2020-08-31

本研究は、海洋底の大部分を占める遠洋性粘土をキーマテリアルとして捉え、「化学層序プローブ」を用いて網羅的に解析することで、グローバル環境変動・物質循環のダイナミクスの全容を定量的に解明する研究である。また、有用元素の循環を定量的に議論することで、資源成因の支配プロセスの全体像を解明する。そして、環境変動や資源生成を統一的な枠組みで説明可能な,真に革新的なグローバル物質循環についての統合理論の創成を目指す。
著者
工藤 真哉 対馬 伸晃 澤田 善章 斎藤 文匡 本村 文一 高島 徹 古川 利有 鈴木 唯司 黒滝 日出一 増森 二良 渡辺 耕平 稲積 秀一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1594-1602, 1991-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

1983年10月より1989年6月までの間に弘前大学泌尿器科で膀胱移行上皮癌と診断定れ, BCG膀胱内注入療法をうけた120症例における副作用をまとめるとともに, 重篤な合併症とBCG投与との関連性について検討を加えた. 局所的には, 頻尿, 排尿痛などの膀胱刺激症状が102例 (85.0%), 血膿尿が46例 (38.3%) だった. 全身的には, 発熱が43例 (35.8%), 血清GOT, GPT値異常が9例 (7.5%), 全身倦怠感が3例 (2.5%) だった. 重篤な合併症としては, 膀胱容量が50ml以下の高度萎縮膀胱が4例に, 難治性関節炎が2例に, 間質性肺炎が1例に認められた. 高度萎縮膀胱の4例ともに, BCG膀注前後に膀胱部分切除術を施行定れており, 3例はBCG膀注回数が10回以上であった. 低膀胱容量状態に加え, BCG膀注回数が多いことが萎縮膀胱の誘因となることが推. 定れた. また, 4例中2例は非可逆性であり, 組織学的には, 筋層の線維化がより高度であったが, 結核性変化は認めず, 可逆性か否かは線維化の程度により決まると思われた. 難治性関節炎の2例ともに, 関節穿刺液の結核菌培養は陰性で, 非特異的炎症反応だった. 重篤な間質性肺炎の1例は, 気管支鏡生検組織において, 肺胞中隔の著明な線維化とリンパ球浸潤を認めたが, 結核性変化は認めず, BCGに対する過敏性反応が病因であると考えられた.