著者
片山 直登 春日井 博
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.69-75, 1988-06-15

自動車等の交通量の増大に伴う交通渋滞の緩和に対して, どの道路区間を建設すれば最も効率よく交通需要を処理できるかという最適道路網建設問題がある.この問題は, 一般的には非線形コストをもつ多品種流ネットワークデザイン問題と知られている.この問題の厳密解を求めるのは非常に難しく, 従来の研究では大規模な道路網建設問題に対する適用に問題が残されている.本研究では, 非線形整数計画問題として定式化したこの問題に対して効率的な三つのヒューリスティック解法(貪欲解法, 双対解法, ローカルサーチを用いた解法)および分枝限定法による解法を提案し, これらの解法を組み合せることによって規模の大きな道路網建設問題に対しても適用可能で効率的な解法を提案する.また同時に建設順序問題に対する効率的なヒューリスティック解法も提案する.
著者
片山 昇
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-22, 1996-03-31

ウジェーヌ・ドラクロワはフランス絵画史におけるロマン主義運動の指導者と目されているが,彼の近代芸術のための孤独な闘争の内面史は彼の日記と書簡の中に見出される。また絵画に関する思想は断片的に日記の中に記されている。ボードレールは詩人批評家としてドラクロワの芸術の擁護と顕揚に盡力したが,同時にボードレールはドラクロワの精神的庇護のもとに「悪の華」の美学を形成したのである。
著者
西 望 斉藤 幹 小山 高夫 木戸 豊 生山 博 片山 芳文
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

子宮頸癌患者手術時採取のヒト黄体組織のインビトロにおける培養実験よりメジュ-ム中に放出されるプロゲステロン、ランドロステンヂオン F2および細胞ホモゲネ-ト抽出液中のサイクリツクADMP、同GMPはいづれも10_-7のモル濃度で抑制されることが観察されたが2の濃度より生理的なものではないが薬理学的量を投与すれば性機能を抑制せしめることが出来ることをましている。ヒトにおいてin uivo、で脈波状にLHRHを投与する。下垂体は大量のLHを放出するためのLH/FSH比は増大する。そのアゴニストの投与は下垂体のダウン調節によりゴナドドロピンの放出は着減する。Yの際初段階において一過性にゴナドトロピンは増量するためこの活用で二次的に性腺もダウン調節をうける。この三つの作用でLHRHアゴニスト投与の際は性機能の一時的静止を誘起出来ることがわかった。また同アゴニストの50μgをプロピレングリュ-ルに溶解膣座薬として使用せしめると微量の持続的吸収DによりFSHの上昇と血中E_2の着明の上昇をもたらし卵胞発育と極めて良好な黄体が生じることが判った。以上の基礎的観察より、LHRHアゴニストの点鼻および膣座薬による子宮内膜症子宮筋腫の患者についてその自覺症状他覺的所見よりその効果を判定腫瘍マ-カ-にて経過を追跡した。子宮内膜症で80%以上の症例に自覺他覺的所見共改善がみられる子宮筋腫ではサイズの減少は希待出来なかったが貧血の改善出血量の軽減が殆んど前例にみとめられた。膣錠による視床下部性排卵障碍〓者の排卵誘発を試みたが血中DHEA-SとLHの下降FSHの上昇によりLH/FSH比の着明の改善がみられ5名の妊娠成功をみた。BBTより判定しても黄体機能の着明の改善が推定された。前者の内膜症加療効果は投与中止により再発率が高くまた症例の中で投与前より悪化してくるものや腫瘍マ-カ-でCA19-9等が上昇してくるものがみられている。長期の観察の必要性がある。
著者
Sankari Shadi Chikh Ali Mohamad 片山 克己 三木 信雄 Said Omar Abdul Mohasen Sawas Ahmad Bahij 夏秋啓子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.109-114, 2007-09-20
被引用文献数
1

ジャガイモYウイルス(PVY)はシリアのジャガイモ生産における主要ウイルスの一つとされ,ジャガイモ生産の阻害要因となっている。PVY感染の無い種イモの生産と供給が主要な防除手段であるが,そのためには,効果的なウイルス検査法が必要である。酵素結合抗体法(ELISA)は複数種類のジャガイモウイルス検出には最も一般的な技術であるが,それぞれのウイルスに対して特異的な抗血清が利用できることが必須条件となる。本研究では,シリアに発生したPVY分離株を純化し,ウサギに免疫することにより抗血清をはじめて作製した。この抗血清を利用し多くのシリア産PVYを用いたELISAによる検討では,市販の抗血清と同等の検出能力を有し,両抗血清間に結果の相違は認められなかった。また,非特異的反応も生じなかった。さらに,検出限界は高かった。以上より,本研究ではシリアで分離されたPVYに対して初めてシリア国産抗血清を得ることができ,抗血清の恒常的輸入を不要にしたことに大きな意義があると考えられる。
著者
阿草 清滋 落水 浩一郎 片山 卓也 中田 育男 佐伯 元司 鯵坂 恒夫
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

阿草は、既存ソースプログラムを解析しその結果を蓄積するために、細粒度のリポジトリを開発した。CASEツール作成者は、このリポジトリを使うことにより、構文解析や依存解析などのモジュールを作成する手間を省くことができる。ソースプログラムの解析によりライブラリの典型的な利用パターンを発見した。片山は、要求仕様変更とプログラム変更の関係を代数束により形式化し、ソフトウェア発展関係の理論的基礎を与えた。ソフトウェアの段階的詳細化において各段階でプログラムテストを可能とする方式として、抽象実行に基づくソフトウェア構成法を開発した。また、オブジェクト指向開発法の形式化を試み、分析モデルの統合と分析モデルの検証法を与えた。落水は、近年のソフトウェア開発は、分散環境における共同作業であることに注目し、このような環境下でのソフトウェア開発支援のために、開発状況を保持する情報リポジトリを用いて漸進的に情報の矛盾や不確実さの解消を行うモデルを提案し、それに基づく支援環境を構築した。中田は、スライディングウィンドウを持つ計算機の命令レベルの並列化のために、ループのソフトウェアパイプライニングのレジスタ割付方式としてスパイラルグラフを提案した。また、コメントの処理などに必要とされる字句解析器の最短一致法を開発した。佐伯は、再利用プロセスの形式化をユースケースのパターン化とその構造変換規則として行った。分析パターンや設計パターンの構造をパターン化し、必要に応じてホットスポットを埋める手法を提案した。また、ソフトウェアアーキテクチャをカラーペトリネットで形式化し、非機能要求の検証を可能とした。
著者
片山 寛則 植松 千代美 菅原 悦子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

【フィールド調査(イワテヤマナシは自生種それとも導入種?)】未調査地域の青森県、秋田県の全市町村、山形県北部での調査が終了した。秋田県にて95個体、青森県で80個体のナシ属植物が見つかった。岩手県と比べて青森県、秋田県ではナシ属の出現頻度は低かった。またニホンナシの在来系統と思われる大果系ナシやイワテヤマナシとニホンナシとの雑種と思われる果実を有する個体(逸出型)は多く見つかったが、イワテヤマナシの野生個体(果実直径が3cm以下、有蒂、山中または放牧地に自生)はほとんど確認できなかった。北東北のほぼ全域にわたるナシ属探索が終了し、合計840本が見つかった。白神山系ではナシ属植物は全く見つからなかった。奥羽山系では街道沿いや人家の周辺、畑の縁などで現存していたが野生個体はなかった。北上山系ではイワテヤマナシの群落こそ見つからなかったが北は階上岳より南は早池峰山までの高地で野生個体が見つかった。北上山系の高地で現存する野生個体は自生種である可能性が高い。【保全事業】探索で見つかったナシ約550本を野生ナシジーンバンクとして神戸大学にて保存した。また保存後に現地で伐採された個体の返還事業として岩手県九戸村、遠野市にて苗木を植裁した。【DNA分析によるイワテヤマナシの起源】世界のナシ属植物の葉緑体DNAのrps16-trnQとaccD-psaI遺伝子間領域における欠失変異の有無を調査し3タイプ(A, B, C)のゲノムを識別するDNAマーカーを作製した。収集個体の320個体中の約2割とアオナシ、マメナシ類はA型のゲノムタイプであり原始型だった。収集個体の他の約8割とニホンナシ栽培品種のほとんどはB型だった。セイヨウナシ、アフリカ、中央アジア、ロシア由来のC型は収集系統では数個体のみ見つかった。この結果は約8割のイワテヤマナシ収集個体はニホンナシとの雑種であり、残りの2割に真のイワテヤマナシが含まれる可能性を示す。また岩手県全域から抽出した58個体を用いて5種類の核SSRマーカーにより個体識別と系統学的解析を行った。遺伝的多様性が大きく、ほとんどの個体が実生繁殖であることが確認された。今後は北上山系由来の集団数を増やして、集団遺伝学的手法(STRUCTURE解析)により真のイワテヤマナシを推定し起源を明らかにしたい。【芳香性物質の同定】果実に芳香を持つイワテヤマナシ収集個体のうち、ナツナシ、サネナシ、系統番号i830の3系統の果実の香気寄与成分を官能試験、TenaX-TAカラム濃縮法を用いたGC-O分析、AEDA法、GC-MS分析により香りの特徴づけと成分を同定した。ナツナシは官能試験では甘く爽やかな香りであり、ethyl 2-methylbutyrateが最も寄与度が高かった。またサネナシは官能的には強い甘さを持っておりethyl 2-methylbutyrateとethyl hexanoateの寄与度が最も高かった。i830系統ではグリーンな花様の甘さを持つ高沸点の未同定物質とethyl 2-methylbutyrateが最も高かった。ナツナシとサネナシには共通の寄与度の高い成分が多く、2系統の香りは似ていることが明らかになった。またethyl 2-methylbutyrateはニホンナシ‘幸水'では比較的寄与度が高かったが、セイヨウナシ‘ラフランス'ではほとんど寄与しておらずアジアのナシに特徴的な成分かも知れない。今後はより多くの収集系統の香気成分を調べて分類し、イワテヤマナシに特徴的な香気成分を明らかにする予定である。
著者
杉浦 光夫 森 光弥 丹羽 敏雄 片山 孝次 大槻 真 笠原 乾吉
出版者
津田塾大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1995年12月9日-12日,津田塾大学において、20世紀シンポジウムを行った。講演者および講演題目は次の通りである。20世紀数学の種々の局面をとらえた興味ある講習が多かった。11月9日13時00-14時 杉浦光夫(津田塾大)ヒルベルトの問題から見た20世紀数学、14時10分-15時10分斎藤利弥(河合塾)ポアンカレのAnalysis Situs.15時20分-16時20分松本幸夫(東京大)基本予想をめぐって、16時30分-17時30分三宅克哉(都立大)類体論とイデ-ル.11月10日 10時-11時 高瀬正仁(九州大)数学史家としてのアンドレ.ヴェイユ,11時20分-12時10分(河合文化研)20世紀数学基礎論の成果と展望、13時30-14時30分齋藤正彦(放送大)超準数学の理想A. RobinsonからE. Nelsonへ、14時40分-15時40分、高橋陽一郎(京大数理研)カオスを巡って、15時50分-16時50分宮野悟(九州大)計算量理論の誕生とその展開11月11日 鹿野健(山形大)解析学が数論してもたらしたもの、11時10分-12時10分堀田良之(東北大)簡約群の表現論における幾何学的描像、13時30分-14時30分佐武一郎(中央大)代数群と保型系数、14時40分-15時40分吉沢尚明(岡山理大)Radon変換の概念の発見と展開、15時50分-16時50分金子晃(東京大)コンピュータ・トモグラフィの歴史-数学者は何故ノ-ベル賞を取り損ねたか-、17時-18時足立恒雄(早稲田大)-フェルマークからヴェイユまで、11月12日 10時-11時小田忠雄(東北大)20世紀における代数幾何の発展、11時10分-12時10分上野健爾(京都大)20世紀代数幾何学-重複度と交点数をめぐって-、13時30-14時30分飛田武幸(名城大)ゆうぎの解析、14時40-15時40分再評価期の確率微分方程式、山田俊雄(立命館大)、15時50分-16時50分池田信行(立命館大)終路空間上の微積分-確率解析とFeynmanの経路積分-、17時-18時山口昌哉(熊谷大)20世紀の数学について、(これらの講演は「20世紀の数学」という題で日本評論社より出版される。)
著者
片山 悠樹
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.23-43, 2008-12-15

With the universalization of high school education, problems such as bullying, delinquency and other behavior have manifested themselves in high schools. A number of studies aimed at understanding these phenomena and identifying the causes have been conducted, but there are few experimental studies regarding high school dropouts and this area has not been studied systematically. Most of the studies conducted in this area have focused on high schools themselves or the educational system, concluding that dropping out is caused by academic failure or non-adaptation to school. Dropping out is, of course, a phenomenon that cannot arise without schools, so there is a certain validity to seeking the causes in schools. However, it seems necessary to include other factors such as changes in the social conditions surrounding high school students. Existing studies on high school dropouts seem to lack this perspective. In the United States, where high school dropouts have been well researched, the mechanism behind dropping out has been discussed, focusing not only on school education but also on the labor market and the shifts within it. Taking this as the research trend, it is necessary to discuss the impact on the dropout phenomenon of changes in the Japanese labor market for high school graduates. The author believes that further study from this perspective will add new knowledge to the study of dropouts in Japan. The aim of this study is to grasp the mechanisms generating dropouts in Japan, taking the shift in the labor market for high school graduates into consideration. More precisely, it examines the correlation between the acceptance of becoming a part-time job hopper -free-ter- among high school students and the actual act of dropping out with the shift in the labor market as background. The research concludes that dropouts from the first year of high school were not influenced by the acceptance of becoming a free-ter, as typified by responses such as "I want to be a free-ter" or "I don't mind being a free-ter." however for dropouts from the second year, the acceptance of becoming a free-ter did have an effect. This can be interpreted as meaning that in the first year, students do not yet have a clear career path and even if they have favorable views on being a free-ter, it does not necessarily lead to the act of dropping out. However as the years progress and career options become clearer, a free-ter orientation can lead to the actual act of dropping out. It has rarely been pointed out so far, but the mechanism that generates dropouts may differ from grade to grade. These findings pose challenges surrounding the study of the phenomenon of high school dropout.
著者
熊谷 匡紘 片山 訓博 小松 弘典 森国 裕 島崎 翔 三谷 仁也 安藝 愛菜 柏 智之 重島 晃史 稲岡 忠勝
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-54, 2011-03-31

今回,我々は斜め方向ステップを考慮した動的バランス評価法(Modified Four Square Step Test以下,MFSST)を立案した.そして,地域在住の健常な60歳以上の女性29名を対象として,MFSSTの再現性・妥当性について他の静的・動的バランス評価と比較検討した.他のバランス評価としては,片脚立位時間,Functional reach Test(以下,FRT),Timed Up and Go Test(以下,TUG)を採用した.片脚立位時間,FRT,TUG,FSST,MFSSTの測定結果は順に32.2±40.4秒,26.8±6.1cm ,7.9±1.5秒,8.3±3.0秒,8.5±2.3秒であり,FSSTとMFSSTの時間には有意差を認めなかった.各バランステストのIntraclass Correlation Coefficient(以下,ICC)は同様の順に0.967,0.904,0.844,0.822,0.639であった.MFSSTと片脚立位,FRT,TUG,FSST間の相関係数は順に-0.25,-0.44,0.66,0.67であり,動的および複合バランス評価との間に有意な相関関係を認めた.MFSSTは,動的なバランス能力を評価した指標であることが示された.ICCが他のバランス指標と比較して低値を示したことから,測定値の再現性を向上させるための検討が必要なものと考えられた.
著者
片山 順一
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.195, 2010-02-01 (Released:2010-09-28)
参考文献数
5
著者
片山 貴文
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

災害時に混乱せずに活用できることを目指して、2つの看護記録シートを開発した。このシートを評価したところ、住民の92.7%が、自分の健康状態を伝えることに役立つと回答していた。また、看護職者の94.3%が、緊急に支援が必要な人を、および、96.2%が、継続的に支援が必要な人を、それぞれ把握することに役立つと回答していた。東日本大震災では、日本医師会の災害医療チームが、この看護記録シートを用いて避難所の支援活動を行った例がみられ、実際に被災者支援に役立てることができた。
著者
古米 弘明 片山 浩之 栗栖 太 春日 郁朗 鯉渕 幸生 高田 秀重 二瓶 泰雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

合流式下水道雨天時越流水(CSO)由来の汚濁負荷が、都市沿岸域における雨天後の水質に及ぼす影響を定量評価し、お台場のような親水空間における健康リスク因子の動態評価手法の開発を試みた。多数の分布型雨水流出解析結果に基づき、降雨パターンの類型化によってCSO発生を大まかに特徴づけることができた。また、ポンプ場や下水処理場からの汚濁負荷を降雨パターンごとに表現できるモデルを構築し、干満の影響を考慮した3次元流動・水質モデルによる大腸菌の挙動予測が可能となった。
著者
徳永 朋祥 片山 浩之 知花 武佳 福士 謙介 多部田 茂 原口 強 浅井 和見 松岡 達郎 井上 誠 秋山 知宏 茂木 勝郎 端 昭彦 甲斐荘 秀生 LUN SAMBO 後藤 宏樹 本宮 佑規
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

カンボジア王国のシエムリアップ市、バッタンバン市周辺を対象とし、地下水環境並びに地表水環境、地表水と地下水の関連について検討を行った。シエムリアップ市では、地下水と表流水との交流が比較的活発であり、また、地下水の利用も相対的に容易である一方、バッタンバン市周辺においては、表流水と地下水との交流は活発ではなく、地下水利用も一部の地域を除いてそれほど容易でない状況が見られた。このような違いは、両都市の地質学・地理学的位置づけに依存していることが考えられた。また、トンレサップ湖の堆積物を用いた古環境解析や水中に存在するウイルスの定量化に関する検討も実施し、成果を得た。
著者
二又 政之 松田 直樹 清水 敏美 澤田 嗣朗 片山 建二
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.表面増強ラマン散乱(SERS)を利用した単一分子分析法の確立:1)銀ナノ粒子接合部に1個の吸着分子が存在するとき、巨大な増強度が得られることを、ラマンスペクトルと弾性散乱スペクトルの時間相関及び3次元FDTD法により、明らかにした。2)DNA塩基の内アデニン、グアニンなどのプリン環と銀表面との電子移動相互作用が巨大な増強を与えることを見出した。3)巨大SERSと同時に観測される発光スペクトルが、吸着種の蛍光とともに、金属表面の励起電子が吸着種により非弾性散乱されることによることを初めて見出した。4)脂質ナノチューブに最適サイズを有する金ナノ粒子を導入し、その表面プラズモンを励起することで、カルボニル基のピーク波数のシフトや、糖分子のスペクトルパタンなど、バルク状態とは全く異なる脂質ナノチューブのラマンスペクトル測定に成功した。この結果は、この方法により、金属ナノ粒子近傍のスペクトルのみが大きく増強されて観測されることを示しており、今後の詳細な解析により有用な結果が与えられるものと考えられる。2.ATR-SNOM-Raman分光法:1)表面プラズモンの干渉及び多重散乱電場が、ラマンイメージ測定に影響しないことを初めて見出した。3.近接場赤外分光法:1)FT-IR分光器をベースにして、全反射型配置で、金コートプローブを配置したAFMとの複合により、ポリマー及びチオール系試料について、チップ増強赤外吸収測定に成功した。また、試料下地に金属ナノ粒子を配置することで、より効率的に増強が行えることを初めて見出した。4.スラブ光導波路(SOWG)分光法の確立:電気化学的に制御可能なSOWG分光法の高感度化を進め、ITO電極上に単分子層以下の量で吸着したヘプチルビオロゲンカチオンラジカルの吸着種の電位依存性とチトクロムcの電位変化に対する応答を明らかにした。
著者
赤木 右 片山 葉子 土器屋 由起子 五十嵐 康人
出版者
東京農工大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

富士山測候所を利用して、1990年代初めより大気化学観測を続けてきた。しかしながら、2004年9月の測候所無人化が急遽決定され、1992年以来連続観測を行ってきたオゾン濃度をはじめ、大気化学関係の装置の撤収が要求された。その様な状況の中、測候所の協力を得て、特別に割かれた2004年6月18-22日の期間を利用して、従来の体制の中で最後の集中観測を行った。さらに、2005年は太郎坊避難所を中心に集中観測を行い、山頂での測定は、BC、パーティクルカウンターなどに限定して行った。観測項目は以下の通りである。エアロゾルおよび雨水の主要化学成分,粒径分布,雨水の主要化学成分、エアロゾルの粒径分布、^7Be濃度,SO_2濃度,O_3濃度,CO濃度,^<222>Rn濃度、COSの鉛直分布、同位体、NOx、ブラックカーボン。今年度は、梅雨明け前後にあたり、前半は曇りがちで、後半は比較的安定した晴天となったため、降水試料は得られなかった。2002年から2005年までの4年間に行った観測結果を整理し、次の様な結論を得た。まず、山頂と太郎坊とで得られたデータを比較することにより、(1)一般に化学成分の濃度は山頂において低いが、より細かくみると、COS濃度は山頂の方が高い、オゾンは山頂からの変動が先んずる、などの結果を得た。各成分の発生過程、分解過程について制約することが可能である。さらに、(2)自由対流圏の連続観測プラットフォームとしての富士山頂は理想的な地点であり、航空機観測の補完を行い東アジアの大気化学の情報を与える。(3)山体を4000mの観測タワーとみなすことで、微量気体の鉛直分布などの研究が出来る。
著者
角 明夫 片山 忠夫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.418-424, 2001-09-05
参考文献数
21
被引用文献数
2

稈(茎)長において異なる同質遺伝子系統, ソルガム2系統;Plainsman tall typeとPlainsman short type, ダイズ2系統;ヒュウガとヒュウガ矮性系統, 水稲2系統;銀坊主と短銀をポット栽培し, 正常系統と矮性系統の消費水量(CU)と乾物増加量(ΔW)および収量との関係を比較検討した.CUとΔWの間にはそれぞれ作物について直線関係が認められた.ΔW=0におけるCUは, ダイズ2系統を除いて, 蒸発量(E_s)にほぼ等しかった.蒸散効率(ΔW/(CU-E_s))は矮性遺伝子の有無によってほとんど影響されなかった.ΔWが大きくかつ蒸散効率(TE)の低かったヒュウガは, 供試作物中最も多量の水を消費した.またこれにはソルガム系統や水稲系統と異なり, 開花期以降ΔW=0におけるCUが蒸発量を上回る傾向を示したことも関係した.ソルガム2系統はダイズおよび水稲の2系統よりTEにおいて勝ったもののΔWが大きく, 結果的に水稲2系統と匹敵するCUを示した.これに対して矮性系統は, 供試した作物の全てで, 正常系統より常にCUが小さかった.加えて, 矮性系統は絶対収量において正常系統に劣るものの, 同一の蒸散量をより効率的に収量生産へと結びつけることが示された.このような矮性系統の特性は干害回避性と水利用の効率化という両面からも有用であろう.