著者
松多 信尚 太田 陽子 安藤 雅孝 原口 強 西川 由香 Switzer Adam LIN Cheng-Horng
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2010年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.88, 2010 (Released:2010-11-22)

台湾はユーラシアプレートとフィリピン海プレート上のルソン弧の衝突によって形成されている.その衝突速度は82mm/yr程度で衝突しており,多くの活断層やプレート境界が存在する.特に東海岸に大津波を起こす可能性のある給源としては,琉球トレンチと沖合の海底活断層が考えられる.もしそこで地震が発生すれば,東海岸の海底地形は急に浅くなることから,大きな津波が来襲すると考えられる.台湾の歴史津波記録は少ない.東海岸の詳細な記録があるのは日本統治時代以降である.その中には東海岸に大きな津波の襲来した記録はなく,チリ地震などでも津波が台湾に押し寄せたことは無かったため,台湾では東海岸には津波が来ないと信じる人が多い. しかし,台湾の東海岸は無人だったわけでなく,阿美族と言われる原住民族が主にすんでいた.彼らの伝承の中には”津波”を思わせる伝承も少なくない.その例の中に,阿美族の創世神話の一つがある. これは通りすがりの旅人の神がそこに住んでいた神の一家を懲らしめるために海の神に頼んで大波を起こすという話である.その中で海の神が旅人の神に「今日から五日後,月が丸くなった夜に海ががたんがたんと鳴るでしょう.その時あなた方は星のある山をめがけて逃げなさい」と言い,いよいよその日,旅人の神は星の輝く山に向け逃げ,山頂に着いた頃海はにわかに鳴り始め大波はみるみる高まって,そこに住んでいた神の一家を押し流す.しかし,大波に襲われた一家はかろうじて助かる.それを不満に感じた旅の神は再度海の神に頼むと,海の神は再度大波を起こす.とある.これは,まさに津波が押し寄せたと考えられる.南西の島に住むタオ族の伝説にも津波を思わせる言い伝えがある.この神話も突然大波が押し寄せたという.このように東海岸には津波が押し寄せたと思われる伝承が点在する. 最近の津波の記録と思われる話が成功という町に存在する.これは昭和12年に印刷された安倍明義著「台湾地名研究」にある.その中の新港(現在の成功)の説明には「この地名は大正九年にマラウラウを新港に改めた.」とあり,「8,90年前に畑地が津波に洗われて草木が皆枯死したために,その有様をラウラウといい地名とした」とある.8,90年前とは,経験者が生存している可能性もあり,確かな出来事と思われる.これは,1840-50年頃と思われる.我々はこの言い伝えを頼りに成功で津波堆積物を探す調査を実施した. 成功には5段の完新世段丘が分布する.川沿いの_I_面と_II_面は,厚い堆積物が見られる.これは,氷期でできた谷を埋めた堆積物と考えられる.一方東側に見られる海成の面と川沿いの_III_面の堆積物は厚くなく,基盤を確認することが出来る. 阿美族の集落は高位の段丘の上にあり,成功の地名の由来になった津波が阿美族の集落に被害が及んだ報告はない.したがって,最高位段丘まで遡上したことはないと考えられる.一方,_IV_,_V_面のみに津波が遡上したのであれば,その範囲は限られており,地名の変更を行うほどのインパクトがあったとは考えがたい.したがって,我々は_III_面まで津波が遡上したと考えて,掘削調査を行うことにした. 成功の町の中心部が位置する_III_面は_II_面によって川の陰になっており,堆積物は河成の礫質ではなく,海の影響が強い砂質で構成されると予想された.この_III_面の範囲は日本統治時代以前は湿地であり,日本人が段丘崖の基部に排水溝を掘ることで利用できる土地となったという.この話からこの範囲には湿地性の堆積物が予想された. 我々はまずハンドオーガーによって予備調査を新港中学校の西南の地点で行った.その結果,peatに挟まれた海の貝を含む砂が見られた.我々はこの砂の下位のpeatの年代を測定し,上部が1810-1570 Cal Yrs B.P.,下位が3070-2860 Cal Yrs .B.P.という値が得られたため,同地点を中心にジオスライサー調査を行った.その結果,陸生のカタツムリの殻が見られるpeat質な地層の間に厚さ50cm程度の二枚の海生の貝を含む砂層を確認し,砂層の間の地層から2340-2150 Cal yrs B.P.,下位の層から2990-2790 Cal yrs B.P.の年代を得た.これらの年代には,すでに海水準は安定しているため,海水準が上昇することはない.また,この地は7-15m/kyr程度の速度で隆起している.したがって,砂層堆積時の標高はかなり低かったと考えられ,離水した地域にイベント的に海水が入り込んだことは事実だが,津波と断定するのは難しい.しかし,我々は砂層が上方に細粒化することなどから,津波の可能性が高いと考えており,珪藻分析などを行う予定である. 調査の目的であった最近の津波の確実な証拠は認められなかった.
著者
西川 洋史
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.62-70, 2021 (Released:2021-05-20)
参考文献数
9
被引用文献数
2

透明骨格標本の作製では,骨格染色後に筋肉を透明化するため,微細な骨やそれらの立体配置は適切に保存される。特に小型魚は全身の骨格を観察が可能なので,骨の役割を学習するのに適している。現在,理科教材会社より透明骨格標本や標本作製キットを入手することが可能であり,授業での活用も広がっていることが伺える。しかし,透明骨格標本は高価であり生徒一人一人が観察をする分を準備することは難しい。標本の透明化にはタンパク質や脂質除去が重要である。本論では,食器用洗剤への長時間浸漬による透明化を試み,脊椎骨の観察が可能なレベルまで透明化するものを見出したのでこれを報告する。また,本実践では,生徒ごとに異なる実験条件に取り組ませ,その結果を互いに評価しあい,考察をさせた。この実践プロセスから,多数の仮説設定を生徒あるいはグループごとに分担させ,それを持ち寄って結論を導くという協働型探究学習を提案する。
著者
西川 孝治郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.155-167, 1964-06
著者
西川 知亨 NISHIKAWA Tomoyuki
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.105-117, 2007-12

初期シカゴ学派の重要な社会学的方法の一つは、人間生態学である。しかしそれと同時に、人間生態学の対概念とみなされる社会政策論にもシカゴ学派の社会学者は関心をもっていた。本稿では、人間生態学的視点における同心円地帯理論で有名な、E・W・バージェスの社会政策論に着目する。バージェスの社会政策論は、1910年代の社会改良、1930年代の社会計画、1950年代以降の社会福祉の考え方へと展開していったことを、バージェス文献の比較検討によって示す。1910年代の社会改良は、シカゴ学派第一世代の実践社会学の思潮に影響されている。1930年代の社会計画は、「科学」にもとづく社会学が構想されたことによる。1950年代以降のエイジング・老年社会学研究は、これまでのシカゴ学派研究では軽視されてきた社会福祉論であり、それは近代化論を背景としている。バージェスの社会政策論は、社会政策・福祉論において現代議論すべき論点の多くを原初形態として示している。In the earlier Chicago school of sociology, human ecology was one of the initial methods. Being well-known for his concentric zone model of human ecology, Burgess simultaneously put emphasis on the conception of social policy, which was regarded as a contrary concept to human ecology. Through the analysis of his writings, this paper aims at clarifying the chronological changes in his theory, pointing out three different stages: social reform in the 1910s, social planning in the 1930s, and finally social welfare in the 1950s. Each stage appears to have some implications toward science and modernization. As it is argued in the present paper, this finding suggests that his theory of social policy has been contributing to the contentions on social policy and welfare even today.
著者
佐藤 至 河本 光祐 西川 裕夫 齋藤 憲光 大網 一則 金 一和 津田 修治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第33回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.101, 2006 (Released:2006-06-23)

【目的】パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)ならびにパーフルオロオクタン酸(PFOA)は界面活性剤の一種であり,合成樹脂原料,撥水・撥油剤,コーティング剤など,様々な用途に使用されている。これらは極めて安定性が高いために環境中に長期間残留し,人や多くの野生動物においても蓄積が確認されていることから残留性有機汚染物質に区分される。これらの物質の毒性については肝障害や発癌性などが指摘されているが,未だ十分な情報が得られていない。このため本研究ではPFOSおよびPFOAの神経毒性について検討した。【方法】Wistar系雄ラットまたはICR系雄マウスにPFOSまたはPFOAを経口投与し,一般症状を観察するとともに超音波刺激に対する反応を観察した。また,PFOSを50-200 mg/kg経口投与したラットの大脳皮質,海馬および小脳にニッスル染色を施し,病理組織学的検索を行った。【結 果】PFOSおよびPFOAのマウスおよびラットに対する致死量は約500 mg/kgであった。これ以下の投与量では一時的な体重の減少または増加の抑制が認められたが,その他の一般症状に著変は見られなかった。しかし,PFOSを投与した動物では超音波刺激によって強直性痙攣が誘発された。この痙攣は超音波刺激前にジアゼパムを投与しても抑制されなかった。一方ゾウリムシにおいてPFOSと同じ後退遊泳作用を有したSodium Dodecyl Sulfate(SDS)ならびにSodium Dodecanoylsalcosinateは痙攣を引き起こさなかった。PFOS投与24時間後の脳組織(大脳皮質,海馬,小脳)において,神経突起の短縮または消失,ニッスル小体の減少などの変化が用量依存性に認められた。これらの結果からPFOSは神経毒性を有すると結論される。
著者
西谷 真人 杉野 友啓 門脇 孝徳 﨑川 伸基 西川 和男 梶本 修身
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.113-116, 2010 (Released:2010-10-15)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

プラズマクラスターイオン®の肌保湿効果および快適性向上作用について検討するため,肌の乾燥を感じやすい健常女性 32 名を対象とした単盲検ランダム化 2 試験区クロスオーバー試験を実施した.対照と比較して,プラズマクラスターイオン濃度 2.5 万個/cm3 では,有意な肌水分量の増加がみられ,イオン濃度 7 千個/cm3 では,有意な快適感の上昇がみられた.プラズマクラスターイオンが肌保湿効果や快適感向上作用を有することが示唆された.
著者
加納 靖之 橋本 雄太 中西 一郎 大邑 潤三 天野 たま 久葉 智代 酒井 春乃 伊藤 和行 小田木 洋子 西川 真樹子 堀川 晴央 水島 和哉 安国 良一 山本 宗尚
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

京都大学古地震研究会では,2017年1月に「みんなで翻刻【地震史料】」を公開した(https://honkoku.org/).「みんなで翻刻」は,Web上で歴史史料を翻刻するためのアプリケーションであり,これを利用した翻刻プロジェクトである.ここで,「みんなで」は,Webでつながる人々(研究者だけでなく一般の方をふくむ)をさしており,「翻刻」は,くずし字等で書かれている史料(古文書等)を,一字ずつ活字(テキスト)に起こしていく作業のことである.古地震(歴史地震)の研究においては,伝来している史料を翻刻し,地震学的な情報(地震発生の日時や場所,規模など)を抽出するための基礎データとする.これまでに地震や地震に関わる諸現象についての記録が多数収集され,その翻刻をまとめた地震史料集(たとえば,『大日本地震史料』,『新収日本地震史料』など)が刊行され,活用されてきた.いっぽうで,過去の人々が残した膨大な文字記録のうち,活字(テキスト)になってデータとして活用しやすい状態になっている史料は,割合としてはそれほど大きくはない.未翻刻の史料に重要な情報が含まれている可能性もあるが,研究者だけですべてを翻刻するのは現実的ではない.このような状況のなか,「みんなで翻刻【地震史料】」では,翻刻の対象とする史料を,地震に関する史料とし,東京大学地震研究所図書室が所蔵する石本コレクションから,114冊を選んだ.このコレクションを利用したのは,既に画像が公開されており権利関係がはっきりしていること,部分的には翻刻され公刊されているが,全部ではないこと,システム開発にあたって手頃なボリュームであること,過去の地震や災害に関係する史料なので興味をもってもらえる可能性があること,が主な理由である.「みんなで翻刻【地震史料】」で翻刻できる史料のうち一部は,既刊の地震史料集にも翻刻が収録されている.しかし,ページ数の都合などにより省略されている部分も多い.「みんなで翻刻【地震史料】」によって,114冊の史料の全文の翻刻がそろうことにより,これまで見過ごされてきた情報を抽出できるようになる可能性がある.石本文庫には,内容の類似した史料が含まれていることが知られているが,全文の翻刻により,史料間の異同の検討などにより,これまでより正確に記載内容を理解できるようになるだろう.「みんなで翻刻」では,ブラウザ上で動作する縦書きエディタを開発・採用して,オンラインでの翻刻をスムーズにおこなう環境を構築したほか,翻刻した文字数がランキング形式で表示されるなど,楽しみながら翻刻できるような工夫をしている.また.利用者どうしが,編集履歴や掲示板機能によって,翻刻内容について議論することができる.さらに,くずし字学習支援アプリKuLAと連携している.正式公開後3週間の時点で,全史料114点中29点の翻刻がひととおり完了している.画像単位では3193枚中867枚(全体の27.2%)の翻刻がひととり完了している.総入力文字数は約70万字である.未翻刻の文書を翻刻することがプロジェクトの主たる目的である.これに加えて,Web上で活動することにより,ふだん古文書や地域の歴史,災害史などに興味をもっていない層の方々が,古地震や古災害,地域の歴史に関する情報を届けるきっかけになると考えている.謝辞:「みんなで翻刻【地震史料】」では,東京大学地震研究所所蔵の石本文庫の画像データを利用した.
著者
西川 元也 吉岡 志剛 長岡 誠 草森 浩輔
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.40-50, 2021-01-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
35

核酸医薬品の実用化が急速に進み、ギャップマー型アンチセンス核酸(ASO)、スプライシング制御型ASO、ナノ粒子化あるいはN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)結合siRNA、CpGオリゴが近年上市された。これらの核酸医薬品は、水溶性高分子という共通点のほかは、標的細胞や標的分子、投与経路、体内動態などの点で異なる。標的部位に到達した核酸医薬品のみが薬効を発揮するため、核酸医薬品の体内動態制御は最重要課題の1つである。タンパク結合は、核酸医薬品の体内動態や毒性発現に重要であるが、必ずしも最適化されていない。標的指向化にはリガンド修飾が有用であり、GalNAc修飾が肝細胞へのsiRNAの送達に実用化されている。本稿では、核酸医薬品開発の現状と核酸医薬品の適応拡大に向けたDDSの可能性について論じる。
著者
西川 稿 土屋 昭彦 高森 頼雪 原田 容治 堀部 俊哉 広津 崇亮
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
pp.20016, (Released:2021-04-15)
参考文献数
6

【背景】がんの早期発見は重要であり,簡便で高精度ながん検査が求められている。広津らによって開発されたNematode-NOSE(以後N-NOSE)は,尿を検体として線虫Caenorhabditis elegans(以後C. elegans)の優れた嗅覚を利用した簡便ながん検査であり,先行研究では95.0%の特異度と95.8%の感度が報告されている。【対象】本研究では消化器系がん74例と非がん30例の尿検体を用いN-NOSEの性能の検証を行った。【結果】N-NOSEインデックスは,がんと非がんで有意差p<0.0001が認められ,ROC解析ではAUC=0.774が示された。がんの感度は81.1%と高く,特異度は70.0%であった。がん種別の感度は食道癌80.0%,胃癌68.8%,大腸癌80.0%,肝細胞癌90.9%,胆道癌100%,膵臓癌80.0%,ステージ別ではIで76.9%,IIで90.9%と早期から高い感度を示し,腫瘍マーカーとの大きな違いが見られた。N-NOSEインデックスと,被験者の年齢,性別,合併症,肝機能,腎機能,尿一般定性には有意な関係性は見られなかった。【結語】これらよりN-NOSEは非侵襲で高感度かつ簡便ながんのリスク検査となり得ることが示唆された。
著者
田中 寛之 永田 優馬 石丸 大貴 日垣 一男 西川 隆
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.405-415, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
17

本研究の目的は,筆者らが開発したライフヒストリーカルテ(以下,LC)の導入による病院・施設職員(以下,スタッフ)の患者・利用者に関する理解度への影響を明らかにすることと,LCの利点と活用法を具体的に示すことである.患者・利用者に関する医療・介護者の理解尺度をLC導入前と導入1年後に実施し,さらに,スタッフにLCの利点と有用な活用法を自由記述してもらった.LCの導入による医療・介護者の患者理解度の改善はみられなかったが,「食思不振改善のヒントになった」などの自由記述から,多くの利点が明らかになった.
著者
西川 開
巻号頁・発行日
2017

筑波大学修士(図書館情報学)学位論文 ・ 平成29年3月24日授与(37745号)
著者
西川祐信 画
出版者
八文字屋八左衛門
巻号頁・発行日
1723

八文字自笑作、西川祐信画の女性風俗絵本で、祐信絵本の代表作。2巻。享保8年(1723)正月、八文字屋八左衛門刊。大本合1冊。序に「古今女中の絵鏡草とならむ事をねがふより。いろ品のたがひはあれど。凡百花に准じて。すぐさま百人女郎と外題す」とあるように、見本とすべき女性の多様な姿絵を集めて、解説を付している。上巻は、女帝、皇后から、公卿、武家、町人、商人、百姓に至るまでの様々な身分、職掌の女性について描き分けたもの。とくに京都ならではの「白川ノ石うり」「八瀬の黒木売、大原の柴うり」などは見所である。下巻は、京島原、江戸吉原、大坂新町の遊女達から、茶屋女、奉公人女、歌比丘尼、湯女、惣嫁、その他の多彩な女性風俗を取り挙げており、中には「時宗の室」(鎌倉東慶寺開山)という珍しい例もある。(鈴木淳)
著者
興梠 紗和 木村 昭悟 藤代 裕之 西川 仁
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J99-D, no.4, pp.403-414, 2016-04-01

SNSの隆盛によりニュースを取り巻く環境は大きく変化している.新聞やテレビから一方的に配信される記事を受け取るのではなく,膨大な情報で溢れるSNS上から関心のある記事を選択して購読する新たなニュースの読まれ方が生まれている.この変化により,ニュースメディアはSNS上で記事を読者に対して効果的にアピールする必要に迫られている.その一方で,刺激的な言葉を用いてむやみに拡散させるのではなく,記事を正確に説明し,その内容に興味をもつ読者に記事を届ける必要がある.本研究では,ニュース配信者がニュース消費者に適切なニュース記事を提供するための一手段として,ニュース記事を的確に説明する説明文が,SNS上でより多くの読者に読まれるために備えるべき性質を特定することを目指す.この目標に向け,本論文ではまず記者と編集者を対象としたヒアリング調査と,ニュースサイトがSNSに投稿している説明文の調査を行った.これらの調査を分析することで明らかになった,説明文がもつべき性質を利用することで,与えられたニュース記事をSNS上で紹介する説明文を幾つかの候補の中から自動的に選択する手法を提案する.