著者
田井 政行 澤田 知幸 下里 哲弘 日和 裕介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.13-20, 2019
被引用文献数
1

<p> 本研究では,風作用により渦励振が生じる照明柱に着目し,無線加速度センサを用いた疲労損傷度推定手法の提案を行った.道路橋照明柱で加速度及び応力計測を実施し,対象照明柱が渦励振により2次モードで振動することが明らかとなり,常時より疲労損傷が蓄積される可能性が示唆された.また,加速度応答から照明柱基部に生じる応力の推定法を提案した.提案手法に基づき算出した疲労損傷度は,応力計測結果から得られた値と同程度であり,加速度計測から疲労損傷度推定の可能性を示した.</p>
著者
金 成浩
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.195, pp.195_11-195_26, 2019

<p>This article discusses how South Korea's "cross-recognition" policy influenced the political structure of Northeast Asia during the 1980's. The "cross-recognition" means that China and the Soviet Union would recognize South Korea in exchange for the United States and Japan recognizing North Korea. With the recent release of official documents from South Korea, Japan and Russia, etc., it has become possible to analyze this subject in more details.</p><p>To answer the question stated above, this article especially focuses on the foreign policies that South Korea tried to implement with Japan, China, the Soviet Union, North Korea, and the United States from 1983 to 1987 under the Chun Doo-Hwan Administration.</p><p>Many previous studies discussing the transformation of the Cold War structure in Northeast Asia paid to attention to the Northeast Asian history following the Seoul Olympics of 1988. In contrast, this study points out the importance of historical events that occurred from 1983 to 1987. Moreover, after analyzing multilateral relationships among Northeast Asian countries, it highlights that the beginning of the change in the Cold War structure in Northeast Asia can be linked the events in 1986.</p><p>South Korea tried to improve relations with China through the Japanese prime minister, Yasuhiro Nakasone, from 1983 to 1986. South Korea aimed to establish its position in the international society through the 86' Asian Games and the 88' Seoul Olympics. For the success of these athletic meetings, South Korea viewed the participation of China and the Soviet Union necessary. In 1984, therefore, the South Korean government pursued concrete measures towards successful cross-recognition.</p><p>First, Chun Doo-Hwan asked Nakasone to serve as an intermediary vis-a-vis China. China made informal contacts with South Korea. In turn, North Korea was threatened by South Korea's developing relationship with China, thus tried to strengthen its ties with the Soviet Union. Two international dynamics emerged in Northeast Asia consequently. One was the trend toward closer relations among South Korea, Japan, China and the United States. The other was the development of a more intimate relationship between the Soviet Union and North Korea.</p><p>However, M. Gorbachev, the then Soviet Union leader, began to implement a new form of diplomacy toward China and South Korea starting from the end of 1985 to the middle of 1986. As a result, North Korea's isolation in Northeast Asia became more serious by the end of 1987.</p><p>In general, when considering the transformation of the Cold War structure in Northeast Asia, one tends to emphasize the role of Gorbachev. However, this study points out that the new Chinese diplomacy, which had begun before Gorbachev's new diplomacy, also played a similarly important role in the transformation of the structure.</p>
著者
深井 恭子 小松 恒太郎 松尾 雄司 林 健太郎 苅谷 嘉之 宮城 拓也 山口 さやか 照屋 操 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.115-119, 2019
被引用文献数
1

<p>症例 1:87 歳,男性。18 歳時に L 型ハンセン病と診断された。5 年前から左足背に皮膚潰瘍があり,次第に隆起してきた。初診時,左足背に腫瘤があり,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し,左下腿切断術を施行した。症例 2:54 歳,男性。20 歳で L 型ハンセン病と診断された。43 歳頃より右第1 趾に皮膚潰瘍があり,47 歳時,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し右下腿切断術を施行した。30 代から左足底には胼胝があり,52 歳頃に皮膚潰瘍が出現した。54 歳時,潰瘍が増大し,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し,左第1~3 趾切断術を行った。術後約 3 カ月で術後創部から再発,肺に転移し永眠した。ハンセン病の慢性潰瘍は瘢痕癌の発生母地となる。瘢痕癌は他の有棘細胞癌より予後不良であり,ハンセン病の後遺症による神経障害で生じた難治性潰瘍は注意深く経過観察する必要がある。</p>
著者
比嘉 勝一郎 山川 慶 島袋 孝尚 金城 英雄 金谷 文則 屋良 哲也 勢理客 久 仲宗根 朝洋 宮里 剛成 野原 博和
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.258-262, 2019

<p>脊椎術後に発生する髄液漏には様々な経過があり,それぞれの状態に応じた治療がなされるが,時として治療に難渋する.今回,脊椎術後に発生した髄液漏の3例を経験したので報告する.【症例1】49歳女性.頚椎神経鞘腫再発に対し手術を施行,術後5週目創部に14 cm大の髄液漏による偽性髄膜瘤を生じた.頭痛はなく頚椎カラーの装用で経過観察行った.著変なく経過したが,腫瘤は術後9ヵ月目に数日で急速に縮小した.【症例2】63歳女性.頚椎後縦靭帯骨化症に対し椎弓形成術を施行,椎弓を持ち上げる際に髄液の漏出があった.術後ドレーン内に髄液を認め髄液漏と診断,腰椎スパイナルドレナージを行い改善した.【症例3】86歳男性.頚椎症性脊髄症の術後感染でデブリドマンを行った際に硬膜を損傷し,術後創部より髄液の漏出が持続した.数回手術を行うも改善しなかったが,ファーラー位を継続したところ徐々に髄液漏は減少し,遊離脂肪移植術を行い改善した.</p>
著者
杉森 一哉 沼田 和司 岡田 真広 二本松 宏美 竹林 茂生 前田 愼 中野 雅行 田中 克明
出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.225-236, 2019

<p><b>目的</b>:慢性肝疾患患者にガドキセト酸ナトリウム(gadolinium ethoxybenzyl diethylenetriaminepentaacetic acid: Gd-EOB-DTPA)での核磁気共鳴画像 (magnetic resonance imaging: MRI)(EOB-MRI)および造影超音波を施行して,早期肝細胞癌(early hepatocellular carcinoma: eHCC)や高度異型結節(high grade dysplastic nodule: HGDN)と再生結節(regenerative nodule: RN)の鑑別に有用な特徴的所見を調査した.<b>対象と方法</b>:最大径が1 cm以上でかつ病理学的に診断された平均腫瘍径がそれぞれ15.5 mm,15.1 mm,14.8 mmの早期肝細胞癌(100結節),HGDN (7結節),RN (20結節)を後ろ向きに検討した.これらの結節のEOB-MRI肝細胞相の信号強度所見と,造影超音波動脈相の所見を用い,RNに特徴的な所見について検討した.<b>結果</b>:早期肝細胞癌100結節中98結節は,EOB-MRIの肝細胞相で低信号(n=95),等信号(n=2),高信号(n=1)を呈し,HGDN 7結節は,低信号(n=6),または高信号(n=1)を呈し,造影超音波動脈相においてはいずれも求心性血管を認めた.早期肝細胞癌1結節では,EOB-MRI肝細胞相で低信号を呈し,造影超音波動脈相で遠心性血管と求心性血管の両方が観察された.RN 20結節中18結節と早期肝細胞癌の残りの1結節ではEOB-MRIで結節中心に小さな低信号域を伴い,周囲は高信号を呈した.残り2結節のRNでは肝細胞相で高信号のみを呈し,造影超音波動脈相で遠心性血管が観察された.結節中心部の小低信号域は,造影超音波動脈相では中央から辺縁に向かって走行する肝動脈とそれに伴走する門脈に一致していた.<b>結論</b>:EOB-MRI肝細胞相および造影超音波動脈相での中心部の血管構造所見は,RNに特徴的な所見である可能性がある.</p>
著者
当真 孝 山口 浩 森山 朝裕 前原 博樹 當銘 保則 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.56-59, 2019

<p>三角筋断裂を伴う広範囲肩腱板断裂の治療にはしばしば難渋する.我々は三角筋断裂を伴う広範囲腱板断裂の2例を経験したので報告する.症例1 69歳女性.5年前から右肩痛を自覚.1年前より近医受診で内服,ステロイド注射を行っていた.3カ月前に突然右肩挙上困難出現,MRIで三角筋断裂を合併した広範囲肩腱板断裂を指摘され当科を紹介.初診時身体所見は右肩痛を認め自動肩関節可動域屈曲20度,外旋30度,内旋Th8でJOAスコアは45点であった.腱板一次修復術と三角筋修復術を施行し,術後64カ月で自動肩関節可動域屈曲105度,外旋65度,内旋Th8,JOAスコア86.5点へ改善を認めた.症例2 82歳女性.3年前より右肩痛,可動域制限を自覚.1週間前より誘因なく右肩関節腫脹,皮下出血を認め近医受診.三角筋断裂を伴う広範囲腱板断裂を認め,手術目的に当院紹介.初診時身体所見は肩痛を認め自動肩関節可動域屈曲0度,外旋10度,内旋Hip,JOAスコアは25点であった.腱板修復術に大胸筋移行術を併用し,三角筋修復術を施行し,術後12カ月で自動肩関節可動域屈曲65度,外旋45度,内旋L1,JOAスコア58点へ改善傾向を認めた</p>
著者
與那嶺 隆則 大久保 宏貴 金城 政樹 普天間 朝上 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.92-95, 2019

<p>39歳,男性,医学生.1年前から右示指の腫脹を,2か月前から同部位の疼痛を自覚し当院を受診した.中節レベルに腫脹・圧痛を認め,単純X線像上,中節に菲薄膨隆化を伴う骨透亮像を認めた.MRIではT1強調像で低輝度,T2強調像で内部の液面形成を伴う高輝度の腫瘍性病変を認めた.その後,腫脹と圧痛は急速に増悪し,手術直前(初診後6週)の単純X線像では中節皮質骨の菲薄化は著明に進行,一部途絶していた.創外固定器装着,腫瘍搔爬,人工骨・自家骨(β-TCP)移植術を施行した.病理診断は骨巨細胞腫による二次性動脈瘤様骨嚢腫であった.移植骨の良好なリモデリングを認めたが,術後12か月で中節基部掌側に腫瘍が再発した.再手術で腫瘍搔爬,フェノール処理,人工骨(α-TCP)充填を行い,術後はデノスマブ皮下注を行った.再手術後7か月,腫瘍の再々発はなく,可動域制限は軽度残存するが趣味のチェロ演奏も可能で,日常生活に支障はない.</p>
出版者
日経BP社
雑誌
日経systems (ISSN:18811620)
巻号頁・発行日
no.179, pp.88-93, 2008-03

リッチクライアント技術は「RIA」と呼ばれることが増えてきた。その代表は米Microsoftの「Silverlight」と米Adobe Systemsの「Adobe AIR」である。この二つの技術を業務アプリケーションで使うとしたら,どういった使い方をすると特性を生かせるのだろうか。サンプルを作ったり調査したりして,使いどころを探った。検証を担当したプログラマの大澤さんに報告してもらう。
著者
山戸 美智子 浅見 佳世 武田 義明
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-13, 2004
参考文献数
50

沖縄諸島以南の琉球列島において,半自然草原の群落分類を再検討した結果,ススキクラスの3群団に,4群集と4下位単位が認められた.オーダーについては未決定とされた.琉球列島において,高速道路法面や飛行場といった除草管理下の都市域の造成地に広がるチガヤ型草原は,シロバナセンダングサ,コバナヒメハギ,アメリカホウライセンブリなどの出現によって,新群集のチガヤ-シロバナセンダングサ群集としてまとめられた.本群集は一年生植物,帰化植物,ヨモギクラス,シロザクラスの種の比率が高く,半地中植物やススキクラスの種の比率が低いという特徴をもつ.この特徴は,東北から九州にかけて同様の立地に成立するチガヤ-ヒメジョオン群集と類似しており,本群集は本土のチガヤ-ヒメジョオン群集に対応する琉球列島における除草草原型の群集と考えられた.また,ススキ型の群集として,ススキ-ホシダ群集が認められたが,本群集は2つの下位単位に区分され,この下位単位の分化は管理の有無に対応していた.管理の放棄された立地で認められた典型下位単位は,伝統的な管理地に見られるキキョウラン下位単位とは,種組成や相観の変化に加えて,種多様性も大きく低下していた.このように,琉球列島の半自然草原では,本土と同様に,除草,管理水準の低下といった近年の草原における環境条件の変化が,半自然草原の植物社会に新たな組成群の形成や種組成の単純化などの影響を与えていることが明らかとなった.さらに,旧来の半自然草原は,管理水準の低下だけでなく,草地改良などによっても急速に減少している.今後,生物多様性保全の観点から,琉球列島における半自然草原の詳細な現状把握や保全対策を早急に進める必要性が示唆された.
著者
嶺田 拓也 沖 陽子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.81-87, 1997
被引用文献数
8

埋土種子集団は防除体系や耕起法など圃場に対する過去の人為的働きかけを反映する。そこで農生態系における雑草種の管理戦略を組み立てるために, 雑草防除法, 耕起法, 作付け様式などの管理の異なる岡山県南部の水田8圃場の土壌を, 入水前の6月に地表から0-5, 5-10, 10-15, 15-20cmの4層に分けて採取し, 炭酸カリウム50%溶液を用いた比重分離法で埋土種子を回収した。埋土種子総数は, 手取り除草中心の圃場よりも除草剤連用の水田で少なかった。そして休耕田や粗放管理の圃場では, ノビエ類を中心に埋土種子数が除草剤連用水田の3倍以上であった。また不耕起田では, 種子の分布は表層部に偏り, 反転耕を行っている圃場では地下20cm近くまで種子の分布が多くみられた。草種別ではコナギ・アメリカコナギの種子数が, 手取り除草を続けている圃場で多くなる傾向を示した。そしてイネ単作圃場より, 麦やレンゲを栽培し秋から春にかけての耕起回数が少ない圃場で, スズメノテッポウを中心とする冬生雑草が多くなった。また主な草種において比重分離法で回収された種子と発芽法にて発生してきた本数との間には有意な回帰式を導くことができた。
著者
山口 悦司 舟生 日出男 出口 明子 稲垣 成哲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.391-392, 2010

筆者らは,iPhone/iPod touchの環境で運用できるデジタル運勢ラインシステムを開発している.本研究では,同システムの試験的評価として,大学院生を対象とした実験授業を実施し,大学院生への面接調査を通して,iPhone/iPod touch版システムとして新たに生じると考えられるユーザインターフェース上の利点や問題点を明らかにした.その結果,小さくて,軽いデバイス上で同システムを利用すること,マルチタッチ入力のデバイス上で同システムを利用すること,1人1台のデバイス環境で同システムを利用することの利点や問題点が明らかとなった.
著者
森 重敏
出版者
教育心理学研究
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.1-11,60, 1969
被引用文献数
2

普通の1小学校における知的優秀児の検出によってその存在率を確認し,そこで試みたいろいろな調査によって,優秀児の発達的な特徴を検討した。それぞれの調査面において,少なからず知的優秀児の優位が認められたが,その他にも,傾向としてみられるかれらの優秀性が暗示された。と同時に,同等性も少なからず示された。そこには,調査法や実施面その他についての難点もいくらか反省点として見出されるのであるが,この調査を基礎として,残された次の課題,とくに性格特徴の把握へ進み・知的優秀児の本質の解明へ接近しようとするものである。付記:末尾ではあるが,本研究の遂行にあたってあたたかい御助言を賜わった山下俊郎先生,および調査実施に際して快く御協力くださった三光小学校校長遠藤五郎先生ならびに積極的に御尽力くださった外村近教諭その他の先生方に対して心から感謝の意を表したい。なお,実施に多大の労を要した諸種の検査および調査は,東京家政大学児童学研究室の上原万里子,伊藤礼子両助手の手によるものである。あわせて深謝したい。
著者
田中 百香 藤井 佑梨奈 曽我 聡起
出版者
日本デジタル教科書学会
雑誌
日本デジタル教科書学会年次大会発表原稿集
巻号頁・発行日
vol.4, pp.69-70, 2015

<p>小学生が水族館などの施設見学をする際に、より深く理解してもらうためにデジタル教科書を利用することで、紙の教材では得られない情報の提示が可能になると考えている。</p><p>そのため、我々はApple社が無料で提供しているマルチタッチブック作成アプリケーションであるiBooksAuthorを用いて、HTMLwidgetをiBooks Author内に埋め込み、クイズ形式で理解を深めることが可能なデジタル教科書を作成する。ほかに、HTMLwidgetではHTML5を用い、小学生がタッチや移動などの操作を行うことで、より楽しくゲーム感覚で学べるようなものを検討している。また、先般iBooks AuthorコンテンツがiPhoneにも対応したことにより、i P h o n eで気軽に利用してもらえるようなデジタル資料となっている。本発表では、施設見学に来た小学生向けデジタル教科書を試作し、実演を交えて紹介する。</p>
著者
大和田 道雄 秋山 祐佳里 畔柳 洋子 中川 由雅 石川 由紀 櫻井 麻理
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.216, 2005

_I_ 研究目的<BR> 近年,我が国の大都市では,夏季の夏型気圧配置時において異常高温が出現する傾向がみられるようになってきた。これは,都市域の拡大や排熱量の増加,および地表面の透水層や緑地の減少等によるヒートアイランド強度が強まったことも考えられるが,夏型気圧配置のパターンや出現頻度が変わってきたことも事実である。特に,名古屋と大阪では,1990年以降,東京に比較して異常高温の出現率が高まる傾向にある。そこで,本研究はその要因を夏型気圧配置の出現傾向と大気大循環場から探ろうとするものである。<BR>_II_ 資料および解析方法<BR> まず,異常高温の出現頻度が増加傾向を示す1980年以降の夏型気圧配置分類を行った。夏型気圧配置は,北太平洋高気圧の張り出し方によって出現頻度が最も多い南高北低型と東高西低型,全面高気圧型,およびオホーツク海高気圧型に分類した。さらに,北太平洋高気圧の張り出しが亜熱帯ジェット気流の緯度的・経度的位置,およびトラフ・リッジに対応することから,チベット高原を中心にしたユーラシア大陸に形成される南アジア高気圧の関係を把握するため,NCEP/NCARの再解析データから200hPa面における南アジア高気圧の盛衰との関係を求めた。<BR>_III_ 結 果<BR> 名古屋・東京・大阪の過去約45年間における35℃以上の出現日数を時系列で表し,移動平均に直した結果,2000年以降は東京が4_から_5日であるのに対し,名古屋と大阪は15日以上出現するようになった。これは,1970年当時に比較して約3倍である。これらの異常高温日数は,年による変動が大きくほぼ6年周期で現れる。その原因は明らかではないが,1994年から1995年にかけての名古屋では37℃以上の異常高温が5日近くも現れた。この時の気圧配置は1994年が全面高気圧型,1995年は南港北低型が多く支配した年である。したがって,1994年は全国的に猛暑となったが,1995年に関しては名古屋特有の暑さであった。これは,名古屋が南高北低型の気圧配置時において北太平洋高気圧の西縁部にあたるため,南西の風が鈴鹿山脈を越えてフェーン現象をもたらすからである。南高北低型が現れる時の上層気圧場は,200hPa面における南アジア高気圧の中心がイランモードになっていて,東アジアがわずかに北東シフトしている。その結果,日本付近は亜熱帯ジェット気流がリッジを形成しており,西日本に高気圧が張り出しやすい状態になっていた。これに対し,全面高気圧が多く現れた1994年は,南アジア高気圧の中心がイランとチベットの両方にあって,日本列島が広く大陸からの高気圧に覆われている。このため,北太平洋高気圧の西への張り出しが容易となるだけであなく,上層は大陸からの高気圧に覆われて猛暑年となったものと思われる。したがって,名古屋の猛暑傾向は,イランを中心とする南アジア高気圧の盛衰に左右されていることが判明した。
著者
森田 順也 藤本 奈央 柳田 克巳
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.1M202, 2018 (Released:2018-07-30)

建設現場の品質管理は,現場監督員の熟練度により品質確認の結果に差が出やすく、精度担保が課題である.加えて,精度の高い品質確認を行うには,現場の状況に即して適切な「着眼点」を見出すことがポイントとなっているが,形式知化が難しいため,効率的なトレーニングや人材育成の難易度が高い.さらに,現在の首都圏建設市場の急拡大により,社員をバランス良い年齢構成で配置することができず,技術伝承の要となるOJT(On-the-Job Training)による適切な指導ができていない状態も続いている.そこで本研究では、ベテランの建設現場監督員が何を手掛かりにして「状況認識」し,その後どのような「判断」で「作業」をしているか,ウェアラブル機器で視線を計測することで一連の作業プロセスを明らかにする.そして,抽出される熟達者の行動プロセスをいかに未熟者に継承していくかについて,今後の展望を示す.