著者
井上 芳光 近藤 徳彦 上田 博之 石指 宏通 近江 雅人 古賀 俊策
出版者
大阪国際大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

発汗能力は,思春期前では性差はみられず,思春期以降に男女とも増大するものの,その程度は女性が男性よりも小さかったため,若年者では女性が男性より低かった.発汗能力は男女とも加齢に伴い低下し,その性差は80 歳代で消失する傾向だった.若年者では短期間の運動トレーニング・暑熱順化に伴う発汗能力の改善の程度にも性差(男>女)がみられた.長期間運動トレーニングに伴う発汗能力の改善は,子供や高齢者が若年者より小さかった.女性の少ない発汗量は,体液の損失を最小限に抑えようとする生物学的意義が窺えた.なお,男性の運動トレーニング・暑熱馴化・加齢による発汗能力の変化は性ホルモン・成長ホルモンとは関連しなかった.
著者
平出 拓也
出版者
浜松医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

本研究の目的は、エクソーム解析にて原因を同定できなかった知的障害/発達遅滞患者における新しい疾患発症機序を明らかにすることで、患者管理や遺伝カウンセリングに貢献することである。網羅的遺伝学的解析において、様々な最先端のインフォマティクス解析や機械学習を導入したマルチオミクス解析を行い、膨大なバリアントのフィルタリングや解釈を行う。特に、病的なレトロトランスポゾン挿入やリピート配列伸長を含めたゲノム異常の網羅的検出に挑戦する。更に、RNA解析の検体として尿由来細胞を用いるという新しい取り組みにより、小児神経疾患の新たな遺伝子解析スキームの確立を目指す。
著者
山田 伸一
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

今年度は主に、『日本外交文書』や外務省外交史料館所蔵史料など外交関係史料の調査と、北海道立文書館所蔵の開拓使文書・佐藤正克日記(北海道立図書館所蔵)や阿部正己文庫(鶴岡市立図書館所蔵)中の松本十郎関係文書の分析を進めた。既往の研究の成果を基本的には再確認し事実関係をより詳細に把握できた諸点以外に、今回特に確認できたのは次の点である。なお、樺太アイヌの石狩地方移住後の状況については分析が十分に進んでおらず、今後に課題を残している。1)1875年の樺太千島交換条約の交渉過程においては、先住民族の帰属をめぐる問題は無視されていたに等しく、条約締結後の東京での日露間の交渉で、先住民族にのみ国籍と居住地の合致を義務づけることを再確認したものである。2)樺太アイヌの対雁への移住は、アイヌ自身の意向や開拓使札幌本庁の意見を押し切って開拓長官黒田清隆が断行したものである。3)移住に際して開拓使は、樺太で漁業経営を請け負っていた商人とアイヌとの間の慣習や人間関係を利用しつつ、アイヌと商人との関係の断絶・官への直接の依存を図っていった。4)北海道へ移住させられたアイヌの樺太への帰還は、1905年の日露講和条約以前から活発だったが、郷土で生計を立てようにも日本国籍を持つ故に漁業経営から制度的に排除される点で不利な立場に置かれる一方、北海道へ移住しなかったアイヌは比較的有利な立場にあった。南樺太が日本領になるとその立場が逆転する。1875年の条約締結時に同民族内に生じさせられた分断は、日本領時代は日本岡籍の有無の差として存在し、長く影響を与えた。
著者
河田 光博 山田 俊児 谷田 任司 時田 美和子 坂本 浩隆 松田 賢一 高浪 景子 大矢 未来 李 美花
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

神経系の発達臨界期における性差形成のメカニズムと、性分化が進んだ成熟期における行動の性差を生み出す回路、および行動入力の形態科学、ならびに性ホルモン受容体の分子イメージングを行った。行動の性差には臨界期におけるヒストンアセチル化などのエピジェネティックス機構間に階層性が存在し、また性ホルモン受容体の機能活性は臨界期ステージによって神経系の構造形成と行動相関を必ずしも一致させないことをはじめ、性行動の出力相の神経回路や性ホルモン依存的感覚(痒覚)のシナプス様相の解明、性ホルモン受容体の分子相関などを明らかにした。これらから、特定の分子を基盤に性差をもたらす行動神経内分泌機構の解明がなされた。
著者
藤田 剛 東 淳樹 片山 直樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、里山の生物多様性を広域にわたり保全する方策として、里山の象徴種猛禽サシバの生息地保全に農地の栽培体系がどう貢献しているか、気候帯の違う複数地域での解明を目的とした。その結果、サシバ分布北限にあたる北東北では、田植え時期は温暖な関東よりわずかに遅い程度で、サシバはため池の多い農地で繁殖していること、カエル類はため池周辺で高密度に分布していることが明らかになった。サシバ分布南西部にあたる九州中北部では二毛作が盛んで田植え時期が関東より1か月遅く、主な餌生物のカエル類がほとんど生息していなかった。そして、バッタ類の生息する草地がサシバの重要な生息地として機能していることが明らかになった。
著者
當摩 哲也 SHAHIDUZZAMAN MD 宮寺 哲彦 大平 圭介
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

太陽電池のさらなる世界的普及を考えると、高性能化と低コスト化に並び重要なのは長寿命化である。本研究では、エネルギー変換効率20%以上を発現するペロブスカイト太陽電池において、大気下での長寿命化技術の構築に取り組む。本研究では、①長寿命ペロブスカイト材料の探索とその劣化メカニズムの解明、②ペロブスカイト層にダメージを与えないCat-CVDによるドープしたSi層のETLとHTL層の開発を推進する。さらに、①と②を組み合わせた③劣化因子をすべて排除した極長寿命ペロブスカイト太陽電池の実現(Si太陽電池同等レベル目標)を本研究で達成する。
著者
太田 深秀
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

統合失調症のPET研究の中で再現性の高い所見に、中枢刺激薬負荷時に統合失調症群では健常群と比較して線条体でのドーパミンの放出量が増加していたという所見がある。本研究では統合失調症モデル動物を対象に中枢刺激薬負荷試験の有効性を検証する。平成24年度には統合失調症モデル化前後でラットにメチルフェニデートを負荷し、ドーパミン放出量の変化を検討した。その結果、統合失調症モデル化後はモデル化前と比較してメチルフェニデート負荷によるドーパミン放出量が増大していることを確認した。平成25年度からはマーモセットを対象とした[18F]fallyprideによるドーパミンD2受容体密度の測定を開始している。
著者
永田 晋治
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の実験対象であるフタホシコオロギの共食いでは、触角を介し被捕食者の体表の脂溶性成分を認識することが分かった。実際に、体表をヘキサンで拭うと被捕食者になる。体表の脂溶性成分のGCMS分析では、主に13種の炭化水素を同定した。化学構造から推察される生合成酵素群をRNA-sequencingにより探索し、その遺伝子群をRNAiにてノックダウンすると、同種異種の認識に変化が認められる。フタホシコオロギの「共食い」行動では、フタホシコオロギで固有の体表脂質成分の変化が捕食者と被捕食者の関係性に導かれることが分かった。
著者
柴山 惟
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

本邦で肥満者の割合は増加しており、肥満を原因とするメタボリック症候群は高血圧や耐糖能異常を呈るため肥満合併症の病態解明は喫緊の課題である。肥満者で副腎から鉱質コルチコイドであるアルドステロンが過剰分泌されることが報告され高血圧の原因の一つと考えられるが、その機序は明らかでない。脂肪蓄積に関わる脂肪滴周囲蛋白ペリリピンは肥満の病態と深く関わっており、肥満によるアルドステロン過剰分泌がペリリピン1により調整されているという仮説のもと、副腎でのペリリピン1発現を調整する因子が肥満高血圧の新たな治療の標的となるかを解明する。
著者
余田 佳子 島 正之 大谷 成人
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

空気清浄機の使用による一般家屋内の大気汚染物質濃度の低減と、それによる呼吸器系への影響の改善効果を評価するために健常者32名を対象にクロスオーバー介入研究を行った。その結果家屋内の微小粒子状物質(PM2.5)濃度は、本物の空気清浄機使用では偽物に比べて約11%低減したがその差は有意ではなかった(p=0.08)。同居のいない世帯で空気清浄機によりPM2.5の有意な低減効果が見られた。しかし、健康影響については明らかな効果はみられなかった。一方、屋内粗大粒子(PM10-2.5)濃度の増加により1秒量の有意な低下が見られた。同様に屋内オゾン濃度の増加により最大呼気中間流量の有意な低下が見られた。
著者
山口 和夫 及川 亘 宮崎 勝美
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

元和9年(1623)の徳川秀忠・家光父子上洛と将軍職交代とが同時代社会へ与えた影響を究明するため、史料調査・収集・整理・検討を重ねた。父子上洛を迎え将軍宣下もあった京都等の公家・寺家・社家の諸記録、父子に供奉した大名上杉家の日記・帳簿、各種系譜史料等を分析した結果、沿道と洛中洛外地域社会で展開された儀礼や交流、上洛に動員された上杉家中の費用負担、公家・地下官人・大名・旗本等の人事につき、広範な事例を把握・提示することができた。また、将軍秀忠から同家光への大名命名(一字書出発給)主体の移動、朝幕藩相互間の伝達回路につき、事例を解明・蓄積した。大名の官位が、江戸幕府により決定され、将軍参内行列供奉の資格・序列として機能することも検出した。
著者
中尾 祐人
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

行政調査権限をいかなる条件のもとに認めることが適切か,という問題は,2つの調査類型に分けて検討することが適切である。行政機関が自ら動いて情報を取得する形態の調査活動(プッシュ型)と,行政機関の求めに応じて被調査者が情報の提供を行う形態の調査活動(プル型)である。本研究は,米国の判例・学説で示されるプル型の調査に対する司法審査基準について,その理論的基礎をプッシュ型の調査と比較して分析することにより,わが国の行政調査論への示唆を得ようとするものである。
著者
武多 昭道 山本 由弦 山崎 勝也 池田 大輔 冨田 孝幸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

超新星残骸(かに星雲など)の天然加速器から飛来する宇宙線(高エネルギーの陽子、原子核)は、地球の大気に衝突して、ミューオンなどの素粒子をつくる。この素粒子を使って、地中の断層の透視を行う。ボーリング調査で得られた断層姿勢や物性調査と比較することで、断層が地表付近でどの程度デコボコしているのかを調べ、断層のデコボコ具合が地震や津波にどのような影響を及ぼすのかを評価する。
著者
原口 佳誠
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、アメリカにおける州裁判官公選制の成立過程と現代における制度改革の分析を行った。1850年代に各州議会が裁判官公選制を導入する憲法修正を行った主たる目的は、民主主義の徹底のみならず、司法府の強化と独立にあった。しかし、利益集団の介入によって過度に党派政治化した現代の裁判官選挙では、司法府の中立性と公正な裁判の実現が懸念されており、それに呼応して合衆国最高裁判所は重要判例を提示し、法律家団体は司法制度改革運動を展開し、各州は現実に諸改革を行いつつある。本研究は、アメリカで蓄積された法制史学の精査と現地の実地調査をふまえた実証分析を行い、裁判所における民主的統制の確保と公正な裁判の実現という両要素を調和させる制度構築の試みを評価する。さらに、アメリカ市民の州裁判所に対する信頼の基盤には、裁判官の民主的アカウンタビリティと任命過程の透明性の確保のみならず、司法府の独立と中立という、同様に選挙される政治家とは異なる裁判官固有の役割への一般的な期待があることを確認する。本研究は、日本の最高裁判所の裁判任命制度を再検討し、司法府の独立性・中立性と司法府に対する市民の信頼の関係という基本的命題を考察する際に、比較法研究としての示唆を有すると考えられる。
著者
臼井 将勝 阿座上 弘行
出版者
独立行政法人水産大学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

エビアレルギーリスクと摂食方法の関係について明らかにするために、主要アレルゲンであるトロポミオシンの熱安定化因子を構造解析等により検討した。その結果、単純な立体構造、高い水溶性、高い構造可逆性が抗原性保持に寄与することが明らかとなった。また動物試験の結果、加熱は生体内での抗原性低減化にも有効でないことが示唆された。さらに、エビ可食部に含まれる抗原濃度は、加熱調理の有無に係わらず非常に高濃度であること、加熱により溶出率が高くなること、鮮度低下時にも十分に維持されることなどが明らかとなった。以上の結果から、陽性患者がエビを摂食することは、加熱や鮮度に係わらず非常にハイリスクであることが示唆された。
著者
喜早 ほのか 別所 和久 高橋 克
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

哺乳類の歯には、通常は退化・消失する第3歯堤が存在する。通常の歯数よりも多く形成される歯を過剰歯といい、実際にヒトにおける第3歯堤由来と考えられる過剰歯症例を経験し、報告した。本研究では歯数の制御に着目し、機能を抑制することで歯数が増加する分子と、逆に機能を亢進することで歯数が増加する分子を標的とした。USAG-1とBMP-7は歯の形態形成と大きさに重要な役割を果たす可能性があることを報告した。さらにヒトの多発性過剰歯の発生由来として幹細胞が関与する可能性を報告した。また、CEBP/βとRunx2の解析により、上皮間葉転換が離脱した歯原性上皮幹細胞に過剰歯を発生させることを報告した。
著者
上田 正人 高橋 智幸 鶴田 浩章 徳重 英信
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

骨とサンゴにおける骨格形成メカニズムは,ほぼ同じである。既に確立されている骨形成・再生手法をサンゴに転用し,新規なサンゴ骨格形成促進手法を確立することを目的とする。具体的には,チタン製のスキャフォールド(足場)に骨形成の促進効果が認められている酸化チタンなどを成膜し,サンゴと連結する。水槽中,海底でサンゴを飼育し,スキャフォールド表面におけるサンゴ骨格形成を観察する。ここにおいても,医療材料開発で利用されているテクニックを駆使する。高効率なサンゴ骨格形成手法を探索すると共に,骨関連分野へも新たな切り口を提案し,協奏的に研究を発展させる。
著者
土屋 卓也 鈴木 貴 大塚 寛
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

この研究では、領域の変動が、その領域上で定義されている楕円型微分方程式の境界値問題の解に、どのような影響を及ぼすかについて調べた。特に、境界値問題の解を用いて定義される汎関数について、領域の摂動に関する第一変分、第二変分を計算する方法を確立した。その結果を用いて、有界領域上のGreen関数の領域の摂動に関する古典的なHadamardの変分公式を、簡便に計算する方法を発見した。また、「ダム問題」と呼ばれる自由境界問題について、解を制御する変分原理の領域の変動に関する第一変分、第二変分を計算し、さらに第一変分を用いた反復解法を新たに提案した。
著者
野村 理朗 Rappleye Jeremy 池埜 聡 高橋 英之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

もとより複合的な高次感情である「畏敬」は,喜び・怒り・悲しみといった基本感情とは異なり,それを生じさせる規定条件に不明な点が多い。この正負の方向へと分岐しうる畏敬の発生機序の解明が重要課題であるとともに,AI等の開発,自然災害等に関わる心理支援への応用などの可能性も秘めている。本研究は,心理学,比較文化,ロボット工学等の領域を横断して連携し,複合感情としての「畏敬」の効用,およびその個人差の基盤となる心理・生物学的機構を明らかにするとともに,フィールド調査やロボットを用いた構成論的アプローチを取り入れた方法論により,「畏敬」の応用までを視野にいれた革新的知見を得ることを目指す。
著者
武井 史郎
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

青色素胞はネズッポ科魚類の2種においてのみ報告されている色素胞であるが、その色素を構成する物質は未知である。本研究はなぜこれら2種だけが青色素胞を用いるのか?という問いに答えるために、魚類における青色素胞の機能的意義の解明を、質量顕微鏡法、ラマン顕微鏡法、電子顕微鏡による元素分析とを組み合わせて目指す。既知の青色素胞を持つ魚2種を用いて青色色素の同定を試みたのち、他の魚種においても解析を試みる。これらの解析により、魚類における青色素胞の意義と起源の解明を目指していく。