著者
野田 聖子
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.81-84, 2020 (Released:2022-08-03)

「医療的ケア児」という耳慣れない言葉があります。今日は市民講演ということで、専門的な方もいらっしゃいますし、同じ医療的ケア児の親御さんもいらっしゃいます。そういう人からすると医療的ケア児というのはよくご存じの言葉ですけれども、この医療的ケア児が日本で定義づけされたのは2年前です。児童福祉法という法律が改正されて、医療的ケア児は障害児の一人で、「これからは医療だけではなくて、福祉や教育の場でもちゃんとみんなで支えていこう。」と定められたのです。だから、まだほとんどの皆さんがご存じないと思いますが、今日はぜひとも皆さんに医療的ケア児という言葉を認識していただければうれしいなと思いやってきました。 さて、障害というのは、本当にたくさんあります。日本では15年前に発達障害という障害が認知されて、今、申し上げた医療的ケア児が新たな障害児(者)の仲間として法律で定義づけされたのが2年前です。 私の息子はどうかというと、身体障害があり、0歳のときに左脳に血栓が直撃し脳梗塞を起こしたことで右半身麻痺となり、病院からは「おそらく一生寝たきりだろう。」と言われておりました。そして、仮死状態で産まれたことや脳梗塞の副作用もあり、中度の知的障害もあります。身体障害も2級(1級と2級の間ぐらい)で知的障害は中度なのに、なぜ超重症児と呼ばれているのかというと、医療的ケア児に指定されているからです。 これから医療的ケア児について説明をしていきたいと思いますが、私の息子は重複の障害児というふうにご理解いただければと思います。今日のテーマは「医療的ケア児って何だろう」ということですけれども、法律が改正され、ある程度の定義ができています。実は医療的ケア児は、皆さんが知らず知らずのうちにどんどん増えています。もともと重心の子どもたちの中にも、当然、人工呼吸器を使っている子もいれば、自分でモグモグゴックンができない子は胃瘻を使ったり、お鼻から栄養を入れたりしています。こういう子もすべて医療的ケアの枠組みの中に入ります。そのため、突然現れたわけではなく、昔から重心の子どもたちの中には医療的ケアに支えられている子どもたちは沢山いたわけです。 しかし、今回改めて医療的ケア児として定めなければならなかったのは、医療的ケアが必要で一般的な社会生活を送ることに差し支えがあるにもかかわらず、社会福祉を受けられない子どもたち。つまり、私の息子もそうですけれども、重症心身障害の子と違うのは、たとえば寝たきりではないとか、知的にはIQが70以上あって通常の知能を持っているとか、そういうふうになった途端、福祉の枠から外れてしまっていたので、「これは大変だ!」ということになりました。 もう一つは、今、少子化の中で、1人でも多くの小さい命を助けようということで、医療がすごく進歩しています。子ども病院の中には必ずNICUという集中治療室があって、小児科の医師や看護師さんやスタッフの方が24時間懸命に医療を施してくれます。たとえば、350ccのペットボトルぐらいの子どもが産まれたときに、10年前だったら救えなかったであろう命も、今は救うことができるんです。 それで、仮に病院の中であれば一生医療ケアを受けて安全に暮らすことができるのですが、さすがに医療の中でそこまで責任は持てないので、何らかの支えがあったら社会で暮らせるという状態になった途端に病院を卒業することになり、いきなり家が病室と化します。 医療的ケア児を法律で定めたのですが、生きていくために日常的な医療的ケアが必要な子で、一般的に多くの人たちが想像する最期の瞬間に施されるものが医療的ケアだと思ってください。あと1週間延命するためにおなかの中に栄養剤入れますとか、あと1週間生かすために気管切開しチューブを入れて人工呼吸器を装着しますとか、そういうものが医療的ケア児たちが日常的に受けている医療ケアなのです。これまでは、最期の最期のために使われる大道具だったのが、近年医療が進歩して、医療的ケア児が生きていくための小道具化としているわけです。残念ながら一般的には、医療的ケアをしていると聞いただけで敬遠されてしまうのが現状なので、そこのギャップを縮めたくて今日はここまでお邪魔したわけです。 とにかく、子どもたちはたくさんの可能性を持っていて、それを握りつぶしてはいけないのです。高齢者の在宅介護と子どもの在宅介護、同じように思うのですが、無限の可能性を持つ子どもに対しては、高齢者と同じようなケアでは駄目だという意識を持って向き合ってほしいなという思いでおります。 今、申し上げたように、呼吸、肺がちっちゃかったり心臓が悪かったり、そういう不全のところを補うために、人工呼吸器を付けて生きていく子どもたちがいます。二つ目には、さまざまな障害でご飯が食べられない子は、胃瘻を開けたり、お鼻から管を入れて、そこから直接栄養を送り込むという形で栄養を取り育てられています。 こういうものを使っている子どもたちを総じて、その子が重度であろうとなかろうと、ベースメントとして医療的ケア児と呼ぶことになり、この子たちもこれまでの身体障害や知的障害や精神障害や発達障害の子と同じように、差別なく地域社会の福祉の力を借りてちゃんと生きていけるように、首長は責任を持たなくてはいけないということで2年前から検討が始まりました。 しかしプライバシーの問題で、医療的ケア児の様子がなかなか見えないので理解してもらえないことが多いのです。大島分類という障害の判定基準がありますが、寝たきりで重い知的障害の子は確実に守ろうというのがこの国の福祉の形。ところが、お医者さんたちが頑張ってくれたお蔭で生きることができた医療的ケア児の場合は、歩くことができる、走ることができる、そして頭もまあまあ、足し算、掛け算もできるとなると、今までの福祉の枠にははまりません。しかし、歩くことができても、人工呼吸器が外れたらその場で死んでしまうリスクのある子がこの世にたくさん存在しています。要は医療の進歩と福祉の進歩が相まっていないというところが問題で、これは全部法律によって適用させていかなくてはなりません。 日本は少子国家で、今後もその少子化のトレンドというのは変わらない。ところが、医療的ケア児というのは、医師のご尽力や子どもの生きる力や親の努力で、反比例にどんどん増えていくだろうと。今でこそ人工呼吸器や胃瘻程度ですが、補助心臓を皆さんご存じですか?心臓移植を控えた子どもが、移植を待っている間に補助心臓を付けます。これはとても大掛かりなもので、基本的には補助心臓を付けている子どもは入院しています。しかし医師たちの話によると、「このような子たちも、あと数年で病院の中ではなくて、家で生きられるようになるだろう。」と言われています。病院の中で生きるということは正常ではないのですから、子どもにとってはそれが一番良いことなのです。家族と一緒に育つということを、本当は国が責任を持って取り組まなくてはいけない。どんな子であっても、病院にいることがいいことではなくて、病院から一日も早く出してあげて、人として生かすことが大事。その対象になる医療的ケア児が、どんどん増えていることをご理解いただきたいと思います。 現在、学校の先生を減らすという話が出ていますが、こういう子どもたちが学校に入れるように、看護師さんを増やす等、ケアをしてくれる人を増やすという切り替えをしていかなければいけないのではないかと思います。 医療的ケア児に会ったことがない方も多いと思うので、今日はどのような子が医療的ケア児かというニュアンスだけでもわかっていただければ。国会議員の息子なので、どんどん社会の役に立たせようと、今日もこの場に息子を連れてきたかったのですが、学校があって残念ながら連れてくることができませんでした。そのため、息子の写真を見ていただくことで、いろいろな誤解や偏見や差別等を解いてもらいたくて。とにかく難しい説明より写真を見ていただいた方が理解しやすいかなと思い準備をさせていただきました。(講演では写真スライドで説明) 息子は生きていくために、赤ちゃんのときに気管を切開して人工呼吸器と酸素を入れていました。3歳までは24時間の人工呼吸器、酸素ということになりましたが、成長につれて自発呼吸がだんだんできるようになってきていて、現在は夜寝てから起きるまで、就寝時間だけ人工呼吸器のお世話になっています。 息子は産まれてすぐ仮死状態になり、口の中に人工挿管されて私のおっぱいも吸えませんでしたし、口から物を食べるということができなかったので、口は何のためにあるのだろうかとわからないまま育ちました。でも生きていくためには栄養が要るということで、最初は医師から処方されたツインラインという栄養を1回につき2~3時間かけて1日6回胃瘻からあげていました。こうなると親は睡眠もままならない人生を送るわけです。 あるとき夫が、「ツインラインを飲ませてもいいけど、真輝も人だろう。だから人間が食べる物も食べさせてみたいよね。」と言い出し、「じゃあ、手作りのミキサー食をやってみようか。」と、最初は医師に内緒でやりました。食材は30から40品目、旬の食べ物や調味料を工夫し、和食のようなテイストにしました。現在は1日、朝昼夜夜。7時、12時、17時、22時に60ccのシリンジ7本分のおかずとデザートをあげています。 (以降はPDFを参照ください)
著者
水谷 敦史 加藤 俊哉 中山 禎司 本城 裕美子 影山 富士人 森 弘樹 小澤 享史 吉野 篤人
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.75-79, 2013-01-01 (Released:2013-04-23)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

重症の急性鉄中毒により死亡した稀有な症例を経験したので,考察を踏まえ報告する。症例は23歳,女性。鉄欠乏性貧血の既往があり,処方されていた鉄剤(クエン酸第一鉄ナトリウム)を意図的に過剰服用し,当院に救急搬送された(推定摂取量2,400 mg)。当院来院時の症状は傾眠・腹痛・嘔吐であり,非重症の鉄中毒症例と思われたが,その後進行性に悪化し意識障害が出現,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)となった。デフェロキサミン投与,輸血療法,血漿交換,持続的血液濾過透析などの集中治療を行ったが,最終的に肝不全とその合併症(DIC・脳浮腫)により死亡した。急性鉄中毒重症例では,肝不全が完成した後に集中治療を開始してもその効果は乏しく,肝不全の発症予防および重篤化防止が重要であると考えられる。そのために,治療開始初期から消化管除染・デフェロキサミン投与・急性期血液浄化法などの集中治療を行うことが必要であると考えられた。
著者
川島 眞 沼野 香世子 石崎 千明
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.969-977, 2007-05-20 (Released:2014-12-03)
被引用文献数
2

アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)患者の乾燥皮膚における医療用保湿剤(ヘパリン類似物質含有製剤,尿素製剤及びワセリン)の有用性を評価するために,角層水分量,経表皮水分喪失量(TEWL),皮膚所見及び痒みの程度を指標として,ランダム化比較試験を実施した.ADの炎症が鎮静化した乾燥症状を主体とする左右前腕屈側部を対象とし,試験薬を1日2回3週間塗布し,その後1週間は観察期間とし,対象部位にはいかなる処置も行わなかった.その結果,全ての保湿剤において外用期間中は角層水分量の有意な増加が認められた.なかでもヘパリン類似物質含有製剤群は,尿素製剤及びワセリン群に比べ,より高い角層水分量を示し,観察期間においてもその効果は持続した.皮膚所見及び痒みも,全ての保湿剤で有意な改善が見られたが,TEWLは改善しなかった.以上より,今回試験した保湿剤は,いずれもAD患者の皮膚生理学的機能異常を改善することが確認され,さらに,ヘパリン類似物質含有製剤は尿素製剤及びワセリンよりも優れた保湿効果を有することが示された.
著者
廣瀬 俊介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.139, 2023 (Released:2023-09-28)

造園学は、近代の市民社会における公共空間の創出を契機として創始された。公共空間は、民主主義や社会的に公正な資源配分からもたらされるが、造園学における史的研究の対象となる庭園には、各時代に権力と富を集中的に得た者たちが所有していたり、植民地で教化空間として用いられたりした例が含まれる。そして、造園学領域における既往の研究では、一部を除いて庭園の所有者と非所有者の間の非対称性を批判的に検討した例があまり見られない。ことに、わが国では前近代性を残存させた社会階級構造が成立し、富と権力の集中の結果でもある庭園の評価に基づく景観の価値形成が、社会階級構造の維持ひいては文化的再生産に結びつくことが懸念される。このような問題意識を持って、本研究は、造園学の研究と実践において庭園がどう扱われてきたかに着目し、そのことによる歴史認識が景観の価値形成とどう結びつき、そこにどのような問題が含まれるかについて考察するものである。
著者
野口 泰弥 大島 稔
出版者
北海道立北方民族博物館
雑誌
北海道立北方民族博物館研究紀要 (ISSN:09183159)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.85-110, 2019-03-29 (Released:2019-08-19)

In June in 1942, Japanese army invaded and occupied Attu and Kiska islands of the Aleutian Islands. In those days 42 Unangan (Aleut) people and two white man and woman lived on Attu Island. Some islanders died in the period of the Japanese occupation. On September in 1942, Japanese Army transferred these islanders (except one white woman) to Otaru city of Hokkaido prefecture in Japan and detained them until the end of war. In Otaru, Tuberculosis was going around among islanders so many people died. After the war, survivors returned to the U.S. However, the U.S. government didn’t allow them to return to Attu Island. This is the reason why Attu Island is now an uninhabited island. This text is a report on Unangan (Aleut) people of Attu Island which was written by Karl Kaoru Kasukabe(春日部薫: 1913-1995)during WWII. He followed Japanese Army as interpreter and attended “Aleutian Islands Campaign.” During his military service, Kasukabe researched culture and language of Attu people. The original text was handwritten between 1942 and 1943 and is housed in Hokkaido University Library (Identification No. 572.9/KAS/別シ). Generally speaking, ethnographic records about Attu islanders have been very rare. This text includes detailed ethnographic information about culture, history, and language of Attu people and partly includes important description about the background of Aleutian Islands Campaign. Therefore, this text is worth publishing for future study.
著者
佐藤 誠子 工藤 与志文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.135-148, 2021-06-30 (Released:2021-07-21)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

本研究は,既有知識の変化の困難さについて学習者の推論過程の側面から検討するものである。従来の合理的モデルに従えば,既有知識が変化するには,誤概念など既有知識からの「直観的判断」とルールに基づく「仮説的判断」とが同等におこなわれ,それらが比較対照される必要があるが,実際には後者の判断に困難があることが佐藤・工藤(2015)により示されている。これらを踏まえ,本研究では三角型四角形(三角形の直観的イメージに近い四角形)の分類課題を取り上げ,大学生を対象に仮説的判断の重要性とその方法を教授する授業をおこなうことで,課題に対する判断の転換がみられるかどうかを検討した。その結果,①推論の出発点を直観的判断にしか置けず,それを支えるための説明を生み出す方向にしか推論が展開されない「自己完結的推論」が存在すること(研究1,研究2),②仮説的判断を推論の俎上に載せることができれば,自己完結的推論が抑制され,双方を比較対照する検証過程に持ち込める可能性が高まること(研究2)が示された。これらの結果から,従来の誤概念修正ストラテジーの効果および概念変化達成のための教授学習条件を再考した。
著者
福岡 万里子
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.2_13-2_41, 2022 (Released:2023-12-15)
参考文献数
49

安政の五ヵ国条約が天皇の承認を得ず調印されたことは同時代的にも国内に広く知れ渡り幕末の政治動乱を引き起こす重要な契機となったが、無勅許調印の事実は、1859年以降日本に着任した西洋外交官らには幕府により秘匿され、それをおそらく察知していたと見られる米国駐日総領事ハリスも、その経過については外交団内で沈黙を守った。そのため、駐日外交団や居留外国人の間で、日本の主権者により現行条約が批准されていない事態として、条約無勅許をめぐる認識が形成されるようになるまでには、最も早く見積もって1862年頃までの数年間がかかった。本稿は、こうして生じた西洋外交官らの間の日本認識上のギャップが、通商開国後に浮上した度重なる外国人襲撃殺害事件や開港開市延期問題等に関する彼らの対日外交に水面下で影響を与え、西洋駐日外交団の間の外交方針の分裂や転回を引き起こしていた実態を論じ、条約勅許獲得が最終的に外交団の政策目標になっていく経過を展望する。
著者
伊藤 勇 池田 稔 末野 康平 杉浦 むつみ 鈴木 伸 木田 亮紀
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.165-174, 2001-02-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
19
被引用文献数
2 9

日本人の耳介に関する計測学的研究の多くは1950年代までに報告されており, それ以降, 本邦における耳介の加齢変化についての詳細な計測学的な検討はほとんど行われていない. 今回, 当時よりも体格が向上し, また, 高齢化の進んだとされる現代日本人の耳介形態について, 乳児から高齢者までの幅広い齢層における詳細な計測学的検討を行ったので報告する. 対象は, 0歳から99歳までの日本人1958名 (女性992名, 男性966名) で, 耳長, 耳幅, 耳介付着部長, 耳介軟骨長, 耳垂長, 耳指数, 耳垂指数, 耳長対身長指数, および耳介の型について検討した. 各計測値はほぼすべての年齢群において男性の方が女性よりも大きく, 10歳代までの年齢群に見られる成長によると思われる急激な計測値の増加傾向に加え, それ以降も高齢者群になるに従い加齢変化によると思われる有意な増加傾向を認めた. 各指数, 耳介の型についても同様に成長によると思われる変化と加齢によると思われる変化を認めた. また, 以前の日本人の耳介を計測した報告に比べて耳介計測値の多くが大きくなっていた.今回の計測学的研究は現代日本人の耳介の大きさについて成長や加齢による変化を検討したものであり, 今後, 日本人の耳介形態についての一つの指標になるものと考える.
著者
吉岡 暁 門前 達哉 久保 雄器 河野 優斗 千葉 篤郎 内堀 歩
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.154, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
8

【要旨】コロナウイルス(COVID-19)感染後に四肢筋力低下をきたし、Guillain-Barre 症候群(Guillain-Barre Syndrome:GBS)の診断で救命し得た症例を2 症例経験したので報告する。症例は 70 歳代と 50 歳の男性で、感冒症状出現からそれぞれ 15 日後、17 日後に四肢遠位優位の脱力が出現した。先行感染のある四肢筋力低下、腱反射消失を認めた。ICU にて気管内挿管、人工呼吸器管理とした。免疫グロブリン大量療法、単純血漿交換療法の両方を施行したが、四肢はほぼ完全麻痺にいたり、長期人工呼吸器管理となった。リハビリテーション病院に転院し、ADL は自立まで回復した。COVID-19 感染症が蔓延し、重症患者を診療する病床が不足するなかにおいても、COVID-19 感染後 GBS は重症であり、治療のための病床確保が必要である。
著者
加藤 恵梨
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.124-141, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
8

本研究の目的は、二人称代名詞「あなた」「あんた」「おまえ」「きみ」を『日本語日常会話コーパスモニター公開版』によって調査し、現代日本語の話しことばにおける4語の使用者数・使用回数および使用対象を明らかにすることである。調査の結果、4語の中で「あなた」の使用者数が最も多かったが、全体的に4語の使用者数および使用回数は少なかった。また、男女別にみると、男女間で4語の使用者数・使用回数および使用対象に大きな違いはなかった。さらに、先行研究で相手への指示・批判として「あなた」が使われることが多いと指摘されているが、今回の調査では多くみられなかった。
著者
大森 崇史 柏木 秀行 井上 修二朗 古川 正一郎 下見 美智子 宮崎 万友子 原田 恵美 廣木 貴子 岡 佳子 堤 一樹 大屋 清文
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.165-170, 2022 (Released:2022-11-24)
参考文献数
14

心不全患者に対する緩和ケアの必要性が注目されているが,まだ国内では提供体制が十分に整っていない.飯塚病院は福岡県飯塚市に位置する1048床の急性期病院であり,同院において心不全の緩和ケアを提供するためにハートサポートチーム(HST)を創設し,心不全緩和ケア提供体制を構築した.2017年5月にHSTを創設後,2022年3月までに循環器内科から168例の心不全患者の緩和ケア介入依頼があった.介入事例のうち,緩和ケア診療加算の算定基準を満たしたのは25例(14.8%)だった.HSTの創設・運用にあたり,スタッフの確保,育成,持続する仕組みづくりが課題であると考えられた.循環器の専門職だけでなく緩和ケアや精神ケア等を専門とするスタッフと協働したHSTを創設することで,急性期病院で心不全患者に対する緩和ケア提供体制を構築する最初の一歩となった.
著者
東 美由紀 島田 真希 嶋田 総太郎
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.479-498, 2023-12-01 (Released:2023-12-15)
参考文献数
57

We often cheer for others in our daily lives, not only for our favorite celebrities but also for our family, friends, and even strangers. In actual cheering situations, some people cheer enthusiastically while others are less interested in cheering, indicating that there are individual differences in cheering tendencies. This study developed a cheering tendency scale to examine the factors of willingness to cheer for others. The exploratory factor analysis showed that the cheering tendency includes the following four factors: a) interest in a likable person, b) attunement to other observers, c) promoting a positive situation of others, and d) overcoming a negative situation of others. The result of Cronbach’s
著者
松川 克彦
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.249-272, 2014-03

山本五十六提督はアメリカ駐在武官も勤め、同国の実力を熟知していたが故に、アメリカとの間の戦争に反対であったといわれている。したがって日独伊三国同盟にも反対であった。しかしながら、日米関係が緊張してくると、アメリカ太平洋艦隊の基地真珠湾を攻撃する計画を作成、その計画実現に向けて強引な働きかけを行った。 これをみると、山本は果たして本当に平和を望んでいたのかどうかについて疑問が起こってくる。一方で平和を望みその実現に努力したと言われながら、実際にはアメリカとの戦争実現に向けて最大限の努力を行った人物でもある。 本論は山本が軍令部に提出した真珠湾攻撃の計画が実際にどのようにして採択されたのか。それは具体的にはいつのことなのか。またその際用兵の最高責任者、軍令部総長であった永野修身はどのような役割を果たしたのかについて言及する。これを通じて、もし山本の計画が存在しなければ、あるいはこれほどまでに計画実現に執着しなければアメリカとの戦争実現は困難だったのではないだろうかという点について論述する。 日米開戦原因については多くの研究の蓄積がある。しかしながら山本五十六の果たした役割についてはいまだに不明の部分が多いと考える。それが、従来あまり触れられることのなかった山本五十六の開戦責任について、この試論を書いた理由である。
著者
小河 浩 田上 敦士 澤田 大吾 風呂本 武典 金子 春生
出版者
独立行政法人 国立高等専門学校機構 広島商船高等専門学校
雑誌
広島商船高等専門学校紀要 (ISSN:18839908)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.71-78, 2022 (Released:2022-06-13)

本稿は、高専学生にわかりやすく現代社会の動向を、近現代史の観点から説明するものである。
著者
Ko Yamamoto Hiroki Shiomi Takeshi Morimoto Hiroki Watanabe Akiyoshi Miyazawa Kyohei Yamaji Masanobu Ohya Sunao Nakamura Satoru Mitomo Satoru Suwa Takenori Domei Shojiro Tatsushima Koh Ono Hiroki Sakamoto Kiyotaka Shimamura Masataka Shigetoshi Ryoji Taniguchi Yuji Nishimoto Hideki Okayama Kensho Matsuda Kenji Nakatsuma Yohei Takayama Jun Kuribara Hidekuni Kirigaya Kohei Yoneda Yuta Imai Umihiko Kaneko Hiroshi Ueda Kota Komiyama Naotaka Okamoto Satoru Sasaki Kengo Tanabe Mitsuru Abe Kiyoshi Hibi Kazushige Kadota Kenji Ando Takeshi Kimura on behalf of the OPTIVUS-Complex PCI Investigators
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-22-0837, (Released:2023-03-11)
参考文献数
11
被引用文献数
5

Background: There is a paucity of data on the effect of optimal intravascular ultrasound (IVUS)-guided percutaneous coronary intervention (PCI) compared with standard PCI or coronary artery bypass grafting (CABG) in patients with multivessel disease.Methods and Results: The OPTIVUS-Complex PCI study multivessel cohort was a prospective multicenter single-arm study enrolling 1,021 patients undergoing multivessel PCI including the left anterior descending coronary artery using IVUS aiming to meet the prespecified criteria for optimal stent expansion. We conducted propensity score matching analyses between the OPTIVUS group and historical PCI or CABG control groups from the CREDO-Kyoto registry cohort-3 (1,565 and 899 patients) fulfilling the inclusion criteria for this study. The primary endpoint was a composite of death, myocardial infarction, stroke, or any coronary revascularization. In the propensity score-matched cohort (OPTIVUS vs. historical PCI control: 926 patients in each group; OPTIVUS vs. historical CABG control: 436 patients in each group), the cumulative 1-year incidence of the primary endpoint was significantly lower in the OPTIVUS group than in the historical PCI control group (10.4% vs. 23.3%; log-rank P<0.001) or the historical CABG control group (11.8% vs. 16.5%; log-rank P=0.02).Conclusions: IVUS-guided PCI targeting the OPTIVUS criteria combined with contemporary clinical practice was associated with superior clinical outcomes at 1 year compared with not only the historical PCI control, but also the historical CABG control.
著者
亀崎 直樹 源 利文 高橋 亮雄 鈴木 大
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

岡山平野において淡水カメ相の遷移について研究を行った。文献・芸術資料や遺跡から出土する骨の分析によって、少なくとも中世から1900年頃まではニホンイシガメが優占していたが、1990年になるとクサガメが置き換わったことが明らかとなった。今回の225ヶ所の捕獲調査で、クサガメ:1267個体(70.5%)、アカミミガメ:484個体(26.9%)、イシガメ:35個体(1.9%)等が捕獲され、環境DNAの調査結果も含め現在でもクサガメが優占し、イシガメは急激に減少し絶滅寸前である。また、河川を中心にアカミミガメの個体数も増加しており、その分布の状態から、海から川を介して侵入しているものと考えられた。