著者
村松 泰子 河野 銀子 藤原 千賀 高橋 道子 高平 小百合 中澤 智恵
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

学校教育におけるジェンダー・バイアスに関し、中学生の理科という教科の学習を取り上げ、興味や関心、態度のジェンダー差の有無、その背景要因を明らかにすることを目的とした実証的研究を行った。理科と自然・科学への関心や態度に関する質問紙調査を、初年度は中学1年生に、2年度は2年生となったほぼ同一の対象に実施した。中2調査は、中1調査と同質問と新質問で構成した。調査対象は中1調査が全国各地の公立中学校9校961名、中2調査は同様の8校869名である。中1調査は、学校特性差を見るため東京都と近県の国公立・私立中学計22校でも実施した。第3年度には、調査校の教員インタビュー調査を行った。データ分析の軸は、男女差、理科の好き嫌いによる違い、中1から中2への変化、理科のおもしろさの変化のしかたによる違い、成績の自己評価ランクによる違い、学校特性(入試の有無、共学と女子校)による違いなどである。主な結果は次のとおりである。(1)科学的現象への関心は、内容により女子が高いもの、男子が高いものがある。(2)理科への関心は、女子は生物的内容、男子は物理的内容で高く、学習内容の理解度は数学的センスを要する単元ほど女子が低い。(3)理科の好き嫌いや学ぶ意味のとらえ方の男女差は中1から中2にかけて拡大し、とくに女子は理科嫌いの傾向が強まる。(4)理科に対する態度や信念の男女差は、全般的には中1から中2にかけて減少傾向にあるが、女子の方が理科に対し否定的な学習態度を示す。(5)理科の実験時の中心的役割は男子、準備・片づけや記録担当は女子が多い。(6)得意・苦手な科目は、英語を除きジェンダー化しており、また理科の得意・苦手は男子のほうが全般的な成績の自己評価との関係が強い。(7)女子校の生徒は実験や理科に積極的だが、意識としては理科は男子の教科とする傾向が強い。
著者
清水 透 黒河 博文 田中 敦成 五十嵐 城太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

[1]ヘム制御キナーゼ(HRI)、及びヘム結合時計遺伝子制御因子のNOやヘムセンシングの分子機構を解明し、水銀が、このヘム-蛋白質結合を破壊することを示した。[2]メチル水銀で誘起されたマウスの日内活動の異常性は、チオレート化合物と血液脳関門透過化合物であるα-リポ酸を同時に投与した場合のみ、修復された。[3]ヘム受容体を保持するガスセンサー酵素のガス結合部位の同定、及びガス結合による活性上昇の分子機構を明らかにした。
著者
若狭 智嗣
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

相対論的重イオン衝突によりクオーク・グルーオン・プラズマ(QGP)が形成されるモデルにおいて、QGPにおける相転移温度では核子核子間で交換される中間子の質量が減少する事が示唆されている。中間エネルギーの(P^^→,P^^→1))反応等の偏極観測量の測定から、通常の核物質密度でも前駆現象(中間子の質量変化)の観測が可能との指摘がある。実験的には、核反応及び核構造の取扱いの不定性から、はっきりとした結論を得るに至っていない。本研究では、構造の不定性の小さい^<16>O(P^^→,P^^→1)^<16>O(0^-,T=0,1)反応の偏極観測量の測定を目指した。運動量分散整合の手法を適用し、更にビームのエミッタンスを小さくする事により、最終的にエネルギー分解能40keVを達成し、低バックグラウンド下での0^-状態の分離・測定に成功した。この0^+→0^-遷移は、パイ中間子の量子数0^-と同じ量子数変化であり、純粋にパイ中間子起因のスピン縦モードが励起される。引力のパイ中間子交換力により、スピン縦モードに於いてはその強度が増大する事が示唆されており、パイ中間子凝縮の前駆現象や、核内でのパイ中間子密度の増大といった現象とも密接にかかわっている。今回得られた0^-状態の断面積の角度分布を、理論計算と比較した結果、・無限系の核物質に対する計算で示唆される。高運動量移行領域での異常な増大(前駆現象)は認められない・原子核の有限性を考慮した計算とは無矛盾との知見を得た。
著者
柳本 高秀
出版者
北海道旭川北高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、小学生・中学生・高校生の基礎的な天体運動の理解に関する理解度を調査し、また、これまでに行った授業実践の結果を受け、空間概念の形成に関係する単元として、小学校では「月の満ち欠け」、中学校では「金星の満ち欠け」、高校では「惑星の視運動」に関する系統的な学習プログラムを開発することである。研究方法では、小、中学生、高校生に対する質問紙調査、面接調査を行った。児童・生徒が持つ、「月の満ち欠け」、「金星の満ち欠け」、「惑星の視運動」に対する理解の特質を、これらの調査から明らかにした。これまでの授業実践の評価に基づき、空間概念を形成する具体的内容として、アメリカやイギリスの理科カリキュラムに見られる「観察活動」、「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」を導入した授業を開発、試行した。授業後、その評価を行い、児童・生徒の空間概念の変容について調査した。中・高校生の食現象に関する調査からは、多くの生徒に、「日食」現象を「月食」現象と混同している生徒が多数見られた。また、食現象を立体的に捉えた正答が非常に少ない実態が明らかとなった。空間概念を形成する具体的内容である「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」などを導入した授業として、小学校では月の満ち欠け現象に関して「2種類のかげ(影、陰)」に着目した授業実践を行った。2種類のかげの内容を中心に、観察活動やモデル化などを密接に関連させた授業展開を行った結果、3割程度だった月の満ち欠けに関する理解度が、授業後には、約80%へと大幅に増加した。加えて、中・高校生への「金星の満ち欠け」・「惑星の視運動」に関する授業実践でも、物体によってできる影と物体そのものにできている陰の2種類のかげの区別や、立体的なモデル化を密接に関連づけることで、多くの生徒に視点移動能力の発達傾向が見られ、空間認識能力の高まりが確認できた。
著者
斉藤 和義 河野 公俊 田中 良哉
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

膠原病の組織リモデリングにおける上皮間葉および血管内皮間葉転換の病態形成への関与を検討した。膠原病リウマチ性疾患の組織においては、線維化・血管リモデリングの進行を認めている部位にはmyofibroblastの増生が認められ、これらのmyofibroblastおよび血管内皮細胞上にはWnt10Aが強く発現しており、組織における線維化病態に関与している可能性が示唆された。また、腎間質由来線維芽細胞へのWnt10A強制発現は、ファイブロネクチン産生を増強し、腎障害に関与することが示唆された。以上から、Wnt10Aを介する間葉転換の制御が膠原病における組織リモデリングの治療標的となることが示唆された。
著者
星野 卓二 高橋 英樹 池田 博 勝山 輝夫
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

カヤツリグサ科スゲ属植物213種の核および葉緑体遺伝子を解析し、現在広く採用されている形態に基づく分類体系と比較した。日本から韓国および中国東北部に分布するタガネソウ節が祖先型であり、属または亜属に分類できることが明らかになった。スゲ属植物の染色体は、異数的に染色体数が増加する方向に進化したことが明らかになった。また、節の分類が分子系統から強く支持されたものと、分類体系を見直す必要がある節が明らかになり、新しい分類体系が提案された。
著者
浪岡 新太郎
出版者
立教大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

本年度は、フランスにおけるマグレブ系移民新世代イスラーム結社の全国規模での調査を行い、これまでリヨン中心に行ってきたフィールド・ワークの修了を目指した。具体的には、リヨンのムスリム若者連合、およびリヨン大都市圏ムスリム結社連合の行政委員会メンバーの全てとインタビューを終えた。このインタビューを通じて、一般的にメディアなどで、「原理主義」、「反統合」と表象される結社連合の活動を明らかにし、さらに、その活動を支える多様な活動家の考える多義的な市民性、統合概念を明らかにした。さらに、フランス・ムスリム結社連合を構成する、北部ムスリム連合(リール)、パリ・ムスリム連合(パリ)、南部ムスリム連合(モンペリエ)の各組織代表者とのインタビュー、彼らからの資料収集を通じて、ネット・ワークとして構成されているために全体像が把握しにくいフランス・ムスリム連合の構成・機能を明らかにした。リヨンのムスリム若者連合については、「新しい市民権」との観点から論文を日本平和学会三〇周年記念『平和学シリーズ』第三巻に発表した。フィールド・ワークで得られた成果は、特に、国籍から切り離された市民権概念としての「新しい市民権」の観点から解釈され、しばしば市民概念と対立されると表象されるムスリム・アイデンティティが、市民成立に大きな役割を果たしていることが明らかにされた。
著者
井上 芳保
出版者
札幌学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

新自由主義的な経済政策の下で健康不安意識が煽られており、過剰な医療行為が多々発生していることが確認された。日本では医師をはじめとする医療の専門家集団の中からこの構造を批判する声はなかなか出てこない。というのは専門家集団自体が一つのムラ社会となっているからである。この構造を変えていかねばならない。不要な検査、薬の出し過ぎなどを吟味し、批判できるよう、普通の市民の医療に関するリテラシーを高める必要がある。
著者
亀田 貴雄 川村 彰 高橋 修平 本山 秀明 古川 晶雄
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

南極氷床の沿岸域から内陸 1000kmに位置するドームふじ基地までの雪面の起伏状況を雪上車および橇に搭載した3次元加速度計を用いて定量化し,その分布の特徴を明らかにした。ドームふじ基地では雪尺を用いた積雪堆積量観測を継続し, 2008年以,年間積雪堆積量は 1995~2006年と比べると変動が大きくなったことを見いだした。また, 2003年 11月 14日未明にドームふじ基地で起こった皆既日食中の気象観測データの解析を進め,急変する日射量の変動による気温と雪温の変化の状況を明らかにした。
著者
川上 紳一 小嶋 智 小井土 由光
出版者
岐阜大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

岐阜大学附属中学校と長良中学校の生徒を対象に、天体望遠鏡(スピカ)による金星の満ち欠けの観察を取り入れた授業を実践した。この間、岐阜大学では天気の良い日は可能な限り金星の観察を行い、得られた画像をその日のうちにホームページで公開し、生徒たちの観測への動機づけや観察結果の確認のため使用した。まとめの授業では、継続的な観察結果を踏まえ、モデルによって観察事実が合理的に説明できるか検証した。また、宵の明星の観察を基に、明けの明星になった金星の姿を予想し、さらなる観察で確認を行った。今回の実践では内合通過前後で観察を行うことで、有意義な授業を展開できた。一方、月の満ち欠けについては、岐阜大学附属小学校4年生を対象に、天体望遠鏡(スピカ)と双眼鏡による月の観察を行った。天体望遠鏡の視野の中に月を導入すること、望遠鏡のピント合わせなど、小学4年生には困難な課題を提示したが、多くの子どもが観察に成功した。とりわけ、せっかく月が見えるようになったのにすぐ月が視野からはずれることに気づいた子があり、授業での交流で月が動いているかどうかが問題となった。その結果、次の授業までにもう一度観察して確かめる課題へと発展した。結局、多くの子どもが月が東から西へ動いていること、日ごとに東へ移動すること、月の地形やクレーターの存在に気がついた。岐阜大学のホームページでは、月の満ち欠け、地形やクレーターを紹介したホームページを作成し、興味をいだいた子どもたちにより深い学習へと発展できるようにした。天体望遠鏡による月の観察を取り入れた指導法については、今後も授業で実践し、改良していく必要がある。このほか、小中学校で学習する理科(特に2分野)の学習や高等学校「理科総合B」の学習を支援する教材をホームページに多数掲載した。
著者
有川 正俊 相良 毅
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

位置をキーとして検索されるべきコンイテンツが質・量ともに不十分であることが問題となっている.そこで,われわれはこのような位置をキーとして管理される情報を「空間コンテンツ」と呼び,各種情報源から空間コンテンツを獲得・管理する手法の開発を行った.本研究では,(1)Web文書と(2)映像を対象に,位置情報を利用したコンテンツの獲得・抽出・管理・統合・提供の手法およびプロトタイプシステムを開発した.以下では,2つの課題の成果をそれぞれ説明する.1.Web文書からの空間コンテンツ獲得手法[目的]・特定の地域・特定の業種に関するページを短時間で収集する・収集したページから,エラー・情報の少ないものをできる限り除去する[開発した手法]・タウンページの店名・電話番号・住所をキーワードとして利用した検索精度の向上・後処理で住所一致を確認し,同名他店を除去・複数の店舗情報が含まれるページのブロック分割・揚所とキーワードによる検索システムを開発・一致度・ブロックに含まれる文字数による順位付け2.高精度な空間情報付き写真データの管理手法[目的]・空間メタデータを持つ写真データ(空間情報付き写真)の管理手法の体系化[開発した手法]・写真データが3次元実空間から切り取るボリューム(Field of View)を決定するパラメータ(視点,撮影方向,画角)を空間メタデータとて付与し,各過程(空間索引/検索手順/ユーザインタフェース)において適切な形状で扱う枠組みの開発・ある位置を見る写真/ある位置から見る写真/今見ている位置を横から見る写真,等の検索機能・各場所がどれだけ多くの写真に写されているのかという密度の視覚化機能・3次元位置情報を持った文字情報(店舗名や建物名等)の写真上への動的な重ね合わせ機能・空間メタデータを持たない写真と地図上とで対応する数点をクリックすることで,空間メタデータ(視点と撮影方向)を作成するツールの実装
著者
橋本 創一 伊藤 良子 菅野 敦 大伴 潔 林 安紀子 池田 一成
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

発達障害児の就学を支援するためのシステム化されたプログラムはまだ少ない。この研究では、発達障害児の就学における支援ニーズを明らかにするために、発達障害児の親と発達障害児への支援の専門家たちに対して調査をおこなった.さらに、調査によって得られた知見と文献研究から発達障害児の就学のための支援プログラムを作成した。そして、子どもたちに対してそのプログラムを実施し、効果を調べた。その結果、コミュニケーション支援を中心としたグループ指導の必要性が示唆された。一方で、一人一人のニーズに応じた個別支援の必要性が明らかになった。加えて、発達障害児の個別の支援ニーズを評価するための支援ツールを活用する必要がある。それにより、個別の発達段階や特性に応じた就学支援が可能になると考えられる。
著者
越村 俊一
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

巨大地震災害発生直後の津波災害インパクトの即時的開示を目標とした広域被害把握技術の体系を構築した.広域被害把握までの流れは,数値解析と津波被害関数による浸水域内建物棟数および被害棟数の推定,衛星画像解析による津波浸水状況の把握,浸水域内建物棟数の推計,航空写真の判読による建物被害の把握,航空写真・衛星画像による瓦礫量の把握という,4つの技術で構成する.本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震津波災害を事例として上記研究の実証を行い,その有効性と課題を明らかにすることができた.
著者
野村 幸弘
出版者
岐阜大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

ミケランジェロの「扮装像」の表現を受け継いだのが、カラヴァッジョである。カラヴァッジョは大きく分けて、十代と思われる少年、ひげを生やした成人男性として、その初期作品から登場する。《病めるバッカス》、《果物籠を持つ少年》、《聖フランチェスコの聖痕拝受》である。《聖痕拝受》は、ミケランジェロの《サウロの回心》を下敷きにし、《ダヴィデとゴリアテ》もミケランジェロの《最後の審判》における聖バルトロメオの表現を意識して描かれている。カラヴァッジョは、これらの作品で、ミケランジェロの扮装表現を、官能的に解釈し直したり、描かれた人物の視線を通して、交感、感情移入の表現を行い、絵画の心理的表現を実現している。そうした心理的、感情的、主観的な扮装表現を推し進めたのが、アルテミシア・ジェンティレスキである。《ユーディットとホロフェルネス》では、画家自らが、絵の中のいわば脇役に甘んじず、主役として積極的に物語に参加する。この作品で彼女はアブラに扮し、ホロフェルネスの殺害に関与する。それが彼女の実人生と深い関わりを持っているのである。ルネサンス以降、絵画表現が、広く宗教や社会、文化との関係というよりも、むしろ画家個人の性格や人間関係、セクシュアリティ、あるいは実生活上のプライベートな出来事と密接な関係を持ち始めることが、扮装論の視点から見えてくる。扮装は、芸術家の個性、あるいは自意識に関わる問題である。しかし、自作の中で扮装する画家が、作品の言わば「造物主」でありながら、かならずしもそこで神のように振る舞うわけではない点が興味深い。そこには複雑な心理過程や屈折、韜晦があって、ストレートな自己表現や全能感に満ち溢れた表現となっているわけではない。ルネサンスの画家は外界の目に見える世界を正確に認識するために、絵画を描き始め、それはやがて科学的な物の見方へと受け継がれていったわけだが、それと同時に、自己の内面という目に見えない世界を認識しようという欲求が芽生え始めていたのである。
著者
岩田 茂樹 武永 康彦 笠井 琢美 伊藤 大雄
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、ゲーム情報学全般にわたる研究のうち、(1) And-Or 木のコンピュータによる探索、と (2) ゲームやパズルの複雑さに関する研究を行う、ことを目的とする。And-Or 木(ゲーム木)のコンピュータによる探索では通常、評価関数が用いられる。ゲーム木の自然なモデルを定め、ゲーム木のある深さにおいて深さ優先探索により探索する局面数を考える。完全な評価関数に確率 p(0<p<1) で近い評価関数を用いたときは、完全な評価関数と比べて、ゲーム木の深さの多項式倍の数の局面数を探索することを示した。ゲームやパズルの複雑さの研究では、いくつかのゲーム・パズルの計算複雑さを明らかにした。
著者
池田 研介 清水 寧 中田 俊隆 篠原 晋 山田 弘明
出版者
立命館大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

<高速拡散過程の研究:>本年度は力の性質がはっきりしているアルカリハライド(AH)クラスターの高速混晶化過程の研究に一応のメドをつけた。AHクラスターでは表面空孔配列が異なる構造異性体に加え、体積内で空孔をもつ構造異性体(高位の異性体)がクラスターでは比較的低いエネルギーをもって安定に存在する。これらの異性体を巡る遍歴現象が動的に発生する。特に高位の異性体を巡る過程で混晶化が誘発される事が判明した。混入の活性化エネルギーが評価され1eV程度である事が分かった。この値はバルク中の拡散過程の2eVに比べその半分程度である。常温では混入速度が少なくとも$10^{12}$倍程度高速化する事が分かった。我々が関心をもつ、メソタイムスケールダイナミクスの観点からすると活性化エネルギーを与える、遷移状態とそれを乗り越える力学過程の解明が今後の大きな課題である。同時にanion-cation半径が顕著に異なるNaIの様なクラスターでは<動的ガラス状態>が現れる事が判明した。一方、数十個程度の超微小AHクラスターでは平衡状態であるにも拘わらず温度勾配があらわれる事。それが角運動量の保存の為である事も判明した。<カオス的トンネル効果の研究:>単純で且つトンネル効果をモデル化できる系としてHenon系をトンネルイオン化の基礎モデルに据えトンネルイオン化過程をカオスが理想的状態になく混合相空間として回転領域と混在する場合に解明してゆく作業がかなり進行した。重要な結果はトンネル効果に主要な寄与をもたらすLaputa chainに階層構造が存在し、しかも高次のchain構造が混合相空間でのカオス的トンネル効果に本質的役割を果たす事が解明された事である。理想的なカオス的トンネル効果では高次構造は効かず、低次構造のみでトンネルが良く近似できた事と大いに異なる。高次構造の役割は回転領域がカオス領域に占める割合に比べ相対的におおきくなる程重要になってくると考えられる。なお、本研究課題に対し、2005年8月25日-9月1日立命館大学に於いて国際研究集会{bf Complexified Dynamics, Tunnelling and Chaos}を挙行した。
著者
川嶋 かほる
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

さまざまな調理済み食品、半調理済み食品が、外食や中食などのかたちで日常食の一端として広く使われるようになっている。これらの家庭外で調理された食品については、栄養バランスの悪さや添加物の多使用とともに、呈味の画一化と濃厚化が問題点として指摘されている。本研究は、家庭外で調理された食品の呈味の実態を化学分析を通して明らかにする一方、これら食品の利用の実態と意識を調査紙調査により、また嗜好・味覚を官能検査によって調査し、これらの実態を把握するとともに、食生活のありかたと味覚・嗜好の現状の関連をみることを目的とするものである。1:調理ずみ食品の呈味市販調理ずみ食品のうち、主食類、主菜、副菜、汁ものについて、手作り品と対比しながら、その呈味の特徴をみるために、塩分、糖、グルタミン酸、有機酸の分析を行なった。一般に市販の調理済み食品および半調理済み食品では、手つくり品に比べてはるかに高い塩分含量を示し、グルタミン酸含量も高かった。糖は、含量の変動が大きかったが、市販品で高い傾向を示した。2:利用意識市販調理ずみ食品は、その利便性で多く利用されていた。味に対しては濃いと考える人が多く、手作りのもののほうを好むとする回答が多かった。3:人々の嗜好一般にうす味より濃い味を嗜好する者が多かった。手つくり品との対比の官能検査では、調理ずみ食品より手つくり品の塩分を高く感じる者が多かった。意識調査の結果とはことなり、圧倒的に調理ずみ食品が好まれた。
著者
瀧本 裕士
出版者
富山県立大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

富山県諏訪川用排水地区の洪水調整池は地下水涵養にも資する浸透型に計画されている.しかし,浸透型洪水調整池は全国的にも例が無く,その構造や維持管理手法については未解明である.本研究では浸透メカニズムの定量的な解明を目的として,様々な実験を通じて調整池の浸透機能を評価した.本研究で明らかになった知見を以下に示す.1.カラム実験による目詰まりと浸透量の関係濁質と浸透量の関係について,調整池を繰り返し使用する場合には,濁質の累積によって目詰まりが生じ浸透機能が低下する傾向にあった.特に,基礎地盤がむき出しの場合には,累積濁水投入量が約2000g/m2になると浸透機能が60%に低下することがわかった.基礎地盤に侵入した濁質は除去が困難なことからフィルターを設置するなどの対策が必要である.2.フィルター材の性能評価現地砂をフィルター材として設置した実験では,浸透機能が60%に低下するのに要した累積濁水投入量は約4000g/m2であった.また濁質はフィルター材の上部で捉えられるので,表層部の入れ替えで浸透効果を復帰させることも可能である。したがって,フィルター材の採用はメンテナンスを考える上でも効果的であることがわかった.3.現地湛水実証試験の結果処理区として諏訪川水系内の砺波西中(中流部),神島(上流部)および対照区として太郎丸の3調整池において湛水実証試験を行った.その結果,いずれの調整池も気泡の出現による不飽和浸透の現象がみられた。これは飽和に比べ浸透量が低下する要因となる.また,土壌水分計を設置して,深度方向の水分変化を調べ,浸透解析も行った.その結果,砺波西中では,神島,太郎丸と大きく異なる浸透挙動が確認された.土層の差異もあるが,特に調整池底面から地下水面までの距離が浸透挙動に大きく影響していることがわかった.調整池の運用,管理では地下水位の変動を考慮し,設置場所に応じた対策が必要である
著者
宮崎 誠一 東 清一郎 村上 秀樹
出版者
広島大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

自己組織化形成したシリコン量子ドット上にNi薄膜を形成後、水素プラズマ処理を施してNiシリサイドナノドットを形成すると共に、このNiシリサイドナノドットが極薄シリコン酸化膜を挟んでシリコン量子ドット上に配置したハイブリッドナノドット構造を作成し、フローティングゲートメモリへの応用研究を推進した。ハイブリッドナノドットMOSデバイスにおいて、パルスゲートバイアス印加により、電荷注入放出過程を調べた結果、シリコンナノドットの離散化したエネルギ-準位を反映した多段階の電荷注入・放出特性が得られると共に、Niシリサイドの深いポテンシャル井戸を反映した、良好な電荷保持特性が得られた。
著者
今井 悦子
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

嚥下補助食品は、高齢者施設では介護職員等が経験と勘によって使用していた。嚥下補助食品を添加した食べ物の嚥下しやすさを客観的に評価するために、嚥下過程を測定することのできる生体計測法(嚥下筋の表面筋電図、咽頭部の超音波エコー)を用いて検討したところ、食べ物の嚥下しやすさを評価するのは難しいことが示唆された。嚥下補助食品の利便性を高めるために、食べ物の嚥下しやすさを客観的に評価することのできる測定法のさらなる検討が必要と考える。