著者
岡ノ谷 一夫
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-8, 2010 (Released:2011-07-14)
参考文献数
20

言語はヒトに特有な行動だが、言語の起源を生物学的に理解するためには、「言語を構成する下位機能は動物とヒトで共通であり共通の神経解剖学的基盤を持つ」と仮定する必要がある。この考え方を、「言語起源の前適応説」と言う。発声可塑性、音列分節化、状況分節化の3つの下位機能(言語への前適応)について、動物実験から得られた知見にもとづき、これらの機能の進化的獲得過程と神経科学的基盤を考察する。得られた結果を総合して、言語に先立ち歌がうまれ、歌の一部と状況の一部が対応を持つことで単語と文法が同時に創発し、言語が始まったとする考え方を「音列と状況の相互分節化仮説」として提案する。
著者
宇多川 隆
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.477-484, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1 7

魚醤は魚を塩漬けにして,発酵される伝統的な調味料であり,その製造には約1~3年の長期間を要する。近年,タンパク質分解酵素製剤や麹を添加する方法が開発されているが,微生物汚染を避けるために食塩の添加は必須であった。著者は高温条件(55℃)において,微生物汚染を回避し,かつ,食塩阻害によるタンパク質分解酵素の阻害を回避するために,食塩無添加でサバ魚醤の発酵期間を15時間前後と大幅に短縮でき,ヒスタミン生成菌の汚染も回避でき,ヒスタミンの生成が10~20ppmに抑制できる速醸法を開発したので,解説頂いた。
著者
降籏 孝
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.329-336, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
26

昭和初期に,自由画教育運動が下火になる中で,地方のいくつかの学校では臨画教育ではなく児童・生徒の身の周りに目を向け生活を描かせる想画教育が行われていた。三大想画実践校の1つ山形県長瀞校の想画教育についてあらためて再考し,その教育が継承され,現在の長瀞小学校において教育実践されている経緯を調べると共に,その教育的意義を明らかにした。長瀞校の想画教育は,子供らを取り巻く家庭や生活に目を向けさせることを教育理念として,1教科の枠を越えた教科横断的な教育実践の取組みであった。それが,現在の長瀞小学校の教育にも継承され,児童たちは自然や生活を見つめ複数の教科をとおして俳句・書写・想画として表現され,地域の人々に認められる充実した教育活動となっていた。
著者
杉田 泰之
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.3-13, 2001 (Released:2007-11-30)
参考文献数
41
被引用文献数
3 3

Polymerase chain reaction(PCR)によるMycobacterium lepraeの遺伝子の検出は、従来の抗酸菌染色では検出できない少量の菌を高感度に検出することを可能にした。ハンセン病の診断にはM.lepraeの検出が決定的な診断根拠となるため、PCRの利用によって簡便かつ正確に診断することが可能になると期待される。横浜市立大学医学部皮膚科学教室では、M.lepraeを検出するためのPCRを独自に設定し、多くの医療施設から検査依頼を受けている。ハンセン病におけるPCRについて解説するとともに、理論的な特徴、利用する際の具体的な注意点等を述べ、1994年から2000年までの7年間に当教室で行った59例の検査の結果を示した。
著者
奥原 剛 木内 貴弘
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.91-106, 2020-06-16 (Released:2020-08-26)
参考文献数
54

本稿では進化生物学的視点を採用したヘルスコミュニケーション研究・実践の可能性を考察する。進化生物学の視点で見ると,人の行動には至近要因と究極要因がある。これまでの行動変容理論・モデルを用いたヘルスコミュニケーションは至近要因に着目してきたが,至近要因は人の行動の要因の一部に過ぎない。人の意思決定や行動を考えるには究極要因にも目を向ける必要がある。人の心や行動は,生存と繁殖上の問題を解決するよう自然淘汰を経てデザインされてきた。したがって,人は生存と繁殖及びそれに関連する社会的協力・競争の欲求を持つ。これらが人の究極要因レベルの欲求である。人の究極要因レベルの欲求が,意思決定や行動に影響を与えることが,心のモジュール理論や認知機能の二重過程理論の関連研究で示されている。これらの先行研究をふまえ,ヘルスコミュニケーションで対象者のより良い意思決定を支援するために「何を」「どう」伝えたらよいかを提案し,がん対策への示唆を示す。
著者
宮井 恵里子 杉野 公基
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.1, pp.37-45, 2009 (Released:2009-07-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

海外において,既に尋常性ざ瘡(ニキビ)治療の中心的役割を果たしている外用レチノイドの一つ「アダパレンゲル0.1%(販売名:ディフェリン®ゲル0.1%)」が,2008年10月に発売された.本剤は,国内初の全く新しい作用機序のレチノイド様作用により,尋常性ざ瘡を治療する薬剤である.有効成分アダパレンは,表皮細胞の核内レチノイン酸受容体(retinoic acid receptor, RAR)に結合し,標的遺伝子の転写促進化を誘導する.正常ヒト表皮角化細胞のトランスグルタミナーゼ発現を抑制したことより,ケラチノサイト分化(角化)抑制作用を示すと考えられる.In vivoではざ瘡モデル動物であるライノマウスへの塗布で表皮面皰数の減少と,表皮厚の増加が示された.以上の結果から,アダパレンは表皮の顆粒細胞から角質細胞への分化を抑制することで,毛包漏斗部を閉塞している角層を除去することが推測された.国内臨床試験において,アダパレンゲルは,1日1回12週間の塗布で尋常性ざ瘡患者の総皮疹(非炎症性皮疹および炎症性皮疹)数を63.2%減少させた.最長12カ月間の塗布では,総皮疹数の減少率は,最終観察日で77.8%に達した.アダパレンゲルが非炎症性および炎症性のいずれの皮疹も減少させることは,これまでの抗菌薬治療では補えない特長である.アダパレンはレチノイド様作用を持つ故,高用量曝露時の催奇形性が懸念されたが,国内臨床試験ではいずれの被験者においても血中にアダパレンが検出されなかった(検出限界:0.15 ng/mL).よって,全身的副作用のリスクは非常に低いものと考えられた(但し,妊娠中の使用に関する安全性は確立していないため,「妊婦または妊娠している可能性のある婦人」に対しては,禁忌である).現在,アダパレンを含む外用レチノイドは尋常性ざ瘡治療の第一選択薬として海外で推奨されている一方,2008年9月日本皮膚科学会が策定した「尋常性ざ瘡治療ガイドライン」においても,主たる皮疹が「面皰」ならびに「炎症性皮疹(軽症から重症)」の場合,推奨度A(使用を強く推奨する)に位置づけられた.海外臨床試験で示された,外用ならびに内服抗菌薬との併用療法,さらには軽快後の寛解維持療法における有用性が評価され,同様に推奨度Aと認定されている.以上より,アダパレンゲルは,国内の尋常性ざ瘡診療において,新たな治療の選択肢として期待できる新規外用剤である.
著者
山村 滋
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.157-170, 2010-06-30 (Released:2017-11-28)

本稿は、高大接続の問題点に、2つのアプローチにより迫り、それを踏まえて改善のための基本的構想を提示したものである。大学入試と高校教育の多様化は、高校教育の学力的・学習内容的拡散、受験シフトをもたらした。また、高校までに身についた技能と大学で必要な技能の分析の結果、「パフォーマンスにもとづく評価」が適する技能・能力が、大学での勉学のために必要なことが明らかになった。したがって、大学で必要な技能を含む学力・能力の形成にも資する高校教育課程を前提として、受験シフトを防ぐように工夫された、高校での成績の評価に基づく大学入学システムが必要なのである。
著者
溝上 慎一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.343-353, 2013-10-25 (Released:2013-12-25)
参考文献数
37
被引用文献数
1 2

The present study empirically tested the conceptualization of the decentralized dynamics of the self proposed by Hermans & Kempen (1993), which they developed theoretically and from clinical cases, not from large samples of empirical data. They posited that worldviews and images of the self could vary by positioning even in the same individual, and denied that the ego was an omniscient entity that knew and controlled all aspects of the self (centralized ego). Study 1 tested their conceptualization empirically with 47 university students in an experimental group and 17 as a control group. The results showed that the scores on the Rosenberg’s self-esteem scale and images of the Mes in the experimental group significantly varied by positioning, but those in the control group did not. Similar results were found in Study 2 with a sample of 120 university students. These results empirically supported the conceptualization of the decentralized dynamics of the self.
著者
陸 金林 安藤 裕司 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.642-648, 1992-09-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本論文では音声音源波形を生成するために拡張したRosenberg-Klattモデル(RKモデル)を述べ、音声信号から半自動的にモデルパラメータを精度よく推定する方法を提案する。また、音声音源特性と発声様式の関係を調べる。弱い発生などによく見られる相対的に強い基本波成分を生成するため、RKモデルに一つのパラメータを追加する。音源パラメータの推定は声門逆フィルタリングとモデルパラメータの抽出の2段階からなっている。声門逆フィルタに用いられるホルマント周波数とバンド幅の推定には、我々が最近提案した複数閉鎖区間線形予測分析法(MCLP)を用いる。男性2名が異なる強さと高さで発声した母音サンプルを用いて音源パラメータを分析した。その結果、モデルパラメータの幾つかは発声の強さ及びピッチ周波数と系統的に関係することを示した。
著者
古関 潤一 ファウジ ウサマジュニアンシャー 佐藤 剛司 宮下 千花
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.565-568, 2014-11-01 (Released:2015-01-15)
参考文献数
2

浚渫土を用いて埋立てた砂質地盤が分級堆積構造を有している点に着目し,実際に液状化した埋立て砂質土を用いた2 種類の再構成供試体の非排水繰返し中空ねじり試験を実施した.浚渫埋め立て地盤を模擬する水中落下法で作成した不均質な供試体は,湿潤突き固め法でほぼ同一の平均相対密度となるように作成した比較的均質な供試体よりも液状化強度が高かった.不均質な供試体の試験では,堆積中の分級作用で生じた上部シルト薄層における局所的な変形量が,その下の砂層部分の変形量よりも大きかった.
著者
石井 一郎 平舘 亮一 東畑 郁生 中井 正一 関口 徹 澤田 俊一 濱田 善弘
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.91-107, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2

2011年東北地方太平洋沖地震により,東京湾岸に位置する千葉県浦安市では液状化現象で戸建住宅などの建築物やライフライン等に甚大な被害が発生した。浦安市内の被害が大きかったエリアにおいて,地震後にボーリング,サウンディング等の地盤調査を実施して,土質構成および土質特性を詳細に把握した。その結果,埋立砂質土層および沖積砂質土層の一部で土砂の噴出を伴う液状化が生じ,建築物やライフライン等が被災したことを確認した。本稿では,これらの液状化被害が生じた地盤の情報をできるだけ詳細に記述するとともに,表層地盤の土質特性および埋め立て時の排砂管吐出口の位置と建築物や下水道施設の液状化被害との関係を考察した。また、繰返し非排水三軸試験から得られた液状化抵抗比を求めた結果,原位置試験と土の物理特性から得られる液状化抵抗比と良く整合した。
著者
市川 雷師 守屋 達美 保坂 辰樹 福西 智子 沖崎 進一郎 小川 顕史 鈴木 貴博 松原 まどか 高田 哲秀 田中 啓司 藤田 芳邦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.495-500, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
19
被引用文献数
2

症例は65歳の男性.2型糖尿病で食事療法,インスリン療法を受けていたが,HbA1cは7~9%台であった.2008年9月下旬感冒を契機に食思不振となり,インスリン注射を中断した.10月12日意識障害,異常行動を主訴に当院を受診し,糖尿病性ケトアシドーシス(Diabetic ketoacidosis:以下DKAと略す)の診断で入院した.第2病日から腹痛を訴え,腹部CTで門脈ガスを認めた.腸管壊死を疑い上腸間膜動脈造影を行なったが,血栓や閉塞はなく非閉塞性腸管虚血症(Nonocclusive mesenteric ischemia:以下NOMIと略す)と診断した.血管拡張薬の持続投与も効果なく,第3病日緊急手術を施行し救命できた.NOMIは特徴的所見がなく診断が困難であり死亡率も高い.DKAでは腹痛を訴える症例が少なくなく,鑑別としてNOMIも念頭に置き診療にあたる必要がある.
著者
筒井 昭仁 小林 清吾 野上 成樹 境 脩 堀井 欣一
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.79-88, 1983 (Released:2010-11-26)
参考文献数
33
被引用文献数
8

4つの小学校からの卒業生が進学する新潟県燕市立燕中学校の1年生計502名を対象に, 1980年5月, 検査者盲検法 (Blind Recerding Method) によりう蝕の状況と歯牙不潔度を調査した。その結果, 4つの小学校からの卒業生を, それぞれA, B, C, D群とした時, 小学校において特記すべき歯科保健対策の採られてこなかったA群はDMFS index 8.24 (SE=0.54), B群8.70 (0.54) であった。これに対し, 歯科保健対策として毎給食後の歯みがきを学校で実施してきたC群歯みがき群は7.99 (0.47) であり, 小学校入学時よりフッ素洗口法を行なってきたD群フッ素洗口群は4.56 (0.41) であった. C群のDMF Sindexは, A, B群を合わせた対照群に比べ5.8%少なかった。しかし, この差は統計学的に有意ではなかった。一方, D群のDMFSindexは, 対照群に比べ46.2%少なく, この差は統計学的に高度に有意であった。各群単位でみた歯牙不潔度, 治療歯率は, それぞれの群の間に統計学的な有意差は認められなかった。また, 別に調べたD群の出身小学校6年生のDMFT indexは, フッ素洗口法を開始した1973年の6年生が4.84 (SE=0.26) であったが, 8年後の1981年の6年生では3.00 (0.27) で, その差は38.0%であり, 統計学的に有意であった。以上, 小学校における毎給食後の歯みがきの励行は, 中学1年生時のう蝕り患状況の改善には有意に作用しなかった。一方, 小学校における週3回のフッ素洗口法の実施は有意に作用し, 同年齢の非フッ素洗口群に比べ口腔全体で40%前後のう蝕抑制効果をもたらした。これらの歯口清掃群およびフッ素洗口群の結果から, 学校歯科保健対策として採るべき方策について考察した。

3 0 0 0 OA 毫鍼の改革

著者
木下 晴都
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
日本鍼灸治療学会誌 (ISSN:05461367)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.14-22, 1968-01-15 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15