著者
田代 真 加藤 幹郎
出版者
帯広畜産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

一般にすれ違いと必然性を欠いた安易な結末に特徴づけられるメロドラマという物語形態は、各時代の支配的表象メディアにのって、各物語媒体(小説,演劇,映画)を横断してきた。とりわけ今世紀には、映画という物語媒体をつうじて、新しい物語ジャンルの生成と大衆文化の想像力の形成の原動力として、この物語媒体にとどまらない支配的、普遍的な世界認識方法として機能するに至っている。本研究では、従来の悲劇を規範とした文学研究からはともすれば取りこぼされてしまいがちであったこのメロドラマに着目し、この物語形態の構造と歴史を、文化史的、社会史的な文脈のなかで明らかにすることをめざした。具体的には、1.この物語形態の集約たる20年代〜50年代のハリウッド映画という物語媒体におけるメロドラマの生成と構造を、(1)個別ジャンルにおけるメロドラマ的要素、(2)ジャンル間の混淆とメロドラマの横断性、(3)映画産業のイデオロギーと観客の受容の歴史的形態の心理社会学的調査の分析によって明らかにし、翻って2.メロドラマ映画とその歴史的先行形態としてのオペラの比較分析を媒介として系譜学的に遡行し、3.(1)19世紀英国ヴィクトリア朝演劇におけるメロドラマ構造と観客に対する舞台効果の関連性および(2)18世紀イギリス感傷小説の発展過程におけるメロドラマ構造と語りの多元性におけるジャンルのカ-ニバレスクの関連性を探った。上述の分析によって、メロドラマの横断性とは、神学と非民主的イデオロギーを背景に発達した悲劇のジャンル的な固定性に対して、封建体制の終焉とブルジョワ階級の台頭という社会的道徳的価値的変動に対応する神なき時代の民主的イデオロギーとして、この物語形態に特有のジャンル混淆の原理に基づいて、各時代の多様な民衆的想像力の要請に答えつつ同時にそれを形成した、流動性(可塑性)のあらわれにほかならないことが明らかになった。
著者
大滝 純司 水嶋 春朔 北村 聖 加我 君孝 前沢 政次
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

昨年度までの研究活動に引き続き、以下の研究活動を行った。1.一次調査の結果を発表昨年度に実施したFGI調査の分析結果をまとめて、日本医学教育学会で発表した。2.二次調査の計画立案昨年度までの調査結果をもとに、二次調査として、全国規模のアンケート調査(多施設調査)を計画した。(1)調査対象の種類と数の検討研究班内で議論し、最終的に国内の研修病院(10カ所程度)の通院患者を調査対象に定めた。(2)調査対象者選定方法の検討調査対象病院の選定方法(層別など)について、資料を収集し研究班内で検討した。(3)質問紙原案の作成昨年度までの調査結果を参考にしながら、二次調査で用いる質問項目を検討し、質問紙の原案を試作した。(4)倫理審査二次調査に関する倫理面の審査を筑波大学の審査委員会に申請し承認を得た。3.質問紙原案による予備調査の実施試作した質問紙原案を用いて、某病院の内科外来患者を対象に予備調査を実施した。実施した結果を分析して質問紙を改良した。また、調査の運営方法などに関しても、この予備調査の経験をもとに再検討した。4.二次調査の実施調査対象病院の候補を選定し、調査への協力を依頼した。了承が得られた病院の内科外来患者を対象に、改良した質問紙を用い、対象者の同意を得て、二次調査を実施した。全体で10病院の521名から回答が得られた。5.二次調査の集計と分析、報告書の作成二次調査の結果を集計・分析し考察を加え、報告書を作成した。
著者
和田 恵美子
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、患者・家族の相談活動・自己決定支援の具体的方策、精神的支援をめざすツールとして闘病記の活用可能性を明らかにすることである。闘病記文庫を有する施設における地域住民の活用度を調査するとともに、看護師との闘病記朗読会を行い、彼らの反応およびインタビューデータを分析した。その結果、市民の闘病記に対する関心度は高く、利用環境について更なる整備が必要であること、また闘病記朗読は患者へ活用できる可能性があるが、それ以前に看護師に与える影響が大きく、教育ツールとして意義があることが示唆された。
著者
濱田 純一 右崎 正博 服部 孝章 山口 いつ子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

比較制度的な研究を通じて明らかになったのは、マスメディアによる人権侵害の救済システムがソフトロー的な性格をもち、それによって適切に機能している部分と限界が存在することである。また、ソフトローとしての機能する条件についてもいくつかの軸が見えてきた。すなわち、まず第一に、イギリスや韓国等において、苦情処理機関が行った仲裁や裁定の措置が、報道機関によって一般によく遵守されていることは注目に値する。この背景には、もし自主規制がうまくいかない場合の規制立法に対する警戒もあるが、報道機関が自己規律に対する意識が明確にあることの反映でもあり、それがこの分野でのソフトローを機能させる条件となっていると見ることが出来る。それと同時に、とくにイギリスで指摘される、和解的な感覚の社会的普及も、ソフトローを機能させる上で重要なファクターとなりうることが示唆されている。第二は、苦情処理機関において適用されるルールには、法規制と重なる内容と、法では規制されていない内容の双方が含まれていることである。この後者の観点から言えば、法規制よりも幅広い対象について、柔軟な調整をソフトローが行いうることを意味する。第三に、上記の前者の観点からすれば、ソフトローは法と同じ対象を規律するため一見リダンダントに見えるが、内容は同じであっても、例えば迅速な処理や軽微な費用など、執行のコストや効果において独自の意味をソフトローが持ちうることがあることを、メディアの救済制度の経験は示唆する。以上のような検討を通じ、マスメディアによる人権侵害の救済システムを素材として、ソフトローが成立・機能しうる条件、またソフトローが一般の法に比して有する固有の意義の一端が示され、人権侵害の救済システムの研究とともに、ソフトローの研究に資する成果が得られた。
著者
辻 由希
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、1990年代以降の日本の政治経済改革の文脈の中で政治課題となったケアや家族関連の政策形成過程における議論と、その文脈において注目を浴びた女性の代表/表象実践を、ジェンダーの視点から分析することである。2010年度は、児童虐待防止法の制定および改正過程、ドメスティック・バイオレンス防止法の制定および改正過程、および教育基本法の改正過程に関する資料を収集した。本研究では、これらの資料を言説政治という観点から分析することを通じて、政策過程における対立軸を明らかにし、その中で政治アクターによって提示された家族像を析出することを試みた。本研究の結果、1990年代以降の日本政治の展開に関して以下のような特徴がみられることが分かった。第一に、1990年代以降の日本政治の主要争点の一つとして、ジェンダー平等が存在する。90年代以降の日本では、男女の性別役割分業の改革や「男らしさ」「女らしさ」といったジェンダー規範の変容が政治的課題となり、それらの争点をめぐる政治的対立、すなわち「ジェンダー政治」が展開されてきた。第二に、ケアや家族にかかわる政策過程の横断的分析の結果、いくつかの異なる「家族」像が提示されていることが明らかになった。本研究ではそれを、家族責任の軽減・拡大と性別役割分業の維持・改革という二つの軸に沿って四つに分類し、日本のジェンダー政治における対立軸を明らかにした。第三に、以上のような政治的対立の中で、女性の政治的代表の代表/表象戦略は変容をみせている。女性の衆議院選挙候補者は、1990年代後半には男女共同参画社会の実現という政治課題と結び付けて女性の政治社会参加の必要性を強調する戦略をとることが多かったが、2000年代に入り、「子ども」や少子化対策に重点を置くことが増えてきている。
著者
増永 良文 舘 かおる 小山 直子 喜連川 優 藤代 一成
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

今や,Web空間は茫漠たる量の情報が発信され,数十億ページを有する地球規模のデータベースと化している.このWeb空間には,社会の実態が姿を変えた形で映し込まれていると言える,一見しただけでは混沌として様子がつかめないが,それを巧みに分析すれば,現実を俯瞰できる地図や興味ある事実が浮かび上がってくるであろうことは十分予想される.そのための分析手法が「Webマイニング」である.中でも,Webページ間のリンク構造に着目してWeb上のコミュニティ(Webコミュニティ)を発見するWebマイニングツールは,1990年代後半から急激に発展してきた.ここで,Webコミュニティとは,基本的に同じトピックに関心を持つ人々や組織によって形成された「Webページの集合体」を指す.本研究では,お茶の水女子大学ジェンダー研究センター(舘かおる教授・小山直子研究員),東京大学生産技術研究所(喜連川優教授・豊田正史特任助教授),および東北大学流体科学研究所(藤代一成教授)と共同して,Webマイニングによるジェンダー(社会的な意味での性別)関連のWebコミュニティの発展過程を徹底的に分析した.その結果,1999年6月の「男女共同参画社会基本法(英訳:The Basic Law for a Gender-Equal Society)」,この法律は性別(gender)によって不利益をこうむることがない平等(gender-equal)な社会の実現を目指すためのもの,の施行に伴って日本各地で発生した女性センター関連コミュニティの発展過程を的確に捉え,かつWebマイニングが隠れた事実を浮き彫りにしたという大きな成果を得た.これらの結果はキーワード「ジェンダー」をWebマイニングツールCompanion-(喜連川研究室が開発)に日本語で入力して抽出した結果を,ドメイン知識,つまり特定分野の専門知識を持つ者(上述,舘教授,小山研究員)が徹底的に読み解いて得たものであり,Webマイニングツールの有用性を明らかにするとともに,Webマイニングがジェンダー学(gender studies)を含む社会科学の新しい研究方法論となり得ることを実証してみせた.本研究では,さらにこの結果に基づいて,ジェンダー関連ポータルサイトの構築法を明らかにし,それをお茶の水女子大学ジェンダー研究センターのホームページ作成に役立てた.12611
著者
軍司 祥雄 斎藤 隆 磯野 可一 松原 久裕
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

消化器癌に対する集学的治療のなかで免疫療法の比重は未だ低い。これは免疫療法の理論的構築が動物実験ではなされているものの実際に臨床の場では顕著な効果を得られないことによる。この免疫応答不全の原因を究明することは癌の治療に大きな寄与をすると考えられる。担癌マウスの免疫応答不全の原因として脾細胞ではそのT細胞リセプター/CD3複合体(TCR/CD3 complex)のうちζ鎖が欠損し、IgEの高親和性リセプターであるFcεRIγ鎖がζ鎖に置き代わってTCR/CD3 complexを形成していることを示唆する実験結果が報告されている。我々はこのことが癌患者の免疫応答不全の原因となっていると考え癌患者の末梢血リンパ球のT細胞および腫瘍浸潤リンパ球を用いて検索した。担癌患者の末梢血リンパ球および手術時に摘出した癌部より0.5% collagenase処理により分離したリンパ球を0.5%digitoninでlysisしmonoclonal anti-CD3εAbで免疫沈降する。さらに2次元SDS-PAGEでTCR/CD3complexの構造を解析した。結果1.担癌患者の末梢血リンパ球105症例136回の分析ではζ鎖の発現が減弱したもの41回、完全に消失したもの47回であり約1/3の検索で完全消失を示した。大腸癌、胃癌、食道癌、肝癌、膵癌、乳癌などの症例において検索したが、特に癌の種類によるζ鎖の発現変異は認めなかった。TNM classificationによる癌の進行状況との関係をみるとstageが進行するのに従いζ鎖の発現の減弱、および消失する頻度が増強した。特に再発症例では47症例の検索中、発現の減弱は17例、消失は21例に見られた。2.癌患者の手術時摘出標本より分離した腫瘍浸潤リンパ球34症例(胃癌21例、大腸癌13例)の検討ではTCR/CD3 complexの構造異常が見られる症例は24例に見られ、そのうちζ鎖の消失が認められたものは18症例(52.9%)と高率であった。大腸癌、胃癌の両者においてこの現象は認められ、さらに末梢血Tリンパ球での構造変化が見られない症例でも腫瘍浸潤リンパ球では変化が見られ、癌局所のリンパ球から先に構造変化がくると事を示唆した。さらにζ鎖の発現の推移をみた症例では癌の進行が進むにつれて発現の減弱、消失が認められ、また治療に反応して発現が回復した症例も経験しζ鎖の発現消失は可逆的である可能性が示唆された。癌抗原がT細胞上に提示されたとしてもζ鎖の構造異常がその後のT細胞内のシグナル伝達を阻んでいる可能性があり、担癌患者の免疫応答不全の原因となっている可能性が示唆された。この原因の解明をさらに進めている。
著者
軍司 祥雄 斎藤 隆 磯野 可一
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

担癌マウスの脾細胞ではそのT細胞リセプター/CD3複合体(TCR/CD3 complex)のうちζ鎖が欠損し、IgEの高親和性リセプターであるFcεRIγ鎖がζ鎖に置き代わってTCR/CD3 complexを形成していることを示唆する実験結果が報告され、我々はこのとこが癌患者の末梢血リンパ球のT細胞でおきているのかを検索した。担癌患者の末梢血リンパ球を0.5% digitoninでlysisしmonoclonal anti-CD3ε Abで免疫沈降する。さらに2次元SDS-PAGEでTCR/CD3 complexの構造を解析した。1.これら55症例68回の分析では正常人と同じ構造を示したもの24回、ζ鎖の発現が減弱したもの21回、完全に消失したもの24回であり約1/3の検索で完全に消失を示した。この時、特に癌の種類によるζ鎖の発現変異は認めなかった。TNM classificationによる癌の進行状況との関係をみるとstageが進行するに従いζ鎖の発現の減弱、および消失する頻度が増強した。特に再発症例では17症例の検査中、発現の減弱は6例、消失は10例に見られた。癌患者のTCR/CD3 complexの構造をグループにわけてみると(1)正常なタイプ、(2)抗CD3ε抗体でζ鎖の発現が見られないが抗ζ鎖抗体での免疫沈降でζ鎖の発現がみられるタイプ(3)抗CD3ε抗体、抗ζ鎖抗体でもまったく発現の認められないタイプ、(4)またマウスの結果と同様にζ鎖の発現がみられずFcεRIγ鎖がζ鎖に置き代わっていると思われるようなタイプに分類できた。さらにζ鎖の発現の推移をみた症例では癌の進行が進むにつれて発現の減弱、消失が認められ、また治療に反応して発現が回復した症例も経験しζ鎖の発現消失は可逆的である可能性が示唆された。癌抗原が担癌患者のT細胞上に提示されたとしてもTCR/CD3 complexの構造異常がその後のT細胞内のシグナル伝達を阻んでいる可能性があり、担癌患者の免疫応答不全の原因となっている可能性が示唆された。この原因の解明をさらに進めている。
著者
加原 奈穂子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

平成17年度の主な研究目的は、(1)岡山桃太郎伝説の舞台「吉備路」の文化財保存と観光活用に関する文化政策および各関係主体(行政・文化産業・地域住民・観光客)の認識・活動・相互関係等のより詳細な実情の把握、(2)「吉備路」イメージの形成と桃太郎伝説の活用に関する資料収集・分析、(3)口承伝承の観光活用に関する他の事例との比較・分析、であった。平成17年度の研究実績は、以下の通りである。1.研究調査1)聞き取り調査:岡山県・岡山市等の文化財保護と観光推進の各行政担当機関(文化財保護と観光化に関する方針・具体的活動)、観光関連の民間団体(観光産業の状況)、「吉備路」観光客と地域住民(桃太郎伝説への認識、観光行動やその影響など)への聞き取り調査を行った。2)文献調査:桃太郎伝説の浸透と「吉備路」のイメージ形成に強い影響力を持った地元新聞、観光案内等について、昭和30年代以降のものを中心に、文献資料の収集・分析を行った。現地調査は、岡山県岡山市で、平成17年8月〔10日間〕、12月〔10日間〕、平成18年2〜3月〔10日間〕に行った。2.調査整理・成果発表上記の聞き取り調査・文献調査で得たデータは、関連の事例との比較を踏まえたうえで、(1)桃太郎伝説形成の歴史、(2)マスメディアの影響、(3)観光行政の変化、(4)桃太郎伝説の活用事例、(5)民俗文化の選択的活用、などの項目に整理、分析済みである。調査結果の一部は、「研究発表」欄の共著、雑誌論文の他に、岡山民俗学会平成17年度総会(「文化資源の活用と文化政策」)、日本民俗学会第56回年会(「多様性の中の地域性」)、第20回日本観光研究学会全国大会(「"地域らしさ"を売る」)で発表を行った。また、岡山市デジタルミュージアム開館記念「おかやまと桃太郎展」に関して、展示協力、展示解説映像作品への出演解説、フォーラムでの講演(「時代を超える桃太郎」)、を行った。
著者
小野 修三 米山 光儀 梅垣 理郎 坂井 達朗 永岡 正己 小笠原 慶彰 松田 隆行 安形 静男
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は一つには石井十次の岡山孤児院大阪分院(大阪事務所)の活動記録たる日誌を、石井記念愛染園(大阪市浪速区日本橋東)に出張して写真撮影し、その複写物によって原文の翻刻を行ない、成果を大学紀要に発表することで、明治末から大正初めの大阪の地における社会事業に関する第一次資料を公的に利用可能なものとすることであった。この点では、この弓年間の研究期間で2年度に亘り当該日誌の翻刻を研究代表者および研究分担者の所属する大学の紀要にて発表することが出来た。本研究のもう一つの目的は、上記資料を実際に利用して、明治末から大正初めの大阪の地における社会事業展開の実際の過程を解明することであったが、この点についても2篇の論考をまとめることが出来た。そこではまず第一に、事業展開における事業主とその手足として働くスタッフとの間の信頼関係が、ある場合(石井十次と光延義民)には毀損し、ある場合(石井十次と冨田象吉)には、事業主の没後も事業主の遺志を継承して精励していたことが判明した。また、事業展開の場を、大阪から朝鮮半島に求めることが当時広く模索されていたが、ある団体(岡山孤児院、時の事業主は大原孫三郎)は調査の結果進出を断念し、ある団体(加島敏郎の大阪汎愛扶植会)は同じく調査の結果、朝鮮総督府、東洋拓殖株式会社の支援のもと、進出を決断したが、この明治末から大正、昭和初期の過程を今回まとめることが出来た。ただ、昭和20年の植民地統治終了時に至る過程については未解明であり、今後の研究課題としたい。
著者
早坂 忠裕 河本 和明 谷田貝 亜紀代 久芳 奈遠美
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、主に衛星データを用いて、低層雲を対象に、その雲量、光学的厚さ、鉛直積算雲水量、雲粒有効半径の日変化の実態を明らかにし、変化のメカニズムを解明した。まず、静止衛星GOESデータを用いて雲特性の日変化を調べた。1997年7月のGOESデータに前述の雲解析手法(太陽反射法)を適用し、カリフォルニア沖の雲の様子を解析した。その結果、雲の光学的厚さは午前中から正午にかけて減少、その後夕方にかけて増加すること、一方雲粒有効半径は逆に午前中から正午にかけて増加、その後夕方にかけて減少することがわかった。雲の光学的厚さの日変化は一日の中で日射量の変化による大気加熱の時間変化などの要因に依るものと考えられる。また雲粒有効半径の日変化は粒子が時間とともに成長し、大きな粒子が重力沈降で落下し雲1頂付近には比較的小さな粒子が存在することも考えられる。また蒸発などの熱力学過程や衝突併合などの微物理過程など複雑な機構が関与しているであろう。太陽反射法では近赤外チャンネルによる水の吸収率の関係から雲頂付近の様子を見ているため、このような現象を捉えている可能性が示唆される。次に、NOAA/AVHRRデータを用いて、衛星の赤道通過時刻のずれを利用して日変化を調べた。全球平均した雲粒有効半径の変化は、昼から夕方になるにつれて海陸ともに粒径が小さくなっていることがわかった。この傾向は前節で述べたGOESデータを用いたカリフォルニア沖の雲の解析例とも一致する結果である。雲の日変化の地上観測については同じくカリフォルニア西部において行われた例があり、この研究では地上からマイクロ波放射計と日射計を用いて雲の光学的厚さと雲粒有効半径を推定しており、午後から夕方にかけて雲粒有効半径が徐々に減少していることがわかった。これも本研究と整合性のある結果である。
著者
池 道彦 山下 光雄 清 和成 藤田 正憲
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

ハイテク産業での利用を中心に消費量が年々増加しているレアメタルによる環境汚染と資源としての枯渇防止を目的として、レアメタル還元・蓄積作用を有する特殊微生物の検索、それらを利用したレアメタル除去・回収バイオプロセスの構築を試みた。初年度は、セレン酸を元素態セレンに還元できるBacillus sp.SF-1株を利用したセレン含有廃水処理リアクターを構築し、1〜2mMの高濃度でセレン酸を含有する廃水を1日程度で元素態セレンまで還元できること、簡易な凝集沈殿処理や限外ろ過によって完全な処理・回収できることを示した。2年目には、SF-1株がヒ酸還元能を有することに着目し、ヒ素汚染土壌浄化のバイオレメディエーションプロセス構築の可能性を検討した。SF-1株は、ヒ酸塩還元に多様な炭素源を利用できる上、厳密な嫌気条件を必要とせず、有用な特性を持つことを明らかにした。また、ヒ酸塩、セレン酸塩、硝酸塩それぞれによって独立に誘導される別個の還元酵素を有する可能性が示唆され、セレン酸塩や硝酸塩が共存しても、ヒ酸塩還元が阻害されないことを明らかにした。さらに、同株が多様な固相中のヒ酸塩を還元できることを実証した。最終年度には、ラボスケールの回分式スラリーリアクター実験を行い、高濃度の菌体植種が不要であること、ヒ素溶出量が攪拌速度の影響をほとんど受けないことを明らかにした。これより、スラリーリアクターより低コストでの処理ができる連続式土壌充填カラムリアクターによってモデルヒ素汚染土壌浄化試験を行った。流入培養液の水理学的滞留時間1日の運転で、リン酸塩溶液による土壌洗浄と組み合わせることで300mg-As/kg-soil程度の汚染土壌を土壌含有量基準以下まで浄化できた。これら一連の研究により、微生物還元・蓄積作用を利用したヒ素汚染浄化・回収技術構築の可能性を示すことができた。
著者
浅野 美礼
出版者
滋賀医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

難解と感じる一般ユーザのパソコンの使用感は,アプリケーションの使用方法や機器操作自体の難解さよりも,ファイルシステムなどのコンピュータ特有の空間の概念を表現しているインターフェースに対する違和感が相当すると考察し,ユーザが老人あるいは高齢者である場合に適用してその改善の余地を検討した。現実とファイルシステムとの空間の概念の相違を違和感なく吸収するのに貢献するツールは,機器と人間との相互の情報のやり取りを実現する対話型のインターフェースである。現在のインターフェースは,情報の入力側と出力側に分類すると,入力側としてキーボード・マウス・トラックボールや比較的最近のものとしてタッチスクリーン・音声入力といったデバイスがあり,出力側としてGUI・CUI・音・光・震動といった発信器などが既に普及しているものとしては存在する。アプリケーションの設計において,主として上肢の機能が低下した身体障害者・視力・聴力の低下した知覚障害者を使用するユーザとして想定したが,現在の主流であるGUIまたはCUIでは,低下したある能力に対処して搭載した機能は他の障害に対して対処できない。これは複数の機能の低下した高齢者においては,機能面でユーザのニーズを満足させる見込みがほとんどないという結果になった。一方で,高齢者にとっては可能な限り単純化された,操作に迷うことのないインターフェースが求められた。ここにも,複数の機能を搭載しより複数なインターフェースを備えるアプリケーションでは,高齢者にとって円滑に操作できる見込みが低下するという矛盾を抱えた。
著者
牧野 亮哉 高橋 哲郎 野嶋 栄一郎 柳本 成一 梅澤 章男
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

複数のモダリティからなる情報が同時的、あるいは継時的に提示される時、学習者はどの情報モダリティで与えられる情報を取捨選択するのかという問題、すなわち学習者の認知的な情報処理過程については、これまで組織的な研究がなされてこなかったテ-マである。本研究によって得られた主な成果を以下に記す。1.映像教材の情報処理過程、特に映像と音声の交互作用過程を調べるための方法論的検討を行った。映像教材が学習者に取込まれていくプロセスを、その入力段階において測定するためにアイカメラを利用することを試みた結果、アイカメラで測定される映像の見方が学習者の理解を反映することを示唆するものであった。2.映像と音声の時間的タイミングを実験的に操作して、音声が映像に先行する教材と後行する教材及び同時に提示される教材を作成した。先行と後行のどちらが理解を阻害するかを調べた結果、音声の後行がより理解を阻害するという知見が得られた。映像情報の理解が音声情報に大きく依存していることを示唆する結果である。3.比較的授業に近い場面におけるアプロ-チとして、LL教室のレスポンスアナライザを用いた測定システムを開発した。教材を提示しながら学習者に質問を行い、それに対する回答をアナライザとそれに接続したマイコンにより測定、収集、蓄積するシステムで、これにより時々刻々の学習者の変化を追跡することが可能になった。4.マイコンのグラフィックス機能を利用して、図学授業における説明図を板書図やOHP図に代わる形で提示することを目的として、そのCAI教材化を試みた。開発した教材内容は次のものである。(1)角錐・円錐・角柱・正多面体、線織面等の立体の投像及び直線と各種立体の交点、多面体同士の相貫、曲面体同士の相貫。(2)三角錐・円錐・傾斜三角柱・傾斜円柱・球・ねじれ面・傾斜六角柱等の各種立体の展開図及び測地線の作図。
著者
ANILIR SERKAN
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

IFデータベースは現段階で予想される多種多様な問題に対応しているが、本研究では特に下記の3分類(IF環境)に絞り、21世紀の国際的な社会問題である人口問題や難民問題、それから生まれた衛生管理の問題、また地球環境に対する負荷の低減、大規模災害に対する有効な改善策を見出すことを目指した。(1)Temporary-Infra: 被災地など、一時的にインフラが崩壊した場合大都市居住者のエネルギーや水の使用量は、経済発展のために、今後も増大の一途をたどる。こうした大都市で災害が起き、既存インフラが麻痺した場合でも、一定期間豊かな生活を維持できることを目的とする。(2)No-Infra:途上国における開発途上地域や未開地など、インフラが十分でない場合インフラの未整備地域の一般生活者、又は天災・人災リスクの高い地域の環境難民、経済難民、戦争難民及び極地的環境の居住者への生活の保障を目的とする。中国、中南米を始めに、インフラが十分でない国々との協力関係の構築を図ることを目的とする。(3)Self-Infra: 先進国における開発途上地域や未開地など、インフラを自ら選択できる場合現在の環境先進国の郊外住宅地の開発は消費型社会を基盤としているため、住宅の運用に伴う環境負荷や消費量増大に歯止めがかからない。そこで、資源循環型社会へ転換することで人々の資源節約意識が働き、自然とともに暮らす生活の質を高める都市や住宅開発、または古民家などのストックが持続可能な改修手法の有り方を目指している。平成19年度は前年の研究結果を基にした模型試作による実験とモニタリング。インフラフリー技術の個別要素を適用・実験可能な実物モデル縮小型模型の製作。一般企業への技術移転を前提としたモデル施設の紹介や技術提携、専門者との意見交換、課題の抽出。成果の「インフラフリー技術図書」としてとりまとめた。
著者
十河 宏行
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

人間の視覚において、眼球運動によって網膜像が変化しても安定した空間が知覚されることを「位置の恒常性」と呼ぶ。位置の恒常性を実現するためには、外眼筋の固有受容感覚や運動指令の遠心性コピーなどに基づいた眼球位置情報と、網膜からの視覚情報を適切に統合する必要がある。我々の日常生活において、位置の恒常性のメカニズムは正しく機能しているように感じられる。しかし、実際にはサッカードと呼ばれる随意的な眼球運動時に瞬間提示された物体が実際に提示された位置と異なる位置に知覚されるという錯視が起こることが知られている。では、人間の位置の恒常性のメカニズムが実際にはどのようなものであり、なぜ日常生活においてそのメカニズムが正しく機能するのだろうか。これらの疑問に関して、本研究ではサッカード実行直前に瞬間提示された図形がどのような形に知覚されるかを心理実験によって詳細に検証した。それらの実験の結果、「サッカード実行直前に瞬間提示された図形の形状知覚はサッカードに伴う位置の錯視の影響を受けない」という先行研究の結果がKanizsaの主観的輪郭図形の知覚については当てはまらないことが明らかになった。この結果より、サッカードに伴う位置の錯視はKanizsaの主観的輪郭図形の知覚に時間的に先行することが示唆された。また、Kanizsaの主観的輪郭図形の知覚を含む高次の形状知覚処理過程は、網膜からの視覚情報をそのまま利用しているのではなく、眼球運動情報と統合された後の視覚情報を用いていることが示唆された。
著者
伊東 祐郎 酒井 たか子 三枝 令子 谷部 弘子 村上 京子 中村 洋一
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究の特色と意義本研究は、テスト開発過程に不可欠なテスト理論(「古典的テスト理論」と「項目応答理論」)を導入し、統計的分析を加えることによって、これまで日本では認識の低かった試験問題の精度を向上させられる実証的研究を行い、項目プール実現化へ向けての基盤研究を行った。また、テスト開発における項目プール化は、日本ではほとんどそのための研究が行われておらず、本研究を通して得られた知見は、今後のテスト開発の新たな方法として、具体的な形で多くの大学等で応用できるものとなった。本研究を通して開発したシステムは、次のような5つの機能を持つものである。(1)蓄積機能:作成した問題項目を、コンピュータ内に蓄積し、保存することができる。また、問題項目のほかに、過去の試験結果のデータや項目分析結果も蓄積できるので、将来の問題項目作成を効率よく行うことができる。(2)抽出機能:出題領域や評価対象領域、また困難度などの条件に基づき、必要な数の項目を抽出して試験問題を構成・作成することができる。(3)組み替え機能:抽出条件が同じでも、設問の組み合わせや選択肢の組み合わせが可能となるので、異なる試験問題を作成することができる。(4)加工機能:蓄積・保管されている試験や問題項目を、測定目的に応じて編集・加工・削除することができる。また、既に蓄積されている項目を基礎に、全く新しい問題項目を作成することができる。(5)製版機能:抽出された問題項目を、パソコン上でレイアウト・編集ができる。
著者
有光 敏彦 JIZBA Petr
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

特に力を入れてこの1年研究したものは,レニー情報エントロピーの物理的な基礎付けとそれに関連する重要な問題である[1-3]。最近盛んに議論されているレニー統計に関わる問題に,種々の定量的な観点を提供した.論文[1]では,観測可能性の問題とそれと密接に関わっているレニー・エントロピー(RE)の安定性の議論を行った。REを観測不可能としてしまう条件(レッシェの観測可能条件)はあまりに狭すぎ,実際,多くの標準的な物理量(例えば,感受率,相関長,自由エネルギー)がレッシェ条件を満たさないことになってしまうことを示した。その上で,「これらの臨界点を持つ物理量は,状態空間中の臨界点ではそめ寄与の測度がゼロである」とする,より直感的な観測可能概念を提供した。REの場合,状態空間はすべての可能な統計で構成された空間であり,その測度はバータチャリヤ測度である。臨界点(つまり,分布そのもの)が(超)希少事象に対応し,実際その測度がゼロであることを証明した。「ハゲドロン相転移が自然界に存在するか」,また「ハゲドロン臨界温度が現実的(観測可能)な量か」という現在盛んに議論されている問題にとって,REの観測可能性はたいへん本賛的で重要なものである。論文[2,3]では,繰込みの問題を扱った。そこでは,独立な情報の加法性と平均の準線形性を満たすミニマル繰込みの処方を堤供した。得られたREは,発散に関わるカルバック・リブラー測度(ネゲントロピーとも呼ばれる)そのものであることを直接示すことができた。エントロピー指数αの物理的な意味を知るために,マルティフラクタル構造を持つ系を調べた。このような系はたいへん重要で,しかも非常に多数の例が存在する。乱流,パーコレーション,集団拡散系,DNA列,財政,ストリング理論などがその例である。ヴィルダー・スティルテュス再構成理論を利用して,(マルティ)フラクタル系の「完全」な情報を得るためには,すべてのオーダーのREを知る必夢があることを示した。さらに,離散的事象や単純な測度空間(例えば,D^d)に対しては,シャノン・エントロピーの寄与が他のREの寄与を凌駕していることを証明した。マルティフラクタル上でシャノン・エントロピーを最大化することは,マルティフラクタル構造を陽に引き合いに出さずにREを直接最大化するとこと同等であることを,最大エントロピー(MaxEnt)の観点から示すことにも成功した。
著者
新矢 恭子
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1997年以来、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスは東南アジアを中心に発生し続けている。160人を超える人々がこのウイルスによって感染・死亡しているが、人間同士の感染の発生は稀である。この事実は、新型ウイルス発生・世界流行の可能性に関与する基本的な問題を提起している。鳥由来のH5N1ウイルスは、鳥型のウイルスレセプターを欠くと思われる人間に、なぜ、効率的に感染・増殖が可能なのであろうか?また、人間同士での感染を制限する分子学上の障壁は何であろうか?私達は、前年度に、高病原性鳥インフルエンザウイルス感染患者から分離された1つのウイルス株が、鳥型・人型の両方のシアル酸(インフルエンザウイルスレセプター)を認識する性質を有することを報告すると同時に、宿主側要因として、人間の呼吸器組織に分布するシアル酸の性状を報告した。本年度、更に、1918年に流行したインフルエンザウイルス(スペイン風邪)の生物学的性状の特徴づけを行い、病原性の獲得機構を解明した。また、ウイルスRNA合成酵素(RNAポリメラーゼ)における点変異の、ヒト細胞での増殖における生物学的意義、同変異に感受性を示す哺乳動物を用いた生物学的意義付けを行った。つまり、この変異はヒトを含む感受性細胞においてウイルスポリメラーゼ活性を上昇させ、ウイルスポリメラーゼ活性の上昇は感染個体内での一次増殖部位におけるウイルス粒子生産量を増加させる。一次増殖部位におけるウイルス粒子生産量の増加は他の感受性組織への二次的な播種の効率を増加させることが判明した。私達の研究成果はいずれも、今後の鳥インフルエンザウイルスの病理発生機序解明の主軸となる結果を提示している。
著者
澤村 誠 宗林 孝明
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

貝毒(下痢性)を惹き起こすオカダ酸を、抗原抗体反応を利用し、非標識で動作するバイオセンサで検出した。また、予備実験として同センサによりがんマーカーのCEA(癌胎児性抗原)を検出した。・バイオセンサの作製:平成17年度に作成したトランジスタ型センサから操作が容易でより安定して動作するダイオード型センサを作製した(特許出願済)。・検出法:センサのシリコン基板表面の酸化膜上に微細な電極を作製し反応場とし、抗体を固定化(物理吸着)し、ターゲットの抗原を滴下する。抗原抗体反応進行に伴い、ダイオードの電流・電圧特性を比較すると、反応の進行レベルに加え、動的特性がターゲットの濃度に依存して規則的に変化する。標準サンプルから検量線を作成すればターゲットを定量することができる。・効果:本研究は貝毒の抗原抗体反応の検出を非標識で行った最初の研究と思われる(従来、検出にはマウステストが行われているが、近年ELISA法による実験の成功例がある)。オカダ酸のような微小な分子が非標識で検出されたことは重要な発見である。尚、使用したバイオセンサは構造が簡素で、低電圧で安定動作し、操作が容易である。他の抗原抗体反応(CEA検出)にも応用できるが、可能性として酵素反応やDNAハイブリダイゼーションにも用いることができ、応用範囲が広い。・新発見:反応場上の抗原と抗体が形成する薄膜の動的電気伝導特性が変化することから、反応に伴い抗体の分子構造(水を含む)の大きな変化(conformal transition)を伴う電子状態の変化があることが予想される。このため、今後、細胞やウイルスなどの大型ターゲットの電子状態計測や細胞シリコン融合素子への応用が期待される。課題:(1)検出感度を他の検出法と比較すること(サンドイッチ法(ELISA)で検出できず)。(2)抗原抗体反応に要する時間の短縮。(3)夾雑物のある環境における検出実験。