著者
大澤 義明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,欧州を対象地域とし欧州経済にて大きな課題の一つである税競争について現地調査した.欧州税競争及び調和政策,欧州連合,税率差,クロスボーダー購買者の実態を把握し整理し,調査を踏まえ,より単純でより本質的で政策実行に役立つナッシュ均衡モデルを開発した.本年度では,モビリティ拡大という視点から欧州各国間税競争,そして,競争の弊害を調整する欧州における経済共同体の政策について分析した.この経済問題をモデル化し,国の位置,大きさ(人口・面積),国境長といった地理的要因が,各国の税率や税収へどのような影響を与えるかを検討した.1)OECD(経済開発協力機構)からタックスヘブンとして認定されているリヒテンシュタイン公国を訪問し,金融機関の誘致,そしてガソリンスタンドでの越境購買の現状を調査した.2)欧州の付加価値税(VAT)政策に関して,空間を明示的に取り入れた既存研究に加えて,スペースレスの研究について文献調査を進めた.3)一次元市場のモデルを二次元市場で展開するために,ポロノイ図をモデルに応用し分析を進めた.また,ネットワーク市場のモデルを定式化し,日本の道州制など地方分権の下での税競争へ応用した.4)成果の一部を,「付加価値税に関する競争・協調モデル」という章題にて建築学会監修の本「建築最適化への招待」にて発表した.調査による主たる成果は,経済連合の関係もありリヒテンシュタイン公国とスイスとでは消費税に関する競争は顕著ではないが,オーストリアとではガソリン価格差の差異が大きいことが分かった.モデル化に関する成果として,モビリティ拡大としてネットワーク市場を取り入れ,複数国を経由する通過交通や人口一様分布の仮定の緩和を考慮し,均衡の安定性を議論した.
著者
村田 久美子 矢野 安剛 飯野 公一 寺内 一 土屋 慶子 HOUSE Juliane KUBOTA Ryuko SEIDLHOFER Barbara WIDDOWSON Henry BACKHAUS Peter バックハウス ペート 原田 哲男 澤木 泰代
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の主な成果は ①共通語としての英語(ELF)概念理解の深化 ②ELF使用実態の解明 ③これに基づいたELFに対する意識変革と教育への示唆の3点である。①に関しては様々なワークショップ開催とこれに基づく Working Papers の発刊によることが大きい。②に関してはデータ収録・分析により、様々な教育・言語・文化背景のELF使用者がいかに協力的にコミュニケーションを行っているかを解明、③この研究結果に基づいた意識改革も着実に進み、学会発表、出版等により研究結果の教育への示唆についても積極的に取り組んでいる。ELF研究者も増加しており、更なる意識変化浸透への布石となっている。
著者
古荘 真敬 野矢 茂樹 信原 幸弘 高橋 哲哉 梶谷 真司 石原 孝二 原 和之 山本 芳久
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

「感情」現象をあらためて哲学的に吟味することを通して、倫理的価値の発生する根源的な場所を明らかにし、ひいては新たな価値倫理学の基礎づけを試みること、それが本研究の目標であった。われわれは、現象学、中世哲学、心の哲学、分析哲学、現象学的精神病理学、精神分析という、各研究分担者の専門的視座から持ち寄られたたさまざまな「感情」研究の成果を相互に批判的に比較検討することを通じて、人間存在にとっての感情現象の根本的意義(謎にみちたこの世界において行為し受苦するわれわれにとっての感情現象の根本的意義)を明らかにする多様な成果を上げることができた。これにより上記目標の核心部分は達成されたと言いうるだろう。
著者
井上 隆信 永淵 修 山田 俊郎
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

インドネシアのカリマン島のカハヤン川流域では金採掘が活発であり、下流に位置する中央カリマンタン州の州都のパランカラヤ市では、金採掘に伴う水銀汚染が社会問題となっている。本研究では、カハヤン川と主な支川であるルンガン川について、河川水、底質、魚の水銀濃度の調査を行い、汚染レベルの調査を実施した。カハヤン川ではパランカラヤの上流約100kmのツバングミリまで、ルンガン川ではカハヤン川流入地点から約50km上流のムングクバルまでの問で、本川と支川で行った。河川水の総水銀濃度は、200ng/L以下であり、インドネシアの環境基準の1000ng/Lよりは低かった。濃度の高い場所は、金採掘の盛んな地域の支川であり、金採掘近傍の地域では高濃度になる可能性があることがわかった。河川底質の総水銀濃度は0.01〜0.1mg-Hg/kg-DWであり、他の汚染地域と比べて高くなかった。魚中の濃度は0.02〜0.5mg-Hg/kgであり、特に底生魚のナマズの一種で高かった。最高濃度は、厚生労働省が発表した「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」で2週に一度の摂食が望ましいとされる魚と同程度の濃度(注意が必要な魚の4段階のレベルで上から3番目)であった。カハヤン川沿いには部落が点在し、農業と漁業により自給自足的な生活をしている。イスラム教徒の割合が高く豚肉と牛肉は食べないため、魚は鶏肉とともに重要なタンパク源となっている。これらのことから、現時点では金採掘に伴う水銀排出による河川の水銀汚染が深刻な状況までに至っていないと考えられるが、魚を通して、人体への影響が懸念される状況であり、今後のさらなるモニタリングが必要な状況であった。
著者
井尻 暁 坂井 三郎
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

熊野海盆海底泥火山および、下北八戸沖石炭層の掘削によって得られた堆積物試料からメタンを抽出し、メタンの生成温度の指標となるクランプトアイソトープを測定した。この結果、熊野海盆泥火山では断層を通じた水の供給により活性化した微生物によるメタン生成の寄与が非常に大きいことが明らかになった。八戸沖石炭層では海底下の微生物の生息限界に近い海底下深部(2500m)でもメタン生成が行われていることが明らかとなった。
著者
尾崎 喜光 朝日 祥之 野山 広 井上 文子 真田 信治 陣内 正敬 二階堂 整
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

移住先の言葉をどう感じているか等を中心的な内容とする半構造化インタビューを、関西方言と他方言とを対照する形で実施した。また、上記のインタビュー調査において、移住先の言葉として繰り返し指摘された表現や言語行動が、当該地域において現在どの程度用いられているかを数量的に把握するためのアンケート調査を実施した。特定の観点から両調査のデータを分析した結果については学会で口頭発表した。また、アンケート調査の研究成果については冊子体の報告書としてまとめた。
著者
川田 善正 金子 透 岩田 太 渡辺 修
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究実績の概要は以下のとおり.本研究では、フォトニック結晶構造を有する記録媒体を設計、試作し、その記録媒体にデータを記録・再生することによって、光波を制御し、高密度かつ高コントラストの3次元光メモリを開発することを目的として、研究を進めてきた。記録媒体中に3次元的なフォトニック結晶構造を創り込むことよって、記録するデータの空間周波数分布を制御することが可能になる。このため、データを再生する光学系のOTF(光学的伝達関数)に合わせたデータの記録を行なうことにより、データをコントラスト良く再生することが可能になる。また、フォトニック結晶における光の閉じ込め効果などを利用することによって、光の電場を増強し、より効率よくデータの記録、再生を行なうことも可能となる。さらに、記録媒体中に微細周期構造が作製されているため、それらの構造をガイドとして利用することによって、3次元的なデータのトラッキングも可能になる。今年度は、多層構造を有する記録媒体に、レーザー光を照射し、記録材料の特性を変化させることで、記録媒体中にメッシュ構造を有する3次元的な微細周期構造を作製した。このような記録媒体を用いることによって、面内データ間隔500nm,光軸方向のデータ間隔2μmで、3次元的なデータの記録再生に成功した。本研究で達成した記録密度は、これまで報告されているもの中で最も高いものである。さらに、本研究では、新しい記録媒体の作製方法として、粘着剤を利用した媒体作製方法を検討した。これまではスピンコート法を用いて媒体を作製してきたが、この方法では、媒体の厚みが均一ではなく、また記録層とバァッファ層に使用可能な記録材料の選択に制限があった。粘着剤を用いた方法では、フィルムを多層に張り合わせていく手法であるので、膜厚の均一性が良く、容易に多層構造を作製することが可能である。基礎実験により、粘着剤を利用した手法の有効性を確認した。
著者
大住 克博 横川 昌史 小椋 純一 佐久間 大輔 増井 大樹 小山 泰弘
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

里山景観は二十世紀初頭という比較的新しい時代に草山から里山林へと転換したことを、現象と仕組みの両面から明らかにした。広島県北西部では、大正初期から第二次世界大戦後の間に草地は1/5に減少した。一方、行政資料により復元された大阪府下の里山の資源利用は時間空間的に多様であり、草山から里山林への移行経過も単純では無いことが示唆された。火入れ停止後の草山は、前生樹の萌芽と風散布樹種の進入により森林化し、その後鳥散布樹種が進入して多様度の高い里山林へと移行することを明らかにした。一方草原性植物は、草地管理放棄後、短期間で消失しやすいものと消失しにくいものに分かれていた。
著者
北田 修一 岸野 洋久 浜崎 活幸 北門 利英
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

養殖や種苗放流が天然集団に及ぼす遺伝的影響を評価した。有明海では、外来種の中国アサリが在来アサリと交雑し、その遺伝子が約半分を占めた。サワラ放流魚の遺伝的多様性は低く、放流量が餌の供給量を超えた場合には、天然魚を置き換えた。養殖マダイは長年の選抜育種のため遺伝的多様性が低く、形態も変化していた。スチールヘッドの相対繁殖成功度は、交配や環境の影響を受けて変動が大きい。適応度低下の分子メカニズムを明らかにするため、遺伝子発現と形質のグラフィカルモデルを開発した。
著者
大澤 映二 保柳 康一 千々和 一豊 田中 一義 小澤 理樹
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

天然フラーレンC_<60>の存否は未だに定かでない。KT層、PT層など燃焼煤を含むとされる黒色古地層あるいは隕石クレーター中の岩石から抽出される炭素質中に存在するとされるC_<60>濃度は概ね0.1ppm以下で、技術的に確証を取るのは困難である。唯一高濃度に存在し、複数の分析手段を併用して確実な結果が得られたのは中国雲南省一平浪炭鉱産出の石炭であるが、情報が不正確で炭層が特定できず、追加試料は全てネガティブであったために、現地採取を行って確認を行うのが本研究費の目的であった。研究費支給期間中に地質学者を帯同して中国を3回訪問し、一平浪炭鉱のみならず中国各地から石炭サンプルを採取した。一平浪近くの隕石クレーターにも足を伸ばした。また南アフリカに存在するマグマ貫入炭層、世界最大最古の隕石クレーターにも赴いて試料を採集した。その結果以下の結果が得られた。(1)一平浪炭鉱石炭試料のみが0.3%のC_<60>/C_<70>を含み、同試料は共存異常成分として煤と酷似した構造をもつ黒鉛型ナノ炭素粒子、鉄銅硫酸塩ほか一点の未記載鉱物(おそらく高温高圧変態)を含む。またフラーレンは石炭表面に存在する、(2)他の石炭試料に関するフラーレン分析結果は悉くネガティブ。この結果から自然界で発生する衝撃波によるフラーレン生成説が浮上した。しかし、中国の炭鉱に立ち入ることが出来ず、また坑内地図も閲覧が自由にならないので、採取場所の特定は依然として不可能であった。研究期間終了後も粘り強く交渉を続け、漸く最近に至って中国煤炭勘査局が全山から系統的サンプリングを行い、採取した試料を入手することに成功した。時間飛行型質量分光器による予備分析の結果C_<60>が検出され、現在高速液体クロマトグラフによる定量分析中であり、間もなくC_<60>産出場所の正確な位置が特定できる見込みである。
著者
横矢 直和 山澤 一誠 岩佐 英彦 竹村 治雄 荒木 昭一 栄藤 稔 栄籐 稔
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

1.全方位ステレオ画像センサの設計・試作まず最初に、2つの異る回転2葉双曲面を接合した複合双曲面ミラーとビデオカメラからなる全方位ステレオ画像センサStereo HyperOmni Visionの設計・試作を行なった。本センサは、現状のビデオカメラを用いる限り、画像の解像度に問題があり、実用化には超高解像度ビデオカメラの出現が待たれる。次に、この解像度の問題を解決するために、ピラミッド型六角錐ミラーと6台のカメラにより側方360度を撮像し、同じ構造を上下対称に配置することによってステレオ撮像を可能にする全方位ステレオ画像センサPYMSを開発した。2.全方位画像からのパノラマ画像及び任意視線画像の実時間生成試作したセンサは単一視点制約を満たすため、任意形状の投影面への1点中心投影像を計算によって求めることができる。本課題では、この画像変換の実時間処理を実現するために、離散的な点での座標変換とハードウェアによる画像変形を組み合わせた手法を開発した。また、画像提示デバイスとして頭部搭載型画像表示装置(HMD)と全周型景観提示システムを用いたテレプレゼンスシステムのプロトタイプを開発し、提案手法の有効性を実証した。3.時系列全方位画像及びパノラマ画像の高能率符号化時系列全方位画像及びパノラマ画像の特性を活かしたビデオストリームからの動き推定法と高能率圧縮符号化方式を開発するとともに、多地点全方位画像から任意視点画像を生成する手法を開発した。4.全方位ステレオ画像からの3次元情報の抽出本研究で設計・試作した全方位ステレオ画像センサは縦方向の視差を有するため、人間への画像提示の観点からは、横視差をもつステレオ画像への変換が必要である。このため、相関法によるステレオマッチングによりシーンの奥行き情報を抽出する全方位ステレオ視のアルゴリズムを開発した。
著者
神谷 研二 増田 雄司 豊島 めぐみ 神谷 研二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

低線量放射線被ばくの健康影響を解明するためには高感度のバイオドシメトリーと発がん機構の解明に基づく発がんリスク評価が必要である。そのため,バイオドシメトリーを可能にする放射線高感受性マウスの開発とゲノム障害応答・修復蛋白質の機能解析とそれを利用した分子バイオドシメトリー法の開発を試みた。1.放射線に高感度なモニターマウスの開発と特性解析放射線に高感度なマウスを開発する為に,誤りがちな修復をする損傷乗り越えDNA合成遺伝子mRevlを過剰発現したトランスジェニックマウス(Revlマウス)を共同研究で作製した。このマウスは,発がん処理に対し発がん高感受性であることが明らかとなったので,このマウスの生物学的特性を解析した。さらに,REV1の過剰発現が細胞の特性に及ぼす影響を解析する目的で,テトラサンクリンでREV1の発現が誘導可能なヒト肉腫細胞を樹立した。この細胞の放射線感受性を検討した結果,この細胞は放射線照射後の生存率が対照群より上昇傾向にあることが明らかとなった。この様にREV1の過剰発現細胞は,放射線に抵抗性であることから,細胞が生き延びることで突然変異を蓄積しやすい特性を有することが示唆された。2.低線量放射線を測定する分子バイオドシメトリー法の開発に関する研究ゲノム損傷部位には、損傷応答に関連するタンパク質複合体が形成され、この複合体は免疫染色でドットとして可視化でき、その個数からゲノム損傷を定量できる。このような現象を利用した全く新しい分子バイオドシメトリー法を開発する一助としてゲノム損傷修復やDNA合成に関係するタンパク質の同定とその機能解析を進めた。そめ結果、幾つかのタンパク質因子の候補を同定した。それらのタンパク質因子について、分子バイオドシメトリー法に利用できるか否かの検討を行った。一方、ゲノム損傷に依存的なH2AXの修飾がクロマチンダイナミズムを増加させることを見出した。さらに、再構成系を用いて損傷乗り越えDNA合成機構の解析に成した。
著者
濱崎 雅弘 的野 晃整 大向 一輝 Lynden Steven
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,Linked Open Data(LOD)の利活用を阻害する最大の要因であるLOD検索の困難さに対して,クエリ共有が有効であることを明らかにするため,(課題1)クエリ生成の支援に有効な共有クエリ推薦技術の研究開発,(課題2)クエリ実行の高速化に有効なクエリキャッシュ技術の研究開発,の二つの研究を実施した.既存のSPARQLエンドポイントのアクセスログ解析,プロトタイプを用いたユーザ評価,さらにはRDF 問合せ最適化のための基礎技術の開発を行った.
著者
村田 久美子 矢野 安剛 野澤 佑佳子 飯野 公一 寺内 一 小中原 麻友 土屋 慶子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

H29年度は11月10,11日にメルボルン大学マクナマラ教授、ロンドン大学ターナー名誉教授、ストックホルム大学ビョークマン准教授を招聘、第7回早稲田ELF国際ワークショップと第3回EMI-ELFワークショップの合同国際大会を開催した。EMI-ELFワークショップは2日目午前に、EMIでのELF使用に注目、ビョークマン氏の基調講演後、マクナマラ、ターナー両教授の指定討論で議論を深めた。午後は個人発表後ELF評価のパネルで、ELF的視点を入れた試験開発中の京都工芸繊維大学羽藤由美教授、評価の専門家で連携研究者の澤木泰代教授、ELF的視点を入れた評価に関するビョークマン准教授の発表後、マクナマラ、ターナー両教授、会場の参加者も交え、活発な討論と意見交換を行った。業績出版面ではH29年9月に村田と分担研究者小中原でWaseda Working Papers in ELF第6巻を発行、またEMIをELFの視点から考察した村田による編集本がルートリッジ社から2018年7月に刊行予定である。実態調査では、アンケート調査、授業録画も追加、分析結果の一部をH29年6月のヘルシンキでの第10回ELF国際大会で村田・飯野・小中原が発表, また、村田は8月末のJACETサマーセミナーで今までの研究結果を踏まえたELFに関する特別講義を行い、同じく8月下旬のJACET国際大会でも海外共同研究者のウィドウソン、サイドルホファー両氏と共にパネルを組み、ELF研究の教育的意義について討議した。また、11月の国際ワークショップでも小中原・村田・飯野でこれまでの研究成果を発表、これと同時に、ビジネスピープルへの第2次アンケート調査とインタビュー、及びバンコクを拠点に活躍する日系企業等に勤務するビジネスピープルのインタビューをH30年1月末に研究分担者寺内、飯野の協力を得、実施した。
著者
柳原 正治 深町 朋子 明石 欽司 辻 健児 朴 培根
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究においては、韓国における近代ヨーロッパ国際法の受容過程、および、わが国における近代ヨーロッパ国際法の受容過程、を主たる検討課題とした。そのなかでも、とりわけ、わが国における受容は成功し、韓国においては失敗したと一般にいわれることは正しいのか、正しいとすれば、どのような理由に基づくのか、という点を主たる検討対象とした。そのなかで、「華夷秩序」のなかの、中国と「藩属国」である韓国との関係をどのように捉えるか、韓国は中国にとって"peers"(同僚)であったのか、「厚往薄来」という朝貢の原則が実際の場面で守られていたのか、という点が、一つの重要な争点であることが、研究代表者が基調報告を行った、ハワイ大学韓国研究センター主催の国際シンポジウム(2003年7月23日-27日)のなかでも、あらためて確認された。この点は、2003年12月6日に韓国釜山で行われた、研究分担者と海外共同研究者が一堂に会した研究会の場でも、議論の対象となった。韓国側の海外共同研究者の中でも韓国をpeersと見ることには否定的な研究者がいることが確認された。この争点の解明には、日韓の研究者だけではなく、中国の研究者も交えて行うことが必要であることについて、日韓の研究者の間で一致した。それとともに、21世紀における、新しい日韓関係のあり方、さらには、新しい国際法秩序の中における両国の役割についても、両国の研究者の間で率直なかたちで議論がなされた。そのなかで、厳密な法律論に固執するのではなく、未来を見据え、大局的な問題解決の方式を考えるべきではないかという、提案もなされた。
著者
柳原 正治 辻 健児 明司 欽司 李 黎明 韓 相熙 深町 朋子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

近代国際法はヨーロッパ諸国間の関係を規律するものとして歴史の場に登場した。他方で、東アジアには秦の始皇帝以来、伝統的な華夷秩序が妥当しており、独自の「国際秩序」が2000年近く続いていたことになる。19世紀中葉から後半にかけて非ヨーロッパ国としてヨーロッパ国際法を受容せざるを得なかった中国や韓国や日本は、伝統的な華夷秩序と近代ヨーロッパ国際法との相克をいかに理論的に、かつ実践的に解決していくかという課題を背負っていた。本研究は、この課題に3ヶ国がそれぞれどのような形で取り組んでいったか、その試みは成功したといえるか、3ヶ国に「受容」の違いがあるとすればそれはなにに起因するか、という問題に正面から取り組んだものである。本研究ではまず、わが国の国立公文書館、外務省外交史料館、国立国会図書館憲政資料室など、韓国の奎章閣など、そして、中華人民共和国清華大学所蔵の「王鉄崖文庫」の史料群の収集に努めた。また、19世紀東アジアにおけるヨーロッパ国際法の受容について、3ヶ国の学者たちがどのような研究をこれまで行ってきたかの、研究動向の詳細な分析を行い、合わせて、詳細な文献目録を作成した。それとともに、近代国際法の受容と伝統的な華夷秩序の相克の具体的・個別的な事例の検討も行った。すなわち、近代ヨーロッパの「勢力均衡」と東アジア的な「均衡」・「中立」・「鼎立」の関係、近代ヨーロッパ国際法上の諸概念の翻訳の問題、近代ヨーロッパ国際法上の具体的な制度の受容の一つのケースとしてのわが国における「領海制度」の導入過程、華夷秩序の儒教原理と朝鮮の「自主」の問題、1899年の韓清通商条約を契機として清国と韓国の両国関係を華夷秩序のなかの関係として捉えることの是非の問題、日本における自立した国際法学の成立、などの諸問題について、研究成果を挙げることができた。
著者
山口 雄仁 渡辺 哲也 岡田 伸一 鈴木 昌和 川根 深
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本課題研究は大きく分けて,1.数式を含む文書の光学的文字認識(OCR)システムの開発と2.OCRされた文書の日本語による自動読み上げシステムの開発から構成される。それぞれについて,研究成果の概要は以下の通りである。1.については,(1)日本語・英語両方の文章から数式領域を正確に切り出す技術の確立,(2)数学記号認識の精度を大きく向上させる新たな特徴抽出法の研究や数学記号用認識辞書の整備,(3)認識結果をLa TeXを含む様々なファイル形式で出力する技術の開発などを行い,高度な理数系専門書でも精度よくOCR出来るようになった。また視覚障害学生でも,音声操作でOCRが出来るような環境を用意した。2.については,(1)La TeXで書かれた文章を汎用エディターに読み込み,それを文章解析して数式部分を日本語できちんと理解出来るように音声出力する,Windows汎用画面読み上げソフトウェアに対応した音声マクロを開発し,(2)評価実験を通してその音声マクロの読み上げ法や操作環境の改良を行った。その結果,ある程度理数系の専門知識がある学生であれば,容易に音声で理数系文書の内容が理解出来るようになった。以上の2つを組み合わせれば,墨字で印刷された理数系専門書に音声で十分アクセスすることが出来,理数系視覚障害学生が自立的に墨字文書を読む道が開けたと言える。これは,今後1と2が一体化したより汎用な「数式自動読み上げシステム」を開発する上で,重要な指針を与えるものである。
著者
箕浦 幸治 今村 文彦 今泉 俊文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,砂の堆積現象が最も広範囲に現われた869年貞観仙台沖地震津波による堆積物運搬の様式を粒度組成及び堆積相から類推し,津波による流れの水理学的実体を理解するための初期条件を求める堆積学的検討を行った。また,静岡県南伊豆町入間において東海地震津波によって形成された丘陵状の集積土砂堆積物も研究対象とし,堆積物運搬過程の検討を行った。申請設備備品であるレーザー回折式流度分析装置による粒子組成解析結果からは,貞観津波堆積層を構成する砂層の明瞭な陸側細粒化現象が検出された。この現象は堆積物の移動と集積を試行する水槽実験装置の再現結果と調和しており,堆積層の細粒化様式が溯上津波のエネルギー散逸を反映する重要な基準として扱い得る可能性が示されるとともに,水理学的結果と堆積作用の理解から,我が国において特に顕著な災害を及ぼした貞観地震津波・東海地震津波による破局的な流れの堆積学的作用が明らかにされた。この基準は,海岸とその後背平野の成り立ちを理論的に理解する自然地理的条件を与え,更に海岸平野に於ける都市・産業基盤整備に不可欠の知識を与えるものと期待される。また,タイ南西部海域において採取した堆積物試料を用いて古生物学的解析を行い,津波前後での底生有孔虫群集の変化を明らかにするとともに,引き波によって生じた混濁流が海底に津波の痕跡を残しうることを示した。したがって,海域における堆積物掘削により,津波発生の履歴を知ることが出来る。平成19年7月にイタリア・Perugiaで開催されたIUGG総会において,これらの結果を津波災害と堆積現象の実例として紹介し,注目を集めた。
著者
中神 潤一 蔵野 正美 安田 正實 吉田 祐治 田栗 正章 種村 秀紀 辻 尚史
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ファジー推移のマルコフ決定過程への導入は千葉大学計画数学グループ[蔵野正美、安田正實、中神潤一、吉田祐治(北九州市立大学)]の主要研究課題で1991年より始められている。本研究課題は、動的ファジーシステムの最適構造についてファジー演算から導出される数学構造の意味付けを深めることにより、最適停止問題・ゲーム理論等に応用できる具体例の作成を通じて、ファジー理論の本来の要請である頑健性構造の解明に研究を拡大することを目標とした。科研費の内示当初より、共同研究者である吉田祐治教授(北九州市立大学)と共同の本格的な科研費研究集会を千葉2回九州2回と交互に4年間に渡って毎年開催する運びとなった。13年度は北九州市立大学、14年度は千葉大学、15年度は千葉大学、最終年度の16年度は北九州市立大学で科研費研究集会「不確実性下での数理決定とその展望」を開催、18件の発表が好評のうちに行われた。最新の研究成果の発表に対する討論と貴重な情報の交換が得られ大変有意義であった。このような交流は境界領域としての学問を進めていく上でぜひ必要と考えている。本研究課題において、裏面に記載した研究成果を含む10編の査読付き論文を作成した。国際Proceedings及び報告論文は17編、国内外の研究発表は29件になった。以上の研究成果は、今後の研究の発展と共に、国際シンポジウム等で積極的に発表し、国際的に評価された学術専門誌に投稿しその評価を受ける予定である。最近ザデーが提唱しているパーセプション(認知)の概念をファジー集合の新しい解釈として、ファジー値をもつ最適停止問題に適用した論文を発表した。これに続く論文としてマルコフ決定過程に適用した論文を作成中である。またファジー選好順序を動的決定過程に取り入れて、人間的決定を考慮した人工知能等の定式化を試みている。次年度以降の研究目標の一つとしたい。また、最後になりましたが、計算機・図書関係の整備等への補助金の支給に感謝致します。