著者
市川 学 石峯 康浩 近藤 祐史 出口 弘 金谷 泰宏
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌 (ISSN:24320374)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-35, 2017 (Released:2017-10-30)
参考文献数
12
被引用文献数
2

地震に代表される自然災害の多いわが国では、災害発生時に被災地の医療を支援するため、避難者の健康を管理するために、DMAT・DPAT・DHEATなどに代表される保健医療支援活動従事者が、被災地において支援活動を行う。本研究では,発災直後から復興期にかけて保健医療支援活動従事者が、どのように組織され、どのような活動をどのように行なっているかを論じる。また、近年では、保健医療支援活動を支える情報技術も整備されつつあり、情報を利活用する災害時の保健医療支援活動についてマネジメントの視点を交えて説明する。
著者
加藤 護
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.153-160, 2017-09-10 (Released:2017-10-11)
参考文献数
36

An MJMA 6.7 (Mw 6.2) earthquake occurred in Northern Nagano, Japan, on November 22, 2014. While the damage in the city center of Nagano was relatively minor, 65 stone lanterns, among 182, standing in the precinct of the Zenkoji Temple, approximately 25 km from the epicenter, were toppled by the ground motion of this earthquake. Damage of the surrounding residential area was minor. Directions of the collapse were dominantly in the north-south. Strong motion seismograms recorded at nearby JMA Nagano Local Meteorological Observatory were rich in high frequency, especially in the NS component, which explains collapse of stone objects whose natural periods are few tenths of a second. Similar damage was documented in a historic earthquake in 1714, and recurrence of such damage implies that high frequency ground motions from large earthquakes in this epicentral area have been repeated threats to the Zenkoji Temple and Nagano City.

9 0 0 0 OA II.線維筋痛症

著者
村上 正人 金 外淑
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.2077-2087, 2019-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

線維筋痛症は,臨床検査や画像検査で異常所見が認められないため,自覚症状から診断せざるを得ないリウマチ性疾患の代表的な疾患であり,慢性疼痛のモデル的疾患でもある.中高年の女性に多く発症し,全身の筋肉や腱等の結合組織の痛みを中心に多彩な心身の愁訴を有するために,十分な鑑別診断が必要であるが,近年注目され始めた「機能性身体症候群」の概念が線維筋痛症の病態を理解するうえで有用である.リウマチ性疾患のなかでの線維筋痛症の位置付けや機能性身体症候群との関わり,診断と治療について論ずる.
著者
西野 貴晴 北村 俊平
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.A1-A19, 2022 (Released:2022-02-23)
参考文献数
88

バラ科キイチゴ属(Rubus)は先駆性の低木種であり,開放的な環境が形成されるといち早く侵入・繁茂し,さまざまな鳥類や哺乳類が果実を利用する典型的な周食型散布植物である.本研究では,自動撮影カメラを用いて,中部日本のスギ林に生育するキイチゴ属3種(クサイチゴ Rubus hirsutus,モミジイチゴ R. palmatus,クマイチゴ R. crataegifolius)の量的に有効な種子散布者を明らかにすることを目的とした.調査は石川県農林総合研究センター林業試験場内のスギ人工林において,間伐施業後に出現したキイチゴ属3種を対象として,2019年5月9日~7月10日に行なった.自動撮影カメラLtl-Acorn6210MCをもちいて,熟した果実(クサイチゴ108個,モミジイチゴ489個,クマイチゴ168個)と落果(モミジイチゴ32個)の果実持ち去り動物を記録した.キイチゴ属3種ともに3週間で83%以上の果実が樹上から消失した.果実持ち去り数の割合が上位の動物は,クサイチゴでアナグマ(総持ち去り数の30.4%),ニホンザル(27.8%),ヒヨドリ(19.0%),モミジイチゴでヒヨドリ(59.7%)とニホンザル(37.4%),クマイチゴでヒヨドリ(78.2%)とニホンザル(20.4%)だった.ヒヨドリが散布したクマイチゴの種子の発芽率は3.2%(N=189)だった.果実持ち去り数が上位であったヒヨドリとニホンザル,さらにアナグマはキイチゴ属3種の量的に有効な種子散布者と考えられた.これらの3種の動物は,発芽能力のある種子を散布し,その散布範囲は動物種によって数十ヘクタールから数平方キロメートルの範囲内に散布する可能性があることから,質的にも有効な種子散布者である可能性が高いと考えられた.
著者
中井 治郎
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.69-81, 2013-05-18 (Released:2017-09-22)

2004年(平成16年)、その「文化的景観」が評価された「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産リストに登録された。これにより熊野三山をつなぐ参詣道も、「熊野古道」として多くの人々を引き寄せる観光スポットとして現代に蘇ることになった。しかし、2011年(平成23年)9月初旬、西日本を襲った台風12号は紀伊半島に特に甚大な被害をもたらし、我が国において平成以降最悪の水害となった。もちろん世界遺産を構成する各遺産の被害も深刻であり、なお復旧作業は継続中である。しかし、その復旧の現場では文化遺産をめぐる制度に対する様々な疑義や相対化の語りが聞かれる。本稿は、熊野の各文化遺産の復旧をめぐるこれらの語りを分析し、そこに災害前とどのような変容があるか、またその変容が何を意味しているのかを分析するものである。本稿では、モノが文化遺産化される際に、あらたな文脈に配置されることでそのモノの意味や価値が変容していくという文化遺産をめぐる再文脈化の視点からこれらの語りの分析を行う。そして平時にはグローバルな文脈である世界遺産制度やナショナルな文脈である国の文化財制度によって後景化しているローカルな文脈の価値や意味の、災害を契機とした再浮上を考察するものである。
著者
吉田 寛
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.15-28, 2006-09-30 (Released:2017-05-22)

The aim of this paper is to examine the history of the "art competitions" in the modern Olympics, and thus to cast a new light on the boundary problem between art and sport. Pierre de Coubertin, the principal founder of the modern Olympics, held up an ideal of reunification of muscle and mind, and proposed to introduce five art competitions -in architecture, sculpture, painting, music and literature- within the course of the Olympic games. Then "art competitions" were successfully held in seven Olympiads from 1912 to 1948; but they were replaced by "art exhibitions" without medals from the Helsinki Olympics (1952) onward. In spite of Courbertin's personal enthusiasm for art, some of the IOC members remained skeptical of the art competitions, mainly because they seemed incompatible with the amateurism policy of the Olympics: participants therein were professional artists in most cases, and the prizewinning artworks were often traded openly at high prices. Added to this issue, art was condemned for lack of the qualification to rank with the Olympic sports, from the viewpoints that it has no uniform rules and no clear criteria for evaluation like athletic games, and that prizewinning artists are in general much older as compared to athletes, violating the Olympic ideal of "youthfulness." The introduction and abolition of the Olympic art competitions thus suggests the fundamental discrepancy in cultural and social status between art and sport, while our attention is too often directed merely to their alikeness or affinity.
著者
石田 啓
出版者
土木学会
雑誌
土木学会誌 (ISSN:0021468X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.41-44, 2003-07-15

金沢大学大学院自然科学研究科環境創成
著者
鈴木 窓香
出版者
東京理科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究では,マスク着用時の室内温度と二酸化炭素濃度の身体への影響を,実験により自律神経系の指標と血液中の酸素飽和度を測定し明らかにする. 評価には,接触型の心電図計を用い,心拍数と心拍変動から自律神経の状態を解析する.また,パルスオキシメーターを用いて血液中の酸素量の指標である酸素飽和度(SpO2)を測定し,マスク着用による酸素供給量への影響を評価する.これにより,室内の二酸化炭素濃度と温度の適切な制御によるストレスや疲労の軽減を目指す.検討の際,質問票による聞き取り調査により,個々の感じ方を把握する.また,室内温度や二酸化炭素濃度に対する感受性の個人差,年齢差,性別の違いを評価する.
著者
石濱 史子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.21-40, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
110
被引用文献数
12

博物館の標本情報や市民調査による観察情報などに代表される、不在情報がない分布データは、在のみデータと総称される。GBIF(Global Biodiversity Information Facility)などの公開データベースの整備により、在のみデータは分布推定に広く用いられるようになり、その成果が保全生物学分野でも幅広く応用されている。しかし、在のみデータに基づく分布推定に際しては、不在情報がないことに起因する特有の注意点が生じる。特に注意が必要なのが、サンプリングバイアスの存在と、バイアスに対応した偽不在(pseudo-absence)の選び方、推定値が分布確率そのものではない場合が多いこと、推定精度の評価指標の値が偽不在の選び方に依存して変わることである。在のみデータに基づく分布推定を、保全対策に適切に活用するためには、これらの注意点とその対処法を十分に理解することが欠かせない。これらの注意点と対処法に関して、蓄積されつつある海外での報告事例を紹介する。
著者
山川 宏
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.AGI-024, pp.05, 2023-08-08 (Released:2023-08-08)

本研究では、物理世界で生存可能な自立型人工知能(AI)システムの開発における技術的ハードルを明らかにする。まず、AIが長期生存を目指す2つの生存シナリオを想定した。まず、2つの生存シナリオを想定した: 長期生存を目標に人間が設計したAIと、自ら生存を目指すAIである。次に、6つの領域にわたる技術的課題の重要なカテゴリーを特定した。そして、それらのカテゴリーに含まれる21の具体的な課題をリストアップし、ChatGPTを用いてその技術的難易度を推定した。その結果、ハードウェア関連の課題では、自律型AIが生存するまでに100年以上かかる可能性があるが、人間の支援により、その時間を大幅に短縮できることが示唆された。ChatGPTの共通知識によるこの評価は示唆的であるが、参照した知識の範囲が2021年9月までと限定されていることも含め、暫定的なものとして扱うべきである。
著者
谷口 守 星野 奈月 富永 透見
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.939-944, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

近年,SNSの急速な発展に伴い,我々の日常生活はサイバー空間へと大きく軸足を動かしている.本研究では,都市に関連する「ツイート」に対しキーワード分析を行うことで,各都市に対して市民が潜在的に抱いている都市像を定量的に明らかにする.分析に当たっては,ツイートが特定のイベントや異なる季節などによって影響を受けることから,その流動性も考慮に入れて分析するものとする.分析の結果,各都市のツイート数は魅力度,人口,季節,イベントの4つによって説明されることが明らかとなった.また各都市に関するキーワードはその内容が異なり,ツイートには都市個性が反映されることが示された.なお,その反映状況は極めて鋭敏であり,その扱いには注意が必要であることもあわせて初めて明らかとなった.