著者
大津 直子
出版者
白百合女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

最終年度にあたる今年、漸く谷崎の創作と『源氏物語』の翻訳とがどのように関わるのかという問題を、第一の訳〈旧訳〉を手掛けていた三年半の間で執筆した唯一の小説、『猫と庄造と二人のをんな』の中から検証した。現在は投稿・査読中であるため、詳細は省くが、三年かけてようやく谷崎が三度にわたり『源氏物語』を訳し続けたことの意義について論じるという入り口に立ったことになる。研究員着任直後に。中古文学の手法からのアプローチが作家の翻訳の検証に必ずしも有効に機能しないことが判明したため、より合理的に目的を遂行できるよう、谷崎の創作との連関を検証する方向に研究計画を変更し、創作と翻訳との連関を、國學院大學蔵『谷崎潤一郎新訳 源氏物語』草稿から発見するいう成果を得た。
著者
西平 功
出版者
沖縄国際大学
雑誌
沖縄国際大学外国語研究 (ISSN:1343070X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.A1-54, 2008-03

This paper aims at tracing the process of what drove Franklin to formulate his 13 virtues at the age of 25 and what devices he employed to put them into practice. The paper then analyzes the contents of each virtue in terms of the purposes he originally set forth and reveals the outcomes of the practice around the time of the formulation and sometimes thereafter. This study has found that the virtues were conceptualized on the experimental basis for his own use at first but soon extended to include the same-minded youth elsewhere, that the devices he recommended were practical and down-to-earth, and that the contents he wrote were flexible enough to be modifiable to suit various circumstances. In the final analysis, Franklin did not altogether live up to the goals he set, but his spirit of building himself for doing good for the public remained adamant.
著者
重見 晋也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究計画は、『ボードレール』が「コレージュ・スピリチュエル」という題で文芸誌『コンフリュアンス』に掲載されるにあたり、1)戯曲『蠅』の原稿も編集部に戦時中に送付されていたこと、2)戯曲作品が希望を描くのに対してボードレール論が高い倫理観に根ざした行動の実践を要求していること、3)このサルトルの主張はフローベールを筆頭とした「フランス的精神」を批判することで成り立っているとも考えられる点でボードレール論は編集部の判断により戦時中には発表されなかったことを、フランス国立図書館における『コンフリュアンス』誌を始めとするドイツ占領下におけるフランス文芸誌を対象とした集中的な資料調査から明らかにした。

1 0 0 0 OA 民家日用算法

著者
内田志馬三 編
出版者
森屋治兵衛等
巻号頁・発行日
vol.第1巻(商の部), 1879
著者
長 郁夫 西開 地一志 柳沢 幸夫 長谷川 功 桑原 保人
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.74-93, 2006 (Released:2010-08-12)
参考文献数
54
被引用文献数
2

近年、著者らの一部は3次元地質構造の簡便なモデル化のために地質構造形成史の知見からモデルを拘束する手法を開発した。本研究では同手法の位置付けを明らかにするとともに、同手法のこれまでの適用例よりも地質学的に複雑な地域 (新潟県中越地方南部地域) のモデル化を試みて手法の有効性を確認する。我々の位置付けでは、同手法は、既存の地質図を3 次元的かつ定量的に再構成するための簡便な手段である。モデルの単純化や地質学的知見の曖昧さを考慮すると、探査データの少ない地域における巨視的なモデル化に有効と期待する。新潟県中越地方南部地域のモデル化については、地質構造形成史で重要と考えられる情報と地質図データ及び比較的少量の探査データを併せて用いることにより大局的な3 次元地質構造をモデル化することができた。このモデルは、地震空白域であり将来の地震発生が危惧される同地域の基礎的な地盤モデルとして役立てられる。
著者
峯岸(竹内) 夕紀子 蒲原 龍 志渡 晃一
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.105-113, 2008-03-31

栄養士119名を対象に,抑うつ感(CES-D)とその関連要因を調査した.CES-Dの合計得点で「高得点群」と「低得点群」に分け,身体症状や職業性ストレス等との関連を検討した.結果,以下のように,抑うつ感は多様な要因と関連していることが示唆された.1)身体症状(11項目)では,「眠れない」,「めまい」などの7項目で,「低得点群」に比べて「高得点群」で有訴率が高かった.2)職業性ストレス(38項目)では,「出口が見えない」,「働きがいがない」などの6項目で「高得点群」の該当率が高く,「自分の意見を反映できる」,「職場の雰囲気は友好的」などの9項目で「低得点群」の該当率が高かった.3)上司に関する項目(13項目)では,「よい仕事をしても認めてくれない」などの2項目で「高得点群」の該当率が高かった.
著者
吉信 康夫 渕野 昌 宮元 忠敏 嘉田 勝 友安 一夫 酒井 拓史 薄葉 季路 松原 洋 König Bernhard
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

公理的集合論の研究において, アレフ数2以上の無限基数のもつ組合せ的性質は, それ以下の無限基数に比べて解明されていない点が多い. 本研究では, アレフ数2以上の無限基数のうち比較的小さいものたちのもつ組合せ的性質の, いろいろな強制拡大の下での不変性を詳しく調べた. その結果, 強制公理と呼ばれる集合論のよく知られた一連の公理たちが, どのような種類の半順序集合による強制拡大によってどの程度保存されるかという問題を中心に, いくつかの重要な知見を得ることができた.
著者
冨山 浩三
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.2_195-2_210, 2014 (Released:2014-11-21)
参考文献数
53
被引用文献数
4

In recent years, the relationship between sports teams and the local community has been gaining attention among researchers. The purpose of this study is to demonstrate the effects of sense of community and team reputation on team identity. We conducted a questionnaire survey at a stadium, targeting fans of a J-League soccer club, to collect data on team reputation and sense of community. Analyzing this data revealed that although there was no statistically significant difference in the direct effect that sense of community has on team identity, it was shown that team reputation had a significant, positive relationship with team identity. Furthermore, while there was no direct, significant relationship between sense of community and team identity, the fact that sense of community had a significant and positive effect on team reputation clearly demonstrates that team identity will increase in sports teams in local communities that have a strong reputation.
著者
壁谷澤 寿海 楠 浩一 有川 太郎 井上 波彦 壁谷澤 寿一 松山 昌史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

鉄筋コンクリ-ト造建築物の縮小試験体が崩壊に至る水理実験を実施して特に地震動による損傷と漂流物による閉塞効果の影響を検証した。2014年度にはピロティ構造の震動実験と孤立波による水理実験を実施し,地震動による損傷が津波による倒壊危険性を増大させることを実証した。2016年度には純ラーメン構造が連続波と漂流物によって倒壊に至る水理実験を実施し,漂流物の開口閉塞効果により大幅に増大する津波荷重を定量的に明らかにした。2015年度,2017年度には静的加力実験を行い,水理実験の試験体の耐力を確認した。以上の実験結果および検討成果を総括して津波避難ビルの設計用津波荷重の評価法を提案した。
著者
深道 和明 佐久間 昭正 梅津 理恵 笹尾 和宏 佐々間 昭正
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、非常に高いネール温度を示しGMR, TMR効果を示す多層膜の反強磁性材料として注目されているγ-Mn系合金およびL1_0型Mn系合金の基礎物性と電子状態を実験および理論の両面から調べることを目的としている。得られた成果を以下に示す。1.γ-MnRh系合金に関する研究Mn_3Rh規則相合金ならびに不規則相合金において磁化、電気抵抗、熱膨脹および低温比熱測定ならびにバンド計算を行った。この合金は、電子状態密度においてフェルミ面近傍にディップを形成することで反強磁性状態を安定化し、高いネール温度を実現していることが明らかになった。また、ネール温度の圧力依存性ならびに体積弾性率を詳細に調べた。2.γ-MnIr系合金に関する研究実用材料として注目されているγ-MnIr不規則相合金の磁気相図を明らかにした。磁気構造と格子歪みが密接に関連していることが分かっているが、fct構造からfcc構造への構造相転移温度と2Qから3Qへの磁気転移温度が必ずしも一致しないことを理論および実験の両面から明らかにした。3.L1_0型MhTM (TM=Ni, PdおよびPt)合金に関する研究非常に高いネール温度を有するL1_0型MnTM (TM=Ni, PdおよびPt)合金について磁化、電気抵抗および低温比熱測定、ならびに理論計算を行った。これらの合金系はフェルミ面近傍に擬ギャップを有する非常に特徴的な電子状態を有することが判明した。また、デバイス特性に関わる電気抵抗率の組成依存性を理論計算の結果と併せて、定性的に説明できることを明らかにした。4.L1_0型MnIr合金に関する研究L1_0型MnIr合金の電気抵抗および磁化測定ならびに電子状態に関する研究を行い、他のL1_0型MnTM合金と同様に擬ギャップ型反強磁性体であること、そしてMn系合金のなかで最も高いネール温度を有することを明らかにした。また、この合金系は低温において大きな磁場中冷却効果を示すことが判った。5.交換結合に関する研究γ-MnおよびL1_0型反強磁性合金の交換結合を古典的ハイゼンベルグ模型を用いて解析し、それらの計算結果と実験結果が極めてよい対応を示すことを明らかにした。
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.520, pp.44-45, 2011-05-23

東日本大震災の復旧を困難にしている要因の一つが、これまでの地震と比べて飛び抜けて多い余震だ。気象庁の観測によると、5月6日までに発生したマグニチュード(M)5.0以上の余震は444回に上る。それまで観測史上最多だった1994年の北海道東方沖地震の約4倍だ。 そのうち、M7.0以上の余震は5回。本震がM9.0と大きかっただけに、余震も強い。
著者
仁平 京子
出版者
高崎商科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究では、日本の少子化と高齢化の同時進行を背景として、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯の消費者行動に対する社会ネットワークとしての家族のくちコミや集団的購買意思決定に着目し、日本型の高齢者マーケティングの理論構築を行うことを目的とする。そして、本研究では、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯において、インターネット上の非対面的くちコミよりも、家族や友人からの伝統的な対面的くちコミの対人的影響力の有用性を検証した。本研究では、家族のくちコミによる社会的効果に着目し、娘や息子、孫などの家族が高齢者(消費者)の購買代理人となるバンク・ショットモデル(購買者・消費者主体不一致型)の理論構築をした。
著者
久保田 哲也 篠原 慶規
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

強い地震の場合には森林斜面の崩壊が予想されるが、その場合の森林地上荷重および根系の影響を明確にし、山地斜面の安定に対する地震時の森林の影響を明らかとした。同時に、地震後の強雨が森林斜面安定に与える影響、つまり、震後の強雨時における、地震動および地震で生じた亀裂や森林の影響とその影響の持続期間を解明し、崩壊危険箇所調査や警戒・避難など災害対策に応用できる崩壊発生危険雨量=警戒避難基準雨量も明確とした。さらに、地球温暖化にともなう豪雨の増加が心配されており、地震振動の基準雨量への影響を比較検討し、警戒避難システムの改良を考える上で有意義な成果を得た。
著者
呉本 晃一 前田 照太 井上 宏
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-23, 1997-08-30
被引用文献数
1 1

クリッキングやクレピタスなどの顎関節雑音はこれまで多くの研究によって報告されてきたが, その対照となる正常者の顎関節運動音に関する研究は数少ない.我々は正常者の顎関節運動音の性状を明らかにし, またコンタクトマイクロフォンにより測定する場合, どの様な要因に影響を受けるかを明らかにすることを目的として実験を行った.被検者は自覚的他覚的に顎関節に異常を認めず, 聴診および触診においても顎関節に雑音を認めない正常有歯顎者9名とし, 測定部位を4カ所に設定し, 開口速度も3段階に変化させた.顎関節運動音とマイクロフォンの揺れはコンタクトマイクロフォンとそれに外付けした加速度計を用いて観察した.その結果, 1.正常者の顎関節運動音は30Hz以下に限局した周波数分布を示し, 2〜4Hz付近にピーク周波数をもつことが明らかとなった.2.コンタクトマイクロフォンによる正常者の顎関節運動音は関節内部の音とともに顆頭運動に伴う顎関節の動きをもとらえていることが推察された.3.測定部位の違いにより顎関節運動音は周波数分布が変化し, 開口速度の違いにより運動音の大きさが変化することが明らかとなった.4.マイクロフォンの揺れ(加速度)からみて, 顎関節運動音は平均的顆頭点の前方20mmの位置で測定することが最適であると考えられた.
著者
亀井 一
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、18世紀後半ドイツの諷刺作家ジャン・パウル、リヒテンベルク、ヒッペルのテクストを取り上げ、テクストの主体という観点から、作者とテクストの関係を考察した。本研究で、テクストの主体というのは、広い意味で、客体としてのテクストに対する発話者をさし、その主体が実在しているのか、虚構なのかは、さしあたって問わないことにする。語る主体は、登場人物、あるいは、語り手としてテクストに現われるが、テクストの作者とは区別される。テクストの主体は、作者をとおしてテクストに入り込んだ他者であるかもしれないし、作者のなかにある無意識(他者)であるかもしれない。たしかに、テクストは作者によって書かれたものであるが、書かれたものは、しばしば、作者の意図を超えたなにものかになっている。テクストの主体と作者のあいだのズレはここから生じる。本研究で取り上げた作者たちは、自分がテクストに書き込んだ「わたし」に他者を見出し、それぞれの観点からテクストの主体を主題化することになった。ヒッペルが社会との緊張関係のなかで、自己と書く主体のあいだの亀裂を明確に意識していたとするならば、ジャン・パウルはテクストの虚構性との戯れのなかで、ヒッペルと同じ問題に直面した。ジャン・パウルは、自己の真実を追究してゆくなかで、作者としての自己が虚像の「わたし」であることを認めざるをえなかった。一方、リヒテンベルクが銅版画解説において目指していたのは、本来、虚構化ではなく、銅版画の厳密な再現だった。にもかかわらず、そこに恣意性が生じるのは、視覚芸術の記号体系と物語の記号体系の構造的な差異によると考えられる。本研究では、ラファーター、ジャン・パウルの図像解説テクストとの比較分析で、テクストの主体が意識化されてくる過程を追跡した。
著者
鈴木 晃仁 脇村 孝平 杉田 聡 橋本 明 飯島 渉 杉田 米行 加藤 茂生 廣川 和花 渡部 幹夫 山下 麻衣 永島 剛 慎 蒼健 ヨング ジュリア 香西 豊子 逢見 憲一 田中 誠二
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

疾病・病者・医者の三つのエージェントが会して構成される「医療」という動的な場は、どのような歴史的な構造を持つのか。疾病環境の変化、人々の病気行動の変化、そして医療者の科学と技術の変化の三つの相からなる医療の構造変化は、近現代の日本の変化とどのような関係があり、世界の中の変化とどう連関したのか。これらの問いが、急性感染症、スティグマ化された疾患、帝国医療の主題の中でとらえられた。