著者
今井 理恵
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 (ISSN:18840140)
巻号頁・発行日
no.8, pp.15-23, 2016-01

中学校期は, 学習内容の高度化, 教科担任制や移動教室などの学習環境の変化, 複数の小学校出身者との出会いと友人関係の複雑化, 部活動での人間関係の構築, 進路選択などを含んで, 生活場面と学習場面において大きな変化が伴う. さらに, 思春期とも重なり, 身体的に成長していく一方で精神的には未熟な部分もあるため, 中学校での生活と学習に不安や葛藤を抱えて苦しんでいる子どもは少なくない.2008 年学習指導要領改訂の力点の一つである「言語活動の充実化」が教科での学習において重視される一方で, 体験活動の充実を図ること, すなわち, 特別活動の役割がこれまでにも増して重要な位置に置かれていることを鑑みても, 中学生の自立を支える教育活動として特別活動の果たす役割は大きい.そこで本論では, 今日の中学生の人間関係をめぐる問題と自立観について指摘し, 特別活動の目標と特質について整理する. そのうえで, 中学校特別活動実践を基に,中学生の自立を支える特別活動に求められる視点として,第一は, 特別活動を通して困難さを抱える他者に共感し,応答する関係をつくる, 第二は, 学校行事を通して, 子どもの今を問い直し, もう一つの生きるに値する世界をつくりだす, 第三は, 学級や学校での生活づくりを問い直す, 以上3 点を提示した. その際, 思春期である中学校期の自立に課題を抱えることの多い発達障害児を中心に検討した.
著者
五島 史行
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.233-238, 2021-06-30 (Released:2021-08-04)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Patients with chronic dizziness often complain of headache; conversely, patients with headache complain of dizziness. Patients with migraine complain of dizziness more often than patients with tension-type headache. Diagnostic criteria for both Meniere disease and vestibular migraine have been reported recently. However, in some cases, it is difficult to clearly distinguish between Meniere's disease and vestibular migraine. In the patients complains symptom, which is described in the diagnostic criteria of Meniere disease and vestibular migraine at the same time may define as Patients complaining of symptoms described in both the diagnostic criteria for Meniere's disease and vestibular migraine may be defined as having vestibular migraine and Meniere's disease overlap syndrome. Here, I would like to describe the etiology of migraine and Meniere's disease. In Japan, migraine is reported to occur at a prevalence of 3.6% in men and 12.9% in women, while Meniere's disease is reported to occur at a prevalence of approximately 2-30 cases per 1,000,000 inhabitants. In otorhinolaryngologic? outpatient practice, Meniere's disease and vestibular migraine are reported to account for about 8%-10% of patients. There are no objective tools yet to clearly diagnose either vestibular migraine or Meniere's disease. Recently, the habituation of middle latency response was reported as a potential objective evaluation tool for the diagnosis of vestibular migraine. Further study is required to identify objective tools for the diagnosis of vestibular migraine and Meniere's disease.
著者
大川 清丈
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.37-52,106, 1993-10-31 (Released:2017-02-15)

From sociological perspective, every idea has its social context. So is the idea of equality. The purpose of this paper is to analyse how the idea of equality is conceived in Japan and its relation to its modernization. There are, logically speaking, three dimensions of equality: equality of conditions (including equality before the law) , equality of means (or equality of opportunity) , and equality of outcomes. Additionaly, comparative studies show the difference of the view on natural abilities between the United States and Japan. Americans take the view that natural abilities are inequally gifted, whereas Japanese take the view that they are equally gifted, and that one can do anything with maximum efforts. And from historical perspective, the status-group system in Japan attracts our attention. Tokugawa regime was characterized by its dual structure, that is, the principle of acievement or meritocracy, on one hand, and the principle of hereditary hierarchy of status-groups, on the other hand. To analyze a political pamphlet 'Non-hereditary Aristocracy (Ichidai Kazoku Ron) ' written by a Meiji statesman Taisuke Itagaki demonstrates that the dual structure had survived in Meiji era even after the status-group system as the political regime was abolished. To conclude, the context of equality in Japan consists of the view that natural abilities are equally gifted in combination with the dual structure on equality, which contrasts with the American view that they are inequally gifted in combination with equality of opportunity which is the dominant norm in the United States.
著者
三浦 勝 森 隆太郎 高橋 徹也 小尾 芳郎 山中 研 阿部 哲夫 小林 大輔 中村 恭一
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.159-164, 2004
被引用文献数
2

内分泌細胞癌は悪性カルチノイド腫瘍ともいわれ, 従来の古典的カルチノイドとは区別されている. 今回, まれな十二指腸Vater乳頭部原発の内分泌細胞癌を経験したので報告する. 症例は66歳の女性で, 発熱, 腹痛を主訴に来院し, 血中アミラーゼ高値および肝機能異常を認めた. CT膵頭部に腫瘤形成を呈し, 上部消化管内視鏡ではVater乳頭部に, 中心に陥凹を有する隆起性病変を認め, 生検でVater乳頭部未分化癌または内分泌細胞癌の診断にて, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 術後病理学的にグリメリウス染色およびクロモグラニン染色陽性で, 内分泌細胞癌と診断した.術後早期にリンパ節再発, 肝転移を認め, 術後75病日に死亡した. Vater乳頭部原発の内分泌細胞癌は会議録を含め本邦報告17例とまれであるが, 予後は極めて不良とされている. 本症例も腫瘍部でのKi-67染色が約50%陽性と, 高頻度の細胞増殖を認め, 内分泌細胞癌の悪性度を裏付ける症例であった.
著者
内山 清子 石川 諒
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回 (2017)
巻号頁・発行日
pp.1D2OS29a3, 2017 (Released:2018-07-30)

従来の昔話に当てはめた物語構造分析を、恋愛漫画を対象としてきっかけ、出会い、別れ、すれ違いなどのイベント、イベント毎の心理状態、具体的な行動などを調べ、恋愛という限られた状況における典型的なストーリーのパターンを定式化することを目指す。恋愛におけるストーリー展開、セリフの効果、イベントにおける対応方法などを分析することにより、恋愛だけでなく一般的なコミュニケーションへの応用について考察する。
著者
浜中 新吾
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.71-87, 2018-06-01

軍隊は社会的価値の生成と内面化にとって重大な役割を果たす組織である。イスラエルは国民皆兵を採用しており、若者の国民統合に大きな役割を果たしている。しかしながら国民皆兵の建前にも関わらず、市民の三人に一人は兵役を免れているという。本稿は兵役免除という事実を利用して、兵役の政治的社会化機能を分析した。すなわちイスラエル国防軍への従軍が市民の政治的態度に与える影響を実証的に検討している。ここでは軍務の国民統合機能に関する理論から導出した仮説を検証した。その仮説とは、軍隊への従軍経験が国防意識を高め、パレスチナ占領地域を護持しようとする非妥協的な態度を生み出す、というものである。仮説検証に用いたデータはユダヤ人市民を対象に2007年2月に実施された民主主義サーベイである。リサーチ・デザインでは疑似ランダム的に従軍経験を持つ処置群と従軍経験を持たない統制群を同数になるよう生成するため、プロペンシティ・スコア・マッチングを行った。これにより兵役を免除される属性(性別、宗教的アイデンティティ、旧ソ連邦からの移民)を統制し、属性の面で差異のない二群を創り出すことで比較分析を可能にした。本稿の分析では、徴兵されたユダヤ人市民と徴兵されなかったユダヤ人市民の間で、民主主義への満足度、シオニスト・アイデンティティ、リーダーシップやナショナル・プライドについての意見に差異は見られなかった。しかしながら、軍隊経験を持つ市民はアラブ人の強制追放政策に反対し、紛争解決のために西岸地区の領土的譲歩を支持する、という反直感的な結果を得た。この結果は軍務の国民統合機能に関する理論に再検討を迫ると同時に、パレスチナ問題の二国家解決案に望みを繋ぐものでもある。なぜならイスラエル市民の多数派である従軍経験者は少数派である非経験者に比べて中東和平問題の解決に向けてより穏健であり、過剰な政策に反対する姿勢を示していると言えるからである。
著者
田中 邦一 横田 道生 鈴木 徹 佐伯 悟
出版者
Japan Society of Photogrammetry and Remote Sensing
雑誌
写真測量とリモートセンシング (ISSN:02855844)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.2-7, 1978-03-25 (Released:2010-03-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

沿岸環境や水質汚染の監視のために, 水面からの反射スペクトルの特性と水質との関連を明らかにする必要がある。こうした目的に沿って1975年から1977年までに筆者等は, いろいろな湖や海域で水面からの反射スペクトルの測定と同時に, 透明度等の水質調査を行なってきた。特に採水した試水については, 光学的な水質項目である懸濁物質量とクロロフィル量の分析を行なった。本論では, 以上の観測結果から, 水面からの反射スペクトルと水質との関連についての検討を行なった.これらの結果として, 汚濁の強い水域では清澄な水域より, 反射率が高いので, 水質の指標として水面反射率の測定は有効であると結論できる。
著者
根本 美里 谷口 綾子 佐々木 邦明 小菅 英恵
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.1-9, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
19

本研究では、認知機能検査が受検者にもたらす心理的影響の効果・副作用を検証するため、インタビ ュー調査と認知機能検査によるメッセージ効果検証実験を実施した。インタビュー調査の結果、認知機能検査結果に関わらず多くの対象者が、検査を難しいと感じていることや過去の検査結果と比較して結果を解釈していることが明らかになった。認知機能検査によるメッセージ効果検証実験の結果、認知機能の低下のおそれがない第3分類の人は、クルマ利用抑制意図・運転免許返納行動意図など4項目の値が、検査実施後に有意に低くなり、検査による副作用の存在が示唆された。認知機能の低下のおそれがある第2分類の人は、運転免許返納行動意図が事後に有意に高くなった。以上より認知機能検査による心理的効果・副作用の両面が存在する可能性が明らかになった。
著者
福原 朗子
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
2021-06-30

二酸化炭素などの温室効果気体によって、大気における温室効果が起こる。多くの人が、言葉として知っているものの、高校や大学で習う自然科学的な知見と結びつけて理解する機会は少ない。本研究では、Kaneko et al.(2010)で開発された光音響効果の実験装置をもとに、赤外線が透過する様子を、気体セルにおける入射量・吸収量・透過量に関するエネルギー収支を考察することで理解し、また、その光学的厚さをカバーグラスの枚数相当に換算することにより、高校生や大学生が理解できる教材としてまとめた。既存の温室効果を理解する教材の多くは、赤外線ランプ等の光源は使っているものの、その光源の発する波長帯は近赤外領域であり、地球放射の遠赤外線とは異なること、および、用いている容器の多くは幅広い波長で吸収しているのに対して、近赤外領域の二酸化炭素の吸収帯はごく限られた波長のみであり、温度上昇で検出することは困難である。本研究は、それらとは異なるアプローチである光音響効果を利用した教材に注目した。Kaneko et al.(2010)では、赤外線の温室効果ガスによる吸収量が音響信号に変換されるため、結果的に温室効果ガスの吸収帯のみに注目した計測ができる。また、光源の放射温度を比較的低く抑えることにより、遠赤外領域でも吸収量を計測できる特長を持つ。気体の種類によって音響信号が異なること、気体の濃度が高くなると音響信号が大きくなること、断続光の周波数が高くなると音響信号が小さくなること、などが示されており、Fukuhara et al.(2012)では、気体セルに入射した断続光から音響信号として取り出せるメカニズムについて考察している。本学位論文では、光音響効果を利用した装置で、2つの気体セルを縦列配置し、それぞれの吸収量を用いて、エネルギー収支から入射量や透過量を見積もる教材開発を行った。同一ガスを2つの気体セルに封入すれば、その気体の吸収帯におけるエネルギー収支を考えることができる。光源から遠い気体セル(2段目)にCO2濃度100%を封入し、いわば検出器の役割を持たせ、近い気体セル(1段目)にCO2濃度0%から100%を封入し、吸収量を計測した。経験的補正係数を導入した簡単なエネルギー収支により、入射量や透過量を見積もることができるようになった。また、光学的厚さは気象学における基礎的概念であるが、一般の高校生や大学生にとっては必ずしも知られていないものである。光学的厚さを(顕微鏡で使われる)カバーガラスの枚数に換算するようにした。カバーガラスは、可視光で透明だが、赤外光に対しては半透明であり、波長毎の特性も、高校生や大学生の大気の温室効果の理解に役立たせることができる。なお、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて、波長ごとの二酸化炭素の吸収帯とカバーガラスの透過率から、カバーガラスの計測された吸収率を確認することができている。本研究では二酸化炭素のみを扱ったが、今後、複数の温室効果ガスも扱うことで、気体特有の吸収帯で異なることなどを使用して、より波長特性を理解する教材開発もできる。
出版者
日経BP
雑誌
日経コンピュータ = Nikkei computer (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.993, pp.62-64, 2019-06-27

「使えたり使えなかったりで店頭は大混乱だった」。東京都江東区の書店で働く女性店員は2019年5月24日にプリペイドカード「図書カードNEXT」が一時使えなくなったトラブルをこう振り返る。「カードが使えず、現金で買ってもらったり取り置きを勧めたりしたが、…