著者
溝部 俊樹
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.362-373, 2006 (Released:2006-07-26)
参考文献数
2

高校生がもっている麻酔科医像はテレビや漫画などの メディアによってつくられ, われわれ専門家の言葉は残念ながら彼らにはほとんど届いていない.   『白い巨塔』が書かれた時代 (1963年) には, 麻酔科医は物語に登場することさえなかったが, 徐々に麻酔科医が メディアに登場することが増えて, 仕事の内容はともかく知名度は向上している. しかし, メディアが麻酔事故のみを医療過誤として報道する時代が長く続いたため, 麻酔科医は常に麻酔事故とセットになって描かれ, ネガティブなイメージが広まってしまった. しかし, 今では麻酔科医の仕事が高校生にも理解され始め, メディアにおいて正確で客観的な描写もみられるようになり, 高校生が麻酔科医を正しく理解する基盤が整いつつある.
著者
菅間 誠之助
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.765-770, 1975-11-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
20

焼酎はどこから来たか。南の島沖縄を経て南九州に上陸し, ほとんどそこに定着した感がある。すなわち焼酎の製造, 消費は鹿児島, 宮崎, 熊本の三県にかたよっているが, その歴史は古く, 近代に至って自家製造から企業へと, 済酒業界に似た種々の試練を経て今日に至っている。民族の蒸溜酒たる焼酎は最近識者間にブームを呼び起こし, 年々県外移出数量も50%前後の伸びを示している。
著者
森田 耕喜
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.79-88, 1998-12-25

ハイデッガーの『存在と時間』における「死」の概念の分析が本稿の目的である。「存在の意味への問い」は「現存在」という自らの存在に自らの関わり得る特殊な存在者=人間存在によって遂行される。「世界-内-存在」とあり方で「世界」が「開示」されている「現存在」は、自ら発光する光源、事象が明るみに出される場、人間と「世界」との関係が照射される地平と言える。「世界」の開示性において、常に既にそこへと投げ込まれている「情態性」と、そこで開かれている「可能性」としての「了解」に基づいて、現在と未来という「時間」が浮上する。しかし、「現存在」は自らの様態を「気遣い」ながら、その本来的な可能性を回避し、「死」の「確実性」と不確定性を覆い隠して日常性に埋没し、「頽落」している。これに動揺を与えるのが「不安」であり、その対象は「世界-内-存在」そのものである。「現存在」の「存在」は「全体」として捉えられねばならないが、それは自らの終わりとして「全体」を完結させる極限としての「死」に関係する。「死」は「現存在」にとって「最も固有の、没交渉的で、追い越しえない可能性」としてある。
著者
関根 康史
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.845, pp.16-00250, 2017 (Released:2017-01-25)
参考文献数
14

Recently, AACN (Advanced Automatic Collision Notification) that presupposed cooperation with emergency life-saving organizations is expected. Therefore, emergency life-saving organizations must recognize injury speciation of patients, as quickly as possible. So, the author tried the traffic accident analyzing method by statistical data analysis from combing analysis items analysis items for main site of injury and analysis items for injury contents (indicated in the traffic accident statistics vote by Japanese National Police Agency). And furthermore it is necessary to improve the safety of vehicles not only for same class collisions but also for collisions between vehicles of different types (e.g., between SUVs and sedans). In this study, the author applied the method of analysis as described above for frontal collision between SUVs and middle sedans, and analyzed using statistical data stored in ITARDA (Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis). In the case of fatal or severe injuries, it is shown that the component rate of chest fracture of middle sedan drivers is higher than that of SUVs. It is supposed that the difference in these rates is caused by the vertical offset configuration between the frames of the two different types of vehicles when they crash into each other.
著者
後藤 綾 柳本 佳南 吉見 陽 鍋島 俊隆 野田 幸裕
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.7, pp.963-971, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

The early intake of alcohol and/or nicotine in childhood or adolescence is one of risk factors for alcohol and/or nicotine dependence in adult. Recently, non-alcoholic beverages with less than 0.00% alcohol are on sale for adults as substitutes for alcoholic beverages without strict legal limitations. However, it is unclear whether non-alcoholic beverages could be a risk factor in drinking and smoking in childhood or adolescence. The purpose of the present survey is to clarify the effect of non-alcoholic beverage intake in children on alcoholic beverage drinking and smoking. We examined as follows: the experience of alcoholic or non-alcoholic beverage intake, and of smoking in elementary school pupils and/or their family members, and interest in or motivation for drinking and smoking in the pupils. As a result, the percentage of alcoholic or non-alcoholic beverage intake, and of smoking in the pupils were 16.8% or 21.9%, and 0.3%, respectively. The number of family members took the alcoholic or non-alcoholic beverage was larger in the pupils took it compared to the pupils did not take it. In the pupils who experienced the non-alcoholic beverage intake, interest in or motivation for drinking alcoholic beverages and/or smoking is higher than in those who did not. These findings indicate that non-alcoholic beverage intake is related to drinking and smoking. We will introduce drug abuse prevention education on the risk of drug dependence among childhood or adolescents based on the findings of this survey.
著者
百瀬 泰行
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.337-344, 2015-12-31 (Released:2016-01-26)
参考文献数
10
被引用文献数
1

気管支喘息,COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の薬物治療において吸入薬は中心的な治療薬であり,治療効果をあげるには適切な吸入指導が必要となる.吸入指導は,単に吸入薬の操作や吸入動作を説明するのではなく,治療効果ならびにアドヒアランス向上を目指すことを念頭におき指導内容を考える必要がある.そのためには,少なくとも,吸入薬の重要性の説明,吸入操作指導,吸入動作指導,副作用防止についての説明は必須である.これら項目を適正に,かつ指導に関わる多くの医療職種間で連携しながら実施してくことが重要である.
著者
水本 正晴
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.43-59, 2004-07-25 (Released:2009-05-29)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

Swampan poses a problem for physicalists who adopt the teleological approach to functionalism. In this paper I reformulate the intuitive idea behind the physicalists' worry about it as "Swampman argument", and consider possible rejoinders, including Maeda (1999)'s claim that swampman is not even imaginable. This paper was originally intended as a comment on Maeda's reply to Mizumoto (2000), which criticized his (1999).
著者
菊池 大一
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.319-327, 2011-09-30 (Released:2012-10-13)
参考文献数
30

解離性健忘は, 脳の器質的損傷ではなく, 精神的ストレス・外傷を契機として発症し, 自伝的記憶を想起することが持続してできない状態をいい, 心因性あるいは機能性健忘とも呼ばれる。解離性健忘は従来, 精神医学的な視点から論じられてきたが, 近年は神経科学的なアプローチがなされ, とくに機能画像を用いた研究により脳の水準での機能異常が示されるようになってきた。解離性健忘の脳内機序として, 前頭葉の遂行機能システムの活動による内側側頭葉の記憶システムの抑制という説, 自伝的記憶の想起の始動に関わる右半球の前頭-側頭領域の機能的離断という説があり, 最近の研究からはそれぞれを支持する結果がともに得られている。本稿では解離性健忘の神経基盤について, 機能画像研究の結果を中心に最近の神経科学的知見をまとめ, 神経学的な視点から概説し考察する。

7 0 0 0 OA 迷彩と偽装

著者
宮下孝雄 著
出版者
成武堂
巻号頁・発行日
1943
著者
山﨑 沙織
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.105-122, 2015 (Released:2016-06-30)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

本稿は, 1960年代に年間6万人の参加者を集めた長野県PTA母親文庫を研究対象とし, その参加者たちにとって「読書」がいかなるものであったか, また, その「読書」はどのような立場や能力に結びつく活動だったかを問うものである. それにあたってはエスノメソドロジーの視座に基づいて参加者たちのつくった文集をひもとき, 参加者たちが母親文庫での「読書」経験をどのように提示しているかを検討する.検討の結果, 本稿の問いに以下の3点から回答を与えることができた. 1点目は, 参加者たちが, 「時代の変化について行く」ために読書をしていたことである. ただし, 参加者たちは「時代の変化についていくこと」を母親特有の課題ではなく自分と周囲の人々すべてにとっての課題と考えていた. 2点目は, 参加者たちが読書することと農家の主婦であることを両立させようとしていたことである. 家事も農作業も読書もすることは困難であったが, この困難の共有は参加者たちの仲間意識を強固にした. 3点目は, 独自の「読書」観をもつようになった参加者たちが「読書」活動により, 「農家の主婦」でもなく「教育する母親」でもなくいられる貴重な場を得ていたことである. この場は, 参加者たちが, 読書を「農家の主婦」の振る舞いから抜け出す行為と位置づけていたこと, また, 自分たちのことを子供よりも時代に遅れがちと見なし, 子供の世話より「読書」を優先させることを正当化していたことで支えられていた.
著者
小畑 弘己 丑野 毅 高瀬 克範 山本 悦世 高宮 広土 宮ノ下 明大 百原 新 那須 浩郎 宇田津 徹朗 中沢 道彦 中山 誠二 川添 和暁 山崎 純男 安 承模 田中 聡一 VOSTETSOV YU. E. SERGUSHEVA E. A. 佐々木 由香 山田 悟郎 椿坂 恭代
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

日本の考古学において、縄文時代の農耕の存否問題は古くから議論され、今でも論争中の課題である。この混乱の根底には、確実な栽培植物が存在しなかったという研究上の制約があった。我々は、この問題を解決するために、土器中に残る植物種子や昆虫の痕跡(土器圧痕)を検出することで解決しようと考えた。研究期間内に、日本列島の縄文時代~弥生時代171遺跡、海外の新石器時代9遺跡において圧痕調査(約400, 000点の土器)を実施し、多種・多様な栽培植物種子や貯蔵食物害虫(総数552点)を検出した。また、圧痕法の学問的定立のための方法論的整備を行った。その結果、まだ問題点は残るものの、縄文時代の栽培植物の実態と問題点を明らかにすることができた。