著者
江崎 悌三
出版者
東京動物學會
雑誌
動物学雑誌
巻号頁・発行日
vol.34, no.402, pp.560-563, 1922
著者
草野 央 池原 久朝 鈴木 翔 江崎 充 後藤田 卓志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.48-56, 2018 (Released:2018-01-22)
参考文献数
16

消化器内視鏡治療のめざましい発展とともに,安定した治療を施せるような鎮静が求められている.しかし,内視鏡時の鎮静に対する承認が取得できている薬剤はほとんどなく,ミダゾラムやフル二トラゼパムが保険適応外で使用されているのが現状であり,安全かつ確実な鎮静方法の確立が急務となっている.この状況を受けて2013年には日本消化器内視鏡学会より“内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン”が作成され,鎮静が必要と考えられる局面においてどのような鎮静方法が良いのか,指針が示されている.近年では,鎮静薬として,短時間作用型のプロポフォールや呼吸抑制がないプレセデックスが注目を浴びており,消化器内視鏡治療領域においても使用頻度が増している.しかし,その適応や使用方法を誤ると偶発症のリスクが高まるのも事実である.薬剤の特徴,使用方法,モニタリング方法等,今まで以上に事前の学習とトレーニングが必須の時代となっている.
著者
石川 広己 石川 広己 渡邉 大記 江崎 禎英 大山 永昭 屋敷 次郎 山本 隆一
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.25-34, 2019-07-05 (Released:2020-07-08)

[セッション抄録] 改めて医療等分野に係る個人情報保護のあり方を考える―公益と個益の視点から― 石川広己(日本医師会) 大量の個人情報を集めることができる時代,その情報を分析することで経済活動に活用したり,新たな知見を得たりする取り組みが世界中で行われている.一方で,国民の権利,利益を守るための保護のあり方も同様に議論がなされている. とりわけ,健康・医療・介護に係る情報に関しては,一層の保護措置が必要との認識は世界共通である.例えば,2017年5月に全面施行された改正個人情報保護法では,病歴を要配慮個人情報として,本人同意を得ない取得を禁止している.2018年5月に適用が開始されたEU一般データ保護規則(GDPR)でも,第9条のProcessing of special categories of personal dataで健康に関するデータの取扱いを制限している. このように,健康・医療・介護等の情報の保護の重要性は誰もが強く認識してはいるものの,国民の目線からは十分に保護されるのか不安が生じる.最近の医療情報分野におけるKey wordを挙げてみると,「保健医療記録共有サービス」,「情報銀行」,「次世代医療基盤法」,「被保険者記号番号の個人単位化」などがある.これらは,医療等分野に係る情報を関係者で共有することで適切な医療を提供することを目指す,情報を活用して,その便益を個人に還元する,医療分野の研究開発に生かす,個人の健康・医療に係る情報を生涯に亘り追いかけることで健康寿命の延伸に資することができるなど,多くの可能性を持っている.これらの可能性を探ることは,少子高齢時代を迎えるわが国にとって極めて重要な問題である.ただし,これを実現するには明快で十分な説明の上で,国民一人ひとりの理解と協力がないと実現は難しい. そこで,医療等分野に係る個人情報の保護を通して,改めて公益と個益,またそれを実現するための様々なインフラのあり方について識者を交えてディスカッションを行いたい.
著者
山内 昌和 西岡 八郎 江崎 雄治 小池 司朗 菅 桂太
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.85-106, 2020-03-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
60
被引用文献数
1

本稿の目的は,沖縄県の合計出生率が本土よりも高くなるメカニズムを解明することである.分析では,筆者らが独自に実施した質問紙調査や,政府統計の1つである第4回全国家庭動向調査等を資料として,沖縄県と本土の出生行動を比較した.その結果,沖縄県の合計出生率が本土よりも高いのは,沖縄県に特有の文脈効果の影響,具体的には,多くの子どもを持つことを望ましいとする価値観,結婚前に子どもを授かることへの寛容さ,家系継承が父系の嫡出子に限定されるという家族形成規範の3つの家族観が出生行動に影響を及ぼし,沖縄県の有配偶女性の子ども数が多くなるからであった.考察では,沖縄県における3つの家族観の内実にゆらぎがみられること,所得水準や待機児童などの出生に関連する沖縄県の社会経済状況が本土より劣位にあることを踏まえ,沖縄県の合計出生率が今後低下して本土の水準に近づく可能性があることを論じた.
著者
江崎,悌三
出版者
東京動物學會
雑誌
動物学雑誌
巻号頁・発行日
vol.34, no.402, 1922-06-24
著者
江崎 治夫 安田 克樹 武市 宜雄 平岡 敬生 伊藤 利夫 藤倉 敏夫 矢川 寛一 林 雄三 西田 俊博 石丸 寅之助
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.1127-1137, 1983-09-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 5

広島での原爆被爆者からの甲状腺癌の発生を知るため研究を行った.対象は統計処理を容易ならしめるよう,性別,被爆時年齢別,被爆線量別にあらかじめ定められた固定集団である放射線影響研究所の寿命調査拡大対象を用い, 1958年から1979年までの22年間に診断,或いは剖検により発見された甲状腺癌を調べ,被曝放射線量との関係を明らかにした. 75,493人の中から125人の臨床的甲状腺癌が発生した.男15人,女110人で,人口10万人対粗年間発生率は男2.7, 女12.4で男女共,線量の増加と共にリスクが増加する.若年女性に特に,この傾向が著るしい.期待数に対する観察数の比(O/E)をみると,男女別でも,男女合計でも,線量の増加と共に甲状腺癌が増加する.線型反応についての検定を行うと,女性及び男女合計では線量効果がみとめられた.又年齢が若い程線量効果が明らかである. 50rad以上被爆した群の対照群に対する相対性リスクは4.2で,男女差はないが男性は数が少い為,女性にのみ有意である.年齢別では20歳末満のリスクが7.9と高く,統計的に有意である.統計的に有意な回帰係数が求められた20歳末満の女性の年間1 rad当りのリスクの増加は100万人対約3.4である. 同期間に剖検された4,425人中155人に潜伏癌がみられた. 50rad以上の群の相対的リスクは1.9で有意に高く, O/E比は男1.6, 女1.8でほぼ等しいが,女子にのみ有意であった.
著者
木下 祐介 八反地 剛 八木 勇治 江崎 隼輝 奥村 大輔
出版者
日本地形学連合
雑誌
地形 (ISSN:03891755)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.25-39, 2014-01-25

The 2011 East Japan Earthquake caused landslides across the Northern Kanto and Tohoku Regions. The purpose of the present study is to reveal the characteristics of shallow landslides induced by the earthquake and subsequent rainfall in granitic mountains located in northern Ibaraki Prefecture, Japan. Total 140 shallow landslides were identified through interpretation of aerial photographs and fieldwork. Among the 140 landslides, 65 were directly triggered by the main shock (March 11 to 18, 2011), and the rest 75 were triggered by rainfall events or other earthquakes from March 19 to December 15, 2011. The most of them are shallow landslides with a slip plane of granitic soil (grus). Bedrock or weathered bedrock is exposed on some landslide scars in the area underlain by biotite granite where soil is thinner. Among the 87 landslides, which occurred on natural hillslopes, 50 landslides slid eastward (NE to SE). The bias in landslide direction on natural hillslopes would correspond to the direction of crustal movement of the main shock.
著者
河野 修一 江崎 次夫 原 浩之 村上 博光 木原 辰之 中山 累 寺本 行芳 金 錫宇 全 槿雨 松本 淳一 土居 幹治 村上 尚哉
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.119-122, 2020-08-31 (Released:2020-12-25)
参考文献数
4

集中豪雨で山腹斜面が崩壊した跡地に施工された筋工の平坦部に3年生のヒノキを植栽する際に,活着率の向上とその後の旺盛な成長を期待して,植え穴に「くらげチップ」約100 gを施した。10年後の施用区の樹高は722 cm,根元直径は112.2 mmあった。これに対し,無施用区のそれらは,それぞれ547 cm,84.8 mmであった。施用区と無施用区との間に枯損率,樹高および根元直径共に,0.1%レベルの有意差が認められた。このような相違が認められたのは,土壌改良材の持つ水分保持能力と分解後の栄養分が効果的に作用したことによるものと判断された。しかし,樹高と根元直径の伸長率は10年目で,ほぼ0に近い値となり,その効果の持続期間は10年程度と考えられた。
著者
江崎 智絵
出版者
防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群)
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

オスロ・プロセスが停滞して以降、現在に至るまでの期間は、ハマースの動向に注目すると以下の3つの時期に区分することができる。第一期が2001年から2005年まで、第二期が2006年から2010年まで、第三期が2011年以降である。本研究の対象期間は、第三期に該当するものである。本研究では、2012年以降のパレスチナ情勢を事例として取り上げ、まず、パレスチナ内部の政治情勢および同地域を取り巻く国際関係の推移を時系列で整理する。それを踏まえ、①パレスチナ内部のパワー・バランスにおけるハマースの動き、②ハマースと近隣中東諸国との関係、という2つの側面について同時並行的に分析していく。
著者
西山 美樹 江崎 秀男 森 久美子 山本 晃司 加藤 丈雄 中村 好志
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.480-489, 2013-09-15 (Released:2013-10-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1

豆乳は栄養価に優れ,イソフラボン類などの機能性成分を含むが,その消費量は多くない.本研究では,豆乳の用途拡大および保健機能性の向上を目指して,豆乳から乳酸発酵豆乳,さらには豆乳チーズを試作するとともに,これらの抗酸化性の評価および主要成分の分析を行った.11菌株の乳酸菌で豆乳を発酵させたところ,9菌株において凝固が認められた.イソフラボン分析の結果,Lactobacillus plantarumおよびLactobacillus casei を用いた乳酸発酵豆乳では,豆乳中のグルコシル配糖体であるダイジンおよびゲニスチンは効率よく分解され,それぞれダイゼインおよびゲニステインを生成した.しかし,いずれの乳酸菌においてもマロニル配糖体は分解されなかった.Lb. casei MAFF 401404を用いた乳酸発酵豆乳は,滑らかなプレーンヨーグルト状に凝固し,官能評価においても高得点を収めた.この発酵豆乳よりカードを調製し,カマンベールチーズカビ(Penicillium camemberti NBRC 32215)およびロックフォールチーズカビ(Penicillium roqueforti NBRC 4622)を用いて豆乳チーズを調製した.いずれのチーズカビを用いた場合も,発酵·熟成にともない,ホルモール態窒素量および旨みを呈するグルタミン酸含量が顕著に増加した.また,官能評価においても高得点を得た.DPPH法による抗酸化試験の結果,豆乳チーズの抗酸化活性も発酵·熟成中に有意に(p<0.01)上昇し,カードの2~3倍に増大した.また,豆乳の乳酸発酵時には残存していたマロニル配糖体も,これらのチーズカビによって分解され,体内吸収性に優れたアグリコンに変換された.これらの結果より,この豆乳を用いたチーズ様食品は,将来,高付加価値をもつ新規食品として受け入れられる可能性が示唆される.
著者
江崎 雄治 西岡 八郎 鈴木 透 小池 司朗 山内 昌和 菅 桂太 貴志 匡博
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.255-267, 2013 (Released:2014-03-13)
参考文献数
8
被引用文献数
2

本稿は,国立社会保障・人口問題研究所の『日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)』の手法と結果について解説するものである.まずコーホート要因法による将来人口推計は,コーホートの安定的な経年変化を将来に延長することをその手法の基礎に置いていることから,少なくとも近い将来に関する限り,かなり高い精度を有することを説明する.2025年までの推計結果については,特に非大都市圏の人口減少の加速とともに,大都市圏郊外地域における急激な高齢化について指摘している.さらに大都市圏では,その後の死亡数の増加により,2040年までの期間に非大都市圏の後を追う形で人口減少局面に入る.
著者
今城 香代子 江崎 功二郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.312-314, 2013-12-01 (Released:2014-03-03)
参考文献数
19

我々は, 樹幹表面に分布するカシノナガキクイムシ (以下, カシナガ) の穿入孔を濡らしたタオルでカバーするだけで, カシナガの成虫を捕獲できることを明らかにした。2012年10∼12月の間, カシナガの穿入木3本の地際部にタオルを設置したところ, 日当り平均13.3頭/m2の成虫が継続して捕獲された。カシナガの坑道が穿入孔からタオル内部に延長され, タオルの回収によってそこに滞在する成虫が捕獲された。成虫の性比は著しくオスに偏り, 12月に捕獲されたオス成虫のうち, 親は24.0%であった。冬前にオス親を除去することで繁殖成功度を下げる効果が期待される。
著者
伊藤 武治 江崎 功二郎 小谷 二郎 酒井 敦
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.177-183, 2020 (Released:2021-09-15)
参考文献数
17

塩素酸系除草剤とグリホサート系除草剤を竹林に施用し,土壌や渓流水の残留量や残留期間を調査した.あわせて,竹林内および竹林伐採後に多く見られる植物種の種子発芽への影響,および除草剤使用後の下層植生への影響を調査した.塩素酸系除草剤は,散布後1ヶ月でほとんど分解された.グリホサート系除草剤では,落葉・土壌・細根からわずかな残留成分が検出された.一方,付近の渓流水からは検出されず,処理区外への流出の可能性は極めて低いと考えられた.種子発芽試験においては,塩素酸系除草剤処理区でカラスザンショウの発芽率が有意に低かった.グリホサート系除草剤を施用した試験では,下層植生の種数が約2倍に増え,植被率も急増し,先駆性樹種や草本が多く見られるようになった.竹林の皆伐後も同様な傾向が示されていることから,タケが枯れることにより皆伐と似たような効果が現れたと考えられた.これらのことから,竹林駆除に使用される除草剤の環境への影響は小さいものと考えられた.
著者
菊池 結貴子 江崎 和音 中島 悠 石川 遼子 伊與木 健太 正田 亜八香 音野 瑛俊
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.3-13, 2017-01

近年,科学者と非科学者がテーブルを囲んで気軽に語り合う「サイエンスカフェ」が日本で広がりつつあり,開催回数・開催場所ともに急激に増加している.それに伴って,サイエンスカフェの形式も多様化してきており,現在では実に様々な形式のサイエンスカフェが開催・報告されている.本稿では,こうしたサイエンスカフェの多様性の一端として,著者らの運営するイベント「BAPcafe」を取り上げ,その運営方法と実施実績を詳述するとともに,実施記録や参加者へのアンケートをもとに,BAP cafeの特徴と効果および今後の課題について考察を行った.BAP cafeではサイエンスカフェの要素の一つである「わかりやすく説明すること」よりも,「専門的な内容について濃密な議論を展開すること」に重点を置いており,サイエンスカフェの新たな一形式として著者らは位置づけている.スピーカーと参加者の間のみならず,参加者同士,スタッフと参加者の間での対話が自然に起こり,議論が盛り上がる点が特徴であり,参加者からは,スピーカーとの距離が近く,“マニアック”な話題を共に楽しみながら深く議論を交わせるといった評価を得ている.専門性の高い内容はサイエンスカフェでは避けられがちであるが,BAP cafeではそれが長所となり,参加 者を獲得して継続的な開催につながっている.
著者
鳥居 憲親 江崎 保男
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.15-24, 2014-09-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

イソヒヨドリは,国内ではもともと,崖や岩のある海岸に生息し繁殖するが,近年になって内陸の都市での繁殖が確認されるようになった。そこで,2011年5月から2012年12月までの20ヶ月間,海岸から20 km離れた内陸部に位置する兵庫県三田市のニュータウンでセンサスと行動観察を行なった。本種は調査地に周年生息する留鳥であったが,特に高層建築物が密集する地区に多く出現し,オスのなわばりもこの地区に偏って存在していた。オスは高い場所において高確率でさえずり,隣接オスとのなわばり闘争においては,隣接者よりも高い場所でさえずろうとした。イソヒヨドリのオスは高層建築物をソングポストとして利用し,高い位置からさえずることによって,なわばりの形成と防衛を行なっていると考えられる。また,本種は高層建築物に隣接した草地の地表面で,地表性の小動物をとっていた。したがって,都市においては高層建築物と草地のセットこそが,イソヒヨドリの好適なハビタットを形成しており,本種のハビタットに必要な空間構造は,高さを生み出す崖地形と,これに隣接し地表性動物が豊富に存在するオープングラウンドのセットであることが示唆される。また,人が創り出した崖地形としての高層建築物と芝生などのオープングラウンドのセットを巧みに利用することにより,本種は都市への進出を果たしたのだと考えられる。
著者
中村 尚世 石川 大樹 大野 拓也 堀之内 達郎 前田 慎太郎 谷川 直昭 清水 珠緒 福原 大祐 中山 博喜 江崎 晃司 齋藤 暢 平田 裕也 内田 陽介 鈴木 晴奈 佐藤 翔平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101334, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】膝前十字靭帯(ACL)再建術後に荷重制限を設けている施設が多い.しかし,全荷重開始時期に関しては各施設で異なり,未だ統一した見解はない.我々は術後4週にて全荷重を開始し術後リハビリテーション(リハ)を慎重に行うことで良好な術後成績を得たことを報告(2005年本学会)した.さらに,術後3週にて全荷重を開始するも変わらず良好な術後成績を得られたことを報告(2007年本学会)した.そこで今回,更に全荷重開始時期を1週早め,術後3週群と2週群で術後成績を比較検討したため,以下に報告する.【方法】2002年12月~2011年6月までに膝屈筋腱を使用した解剖学的2ルートACL再建術を行った596例のうち,同一術者にてACL再建術のみが施行され,12ヶ月以上経過観察が可能で,再鏡視し得た110例を対象とした.半月板縫合術を同時に施行した例,50歳以上の例,後十字靭帯損傷合併例,ACL再断裂例は除外した.2004年1月より3週で許可した68例(男性45例,女性23例,31.3±8.4歳:3週群)と,2008年4月より術後全荷重を2週で許可した42例(男性24例,女性18例,31.0±7.9歳:2週群)で術後成績を比較検討した.但し,術後リハプログラムでは全荷重開始時期以外はほぼ同一とした.検討項目は,術後6,12ヶ月での膝伸筋の患健比(60°/s),受傷前と術後12ヶ月時のTegner activity score,術後12ヶ月時の膝前方制動性の患健側差,再鏡視時の移植腱の状態,入院期間とした.なお,膝伸筋力は等速性筋力測定器Ariel,膝前方制動性はKT-2000を用いて測定した.再鏡視時の移植腱の状態については,移植腱の太さ,緊張,滑膜被覆の3項目を総合し,Excellent,Good,Fair,Poorの4段階で評価した.統計処理に関しては,術後6,12ヶ月での膝伸筋の患健比(60°/s)と,Tegner activity scoreは,それぞれ反復測定による二元配置分散分析,χ²検定を用いた.また,術後12ヶ月時のKT-2000患健側差 ,再鏡視時の移植腱の状態,入院期間はMann-WhitneyのU検定を用いた.統計学的検討にはSPSS Statistics 17.0Jを使用し,有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究の個人情報の取り扱いは当院の個人情報保護規定に則り実施した.【結果】術後6,12ヶ月での膝伸筋の患健比はそれぞれ2週群67.3±2.9%,82.9±2.6%,3週群70.2±2.2%,83.0±2.1%であり,筋力回復の変化量に有意差はなかった.受傷前と術後12ヶ月時のTegner activity scoreの平均値は,それぞれ2週群は6.26が6.26,3週群は5.91が5.88であり,両群にともに有意差はなかった.術後12ヶ月時のKT-2000患健側差は2週群0.13±0.7mm,3週群0.07±0.6mmであり有意差はなかった.再鏡視時の移植腱の状態は2週群はExcellent 31例(73.8%),Good 9例(21.4%),Fair 2例(4.8%),3週群は Excellent 41例(60.3%),Good 27例(39.7%)であり,有意差はなかった.入院期間は2週群22.4±5.6日,3週群25.7±3.2日であり,2週群で有意に短かった(p<0.05).【考察】矢状面断において脛骨は水平面に対し10°程度後方傾斜しているため,膝関節荷重時に脛骨は大腿骨に対し前方剪断力として働き,移植腱へのストレスが増大するとの報告が散見される.しかし,全荷重開始時期は各施設で異なり,可及的早期から5週程度で行なわれており,統一された見解はない.そこで当院では術後の全荷重開始時期を術後4週から開始し,3週,2週へと変更させ術後成績を比較検討してきた.全荷重開始時期を早めたことで術後早期の活動性が上がるため,膝伸筋の筋力回復とTegner activity scoreにおいては2群間に差があると仮定したが,本研究では有意差はなかった.KT-2000患健側差と再鏡視時の移植腱の状態においては2群間に差がなかったことから,術後2週で全荷重を開始しても膝関節の不安定性の増大や移植腱への悪影響がないことが分かった.また,入院期間に関しては2週群の方が有意に短かった.以上より,術後2週での全荷重開始が許容されることが示された.【理学療法学研究としての意義】ACL再建術に関する臨床研究の報告は多数存在するが,全荷重開始時期の違いによる比較検討されたものは少ない.ACL再建術後の全荷重開始時期を3週と2週で比較検討した結果,少なくとも膝関節の不安定性の増大や移植腱への悪影響がないことが分かった.また,入院期間は有意に短縮できることが分かったことからも本研究は有意義だったと思われる.