著者
金城 秀俊 安慶名 信也 金城 賢弥 喜瀬 乗基 上里 迅 喜友名 朝則 平川 仁 真栄田 裕行 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.331-337, 2020

<p>耳鼻咽喉・頭頸部外科医にとって前頸部腫瘤の症例にはよく遭遇するが,同腫瘤が上縦隔を超えて開胸に至る例は稀である。われわれは頸部から縦隔に連なる巨大成熟奇形腫の1例を経験したため報告する。症例は15歳,男性。当院受診2カ月前に左頸部痛を自覚した。受診1カ月前の学校検診で前頸部腫脹を指摘され前医を受診し,CT検査で頸部から縦隔に連なる腫瘤を認めたため当院紹介となった。腫瘤は可動性不良であり,気管は右に偏位していた。喉頭内視鏡検査では上気道狭窄や声帯麻痺は認めなかった。CT,MRI検査で腫瘤内部に脂肪組織を疑う部分や石灰化を認める嚢胞性病変を認めた。血液検査所見ではSCC抗原が6.8 ng/mlと上昇していた。上記所見より成熟奇形腫と判断したが精査中にも増大傾向にあり,窒息や悪性転化の可能性も否定はできず準緊急的に手術をした。頸部襟状切開とtransmanubrial approachにて腫瘤を摘出した。手術中はECMOをスタンバイしていたがECMOを使用せずに手術は終了した。術後病理は成熟奇形腫で悪性所見は認めなかった。術後一過性に左反回神経麻痺を認めたが,4カ月後には改善した。</p>
著者
佐倉 衛 澤田 賢治 金子 修 新 誠一 松田 功
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.140, no.9, pp.1064-1073, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)
参考文献数
19

In model-based development in the automotive industry, functional tests are performed using models made by CAE tools. The model needs to reproduce some physical properties of the target system correctly. The previous research of the current authors proposes energy balanced based verification (EBBV) that verifies the correctness of the model focused on the energy conservation law. EBBV confirms the balance of input and output energy of the model from output information of the model. In this paper, we develop three tools to automate EBBV processes. Also, we make a modeling guideline suitable for EBBV, which is composed of tagging and a hierarchical model structure. Through numerical experiments, we check that three tools automate EBBV processes for models according to the modeling guideline. The target model of the experiments is a mild hybrid electric vehicle model made by MATLAB/Simulink, MapleSim, and CarMaker.
著者
原田 和樹 小泉 武夫 永塚 規衣 長尾 慶子 數村 公子 前田 俊道 徳永 拓史 長谷川 喜朗 小川 伸也 岡村 英子 河村 幸恵 小俣 文登 金谷 節子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1089, 2009

<BR>【目的】我々は、咀嚼嚥下障害者食の抗酸化性について長年研究し、本学会で報告してきた。今回は、水産物由来で未利用資源であるナルトビエイに着目し、咀嚼嚥下障害者食を想定して調製した調理加工品が持つ抗酸化性を、多視点解析で行った結果を報告する。<BR>【方法】試料の形態は、煮こごり、魚醤、天日干し調味液漬けとし、試料が持つ抗酸化能の多視点解析は、ケミルミネッセンス(化学発光)法、電子スピン共鳴(ESR)法、米国農務省推奨のORAC法並びにHORAC法、また、好中球様分化細胞HL60の細胞内Caイオン濃度変化と活性酸素産生を蛍光・化学発光で同時に検出した結果から、シグナルトランスダクション経路をもとに作用機序の解析が可能である新しい次世代食品機能性評価法も用いた<SUP>1)</SUP>。それぞれの方法では、ペルオキシラジカル、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオン・ラジカルの消去活性能などを解析する事になる。<BR>【結果】ナルトビエイの煮こごり試料では、生肉と比較して、ORAC法では5.7倍、ESR法では6.7倍、抗酸化性が増大した。一方、ナルトビエイの肉を調味料の魚醤にすると、ORAC値の平均は、7271&micro;mol TE/100mlとなり、HORAC値の平均は、42981&micro;mol GAE/100mlとなった。なお、その時のESR法でのIC<SUB>50</SUB>値は平均0.08%であった。なお、次世代食品機能性評価法においては、従来知見を得ている単一成分の試料に対してばかりでなく、複合成分で構成されたこれら咀嚼嚥下障害者食材でも、解析が可能である事を見出した。<BR>1) 數村公子, 原田和樹, 前田俊道, 徳永拓史, 土屋広司: 日本食品科学工学会第56回大会講演集, 印刷中 (2009).
著者
森 哲也 金内 誠 進藤 斉 角田 潔和 吉澤 淑 小泉 武夫
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.9-15, 2004-01-31
参考文献数
26
被引用文献数
1

金華火腿から分離された微生物309株より, 火腿脂質の不飽和化に関与する菌株のスクリーニングを行い, 糸状菌6株を選抜した。この中でA-59は脂質中の不飽和脂肪酸の割合が82.0%と選抜菌株の中で最も高く, 特にオレ・イン酸, リノレン酸含有率が高かった。A-59は各種形態試験の結果, <I>Aspergillas oryzae</I>と同定された。本菌株は, 培養温度25℃, 初発pH6.0, 0.5%コール酸ナトリウム, パルミチン酸とステアリン酸を炭素源として, その比率が60 : 40で最も高い不飽和脂肪酸量を示した。また, 本株はパルミチン酸, ステアリン酸を菌体内に取り込み, オレイン酸やリノール酸, リノレン酸を生産していると推察した。以上より, 火腿脂質の不飽和化は<I>A. oryzae</I> A-59を中心とする6株が作用していることが明らかとなった。
著者
財津 亘 金 明哲 Wataru Zaitsu Mingzhe Jin ザイツ ワタル キン メイテツ
出版者
同志社大学ハリス理化学研究所
雑誌
同志社大学ハリス理化学研究報告 = The Harris science review of Doshisha University (ISSN:21895937)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.181-188, 2018-10-31

本研究は,文章表現において性別を偽装した場合にともなう文体的特徴の変化について実験による検証を行った.実験では,実験参加者48名(男性24名,女性24名,20代から40代で等しく人数を割り当てることで性別年代を統制)が,ブログから抽出した原文を異性の文章に書き換えるといった課題を行った.分析の結果によると,男性実験参加者が女性に偽って文章を書き換えることで,「漢字」や「助詞(連体化)」,一人称代名詞「僕」「俺」の使用率が減少し,「ひらがな」や「動詞(非自立)」,一人称代名詞「私」の使用率が増加した.他方,女性実験参加者が男性を偽る場合は,「漢字」の使用率が増加する,または一人称代名詞「私」の使用率が減少するなど,男性実験参加者とは反対の変化がみられた.この他,「品詞(名詞,感動詞など)」や「カタカナ」,「読点」,「小書き文字」,「終助詞」,「読点前の文字」の使用率における変化はみられなかった.
著者
石崎 武志 服部 絢一 松田 保 宮保 進 越野 健 藤村 政樹 岡藤 和博 南 真司 金森 一紀 佐賀 務 舟田 久
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.86-97, 1985

肺真菌感染症を合併した21例の血液疾患を臨床床状, 胸部X線写真, 免疫血清学の観点から検討した. 起炎真菌はアスペルギルス17例, ムコール1例, 不明3例であった. 経気管支肺生検法で2例, 臨床経過で6例 (剖検所見で確認) を生前診断し抗真菌療法を行った. 抗真菌療法中に血液学的改善の得られた6例は治癒し, 改善の得られなかった2例は死亡した. 臨床症状として, 全例に通常の抗生剤不応性の熱発, 咳 (15例), 喀痰 (10例), 血痰 (10例), 胸痛 (9例), ラ音 (16例) 呼吸困難 (9例) を認めた. 胸部X線写真上, 肺炎様陰影 (12例), パッチイな浸潤影 (3例), びまん性微細網状小結節状影 (3例) シスト様影 (1例) を認め, air crescent sign を5例, 胸膜肥厚を9例に認めた.全例流血中アスペルギルスフミガーツス抗原・抗体とも陰性であった. 全体として, 注意深い臨床症状の観察, 胸部X線写真と経気管支肺生検法などによって早期に真菌性肺炎を診断し, 的確な抗真菌療法を開始することが, この致死的感染症治癒への一歩となる.
著者
朴 金蓮 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.175, 2006

損傷乗り越えDNA合成機構は、DNA修復機構とともに染色体の恒常性の維持に必要不可欠な生物機能である。酵母で同定された<I>REV1、REV3、REV7</I>遺伝子は、損傷乗り越えDNA合成反応に関与し、電離放射線からの生体の防御と突然変異の誘発に重要な役割を担っている。ヒトREV1タンパク質は、鋳型塩基に対してdCMPを取り込むデオキシシチジルトランスフェラーゼ活性を持つ。この活性は、進化的にとてもよく保存されていることから、生体の防御において生物学的に重要な活性であることが示唆されているが、その意義は不明である。<BR> 今回我々はヒトREV1タンパク質の構造解析から、dCMPの認識に重要と考えられるアミノ酸残基を同定した。それらのアミノ酸残基が実際にdCMPの認識に機能しているかどうかを実験的に証明するために、それらのアミノ酸残基をアラニンに置換した変異体REV1タンパク質を精製し、その生化学的性質を詳細に解析した。その結果、たった一つのアミノ酸置換によってREV1の基質特異性と損傷乗り越えDNA合成活性が劇的に変化することが分かった。今後は、この変異型REV1タンパク質を培養細胞で過剰発現させ、dCMP transferase活性の生物学的意義を明らかにしたいと考えている。
著者
金崎 雅博 四谷 智義 奈良 拓矢 松島 紀佐
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.59, no.684, pp.24-26, 2011 (Released:2011-03-03)
参考文献数
4
被引用文献数
1

The original PARSEC (PARametric SECtion) method can satisfactorily solve the optimization problems involving transonic airfoils by using a few design variables. However, it is difficult to apply this method to the design of airfoils under other conditions such as supersonic flow and low Reynolds number flow. To solve various airfoil design problems by using a few design variables and the PARSEC representation, a modified PARSEC representation is proposed. The capability of the proposed modified representation to solve unknown real-world design problems is investigated; the proposed representation is used along with multi-objective genetic algorithms to solve two types of problems. One is the design of a conventional transonic airfoil that is to be used in the Earth's atmosphere; the other is the design of an airfoil that is to be used in the Martian atmosphere. To evaluate the aerodynamic performance of the airfoils, the structured Navier-Stokes solver is used. The results indicate that better solutions can be obtained by using the proposed PARSEC modification than by using the original PARSEC representation, especially in the Martian atmosphere.
著者
金子 亮太
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.12, pp.86-102, 2014-03-01

人と人との関係を意識せずにはいられない。今日のこころの病とは他者との関係そのものの失調であるとさえ言える。河合(2004)は、現代人の病理が“関係性喪失の病”として現れることを指摘しており、またこの関係性の喪失は神話の喪失に他ならないとする。ここで言う「関係性」とは、単に対人的な関係を示すのではなく、個人の根源的な帰属意識やアイデンティティの基盤となるものであり、現代においてはそれが希薄になっているとの指摘である。また、神話は無意識的な経験知の体系として帰属意識やアイデンティティの根元たるコミュニティを形成すると考える。ここから、関係性が希薄になることと神話が失われることは表裏一体であるといえる。帰属意識やアイデンティティを形成するコミュニティが解体したことで、他者との結びつきも必然的に衰退したのである。\ところで、Mauss(1925/2008)は古代的社会における贈与が互恵的な関係を生み出すことを記述している。そこでは贈与が他者との関係性を結ぶものであったと考えられる。贈与とは、実在性やエネルギーの受け渡しであり、またその関係性そのものである。贈与によって、〈自〉と〈他〉は向かい合い、そこには体験やイメージが生み出され、〈自〉の主体感覚が生成されていく。また、それは同時に〈自〉/〈他〉の境界を再定義することでもある。〈自〉という主体が〈他〉という未知性・異質性と交わることで、ひるがえって〈自〉の同一性再認識することでもある。\贈与によって〈自〉は再構成され新たな可能性に開かれる。しかし、これは同時に〈他〉という未知性・異質性と交わることで主体はコントロールを失い、〈自〉が〈傷〉つき〈死〉にさえ直面する危機的な体験でもある。古代的文化においては、神話は経験知の体系として、コミュニティへの帰属意識として、このような〈傷〉つきにさえ意義を与えるものであったといえる。しかし、神話の失われた現代では、〈自〉の再構成する過程の中で主体は不可避に〈傷〉を負うこととなる。関係性の失われた現代において、心理臨床はこの〈傷〉つきの問題に向かい合わねばならない。\ In this paper, the relationships arise out of gift-giving. In modern clinical psychology, everything is associated with the relationships between people. It can be said that mental illness is a disorder in relationships with others.\ is has been indicated in modern pathology as a “disease of loss of relationships” by Kawai (2004). He also considers the loss of relationships as a counterpart to the loss of myth. “Relationships” signi es not only relationships with others, but also the primitive foundation of a sense of belonging or identi cation. He points out that these foundations have weakened in modern times. And It can be said that myths as the unconscious system of empirical knowledge can also make communities which is the root of a sense of belonging or identi cation. So the feebleness of relationships and loss of myths are referring to the same thing. And connection with others also inevitably declines.\ Incidentally, Mauss(1925/2008) has pointed out that the gift in ancient society produces a mutually bene cial relationship. e gift in ancient times is considered as a thing that creates relationships with others. e gift is commutation of substantiality or energy and the relationship itself. e gift is intended to match opposite <self> as subject to an <other>, then <self> obtains subjective senses by produced experiences or images. At the same time, it rede nes the borderline between <self> and <other>, and contributes to recognitions of identity of <self> concerned with <other> as strangeness or heterogeneousness.\ e gift is not only the experience of new possibility by <self> rede ning, but also critical experience of the confrontation of <pain> or <death> of <self>, through the subject’s losing controls when involved with <other>. In ancient culture, myths as the empirical knowledge or sense of belonging to community give signi cance to these <pain>. But, in modern age, the loss of myths, leaves the subject vulnerable to <pain> in the process of <self> reorganization. So in modern times, in clinical psychology the problem of <pain> has to be confronted when dealing with the loss of relationships.

1 0 0 0 OA 宗祇の基調

著者
金子 金治郎
出版者
中世文学会
雑誌
中世文学 (ISSN:05782376)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.38-50, 1985 (Released:2018-02-09)
著者
竹井 健 錦織 直人 小山 文一 中村 信治 浅田 秀夫 畠山 金太 大林 千穂 西久保 敏也 藤井 久男 中島 祥介
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.342-349, 2016-04-01 (Released:2016-04-19)
参考文献数
16

Muir-Torre症候群は脂腺腫瘍と内臓悪性腫瘍を併発する遺伝性疾患で,Lynch症候群の一亜型と考えられている.症例は61歳の男性で,既往歴は36歳,38歳,46歳,56歳時に大腸癌,50歳時に胃癌があり,家族歴は父と叔父に大腸癌と多数の発癌患者を認め,Lynch症候群を疑い経過観察していた.61歳時に背部に1 cm大の出血を伴う結節が出現し,局所切除術施行し,病理組織学的検査にて脂腺癌と診断した.内臓悪性腫瘍の既往と脂腺癌の併発よりMuir-Torre症候群と診断した.診断後にも計5回の脂腺腫瘍と計2回の大腸癌の発生を認めたが,早期に加療し現在無再発生存中である.また,遺伝学的検査を行いMLH1の病的変異を認めLynch症候群と診断した.Lynch症候群はMuir-Torre症候群を呈することがあり,内臓悪性腫瘍だけでなく皮膚腫瘍も念頭に体表観察を行うことも重要と考えた.
著者
新垣 薫 大湾 一郎 砂川 憲政 大嶺 啓 山口 健 城間 隆史 池間 康成 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.228-232, 2007 (Released:2007-06-01)
参考文献数
8

人工股関節置換術後の股関節部痛の鑑別疾患として人工関節の感染,臼蓋コンポーネントのloosening,恥骨の不顕性骨折,腰椎疾患,腹部疾患などがある.今回,人工股関節置換術後に鼠径部痛を来たし,腸腰筋腱炎の診断にて腸腰筋腱切離術を施行し,疼痛が消失した症例を経験したので報告する.症例は57歳,女性.平成11年右THA,平成12年左THAを施行し,右THA術後4カ月頃より右鼠径部痛を自覚.血液検査所見,骨シンチ,関節穿刺液の培養検査より感染は否定的で,鎮痛剤により経過観察したが疼痛改善を認めなかった.関節内への局麻剤の注入にて一時的に症状が改善し,関節造影にて臼蓋カップの前方に腱性索状物が造影され,身体所見と併せて腸腰筋腱炎と診断.手術にて腸腰筋腱の切離を行ったところ術後は鼠径部痛が消失し,現在は疼痛なく経過.人工股関節置換術後の腸腰筋腱炎は臼蓋カップ辺縁が前方に突出する場合に生じることがあり,術後疼痛の鑑別疾患として念頭におく必要がある.
著者
金井 雄太 福井 恒明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-12, 2013 (Released:2013-01-18)
参考文献数
25

近世に岡城の城下町として建設された大分県竹田には,城下町の町割の大部分が現在まで残っている.この竹田において,絵図および文献から,設計論理の解明を試みた.城下町建設以前の土地利用,街区や屋敷割,城下町の変化などを分析・考察した結果,竹田城下町は巨視的に見れば他の城下町と同様の碁盤の目の構造を取りながら,細部は微地形に則した設計がなされていたことがわかった.また,厳しい地形的制約の中で城下町を拡大するため,周囲の農地を城下町に組み入れる,寺院を城下町外へ移転させてその跡地を利用する,街区の寸法そのものを拡大する,などの手法が採られていたことがわかった.
著者
金子 絵里乃
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.68-81, 2016-02-29 (Released:2018-07-20)

本研究の目的は,患者との死別体験が日常的にある緩和ケアにおいて,援助者(ソーシャルワーカー,看護師,医師)がどのようなグリーフを抱え,グリーフにどのように対応しているかを明らかにすることである.インタビューの結果,援助者は「申し訳なさ」,「無力感」,「喪失の類似体験」,「不安感」というグリーフを抱え,「患者と心理的な距離感を保つ」,「同僚と語り合い肯定的に受けとめ合う」,「患者からの学びを仕事に活かす」,「自覚して揺れ動く」,「他の援助者に託す」ことを通してグリーフに対応していることが明らかとなった.これらの研究結果をもとに,援助者のグリーフとその対応にはどのような共通性があるか,また,ソーシャルワーカーが抱えるグリーフとその対応にはどのような特有性があるかを考察した.
著者
相山 光太郎 金折 裕司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.7, pp.555-570, 2019-07-15 (Released:2019-09-15)
参考文献数
54

中国地方西部,山口県中央部から島根県中央部にかけて,浅部地震がNE-SW方向に配列することで特徴づけられる山口(やまぐち)-出雲(いずも)地震帯が存在する.地震帯の西部から中央部沿いには,大原湖(おおはらこ)-弥畝山(やうねやま)西(にし)断層系が分布している.断層系を構成する活断層の分布や性状,活動性は,主に約20年前以降の山口大学による精力的な現地調査によって明らかにされてきており,山口県中央部で新たに7条の活断層が認定された.最近,地震帯西端部においても新たに活断層露頭が発見されている.しかし,地震帯東部では未だ活断層が報告されてない区間が存在しており,今後の調査により活断層が新たに認定される可能性もある.露頭で確認された断層破砕帯は,断層ガウジと断層角礫,カタクレーサイトから構成され,P-フォリエーションなど複合面構造を含むこともあり,変位センスを知ることができる.断層破砕帯の外側には,割れ目の発達で特徴づけられる‘プロセスゾーン’が広がっている.本巡検では,断層系西部を構成する活断層の露頭や変位地形を観察するとともに,断層系の特徴や活断層発見の経緯を概観する.さらに,日本人として最初の地域地質図を作成した高島北海の足跡もたどる.