著者
中島 和子 西原 鈴子 石井 恵理子 岡崎 眸
出版者
名古屋外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

当該研究期間の研究成果を次の4点にまとめることができる。(1)複数言語環境で育つ言語形成期の幼児・児童・生徒が、どの言語の接触量も不十分な生育・家庭・学校環境に置かれたときに一時的に生じる言語性発達遅滞をセミリンガル現象と言う。幼児の場合は言語全体の発達遅滞、学齢期の場合は認知力を必要とする特定の言語領域(読解力、作文力、抽象語彙など)の発達遅滞につながる。現象面では子どもの生得の機能障害と共通するところが多いため誤解されることが多い。愛知県の外国人児童生徒調査と東京のNew International Schoolの会話力・読解力調査を通して、マジョリティー言語を母語とする子どもよりも、マイノリティー言語を母語とする子どもがセミリンガル現象に陥る可能性が高いことが確認された。(2)主な要因は、親の国を越えての移動による教育の断絶、突如強要される使用言語・学習言語の切り替え、劣悪な言語・文字環境から来る第一言語(母語)の未発達などである。(3)教育的処置としては、日本語と英語、日本語とポルトガル語、日本語と中国語のように言語体系が異なる2言語間でもL1→L2、L2→L1の双方向の転移があることから、幼児の場合は第1言語を強め、文字環境を改善すること。学齢期の場合は、a)心理的セミリンガル現象から自ら抜け出せるように、心のケア(=アイデンティティー育成)をすること、b)最大限の認知活動を促進する学校環境を整えることなどである。(4)国内の外国人児童生徒教育では、セミリンガル状況で入学する小学1年生が急増しており、また学習言語能力の発達遅滞のために中学1,2年で中退する生徒が増えていることに鑑み、セミリンガル現象に対する行政、学校当局、教師、保護者の認識を高める必要がある。本研究で立ち上げた「母語・継承語・バイリンガル教育研究会」がその面で大きな貢献をしてきている。
著者
倉田 敬子 松林 麻実子 酒井 由紀子 上田 修一 三根 慎二 國本 千裕 林 和弘 石田 栄美 宮田 洋輔 前田 知子 森岡 倫子 横井 慶子 加藤 信哉
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

学術研究において,デジタルを基盤とするオープンと共有がどのように進んできているかを明らかにすることが本研究の目的である。研究成果のオープンアクセス化は全分野で半分を超え,電子ジャーナルではデジタルで読みやすい新しい論文形式が進んだ。研究データ共有の体制が整備されている先進事例も見られたが,多くの研究者のデータへの意識は非常に複雑で多様であり,研究実践と深く関わらざる得ないデータ共有は,成果のオープン化以上に実現に困難が多く,多様な視点から検討する必要がある。
著者
水嶋 英治 吉田 右子 宇陀 則彦 白井 哲哉 逸村 裕 大庭 一郎 阪口 哲男 原 淳之 平久江 祐司 松村 敦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究はアーカイブ技術を導入し「21世紀図書館情報専門職養成研究基盤アーカイブ」を構築するとともに日本の図書館専門職養成史を再検討することを目的とする。筑波大学図書館情報メディア系の前身組織関係資料の解明に向け、図書館情報専門職教育関係史料に関して包括的研究を実施した。本研究で遂行した研究課題は(1)文献資料・実物資料の精査と電子化のための選別・整理および文献資料補足のための聞き取り調査(2)現物資料の整理・展示および組織化、文献資料の部分的電子化、多言語インタフェース設計(3)図書館職養成史に関わる現物資料群の同定とアーカイブ活用可能性の検討(4)図書館情報学教育史の批判的再検討である。
著者
佐藤 努 小暮 敏博 名和 豊春
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、福島第一原子力発電所事故で環境中に放出されたセシウムを固定している粒子を明らかにし、それを基に、土壌の減容化を可能とする分級方法や合理的で安全なセメント固化法について提案することを目的とした。その結果、放射性セシウムを多く吸着している粒子は、複数の鉱物の凝集態、有機物と鉱物の複合体、風化雲母片に大別され、これらは多孔質天然材料である珪藻土、あるいは通常の湿式分級法により分級可能であることが明らかとなった。さらに、固定化されていないセシウムはゼオライトで吸着除去した後に処分することが予想されるが、通常のスラグセメントで浸出性の低い安全な固化体となることが明らかとなった。
著者
大橋 英寿 安保 英勇 吉原 直樹 大渕 憲一 石井 宏典 中村 完
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.ボリビアのオキナワ移住地出身者が組織する関東ボリビア親睦会の参与観察、および会員の追跡調査を実施し、移民労働者の移民コミュニティの形成過程、日本と南米を結ぶインフォーマルなネットワークについて分析した。2.日系外国人労働者の人口比率が全国-高い群馬県大泉町において、日系外国人労働者の子弟教育をめぐる問題、とくに学校不適応や非行行動についてフィールド調査を行い、外国人労働者の定住化傾向が子弟に与えている影響について検討した。3.宮城県多賀城市に在住する-日系人家族について一年余にわたるインテンシブな事例研究を継続し、労働観、子弟教育問題について、家族ダイナミクスの観点から分析した。4.1990年代初頭から岡山県総社市で働く日系出稼ぎ青年の事例研究を行い、日本国内で形成された互助ネットワークとそこから析出される生活戦略について検討した。5.沖縄県において1950年代から1960年代のボリビア移民送出に関する資料を収集した。また若干名のボリビアから沖縄県への帰郷者の事例研究を実施した。6.ボリビアからアルゼンチンへ転住した沖縄系移民の独立自営過程を互助集団「講」に焦点をあてて調査研究し、その組織原理がエスニシティよりも対面関係にもとづく信頼性であることを明らかにした。7.オキナワ移住地内および周辺ボリビア人の保健行動とヘルスケアシステムを把握するために実施したアンケート調査結果の集計・分析を行った。
著者
後藤 晋
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は(前年度までに開発した)複数の異なる境界条件下における乱流の数値シミュレーションプログラムを実行することで順調に研究を進展させることができた。具体的には、壁乱流の典型例である『平行平板間乱流』、『境界層乱流』、『滑らかな容器内乱流』の大規模数値シミュレーションを実行し、その動力学の解明に向けた研究を進めた。主な成果は以下の通りである。(1)高レイノルズ数の境界層乱流の数値シミュレーションを実行し、得られた乱流の粗視化解析によりこの乱流中の渦の階層構造を同定するとともに、その生成機構を渦力学を用いて解明した。とくに、対数層における小規模乱流渦の生成機構がレイノルズ数の増加とともに質的に変化することを示した。さらに、渦の階層構造の時系列解析(4次元解析)により、渦の生成過程の典型例を示すことができた。(2)平行平板間の発達した乱流を数値シミュレーションし、その渦の階層構造を同定した。また、各スケールの運動が保有するエネルギーと渦の階層との関係を明らかにした。これは壁乱流におけるエネルギーカスケードの物理機構を明らかにするための基盤を与える。(3)平行平板間乱流に輸送される微小固体粒子群の挙動を調べ、そのストークス数依存性を明らかにした。とくに、粒子群のクラスタ構造と渦の階層構造との間の関係を明らかにした。(4)歳差運動をする回転楕円体容器内の乱流の数値シミュレーションを世界で初めて実行し、その3次元の流れ構造を明らかにした。とくに、容器の微小な楕円率が維持される乱流構造に与える影響を明らかにした。
著者
倉田 敬子 上田 修一 松林 麻実子 三根 慎二 酒井 由紀子 加藤 信哉 森岡 倫子 林 和弘 國本 千裕 横井 慶子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

イーリサーチと呼ばれる研究プロセスの特徴,および学術コミュニケーションのデジタル化とオープン化の現状を明らかにすることが本研究の目的である。研究計画ごとにインタビュー,質問紙調査,ウェブの検索・データ収集などの多様な方法により調査を行った。主要な成果は,日本人研究者のデータを巡る実践と意識のモデルの構築,日本の学術雑誌のデジタル化の現状の把握,生物医学分野のデジタル化現況,一般人の医療情報等専門情報のニーズと探索の実態の把握である。
著者
高田 秀志
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

小学生を対象としたプログラミング学習を対象として、ビジュアルプログラミング環境を用いた協調的な学習環境について研究を推進している。本研究では、実際にプログラミング学習を行う場で用いることを想定した教材を開発し、地域の小中学校やNPO法人と連携して実施している休日のワークショップで実適用を行っているが、前年度に適用を行う中で、プログラミングをした後の動作検証を十分に行わず、帰納的な学習が十分に行えていない場合があることが明らかになってきたため、プログラミング課題をスモールステップ化し、動作検証を子ども達が相互に行うことで協調的にプログラミングを進めることができるように支援するシステムを開発し、その検証を行った。その結果、子ども達同士で正しくプログラムが動作しているかどうかを確かめながらプログラミングを進める様子が観察され、一定の効果があることが分かってきた。さらに、ワークショップ等で作成したプログラミング作品に対してプレゼンテーションを行う場面において、プログラミング作品の発表に適したプレゼンテーションになるように支援するシステムを開発し、実際のワークショップで検証を行った。これにより、教室内での協調学習がより効果的に進められるようになると考えている。これらの成果は、今後国内外の学会において発表を行っていく予定である。一方、協調的なプログラミング学習を支援する環境として前年度に開発した教室内SNS(Social Networking Service)システム、および、ビジュアルプログラミング環境の実行画面を共有可能なシステムについては、国際学術誌に論文が掲載された。また、プログラミング学習に関する研究を進める中で得た知見を実際の初等教育の現場に活かせるよう、連携先の小学校を5校に拡大した。
著者
山下 英俊 寺西 俊一 大島 堅一 石田 信隆 寺林 暁良 山川 俊和 藤谷 岳 西林 勝吾 藤井 康平 浅井 美香 石倉 研
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本において、地域主体型の再生可能エネルギー事業を促進するために求められる政策を明らかにするため、全国の導入事例の中からコミュニティ・パワーの基準に該当する事業を抽出し、事業の意思決定、資金調達、利益配分などの実態を調査した。その結果、地元自治体との関係性が事業化の鍵となることが判明した。そこで、全国の基礎自治体を対象とした再生可能エネルギーに対する取り組みに関する実態調査を実施し、積極的に推進しようとしている自治体の特徴を明らかにした。特に、地域活性化の観点から太陽光発電以外の事業に取り組んでいる自治体の果たしうる役割は大きく、こうした自治体を支援する制度的枠組みの必要性が確認された。
著者
三原 芳秋 松嶋 健 花田 里欧子 岡本 雅史 高田 明 太田 貴大 鵜戸 聡 比嘉 理麻 高梨 克也 中川 奈津子 中谷 和人 アンドレア デアントーニ 赤嶺 宏介 川上 夏林
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

「(人間)主体」の諸機能=学科を軸に制度化されてきた人文学を「生きている存在」一般の学として再編成する(=「生態学的転回」)ために、多様な専門の若手研究者が集い、「共同フィールドワーク」や芸術制作・コミュニティ運動の〈現場〉とのダイアロジカルな共同作業を通して従来型ではない「共同研究」の〈かたち〉を案出することが実践的に試みられ、その〈プロセス〉は確固たる端緒を開くに至った。また、環境・社会・精神のエコロジーを美的に統合する「エコゾフィー」的思考を共有する基盤となるべき「新たな〈一般教養〉」構築を文学理論の「生態学的転回」を軸に試みる企図も、国際的・学際的に一定の承認を得ることができた。
著者
山本 秀人 月本 雅幸 松本 光隆 山本 真吾 土井 光祐 矢田 勉
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、和歌山県紀の川市の真言宗寺院興山寺所蔵文献の調査・研究を中核とする、和歌山県における真言宗寺院所蔵文献の実地調査と、それに基づく国語史的立場の考察・研究を主要目的とする。以下の調査研究活動を実施し、各成果があった。1.紀の川市興山寺の調査は、研究代表者・研究分担者・研究協力者の総勢13名で興山寺聖教調査団を組織し、経箱全94箱を分担して、文献毎(総計約6千点)の調書(書名、時代、装幀、寸法、訓点、奥書等調査)を作成する作業を行った。具体的には、15〜18年度に、原則4〜7日間の調査を計11回実施し(本科研支弁以前の14年度実施予備調査1回、15年度4月実施1回を含める)、18年度7月までに全94箱の調査を完了した。並行して、主要文献のデジタルカメラ撮影も行った(計129点)。これらに基づく、パソコンデータベースも18年度9月までに完成し、その冊子版文献目録も同10月に刊行した(私家版)。2.紀の川市興山寺のほか、田辺市高山寺、高野山(高野山大学図書館等)における調査も重点的に実施し、田辺市高山寺については主に主要文献の撮影を行い(計67点)、更に冊子版文献目録(本科研以前に一応の調査了、全73箱)を再調製して刊行した(私家版)。高野山においては注目される文献の実地調査を行った。ほか、京都(栂尾高山寺、仁和寺等)や東京(尊経閣文庫等)などにおける真言宗関係文献の調査も適宜実施した。3.以上の調査に基づく研究・考察は今後の課題とすべき点も多いが、例えば、平安時代書写を含む興山寺蔵大般若経写本六百帖は、仏教史上極めて貴重であることが判明した。国語学上重要な文献は高野山に多く、特にその数点について国語学上の研究を行い成果があった。更には和歌山県相互間の比較、京都地域等との比較の一層の進展も必要であり、今後の課題であるが、その基盤の構築は完了したと言って良い。
著者
中里見 敬 太田 一昭 波多野 真矢 田村 容子 松浦 恒雄 藤野 真子 森平 崇文 長嶺 亮子 平林 宣和 三須 祐介 加藤 徹 西村 正男
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1.昨年決定した戯単の解説執筆の分担に基づき、戯単解説の執筆を進めた。原稿の完成した6点の解説は、中里見敬・潘世聖編『「『春水』手稿と日中の文学交流――周作人、冰心、濱一衛」国際シンポジウム論文集』(第3冊資料編)に収録し、あわせて中国語訳も掲載した。2.濱文庫所蔵のレコードについて、基礎的なデータの採録をほぼ終えた。レコードの音声をデジタル化する作業については、音質その他の技術的な問題があり、作業が中断している。早期に開始できるよう対策を講じたい。3.濱文庫に所蔵される冰心の詩集『春水』(1923)が、作者自筆の手稿本だと判明した。さらにこの手稿が周作人から日本人留学生・濱一衛に贈られた経緯も明らかになり、『中国現代文学研究叢刊』2017年第6期(総第215期)に中里見敬「冰心手稿藏身日本九州大学:《春水》手稿、周作人、濱一衛及其他」として発表した。その後、周家・濱家双方の尽力により、書簡15通が発見された。さらに周作人から濱一衛に贈られた書4点(周作人、銭玄同各1点、兪平伯2点)も見つかり、九州大学附属図書館に寄贈されることとなった。このように、周作人と濱一衛の交流に関する研究は短期間のうちに大きな進展を見せた。4.研究会・シンポジウムを2回開催した。(1)研究集会「演劇アーカイブの最前線:イギリスと中国」平成29年6月17日(九州大学伊都キャンパス)発表者:三須祐介、松浦恆雄、太田一昭。(2)「『春水』手稿と日中の文学交流――周作人、冰心、濱一衛」 国際シンポジウム、平成30年2月6日(九州大学新中央図書館)基調講演:周吉宜、趙京華、小川利康、李莉薇。学術シンポジウム:顧偉良、平石淑子、佐藤普美子、濱田麻矢、松岡純子、牧野格子、岩﨑菜子、宮本めぐみ、虞萍。あわせてシンポジウム論文集(全3冊、554頁、28名執筆)を刊行し、戯単をはじめとする濱文庫資料の展示を行った。
著者
中村 亮一 五十嵐 辰男 川平 洋
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,治療部位への精密誘導治療を行う「軟組織に対応したリアルタイムナビゲーション技術」と,外科的手技における組織臓器へのダメージを低減する革新的な内視鏡下手術「水中手術 “WaFLES”」の技術を統合的に研究開発し,「効用の最大化と副作用の最小化」を実現した次世代の超低侵襲精密外科医療技術を開発した.具体的には①術前CT画像と術中3D超音波画像の術中レジストレーション法の開発とナビゲーションへの実装,②内視鏡画像処理による臓器運動計測・補償を用いた精密レーザ照射システム,③治療工程分析技術による手術環境・技能評価法と臨床教育手法の開発を達成した.
著者
古瀬 蔵 相田 満 青田 寿美 鈴木 淳 大内 英範 山田 太造 五島 敏芳 後藤 真
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

日本文学分野およびその隣接領域のデータベースについて、情報連携の仕組みを導入することと、オープンデータ化の環境を整備することである。データベース単位だけでなく、データベースの中の個々のレコード単位で情報を連携させ、異分野を含む様々なデータベースとの相互運用を実現し、日本文学研究者に限らず多くのインターネット利用者に、日本文学の情報を知らせ利用してもらう環境作りを行うために、案内型検索を中心に日本文学関連のデータベースの情報アクセスの研究を行った。今年度は、情報収集型検索での情報アクセス支援の検討を重点的に行っていくために、まず当初の目的の情報に到達することを目指すことに加えて、検索結果が利用者にとって予期しない探しているものとは別の価値ある情報を提供し、気付きや発見へ遭遇する機会となるセレンディピティの発現を重視し、研究活動に於いて、その関連する情報を提示する情報連携により、様々なデータベースでの情報空間で連続的に探索を行え、セレンディピティをもたらし知識を広げていくことの活動の様相を重点的に記録してもらった。また、人間文化研究機構の100以上の人文学データベースを検索対象とする統合検索システムnihuINTでも、歴史学や日本文学の一部のデータベースなどを題材に、データベースの情報をRDF(Resource Description Framework)という知識表現形式で表わして、データベース横断での情報連携を実現する試みが始められ、本研究でも、データベースの情報をRDF化して情報連携の仕組みを構築するための開発をおこなった。
著者
山田 慎也 金 セッピョル 朽木 量 土居 浩 谷川 章雄 村上 興匡 瓜生 大輔 鈴木 岩弓 小谷 みどり 森 謙二
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

現代の葬儀の変遷については、整理を進めている国立歴史民俗博物館蔵の表現文化社旧蔵の葬儀写真を順調にデジタル化を進め、約35000のポジフィルムをデジタル化をおこなった。昨年度、さらに追加の資料が発見寄贈されたので、デジタル化を進めるための情報整理を行っている。また近親者のいない人の生前契約制度等の調査は、それを実施している横須賀市の具体的な調査を行った。一定の所得水準以下の人だけを対象としていたが、それ以上の人々も希望があり、死としては対応を迫られていることがわかった。また相模原市や千葉市などでも行政による対応がなされ、千葉市の場合は民間業者との連携が行われていることがわかった。また京都や大阪での葬送儀礼や墓の変容については、その歴史的展開の相違から東京という政治的中心とは異なる対応をとってきていることが調査によって判明した。そこでその研究成果について、民間の文化団体と協力して「上方で考える葬儀と墓~近現代を中心に」というテーマで、大阪天王寺区の應典院を会場にでシンポジウムを開催した。当日は人々の関心も高く、約150名ほどが集まり会場は立ち見が出るほど盛況であった。また3月には、葬儀の近代化によって湯灌などの葬儀技術や情報が東アジアに影響をおよぼし、生者と死者の共同性に影響を与えていることを踏まえ、東南アジアの多民族国家における葬儀と日本の影響を把握するため、マレーシアの葬祭業者や墓園業者などの調査を行い、またマレーシア死生学協会と共催で国際研究集会「葬送文化の変容に関する国際比較―日本とマレーシアを中心に―」を開催し、両国のおける死の概念や葬儀産業の役割、専門家教育などについて検討を行った。
著者
竹内 俊隆 星野 俊也 ホーキンス ヴァージル 敦賀 和外
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

まず、シンポジウム(小規模およびマローン国連大学長や外務省関係書が参加した国際シンポジウム)を二回開催し、安保理改革の歴史やその停滞などを多角的に論じるなどし、専門家との議論ばかりではなく、一般への広報活動に努めた。また、HPを立ち上げ、随時研究成果を公表した。研究成果に関しては、各分担者の担当分野を主眼とした論文や分担執筆などを活発に行った。また、大阪大学において、大学院向けの科目をあらたに設置し、教育にも努め、その成果の一部として、安保理における投票行動の分類別データベースも作成した。本科研の研究期間以内に、その研究成果を書籍として世に問うつもりであったが、残念ながら間に合わなかった。
著者
岡部 和代 黒川 隆夫
出版者
京都女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

高精度な人体計測と人体への製品のフィット性が要求される女性用補整下着の領域に新しいデザイン方式を導入するため、乳房形状のモデリング、乳房特性の計測と分析、ブラジャー着用時の形態計測とモデルによる記述、ブラジャー着用前後の形態変化の規則導出、ブラジャー着用シミュレーション手法の開発、ブラジャー型紙の導出手法の開発、ブラジャーの衣服圧測定と感性評価を行った。乳房形状のモデリングには、3次元形状を双3次Bスプラインによってモデル化する手法を利用し、着装シミュレーションなどに応用できるモデルを導いた。このモデルに乳房特性を反映することが実用化のために重要である。そこで、乳房の硬さ指標や乳房振動を求めるとともに、ブラジャーの官能評価や衣服圧分布から、生体の特性とブラジャーとの関係を明かにした。これによって、人間の静態および動態に着目した補整用下着の新しい設計システム開発に一定の方向性を見いだすことができた。
著者
山田 格 和田 志郎
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,台湾,タイ,中国,韓国の54施設に所蔵されている計93個体の中型ナガスクジラ属標本について,形態学的ならびに分子生物学的調査を行い,形態学的には38個体,分子生物学的には24個体のツノシマクジラ(Balaenoptera omurai)を確認した.調査の過程でツノシマクジラとの誤同定の可能性が取りざたされていたいわゆるニタリクジラ(Bryde's whales)に含まれるカツオクジラ(Balaenoptera edeni),ニタリクジラ(Balaenoptera brydei)は,それぞれ35個体(形態),23個体(分子)と形態および分子とも1個体であったが,カツオクジラ(B.edeni)のタイプ標本(カルカッタのインド博物館で展示中)と,当初からタイプ標本が存在しないニタリクジラ(B.brydei)については,タイプロカリティで収集されたBryde's whaleとされる標本の精査を行った.また,国立科学博物館独自の予算で,フィリピンおよびインドネシアで調査した個体で全般的にはB.edeni-B.brydei Complexの特徴をもちながら,頭頂骨の形態が異なっている個体に遭遇したが,これらは南アフリカのニタリクジラ(B.brydei)のタイプロカリティで収集された個体にも見られる特徴であることを確認した.従来,タイプロカリティ(響灘,ソロモン海)のみで知られていたツノシマクジラの分布範囲は北緯40°から南緯40°,東経90°から140°の範囲であることを確認した.また,おそらくツノシマクジラは相対的に沿岸性で,カツオクジラと類似しているが,ニタリクジラはかなり外洋性である可能性が高い.タイ湾では,北緯8°付近を境界に,それより北ではカツオクジラ,南ではツノシマクジラが収集されていることが注目される.
著者
西田 泰民 宮尾 亨 吉田 邦夫 八田 一 ピーター マシウス
出版者
新潟県立歴史博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

これまで国内では報告例がなかったが、旧石器時代石器・縄文時代遺構埋土・縄文時代石器・縄文時代珪藻土塊・擦文時代遺構埋土・縄文土器炭化付着物いずれからもデンプン粒を検出することができた。これにより日本のような中緯度温暖湿潤地域でも長期間デンプン粒が保存されていることが明らかになった。各考古学資料からのデンプン抽出作業をおこなう一方で、堅果類、根菜類を中心に在来食用植物の対照現生サンプル作成をおこない、240件作成した。遺物からの抽出方法や取り扱い、同定方法については先駆的研究が行われたオーストラリアよりシドニー大学フラガー博士を招聘し教授を受けた。デンプンの分解過程を解明をするため国立民族学博物館および新潟県立歴史博物館で実験石器の埋没・放置実験を半年間実施した。土器からの食性分析の手がかりとなる炭化物のモデル生成実験をおこなった。30種類の異なる食材を縄文土器に見立てた素焼き土器で薪燃料により煮沸し水分がなくなるまで加熱する実験を計60回行った結果、それぞれ性状の異なる付着炭化物が生成した。一部を採取して炭素、窒素安定同位体分析を行い、炭化前後の同位体比の変動を計測した。その結果を実際の出土炭化物と比較した。縄文時代において主たる炭水化物源となっていたと考えられ、旧石器時代も利用されていた可能性がある堅果類の加工法の一端を探るため、あく抜きをしていない堅果類と他の食材の混合比率を変えた材料を用意し石蒸しによる調理実験を行い官能検査によって可食化の可能性を検討した。タンパク質が渋みの軽減に寄与することが明らかとなった。縄文時代中期の石皿類・磨石類の集成から各属性の分析を行い、中期に食物加工用具としての意識の転換が生じた可能性があることが判明した。
著者
征矢 英昭 朝田 隆
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

海馬神経新生を促進するためには、運動ストレスを伴わない低強度運動が有効である一方、運動ストレスが生じる高強度運動ではその効果が消失した。さらに、低強度運動により海馬で増加する神経新生に対しコルチコステロン(CORT)がその受容体であるGR、MRを介して促進的に作用(栄養効果)し、高強度運動ではGRを介した抑制作用が優位となることが明らかとなった。CORTは運動強度特異的に生じる海馬可塑性の決定因子として重要な役割を担うことが示唆された。