著者
大塚 康二 桂 一憲 三谷 尚弘 野添 大輔 田上 和麿 前川 絢子 菅原 登 加賀 敬子 平野 拓司
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.153-158, 2023 (Released:2023-05-25)
参考文献数
15

悪性腫瘍に伴う悪性消化管閉塞(malignancy bowel obstruction: MBO)に対する治療としては,手術療法,消化管ステント留置,経鼻胃管や経皮内視鏡的胃瘻造設術,薬物療法などが知られている.酢酸オクトレオチドなどの薬物治療を行う場合は経口摂取ができなくなり,かつ持続点滴静注が必要となることから,患者のQuality of Life(QOL)を著しく低下させる.今回外科および緩和医療科を含めた多職種カンファレンスを行い慎重に検討を重ね,酢酸オクトレオチド持続投与中で低栄養のMBOの患者に対し審査腹腔鏡手術を行い,MBOの重症度や進行状況を把握することで緩和手術として小腸瘻造設術を選択し施行することができた.その結果,一時的に経口摂取が可能となり患者のQOLを改善させることができた.
著者
飯田 龍也 篠田 肇 渡邉 力也
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.115-118, 2023 (Released:2023-05-25)
参考文献数
10

感染症診断に汎用される抗原検査やPCR検査には感度や時間にトレードオフが存在する.著者らは,これらを両立する新たな核酸診断技術:SATORI法を開発した.CRISPR-Casと1分子定量法を組合せ,~9分の短時間で6.5 aMの高感度を実現した.社会実装を目指した技術/装置開発の現状や展望を紹介する.
著者
末廣 栄一 藤山 雄一 杉本 至健 五島 久陽 篠山 瑞也 小泉 博靖 石原 秀行 野村 貞宏 鈴木 倫保
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.178-184, 2016 (Released:2017-03-25)
参考文献数
17
被引用文献数
4 2

One Week Study 2012 (日本頭部外傷データバンク) によると, 軽症・中等症頭部外傷は入院を要する頭部外傷の86%を占め, 頻繁に遭遇する病態である. 中等症頭部外傷においては15%, 軽症頭部外傷においては7.6%の割合で重症化し, 外科的治療が必要となっており, 軽視せずに慎重な判断や対応が重要である. 入院後は, 重症化の危険因子を踏まえたうえで, 積極的な経過観察が重要となる. 頭蓋内病変の有無や重症化の予測ツールとしてS-100B proteinやD-dimerなどの血液biomarkerが注目を浴びており, 自験例も含めて紹介する. 軽症・中等症頭部外傷においては, “重症化” への対応と同様に, 高次脳機能障害や脳震盪後症候群などの社会的問題への対応も重要である. 今後, 脳神経外科医が真摯に取り組むべき分野である.
著者
和田 清 森 誠一 遠藤 協一 藤井 孝文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.397-402, 2016 (Released:2022-04-01)
参考文献数
10

This study has analyzed factors for recovery of the fishway by cluster analysis and main component analysis using check-sheet data of fishway in Gifu prefecture. Directionality to connect with a repair method of construction using the result was examined. It is pointed out that the function of the fishway decreases, when the item of the damage of the structure, stream route, step of the flow, partial scour in a riverbed are one. In Ono fishway of the Yoshida River, the need of continuous flow quantity monitoring to connect it with the life cycle of fish was shown. All the fishways that an evaluation of the Yoshida River has worse are erosion control dams. The function of the fishway decreases by complex factors such as the sedimentation of riverbed material and the drifting wood. It is clarified that the function of Futamate fishway was restored by simple repair, and the improvement of the maintenance system.
著者
岡崎 慎治
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.64-72, 2011 (Released:2018-08-18)
著者
中里 理子 Michiko Nakazato
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.131-143, 2009-02

徳田秋声の『足迹』『黴』に見られるオノマトペの特徴について、『新世帯』、島崎藤村の『家(上)』、田山花袋の『生』と比較しながら考察した。各作品からオノマトペを抽出し、1)心情を表すオノマトペ、2)笑いを表すオノマトペ、3)「見る」行為を表すオノマトペ、4)「湿度」に関わるオノマトペ、5)その他の特徴的なオノマトペという五つの観点から検討を加えた。特徴的なオノマトペに関しては、二作品に多用されていた静寂を表すオノマトペ、偶発的動作を表すオノマトペ、所在なく歩く行為を表すオノマトペ、女性主人公に使われた独特なオノマトペを取り上げた。『足迹』『黴』は、女性主人公の描写や作品の情景描写において、オノマトペにも共通性が見られた。また、『新世帯』も含めて、秋声が人物描写においても情景描写においても、オノマトペを多用して巧みに表現していることが見て取れた。
著者
成相 裕子
出版者
島根大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

動脈硬化の発症あるいはその経過に深く関連する血管平滑筋細胞の増殖は、粥状動脈硬化巣(プラーク)の形成における重要な因子の一つである。PDGFはプラーク形成部位の活性化されたマクロファージ、平滑筋細胞、内皮細胞、あるいは血小板より産生放出され、血管平滑筋細胞の内膜への遊走、増殖を促進し、その結果内膜肥厚を引き起こし、動脈硬化症を引き起こすと考えられている。エピガロカテキンガレート(EGCG)は緑茶に含まれるポリフェノールで、近年、心臓疾患を引き起こす動脈硬化の発症の抑制や高血圧予防、体脂肪燃焼作用について効果があると研究されている。我々は培養ラット血管平滑筋細胞(A7r5 cell)をEGCG2時間前処理の条件下でPDGF刺激すると、PDGFによって誘導されるERK1/2、MEK1、AktがEGCG存在下では著しく減少し、PDGF-βレセプターのリン酸化は濃度依存的に減少すること、初期応答遺伝子c-fos,c-junの発現も抑制されることを明らかにした。従って、A7r5細胞株を用いEGCGによる細胞増殖抑制効果が、リガンド、受容体、または両者への作用によって引き起こされるかを分子レベルで明らかにすることを目的とし、1.EGCGのPDGF刺激によるERK1/2、MEK1のリン酸化に及ぼす効果、2.EGCGの増殖に関与する極初期遺伝子の発現に及ぼす効果、3.EGCGのPDGF刺激によ.るPDGFβ-受容体のリン酸化に及ぼす効果、4.EGCGのPDGF刺激によるAktのリン酸化に及ぼす効果、5.EGCGのPDGF刺激による細胞増殖に及ぼす効果について検討を行った。その結果、EGCGはPDGFシグナル伝達経路の鍵となる分子であるPDGFβ-受容体、ERK1/2、MEK1、Aktのリン酸化を有意に抑制し、さらに極初期遺伝子c-fos,c-junの発現を減少させ、細胞増殖を有意に抑制した。これらの結果は、EGCGが動脈硬化症の憎悪因子と考えられている血管平滑筋細胞の増殖を抑制する分子機構を明らかにし、動脈硬化やそれに基づく心血管疾患に対するEGCGの有用性を示すものである。
著者
大場 悠暉 原 祐二 山本 祐吾
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究(オンライン論文集) (ISSN:1883261X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.5-16, 2023-02-19 (Released:2023-05-22)
参考文献数
39

In this study, we improved and further developed the existing GIS-based model for screening terraced rice lots in its conservation priority with focuses on three aspects; landscape value, agricultural efficiency and disaster prevention function. Then the model was applied to the Wakayama Prefecture area within the Kii Peninsula region in central Japan, in which has a clear north-south gradient in geological features. As the results, constructed model performed effectively in selecting rice lots with higher conservation priority within 10km spatial scale. Moreover, in the northern part of the prefecture, agricultural efficiency was an important aspect in the model, whereas landscape value and disaster prevention function were also detected in the middle and southern parts, respectively. Prefectural governmental officials in charge of terraced paddy conservation policies, who were interviewed, supported an applicability of this model in actual institutional fields because it was guaranteed by scientific approaches. Based upon these figures, we proposed that at prefectural spatial scale the model calibrated among three aspects depending on geologic and topographic conditions could be utilized for prioritizing terraced paddies without serious regional inequalities in institutional supports.
著者
松田 憲 牛尾 琴 楠見 孝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.11, 2022 (Released:2022-04-20)

単純接触効果において,過度の反復呈示は刺激への心的飽和が生じて好意度の上昇を妨げることが知られている。松田ほか(2019)は,女性アバターを反復呈示する毎に化粧を変化させて新奇性を付加させることで,心的飽和の生起が抑制されて好意度が上昇することを示した。しかし男性参加者にはこのような結果が見られず,化粧変化が男性にとって身近でないことが原因として考えられた。そこで本研究では,髪型を変化させることで,両性別の参加者に対して単純接触効果が生じるかを検討した。呈示刺激は男女のアバターで,予備調査に基づいて事前好意度の高低を操作した。参加者は反復呈示されたアバターに対する事後好感度と親近性,新奇性を評価した。実験の結果,女性参加者は,髪型変化によって特に事前好意度の高い女性アバターへの単純接触効果が促進された。一方で,男性参加者には,先行研究と同様に,髪型変化による単純接触効果の促進は見られなかった。
著者
原田 孝
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

可動部に接続した複数のケーブルの長さを制御して可動部の位置と姿勢を変化させるケーブル駆動パラレルロボットは,長いケーブルを用いることで広い動作範囲を有し,スタジアムカメラの移動などに利用されている.しかしながら,可動部を回転させたときにケーブルどうしが干渉し,回転動作範囲が制限される問題がある.そこで本研究では,可動部に回転プーリを組み込み,エンドレスケーブルを用いてプーリを摩擦駆動する新たな機構により,回転プーリの無限回転を実現する新しいロボットを提案し,力学的な解析に基づいた設計方法を確立し,数値計算および基礎実験による検証を行った.
著者
高橋 和弘 坂本 典子 岡田 正史 為近 義夫 石橋 大海
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.6, pp.719-722, 2000-06-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
9

症例は57歳女性,1997年12月自己免疫性肝炎と診断され,以後プレドニゾロン維持投与で経過は良好であった.1998年7月下旬より,呼吸困難出現し来院,高度の肝機能障害を認めるとともに,胸部CTで肺野の間質性陰影の増強を認めた.間質性肺炎をともなった自己免疫性肝炎の急性増悪と診断し,メチルプレドニゾロン250mgより投与を開始したところ,速やかに呼吸困難は改善し,血液ガス,肝機能も正常化し,胸部CTの間質性陰影も消失した.自己免疫性肝炎と間質性肺炎の合併はまれであり,また自己免疫性肝炎の急性増悪にともなって間質性肺炎を発症するという興味ある経過をとったので報告する.
著者
竹内 竜也 幾留 沙智 森 司朗 石倉 忠夫 中本 浩揮
出版者
日本スポーツ心理学会
雑誌
スポーツ心理学研究 (ISSN:03887014)
巻号頁・発行日
pp.2018-1809, (Released:2019-02-06)
参考文献数
59

The purpose of the present study was to clarify the influence of individual differences in the automatic imitation tendency on efficiency in observational motor learning. First, twenty participants each having higher or lower automatic imitation tendency were chosen from 210 according to their reaction times in the imitation-inhibition task indicating automatic imitation tendency. Each group performed the observational motor learning that alternately repeated action observation and execution. The participants in each group were further divided into two groups: appropriate model group that observed a model performing the task correctly and inappropriate model group that observed a model performing the task incorrectly. Results revealed that when participants observed the appropriate model, people with higher imitation tendency demonstrated better task performance in the acquisition phase and retention test than did those with a lower imitation tendency. On the other hand, when the participants observed the inappropriate model, the higher imitation tendency group exhibited lower performance in the acquisition phase and the retention test than did the lower imitation tendency group. Additionally, the higher tendency group was more influenced by difference between the appropriate and inappropriate model than was the lower tendency group in learning efficiency. These findings indicate that individual differences in the automatic imitation tendency affect the learning efficiency and retention in observational motor learning. Further, automatic imitation is likely to have a strong influence on observational motor learning regardless of the learnersʼ intention.
著者
加藤 道夫
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.39, no.Supplement1, pp.157-162, 2005 (Released:2010-08-25)

日本語における透視図, あるいは, 遠近法 (パースペクティヴ (perspective) ) の語源は, ラテン語のペルスペクティーヴァ (perspectiva) に由来するが, その本来の意味は「正しい視方」である.その理論的基盤は古代ギリシアのユークリッドに遡ることができる.しかし, その像を具体的に表現する技法, いいかえるならその作画 (作図) 法については説明されていない.つまり, この時点では, 現象は説明可能という意味で「科学」であっても, 「画像」を生成できないという意味で「技術」ではないということができる, ルネサンス期に具体的に図を作成するという作図法技術が考案され, 以降, 普及・発展した.その技術は, 「固定化された視点」という決定的な前提を含んでいた.見方を変えるならば, 視点を固定化するという条件を設定することで, 作画法が考案可能となったといえる.以降, 遠近法は変質し, その本来の意味である「正しい見方」から「偽りの見方」を表示する技術としての変化をとげる.一方で, 「固定化した視点」を克服するさまざまな試みも見られる.また, 近年の計算機の発展と普及は, ルネサンス以来遠近法が抱えてきた諸問題をクリアしたかに見える.他方で, 計算機による一義的な表現とは異なる手の痕跡を残した手描き画像の価値も見直されつつある.本発表は, 科学技術の視点から遠近法の歴史的変遷を俯瞰するものである.